レジェンド投稿シリーズ⑥ 診断士知識がM&A業務にどういきるか〜 by butao

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みなさん、こんにちは。毎週火曜日はレジェンド投稿シリーズですね。担当のサトシです。

早いものでレジェンド投稿シリーズも6回目。今回は【5代目 butao】さんです。

それではbutaoさん、よろしくお願いします。


ご無沙汰しております。本日のブログ当番はbutaoです。よろしくお願いします。ぶひ

みなさんこんにちは。5代目 butaoです。

本日もブログにアクセスしていただきありがとうございます

改めて

初めましての方へ・・・

自己紹介

<受験の背景

•1988年生まれ(受験時24歳 独身、現在36歳 2児の父)。経営コンサルティング会社勤務(受験時)。

•新卒でコンサル会社に入社しましたが、理系だったこともあり?入社後あまりの経営知識・スキルの無さに危機感がありました。そこで、会社の先輩から中小企業診断士試験の存在を教えてもらい勉強を開始しました。

<受験歴と学習方法

• 勉強開始時期:2012年12月~2013年8月(約9カ月)

• 一次試験:1回(勉強時間523時間)、二次試験:1回(勉強時間178時間)

• 合計勉強時間:700時間

• 学習方法:一次試験は独学、二次試験はMMC通信

以下は合格体験記です。

https://rmc-oden.com/blog/archives/61286

中小企業診断士試験合格後、新卒入社したコンサル会社で10年勤務しました。

もちろん、診断士試験の知識はダイレクトに業務に活きまして、10年間楽しく過ごすことができました。特に4年目の途中から、経営数学というと大げさなのですが、数理工学と経営の間の領域(事例Ⅳに近い世界)に強く関心があることを自覚し始めました。例えば、診断士試験で出てくるリニアプログラミング(線形計画法)などがより分かりやすいでしょうか。仕事で言うと部品原価の最適化、港の利益最大化、テレビ番組の利益最大化、ブランド損益の最大化、食品メーカーFP&A、火力発電所の利益最適化、電力小売り事業のLTV最大化、SIerの最適人材調達など領域問わずに、意思決定会計と戦略の狭間のような事例Ⅳ的な領域に取り組んできました。あまりに面白かったので、プロジェクトに取り組む傍ら、公認会計士試験も合格しました(当時の記事はこちら)。

そんな感じで個別テーマに楽しく取り組んでいたのですが、診断士の実務補習などを通じて実感した中小企業経営の魅力(真剣さ、リアルさ、面白さ)を忘れることができず、また投資という行動に関心があったこともあり、世の中の素晴らしい中小企業を発掘しヒト・モノ・カネを投入して発展を目指す、という過程に関与したいと考えるようになりました。

その結果、M&A業界(PEファンド)に転職をすることにしました。現在は以下の業務に取り組んでおります。

  • 担い手不足に悩む会社様の事業承継、上場会社の非公開化、大企業のカーブアウト(事業切り出し)などM&Aご支援
  • 非上場会社3社の常勤取締役として企業価値の向上を推進

現業に従事する中で、中小企業診断士の試験で得られた知識が活かされているなと思う場面が相当程度ございましたので、特に以下の方々に試験勉強に対するモチベーションをあげてもらいたいと考え、ブログ記事を投稿することにしました。

  • 事業会社の経営企画部門・商社・金融機関・M&A仲介会社などM&Aに関連する業務に従事する方々(もしくはそういった業務に関心のある方々)

なお、分かりやすさのため各種用語など省略している記載が多くございますが、ご容赦いただければと思います(質問欄や交流会などでもお話しできればと思います)。

自由気ままにブログも続けていますので、興味のある記事がございましたらコメントなど頂けると嬉しいです。それでは、さっそくいってみましょう!

なぜM&A業務では、特に診断士の勉強が生きるのか?

