【経営法務】それを捨てるなんてとんでもない 英文契約書 by ひろし

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 
一発合格道場ブログを
あなたのPC・スマホの
「お気に入り」「ブックマーク」
ご登録ください!
 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

経営法務の鬼門

ひろし
ひろし

まいど、どーも!
14代目の大阪弁担当こと、ひろしです。

先日の記事「それを捨てるなんてとんでもない」で、1次試験の頻出テーマをいくつか取り上げました。今回はその中の一つを深堀りしていこうと思います。

テーマは「英文契約書」です。正直、苦手にされている方は多いかと思います。先日の記事を投稿したあと、何名かの方から「私は捨てていた」という感想をいただくことがありました。

英語が苦手な方がいきなり長文の英語を読むのはなかなか大変だと思います。しかし、英語が得意なメンバーでも英文契約書の問題を苦手としていたことがわかりました。(私もそのうちの一人です)

今回はなぜ英文契約書は難しいのかというのに焦点をあてて、読み方のポイントを説明していきます。

連休の後半らしからぬ重さの投稿ですが「英語が得意だったはずなのに英文契約書の問題文はわからない」という方の、何らかのご参考になれば幸いです。

某所にて

兄ちゃん?英語得意?
今度5年生になった親戚のまーくんが英語で困ってるねん。

トラ柄のおばちゃん
トラ柄のおばちゃん

今は小学生も英語の勉強があるんですね。
英語は前に仕事で使ってましたよ。

コレを日本語に訳してほしいねんて。

トラ柄のおばちゃん
トラ柄のおばちゃん

ふぁ?! なんやコレ?!!

まーくん、医大の5年生やねん。
今度、学生起業して輸入業始めるんやて。
今、取引先とのT’s & C’s*確認してるん。

トラ柄のおばちゃん
トラ柄のおばちゃん
ひろし
ひろし

大学生かい!

*T’s & C’s: Terms & Conditionsの略。契約における取引条件のこと。

英文契約書の難しさ

今回の記事では、診断士試験で出題された過去問をベースに、少し簡単に編集した英文を使って英文契約書の読み方を説明していきたいと思います。

さて、この英文契約書を読むのが難しい理由ですが、大きく2点あると考えています。

  • 文中に難しい単語や成句、独特な表現が現れる
  • 文章の構造が複雑で読みにくい

これらより他の英文とは異なるので、英語に慣れている方でも「よくわからない」となってしまうようです。いわば、日本語が母国語であっても契約書の文章は読みなれないのと一緒です。

以下ではそれぞれの点について、より具体的な理由と共に見てきます。

注:本投稿では例文を平易な文に編集したため、契約書として不十分な点や不自然な点などがあります。また、和訳については説明のためにあえて不自然な直訳にしていることもあります。以上の点をご了承ください。

文中に難しい単語や成句、独特な表現が現れる

法律文書では、独特な表現や特別な意味をもつ単語、専門的な用語が多用されます。

この中から頻出のものや重要なものを見ていきましょう。

  • 権利と義務を表すshallとmay
  • 固有名詞を表す大文字
  • 法律に関する用語・単語

権利と義務を表すshallとmay

通常の文章に比べて契約書では助動詞shallがよく出てきます。通常の文章では「~するつもりである」「~すべきである」などと訳されますが、契約書においては「~しなければならない」という義務を表します。

それに対して権利「~してもよい」を表す助動詞はmayを使います。

shallの例文

Risk of loss of the Products shall pass to Purchaser upon Purchaser’s acceptance.

令和元年 第16問を編集

shallの例文(訳例)

製品の損失のリスク(危険負担)は、買主の受け取りをもって買主に渡るものとする(=渡らなければならない。)

mayの例文

If any of the following events occurs on either party, the other party may terminate this Agreement.

平成29年 第15問を編集

mayの例文(訳例)

以下のいずれかの出来事が一方の当事者に起こった場合、他方がこの契約を終了させることができる

契約とは2人以上の当事者が合意をして、それぞれの間に権利と義務の関係(法律関係)を生じさせるものを言うので、これら権利(right)と義務(obligation)を表す表現が多々出てきます。

権利を表す表現としてmay以外に

  • be entitled to  など

また、義務をを表す表現はshall以外に

  • be obliged to do
  • be required to do など

が使われます。

注意していただきたい点として、義務の否定形、

  • be not obliged to do
  • be not required to do

「~しなくてもよい」という意味になるのに対し、

  • shall not

「~してはいけない」という禁止の意味になります。

shallの否定の例文

The term Confidential Information shall not include the following information.

