2023年問題・2024年問題とは?~中小企業の労働時間と賃金について~ by Takeshi
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はじめに
Hello, DOJO!
今日は、社会の変化から労働関連の問題を学習していきます。
新年度になって2週間。仕事環境からの変化にも慣れてきましたか?
中には遅くまで残業して、勉強時間の確保が難しい受験生もいるのではないでしょうか。仕事や家庭と勉強の両立は大変ですが、あきらめない姿勢には頭が下がる思いです。
今回は、そんな働くみなさんにとって一番大事な「労働時間」と「賃金」にフォーカスしてみようと思います!
2023年問題・2024年問題について
みなさんは、「2023年問題」や「2024年問題」という言葉を聞いたことがありますか?
2023年と2024年、何が違うんだ?
ニュースでも聞いたことのある人もいるかもしれません。いずれも、労働に関する規定が大きく変化する出来事のことを言います。具体的には下の表の通りです。
2023年問題 | 時間外労働時間に対する割増賃金率改定の中小企業への適用 |
2024年問題 | 時間外労働時間の上限規制の適用業界の拡大 |
一言だと説明が難しいですよね。それぞれの問題について、これから見ていきましょう。
2023年問題とは
まず、2023年問題とは何でしょうか?
2019年に施行された「働き方改革関連法」。月60時間を超える労働時間に対する賃金の支払いに関して、重要な変更が加えられました。
大企業では2019年4月から割増賃金率が50%に増額されましたが、中小企業は4年間の猶予が与えられ、従来通り25%の割増賃金の支払いで問題ありませんでした。しかし、その猶予期間が終了したのが今年の3月31日。2023年4月1日からは、中小企業を含むすべての企業で月60時間を超える残業に対して50%の割増賃金の支払いが義務となりました。これが2023年問題です。
割増賃金率(月60時間まで) | 割増賃金率(月60時間以上) | 施行期間 | |
大企業 | 25% | 50% | 2019年4月1日~ |
中小企業 | 25% | 25%→50% | 2023年4月1日~ |
架空の中小企業でシミュレーション!
これがどれくらいのインパクトになるか、架空の企業でシミュレーションしてみます。
その名も「株式会社一発合格道場」!資本金1,000万円、従業員数が100名のサービス業としましょう。
中小企業の定義は覚えてるかな?
サービス業の場合、資本金5,000万円以下または従業員数100人以下だ。
この会社、中小企業診断士合格を目指す受験生を支援したいがあまり、長時間労働が当たり前になっていました。この会社はどうなってしまうのか?以下の条件で試算してみます。
(株)一発合格道場の実態
・従業員数は100名
・従業員全員の月給が30万円、月平均所定労働時間が150時間とする
・従業員全員が月80時間の時間外労働を行っている
1ヶ月だけならまだしも、毎月80時間の時間外労働は36協定違反です!
あくまで架空の設定として。
これまで
まずは割増運賃の基準となる、1時間あたりの賃金を算出します。
300,000円÷150時間=2,000円/時間(1時間あたりの賃金)
以前はどれだけ残業しても割増賃金率が25%だったため、時間外労働80時間に対する割増賃金は以下のように計算しました。
2,000円×(1+0.25)×80時間=200,000円
つまり、支払われる給料は300,000円(月給)+200,000円(割増賃金)=500,000円でした。
これから(2023年4月1日~)
1時間あたりの賃金は、これまでと同様に2,000円/時間です。
割増賃金率は月60時間までが25%、月60時間を超える時間は50%となるため、割増賃金は以下のようになります。
2,000円×(1+0.25)×60時間=150,000円
2,000円×(1+0.5)×(80時間-60時間)=60,000円
したがって、支払われる給料は300,000円(月給)+(150,000円+60,000円)(割増賃金)=510,000円になります。
給料が1万円も増えるじゃん!ラッキー☆
従業員の努力が報われる良い改正ですが、経営者にとってはどうでしょうか?