①M&Aにおいては、限られた時間の中で、大量のデータを整理収集し、その意味合いを抽出し判断していく必要があります。
②診断士の学習では、情報を格納する箱(会社経営に関する定石)が頭の中にできるため、

  • 会社に関する情報を脳内で整理格納できるようになります。結果、記憶力が向上し、確認点の漏れや情報間の矛盾に速やかに気づけるようになります
  • 会社に関する情報をベンチマーク(診断士知識)にあてはめられるようになります。その結果、情報の意味(良否・重要度)を速やかに抽出できるようになります

したがって、上記①②より、M&A業務は特に診断士の勉強と相性の良い領域なのではないか、と考えています。

次にM&A業界の中でも、私が従事しているPEファンドの業務について概要をご説明します。

PEファンドとは何か?

PEファンドとは、①お金を集めて、②よい会社を探して、③株式を譲り受け、④経営支援を進め、⑤株式を他者に譲る、という一連のプロセスを通じて、譲渡差益(キャピタルゲイン)を獲得することを生業とする仕事です。経営支援は凡そ3年~5年程度になることが多いです。今から10年前は「ハゲタカファンド」など誤解され悪い印象を持たれるということもあったようですが、最近ではそうでもないようです。

そんなPEファンド業ですが、近年、日本国内における存在感が高まりつつあります。

この要因として、①国内M&A市場が活発化していること、②その中でもPEファンドが関与する案件が増えてきていることに分けられます。

①の背景にはオーナー高齢化による事業承継ニーズの高まり、上場会社におけるアクティビストファンドなど株主からの圧力による不採算事業のカーブアウト、非公開化ニーズの高まりなどがあるかと思います。②としては、最近では地銀でのファンド立ち上げなど、需要の増加にあわせてファンド数も増加しつつある状況です。

ふーん。PEが身近な存在になりつつあるのは分かってんけど、その業務に診断士の勉強で得られた経験が具体的にどう活きるんや?

PEファンドは下図の通り、株式価値の算定、事業計画に基づく投資採算の算定、株式価値の向上を通じて、投資リターン(ROI、IRR)を最大化させることに注力します(※実際にはSPC設立、LBOを行いますが、分かりやすさのため今回は割愛します)。これはまさに1次試験の財務会計、CF計算、事例Ⅳで学んだ企業価値算定の領域ですので、その知識がダイレクトに活きます。

”投資リターンの最大化”、”株式価値の向上”ってどうやって行うねん?

株式価値=EBITDA×マルチプル-(有利子負債-現預金)ですので、この3要素(4要素)のどれかを操作して、投資リターン最大化を狙います。

特にEBITDA拡大は、成長戦略やコスト削減策の立案と推進など、まさに診断士で学んだ世界です。診断士資格の優れている点として、財務・ビジネスの双方を有機的に理解する素地ができるという点で役に立ちます。財務を起点として、その財務成果を裏付けるすべての診断士知識が紐づいてくる感じです。

実際にはこれら3要素を最大化させるために無数の論点があり、日々それら論点を潰しこんでいきます。例えば上記の計算例に対して、論点の一部を付与すると下図のようになります。

ふーん、財務を起点として診断士知識が活きてくるイメージはざっくり分かってんけど、財務以外の知識は具体的にどう活きんねや?

診断士試験の内容が業務にどう活きるのか?

PEファンド業務では、全科目の勉強内容が活きてきます。ただし、PEファンド業務の5つのプロセスで分けた時には、その関連性は業務によって異なってきます。

<PEファンド業務の5つのプロセス>
①お金を集める(Fundraise)、②よい会社を探す(Sourcing)、③株式を譲り受ける(Execution)、④経営支援する(Value Up)、⑤株式を他者に譲る(EXIT)

下図は診断士試験の各試験科目とPEファンド業務の関連性を示した図です。

これだけだとちょっと分かりにくいかと思いましたので、もう少し整理してみました。これくらいの粒度で分けると分かりやすくなったかと思います。

財務・会計

業務全般にわたって必須となります。限られた時間の中で投資リターンを最大化するためには、見聞きした情報や定性表現(すごい、非常になど)がPL、BS、CFの中でどこに位置づけられ、どの程度の影響度なのか手際よく紐づけて取捨選択をしていく必要があります。