平成26年 第15問を編集

shallの否定の例文(訳例)

「機密情報」という言葉は以下の情報を含まないものとする
(=含んではならない

このshall、mayの使い方は後述の文の構造のところでもポイントになってきます。

固有名詞を表す大文字

英文契約書を読んでいると文中でも単語は大文字で始まることがあります。この場合、それぞれの単語は契約書の中に出てくる固有名詞を指します。

実際の契約書ではそれぞれの定義がどこかに記載されていますが、問題文を読むにあたって大きな影響はないと思います。もし問題文で出てきたら「一般的な言葉ではなく、この契約書特有のものを指してるんだな」と考えてもらえれば大丈夫です。

文中の固有名詞を用いた例文

Confidential Information’’ shall mean any information that is disclosed by ①’the party which discloses such information (‘‘Disclosing Party’’) to ②’the party which receives such information (‘‘Receiving Party’’) pursuant to this Agreement.

平成30年 第15問より編集

Confidential InformationとDisclosing Party、Receiving Partyの定義が書かれており、固有名詞として文中でも大文字で始まっている。

文中の固有名詞を用いた例文

『機密情報』とは、①’本契約にしたがって情報を開示する当事者『情報開示者』)から②’情報を受領する者『受領者』)によって開示される、あらゆる情報を意味する。

①’、②’のそれぞれの文でDisclosing Party、Receiving Partyを定義している。

法律に関する用語・単語

契約書に限らず、専門文書はどうしても専門用語が多く出てきます。知らない単語も多いと思います。(私も令和4年に出てきたindemnify「補償する」という単語は初めて見ました)

これについては、正直、覚えるしかない、という反面、限界もあると思います。

ここに時間をかけすぎるのは正直効率的ではないと思いますが、過去に出てきた単語をオマケで載せておきました。ただ、単語の羅列だと覚えにくいと思うので、契約書を以下の種類に分けて、それぞれ関連がある単語を例文と共に記載しています。

  • purchase and sales agreement(売買契約書)
  • non-disclosure agreement(NDA: 秘密保持契約書)
  • license agreement(ライセンス契約書)

なんとなく「この単語が出てきているからNDAについて書いているんだな」くらいが判別できると全ての単語を知らなくても文章は理解しやすくなりますし、法務の知識だけで解答できることもあります。

法律に関する用語・単語(上級編)

オマケに入れようか迷ったのですが、難解な契約書独特の用語や表現も多々あります。

  • herein / heretoなど「here+前置詞」
  • thereof / thereafterなど「there+前置詞」
  • 法律文書で使われるラテン語や英語古語を含む表現

過去問を見る限り、ラテン語や英語古語を含む表現は問題文に出てきていないので本投稿では扱いません。(仮に出題されたとしても、単語の意味を知らずに解ける問題だと信じたいです。)

一方、「here+前置詞」「there+前置詞」は頻繁に問題文に出てくるので簡単にご説明します。

【here+前置詞】

「herein」などはあまり普段の英文では出てこない単語ですが、この「here」は「本契約書」を指します。つまり、以下のような感じです。

  • herein = in this agreement : 本契約書における
  • hereof = of this agreement : 本契約の
  • hereby = by this agreement : 本契約書によって

here+前置詞の例文(名詞節)

the purchase price of the Goods quoted herein.

令和2年 第16問より編集

*一文を抜き出すと長くなるため、名詞節のみを抜き出して例文としています。

here+前置詞の例文(名詞節)

本契約書において引用されている商品の購入価格

【there+前置詞】

また、thereof もherein同様、英文契約書独特の表現です。ここの「there」はその前に出てきた文や文節を表します「that (それ)+前置詞」もしくは「those(それら)+前置詞」という訳し方になります。

  • thereof = of that:それの(=その)
  • therefor = for that:それのために(=そのために)
  • thereby = by that:それによって

there+前置詞の例文

The title of the Products shall pass to Purchaser only upon full payment therefor.