従業員数が100名のため、支払賃金の増加額は毎月10,000円×100名=100万円、年間では100万円×12ヶ月=1,200万円になります。
残業を減らすか…でも売上も減っちゃうし…
うーんジレンマ…
ほんの少しの違いに見えるかもしれませんが、収益性の低い中小企業では支払賃金がわずかに増えるだけでも経営リスクになりうるのです。これまで以上に売上確保と従業員の労働時間のバランスを取ることが、今後の中小企業には求められるようになります。
2024年問題とは
それでは2024年問題とはどのようなものでしょうか?
同じく2019年に施行された労働基準法では、いわゆる「36協定」と呼ばれる時間外労働の上限規制が適用されました。ここでは原則として、時間外労働は月45時間、年360時間を上限とすることが規定されています。しかし労使協定における特別条項が適用されると、時間外労働は年720時間を上限にすることが認められます。
この36協定は、一部の業界に猶予期間がありました。その猶予期間が2024年3月に撤廃され、4月からすべての企業に上限規制が適用されるようになります。この上限規制に対応していかなければならないのが2024年問題です。
上限規制が適用されるようになる業界を下の表に示します。このうち建設業や自動車運送業は、中小企業の数が業界の99%以上を占めるため、2024年問題は中小企業診断士としても決して無視できないんです。
年間時間外労働時間の上限 | 施行期間 | |
大企業 | 720時間/年 | 2019年4月1日~ |
中小企業 | 720時間/年 | 2020年4月1日~ |
建設業 | なし→720時間/年 | 2024年4月1日~ |
自動車運送業 | なし→960時間/年 | 2024年4月1日~ |
医師 | なし→960時間/年 または1,860時間/年(救急医療など) | 2024年4月1日~ |
建設業は東京オリンピックなどに向けた建設需要の高さを理由に、5年の猶予がありました。
その猶予が来年消失するため、業界を挙げて大急ぎで対策に乗り出しています。
架空の中小企業でシミュレーション!
労使協定の特別条項では、以下の労働時間を守る必要があります。
- 時間外労働が720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計の2~6ヶ月平均が80時間未満
- 時間外労働の月45時間超が年6回まで
先ほどと同じ、(株)一発合格道場に登場してもらいましょう!
やあ、また来たよ
ここでは架空の就業規則も登場させます。
株式会社一発合格道場 就業規則
第1条 労働時間は午前9時から午後6時までを標準とし、午前12時から午後1時までを休憩時間とする。
(略)
この会社で午後6時以降に残業した場合、何時を超えると36協定違反になるのか見ていきましょう。
これから(2024年4月1日~すべての業界)
「時間外労働が720時間以内」とありますね。ここで所定労働日数を月20日と仮定した場合、1日あたりの時間外労働日数は、
720時間÷12ヶ月÷20日=3時間
つまり、6時+3時間=午後9時まで毎日残業しても、ギリギリ36協定の範囲内になりそう…
ちょっと待った、何か変だな?
毎日3時間の残業だと、3時間×20日=月60時間の時間外労働になってしまいますね。これは「時間外労働の月45時間超が年6回まで」の部分でアウトになります。
月45時間未満に抑えるためには、
45時間÷20日=2.25時間
つまり、6時+2.25時間=午後8時15分までには、少なくとも6ヶ月以上は残業を終わらせなければならないことになります。
このように36協定では細かい規定事項があるため、自分がこれに違反していないか、会社がこれに違反するような残業を強制していないか、注意する必要があります。
試験の出題例
労働に関する2つの問題について述べてきましたが、わざわざ診断士ブログに書いたのには意味があります。
勉強中の方はご存じの通り、労働に関する問題は1次試験の企業経営理論では毎年複数問出題されます。配点にすると10点前後。範囲が広いものの、この分野を避けて合格するのはかなり困難です。さらに、2次試験の与件文でも出題されるようになりました。
労働時間や賃金の分野は、試験の出題者から見ても非常に関心の高いことがうかがえます。
労働関連問題の出題実績(1次試験 企業経営理論)
令和4年度 第23~26問
令和3年度 第24~27問
令和2年度 第24~27問労働環境の出題実績(2次試験)
令和4年度 事例Ⅰ
労働関連の分野は細かい論点も多く対策が難しいですが、自分の身近な会社の事例などと関連づけながら勉強し、エピソード記憶として定着させることをオススメします。
最後に
以上、2023年問題や2024年問題について解説しました。
はぁ~、つらい時代だな…
ところで、これらの問題への対応策はあるのかって?