ファンド業務のうち『Valuation』や『提案』の段階では、財務三表が連動した財務モデルを作成する必要があります。財務モデルでは将来計画を反映していきますが、そのベースとなる過去の計算書類を理解するために財務会計の知識が必要となります。

またテクニカルな面では、リース会計など会計制度変更がリターンに与える影響、IFRSと日本基準の違いが利益に与える影響(のれん償却)、税負担を最小化するTAXスキームなども考慮する必要があります。

診断士試験に取り組むことは、これら知識を深めていく前の導入パートとして有効かと思います。

企業経営理論

 同様に業務全般にわたって必須となります。ファンド業務のうち『リスト作成』や『提案段階』では、会社のWebサイトや中期経営計画などをみて成長可能性を考えます。PEST、SWOT、VRIO分析、Valuechane分析、アンゾフマトリクス、5F分析などの軸で情報を整理していきます。

この時に、特に中計を公表していない会社では成長仮説を考える必要があります。企業経営理論で学んだ様々なフレームと公開情報を突き合わせた時に、全く記載のない領域が見つかることがままあります。こういった領域に着目することで、オーナーへの提案資料の品質を高めることができます。

また組織論の観点では、組織間でうまく連動できていないなど組織図から想像できる会社の課題があります。例えば、営業部と生産部の間がうまく連動できていないとか、各事業部で個別対応が進んでおり非効率であるなど、そういった類のものです。

そういった課題に対して、財務会計論の知識と企業経営理論(組織論)の知識の連携が重要となってきます。例えば、組織業績会計の観点では、責任と権限一致の原則などいくつかの原則に照らし合わせた時に、組織設計と予算会計制度の整合性を確保し、望ましい方向に社員が行動できるように会社を作る必要があります。

また、組織関連のテーマはとかく情緒的になりがちですので、その問題を解決すると、どの程度の金額的インパクトになるのか推定し、対応策の優先度をつけて提案内容に組み込んで行く必要があります。

運営管理

 この領域は、財務会計、企業経営理論の知識を持ち合わせた時にこそ価値を発揮する知識だと思います。企業活動で利益が生まれる場所はお客様接点や、生産活動の現場です。そこを理解することが、顧客インサイトに応えられる、有効かつ実行力ある経営戦略を立案するために必要となります。

ファンド業務における『リスト作成』や『提案段階』では、運営管理で学んだ内容まで理解しておくことで、一歩踏み込んだ提案ができることがあります。例えば、大型機械を受注生産している会社への提案時には、中の生産管理状況は不明であるものの、おそらく各製品の個別化が進んでいると推察されるため、製図のデジタル化と部品標準化、一括調達、生産活動とデジタルデータの連動による生産計画の精緻化などが提案内容の方向性として考えられます。

経営情報システム

この領域は、ソフトウェアやSIerといった業種の会社への投資を行う際に基礎知識として必要になります。

その他の業種の会社への投資を検討する際にも役立てることができます。特に、財務会計、企業経営理論、運営管理の知識を持ち合わせた時にその価値を発揮する知識だと思います。

例えば財務会計との関係で行くと、会計システム、生産管理システム、調達システム、営業システム、需要予測システム、EC WEBサイトなど各種システムの機能構成、データベース構成、マスター構成、システム間の関係性、データ処理方法の現状、そして課題を明らかにすることで、決算早期化、標準原価計算制度の導入、IFRS導入、管理会計の高度化(モニタリングの強化と適時での経営判断)などありがちな会計テーマに対して、その有効性と実効性を高めることができます

企業経営理論や運営管理の知識と情シス知識のミックスは、DX戦略やデータドリブン経営の推進に寄与するでしょう。昨今では、お客様との接点の情報量を増やしたり、各社員の活動履歴をデジタル化したりといったことが以前よりも簡単に行えるようになりつつあります。例えば店舗における動画データを収集解析して、POPやレイアウトが動線に与える影響、店舗周辺の環境変化が店舗流入量に与える影響などを理解することができます。これらに基づき、経営的に意味のないPOPをすべて廃止したり、レイアウトや接客を最適化する、時期や天候に応じて店員の数を調整する、新商品ローンチが顧客行動に与えた影響を分析し商品開発に活用するといった提案も可能となります。