令和元年 第16問を編集

*ここでの「therefor」の「there」は文頭の「the products」を指している。

there+前置詞の例文

商品の所有権は、商品に対して支払いが全額完了した時点でのみ、購入者に移転するものとする。

文章の構造が複雑で読みにくい

法律文書はその目的上、明確で網羅的であることが求められます。また、手続きや条件を非常に詳細に述べています。これは当事者間の認識の齟齬を防ぐために、ニュアンスや解釈の違いをできるだけ取り除くためです。

その結果、以下のような特徴が出てきます。

  • 一文が長く、主語や目的語がわかりにくい
  • andやorが多用される
  • 条件を説明する表現がよく使われる

それでは、これらの例をそれぞれ見ていきましょう。

一文が長く、主語や目的語がわかりにくい

文章の主語や目的語を網羅的かつ詳細に述べるため、一つの名詞に色んな説明がついてきます。

例えば、以下の例文です。

主語が長い文章の例文

Risk of loss of the Products sold by Seller under this Agreement shall pass to Purchaser upon Purchaser’s acceptance of delivery of the same at the Designated Delivery Site.

令和元年 第16問を編集

パッと見て、どこが主語かわかりにくいです。

主語が長い文章の例文(2)

Risk of loss of the Products sold by Seller under this Agreement shall pass to Purchaser upon Purchaser’s acceptance of delivery of the same at the Designated Delivery Site.

令和元年 第16問を編集

shallの直前の”Risk of loss of the Products sold by Seller under this Agreement”という名詞節が主語です。”Risk(危険)”という一単語に長々と説明がついています。

主語が長い文章の例文(訳例)

本契約に基づいて売主に売却される商品の損失のリスクは、買主が指定された納品場所で納品を受領した時点で、買主に移転するものとする

下線部が主語の”Risk of loss of the Products sold by Seller under this Agreement”に対応。

主語が長いとどこで文章を区切ったらよいかわからず、文の構造をつかみづらくなります。こんなとき、先ほど出てきたshallやmayなどの助動詞を探してみましょう。その直前部分が主語であることが多いです。

また、「英文契約書では過去形が使われることがほとんどない」というのも覚えておきましょう。「~ed」のような過去形っぽい形の動詞はだいたい過去分詞で名詞を修飾していることが多いです。上の例文の”sold”も”Products”にかかる過去分詞です。(この場合はbyがあるからわかりやすいかもしれません。)

andやorが多様される

網羅性を保つために英文契約書では、andやorを用いて、多くの文を並べます。また、微妙な解釈の違いを避けるために似たような単語を重ねて列挙することも非常に多いです。(冒頭の小芝居で出てきたterms and conditionsも両方「条件」で似たような単語ですね。)

これによりA, B, C, D, and Eのように単語や文章が多く並ぶことになります。何と何が並列になっているのかを理解することで文の構造を理解しやすくなります。

以下は平成19年と少し古い問題ですが、文の構造を説明しやすかったので使用しました。実際の問題文で4行にわたる長い1文で、パッと見たところ読みにくいです。少し英文法の知識が必要ですが、分解していきましょう。

並列の例文

Such license shall be exclusive in the Territory, shall be on commercially reasonable terms and shall provide Licensee with an exclusive right to manufacture, have manufactured, use, sell, have sold and offer to sell the Licensed Products in the Territory.

平成19年 第13問を編集

並列の例文

Such license shall be exclusive in the Territory, shall be on commercially reasonable terms and shall provide Licensee with an exclusive right to (1)manufacture, (2)have manufactured, (3)use, (4)sell, (5)have sold and (6)offer to sell the Licensed Products in the Territory.

平成19年 第13問を編集

並列の例文

そのようなライセンスは、その地域内で排他的であり商業的に合理的な条件であり、その地域内でライセンス製品を(1)製造(2)製造委託(3)使用(4)販売(5)販売委託、および(6)販売募集する排他的な権利をライセンシーに対して付与しなければならない

*日本語訳だと語順が変わることをご了承ください。

”and”が二つ出てきているので、並列になっている組合せが二つありそうです。

一つ目の”and”は直後に”shall”が来ていて、その前にもいくつか”shall”があるのでここが並列になっていそうです。(下の例文の①~③

二つ目の”and”は”offer”という動詞の前で、その前にもいっぱい動詞が並んでいるのでコレが並列構造になっていそうです。(下の例文の(1)~(6)

このように分解すると、前半の”and”の並列構造

“Such license”(そのようなライセンス)が、

 ①shall be exclusive in the Territory, (領域内において排他的であり、)

 ②shall be on commercially reasonable terms, (商業的に合理的な条件であり、)

 ③shall provide Licensee with an exclusive right(ライセンシーに排他的な権利を提供しなければならない)