一つは、「生産性を向上させること」と言われています。
しかし、生産性とは何か?どうすれば向上させることができるのか?それについては、今後のブログでお伝えしていきます。
明日はさや姉の出番です!
みんな、中小企業経営・中小企業政策の対策やってる?
いい勉強方法教えてあげる!
巻末ゴゲン講座 第3回
巻末ゴゲン講座とは、診断士試験のカタカナ用語の語源を解説するミニコーナー。
一発合格道場 Takeshi 著
受験生の長期記憶に貢献することを目的とする。
この前のひろしのブログでホルモンが出てきましたが、ギリシャ語で「動かす」を意味するhormonが語源で、英語で「体内に分泌する」を意味するhormoneに変化し、そこから派生して「内臓肉」の連想になったと言われています。「放るもん」はただのダジャレで、実はホルモンは捨てられる部位でもなんでもなく、戦前から愛されてきた滋養料理だそうです!
お前おもんないやつやな~。誰もマジメな話聞きたないねん
ミニコーナーを務めていると、自然とみんなの言葉の語源も調べるクセがついてしまいました。無粋かもしれませんが、お許しを。
閑話休題、今日の用語はこちら!
カレントディレクトリ(経営情報システム)
ディレクトリとは、コンピューター上で一連の階層構造を持ったファイルを保管する場所の総称である。
そのうちカレントディレクトリは、ユーザーがその時点で作業をおこなっているディレクトリを示す。
令和4年度1次試験の経営情報システムの問6。正解であるはずの選択肢がカレントディレクト と表記され、没問となりました。僕は解いている途中全く気づきませんでしたが、一文字欠けただけでも不正解扱いになると初めて知りました。
今回はこのラッキー問題から、語源を追ってみましょう!
語源 Current Directory
カレントディレクトリはCurrent Directoryの略です。
Directoryは「指すこと」を意味する古代ラテン語のdirectoriusが語源と言われています。directが内包されている通り、「直接」という意味のダイレクトという単語も同じ語源です。
一方Currentは、古代フランス語で「流れている」を意味するcurantからcurrauntに変化し、16世紀ごろに「(今現在)流行している」という意味が付加されたようです。今ではカッコ内の「今現在の」という意味で定着しており、流行っているという文脈で使われることはなくなりました。
ここで没問となった問題に戻ってみましょう。
令和4年度1次試験問題 経営情報システム 問6(改題)
コンピュータ内で特定のファイルの所在を表す際に相対パスが用いられる。相対パスに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 親ディレクトリから対象ファイルに至るパスである。
イ 仮想ディレクトリから対象ファイルに至るパスである。
ウ カレントディレクトリから対象ファイルに至るパスである。
エ ホームディレクトリから対象ファイルに至るパスである。
オ ルートディレクトリから対象ファイルに至るパスである。
相対パスという言葉が分からなくても、相対的という言葉が「あるものの尺度を基準にして別のものの尺度を測る」の文脈で使われていることが分かれば、解けたも同然です。
「〇〇から対象まで」の〇〇に入るのは、そう、基準になるものですね。対象ファイルは未来を示しているので、基準になるのは「今現在」を示しているカレントディレクトリになるということです。したがって正解はウ!
今回は簡単だったかもしれないですね。
次回もお楽しみに!
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