ファンド業務における『リスト作成』や『提案段階』では、情報システムで学んだ内容まで理解しておくことで、一歩踏み込んだ提案ができることがあります。

また情報システムは、レバレッジを効かせやすい(人の投入を追加せずとも売上拡大やコスト削減、業務効率化、経営管理強化を行いやすい)領域ですので、ファンド業務の『Value Up』フェーズにおいても企業の収益性を高めるために重要な領域となります。

経営法務

この領域は、ファンド業務のうち『LDD』、『契約実務』において必要となる場面、『Value Up』において必要となる場面があります。

『LDD』では、株式譲渡に関するリスク認識、リスク評価、対応策の検討、『契約実務』では対応策の織り込みを行います。この際に民法、会社法の知識が必要になります。また上場会社の非公開化を行う際には、金商法の知識が必要になってきます。

『Value Up』においては、株主総会、取締役会を適切に開催すること、規程類を通じてガバナンスを確保することが必要になります。これらを行うためには会社法に対する理解が必要となります。

経済学・政策・中小企業経営・政策

 プライシング戦略を考えるときに価格弾力性の話が出てきますが、それ以外に知識を活用するという場面は少ないかもしれません。為替レートの決定ロジックを理解していたとしても結局のところ予測もコントロールもできないので、あまり活用できないのかもしれません。

また中小企業政策は、理解することは重要なのですが、そこに詳しい人は沢山いますので聞けば済むということが多いです。また詳しい人が沢山いるからかもしれませんが、中小企業政策に詳しいことを起点にオーナー提案しても、それが評価されるということが少ない印象があります。

二次試験

二次試験の学習内容は、経営の方向性を探るような初期的なディスカッションでは有効な知識とスキルになります。
初期的なディスカッションは、ファンド業務における『提案』において日々発生しますし、『Value Up』においても新規施策の検討など経営活動の軌道修正を行うような場面でも発生します。その際に、二次試験で学んだ、事実から意味(会社の問題点)を抽出する、いくつかの切り口で網羅的に考える、対応策を考えるといったロジカルな思考プロセスと知識体系が役に立ちます。

さいごに

ここまでお読みいただきありがとうございました。

以上、つらつらと書いてしまいましたが、お伝えしたかったことは、M&Aに関係する業務では、診断士試験の学習内容(思考フレーム)が相当に活用できるということです。

もう1点、特に有用だと思うのは、診断士試験ではこれら各科目を横断して理解できる、ということだと思います。経営においては、各科目で学ぶ内容が有機的につながっている一方で、業務は各部署に分かれており個別最適化されがちです。PMIの中で、その全体最適化を行う機能を発揮する際に、診断士試験で学んだ知識が科目横断的に活かされるのではないでしょうか。

以上となります。


butaoさん、ありがとうございました。

診断士の各科目で扱った内容や覚えた知識がこのような形で実務でも役に立っていることを目の当たりにすることで、我々15代目も良い刺激になっています。

まさに「組織活性化」ですね(はい、事例Ⅰの典型ワードですね)。

明日はたいしんの登場です。私も毎回驚かされています、あのすごいシリーズの第3弾ですよ!

再現答案分析「事例Ⅲ」です!

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レジェンド投稿シリーズ⑥ 診断士知識がM&A業務にどういきるか〜 by butao”へ2件のコメント

  1. にっく より:

    こんばんは!
    にっくです。
    butaoさん、M&A業界のお話、ありがとうございました!
    普通に暮らしていたら聞けないような話で、刺激になりました!
    サトシさんもご紹介ありがとうございました!
    今日はもうおしまいにしようかと思っていたのですが、もうちょっとだけ単語カード見てみようと思います。
    ありがとうございました!
    にっく

    1. butao より:

      にっくさん
      こんばんは!何をお伝えしようか、色々と悩みながら記事を書きましたので、反応いただき本当に嬉しく思います。
      ありがとうございます。
      この資格の勉強はためになることばかりですので、勉強頑張ってください。
      今後ともよろしくお願いします。

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