となります。

また、後半の”and”の並列構造は”the Licensed Products”(ライセンス製品)を

 (1) manufacture(製造する)

 (2) have manufactured(製造委託する*)

 (3) use(使用する)

 (4) sell(販売する)

 (5) have sold(販売委託する*)

 (6) offer to sell(販売募集する)

という6つの行為について、”an exclusive right”(排他的な権利)を付与しなければならない、となっています。「色んな権利を提供する」というあいまいな書き方でなく、付与する権利を一つずつ明示して明確にしていることがわかります。

⋆ここでの「have + 過去分詞」は、過去完了ではなく使役(~させる)の意味です。

限られた試験時間では難しいかもしれませんが、もし英文を冷静に読む時間があれば並列になっている構造を整理してみてください。整理された項目の一部が問題で問われているケースも多々あります。解答の判断に迷う場合に使ってみてください。

条件を説明する表現がよく使われる

状況や制限を明確にするために、英文契約書では条件を細かく設定されています。これらが出てくると英文が長く複雑になりますが、一方で出題につなげやすいところです。これらの表現が出てきた場合は、どのようにつながっているかを確認して情報を整理するようにしましょう。

【条件等を説明する表現の例】

  • in accordance with / pursuant to:~に従って・基づいて
  • within XXX days from/(after):~から(~の後)XXX日以内
  • in the event that/(of) ~:~の場合
  • unless ~:~でない場合
  • by reason of / arising from / resulting from:~に起因する
  • Provided that ~ /:ただし~である場合に

オマケに例文を載せておきますので、参考にしてみてください。

最後に

今まで、診断士の経営法務のテキストでは英文契約書の読み方について詳細に書かれたものは多くなかったように思います。加えて、過去問で出題される英文は難解かつ長文が多く、練習には不向きでした。

本投稿では、英文契約書の”クセ”がある部分を少しでもかみ砕いて説明したつもりです。中小企業診断士試験を逸脱する部分もあるかもしれませんが、すこしでもご興味をもっていただければ幸いです。

最後の最後になりましたが、過去に出題された英文を元に例文と英単語のリストを作りました。和訳を書くスペースを設けていますが、診断士試験で和訳ができる必要は全くありません。

必ずしもこれらの単語が出題されるとは限りませんが、「この難易度くらいの英語が出るんだな」と感じてもらえれば幸いです。

オマケ「それを捨てるなんてとんでもない 英文契約書」例文集

参考文献

今回の投稿を書くにあたって、以下の書籍を大変参考にさせていただきました。正直、診断士試験の学習範囲を超えていますが、海外取引は中小企業経営において非常に重要です。(コロナ禍の終息に伴いより活発になってくると考えられます。)

お仕事で海外との取引があったり、英文契約書に関わる方はご参考にしてください。

  • 寺村 淳 著:はじめての英文契約書の読み方 株式会社アルク
  • 本郷貴裕 著:はじめてでも読みこなせる英文契約書 明日香出版社

なるほど、なるほど

ひろし
ひろし

…。
まーくん、社長さんか・・・。

どないしたん?
何考えてるん?

トラ柄のおばちゃん
トラ柄のおばちゃん
ひろし
ひろし

まーくん、実務従事*させてくれへんかな・・・??

* 中小企業診断士に登録するためには15ポイント(=15日間)の実務補習、もしくは実務従事が必要。
 ひろしは現在ゼロポイント

最後まで長文を読んでいただき、ありがとうございました。

ゴールデンウィークが始まってからというもの

  • Takeshiの「ショッピングセンターと診断士試験」
  • さやの「中小企業政策の勉強法」
  • トロオドンの「2次試験」
  • さたっちの「t検定を学ぼう」
  • はっしーの「アローダイアグラム」

と、濃ゆい内容が続いてお腹いっぱいの方もいると思います。

GWも今日と明日で終わりです。しっかり勉強できた方もゆっくりリフレッシュできた方も残りの試験日まで3か月、頑張っていきましょう!

明日は、アストロです。よろしく!!

ひろし
ひろし

ほな、みなさん、また今度♪

See you~♪

トラ柄のおばちゃん
トラ柄のおばちゃん

☆☆☆☆☆

いいね!と思っていただけたらぜひ投票(クリック)をお願いします!
ブログを読んでいるみなさんが合格しますように。

にほんブログ村 資格ブログ 中小企業診断士試験へ
にほんブログ村
にほんブログ村のランキングに参加しています。
(クリックしても個人が特定されることはありません)

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です