あのとき歴史が動いた ~労働法規の変遷その3〜 by 一蔵
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おやっとさぁ
みなさんこんにちは。一蔵です。
今回も、前回につづいて2019年に施行された「働き方改革関連法案」を題材としていきます。
「働き方改革」については、14代目Takeshiさんの「2023年問題・2024年問題とは?~中小企業の労働時間と賃金について~」で取り上げられていますが、この2024年4月の施行が働き方改革の総仕上げとなっています。
今回の記事では、最終的には2024年4月1日に施行された内容を押さえることを目的としていますが、働き方改革に至るまでのこれまでの労働基準法の改正を振り返りながらストーリーベースで理解を深めていきたいと思います。
前回は1998年の改正まで見ていきましたので、今回は2003年の改正から見ていきます。
この時期は実はちょっと個人的に思い出深いんです🎵
ぼくは2002年に社会保険労務士を取得したんですが、この年は日韓ワールドカップがあったんですよねー。
サッカー好きのぼくは、他のあらゆる誘惑には打ち勝てたのですが、ワールドカップの誘惑には全敗で、しっかりTVに釘付けになってました。
当時はまだ日本は今ほど強くなかったし、その頃熱烈なミラニスタだったぼくはイタリア代表に夢中になっていたものです。ディフェンダーが好きだったので、パオロ・マルディーニ、特にアレッサンドロ・ネスタが大好きでした。
って、サッカー好きじゃないと分からないうえに、ぼくと同じ世代の人にしか分からないトークをいきなり始めてしまいました。
あの頃は特に面白かったよね!
ちなみにおーちゃんはバッチリこのニッチなターゲットに入るので、この辺の話にしっかりついてきます🎵
同世代で海外サッカー好きの方、ぜひコメントお待ちしてます(今の選手はほとんどわからんけど)w
試験勉強で一番大事な追い込みの時期にガッツリワールドカップを視聴制覇したことは、今でも反省すべきことだと思いだすとハラハラします。。
ボクも銀ガミ丸めたボールでサッカーするの大好き⚽️
(ジッちゃん、めちゃくちゃサッカー上手だよね)
さて、その翌年、2003年にあった労働基準法の改正から話を続けていきたいと思います。
それでは、さっそくいってみましょう!
多様な働き方が模索された改正(2003年)
バブル経済が弾けてから10数年、まだまだ失われた時代の真っ直中にあった時代です。
いわゆる就職氷河期の後半期にあたる頃ですよね。正社員として就職することが非常に難しい時代でした。
経済が停滞する中で、既存の雇用を維持することに主眼が置かれ、多くの若者が非正規従業員として働かざるを得ない状況にありました。
そんな中、労基法の改正は新しい働き方の定着を模索するものとなっています。
2003年の改正点
- 専門業務型裁量労働制を導入する際の労働者の健康確保措置の具体化
- 企画業務型裁量労働制の導入要件の緩和
裁量労働制自体については、深掘りすることはあえて避けます。
中小企業診断士が支援すべき中小企業で裁量労働制を採用するケースは稀で、試験対策的にも裁量労働制はノンコアに該当します。
ただし、この2つの裁量労働制が1900年後半の時点で既に法制化されており、2000年初頭の時点でその活用が模索されていたという文脈は知っておくべきだと思います。
一昔前、労働者を大別する言葉として「ホワイトカラー」、「ブルーカラー」という言葉がありましたよね。
今ではスッカリ聞かなくなりました。
そういや、もう死語かも?
ブルーカラーというのは、工場や建設現場などで働く労働者を指す言葉で、ホワイトカラーは、一般事務や営業、経理など、いわゆるデスクワークに従事する労働者を指していました。
ブルーカラーが現場作業者的な位置付けであり、ホワイトカラーは知識労働者としてブルーカラーより優秀であるかのように昔は認識されていましたが、
実際のところ、ここに優劣はありません。
それよりも、現在用いられる「ナレッジワーカー」と「マニュアルワーカー」の方がはっきりと優劣がつけられています。
昔のホワイトカラーとブルーカラーのほとんどはマニュアルワーカーに属し、新たにナレッジワーカー(専門知識や特別な経験を活かして知的生産を行い、企業に新しい価値を生みだす労働者)が求められるようになっています。
皆さんはナレッジワーカーという言葉は知っていましたか?結構目新しい言葉という印象があると思います。
しかし、この言葉の生みの親は、かの有名なピーター・ドラッカーなのです。
自らを成果をあげる存在にできるのは、自分だけである。
ぼくはこのような言葉が大好きです。
要は”覚悟”の問題ですよね(急に話変わるけど)。
あれこれ思い惑わずに、死ぬ気になって、覚悟を持って進んでいけば、道は開けるんです。いつ死ぬか分からないんだから、懸命に頑張って、不運にあっても前のめりに死ねばいいんです。
クヨクヨして後ろ向きに倒れてしまえば、後悔が残ってオバケになってしまいます(何のこっちゃ)。
さてさて、ドラッカーがナレッジワーカーに言及しているのが1969年に発刊した「断絶の時代」という書籍だというんだから、どれだけ先見の明があったんですかね。
この間、15代目のピラリン・ドラッカーが記事で書いていた「知識創造理論(SECIモデル)」のような知識変換を行える人材がナレッジワーカーに当たると思います。
ただいま、「ヒグマリオン効果」について研究を進めてます。
ナレッジワークとマニュアルワーク
決められたことを決められた通りにやれることが、一昔前は価値があることでしたが、
現代においてはマニュアルワーカーに定義づけられ、新たな価値を生み出す人材ではないという位置付けに変わっています。
ただ、ぼく的にはマニュアルワークという言葉で一括りにしてはいけないとも考えています。
たとえば、ぼくのいる人事部では完全なナレッジワークの企画部門とマニュアルワークの給与社保部門・労務部門、ナレッジとマニュアルが混在する採用部門・教育研修部門と5部門があります。
この給与・社保部門は、マニュアルに沿った仕事を徹底的にする部門なのですが、最低限労働法や社会保険法の知識、会社規定を把握したうえで、何千人という職員の給与処理を少しの間違いも許されずに遂行しなければならない仕事です。緻密で細かく、いろんなことにアタリをつけながらスピーディに業務を遂行し、できて当たり前、ミスひとつでもあれば評価が下がるという仕事です。
マニュアルワークといっても一般事務や営業事務のようなものとはちょっと肌あいが異なると思っています(自部門びいき?)。
逆に経営企画部門はそれこそナレッジワークですよね。多少のズレがあるのは当たり前で、緻密さよりも視野の広さ、特に外部に目を向けて大きな、中長期的なトレンドを踏まえて戦略を立案していく仕事です。大きなトレンドや他社の動向を見誤ればミスになりますが、細かい部分は相違であってミスとはなりません。
それに引きかえ、人事企画は大変です(急にグチ)。
人事の企画というのは、内政的な施策でありつつ、外部の動きもしっかり捉えていく必要があります。会社の戦略、経営企画が所管する組織体制、企業文化、職種毎のカラー、こうしたさまざまなものを考慮しつつ、合成の誤謬に陥らないように留意しつつ、人事制度を構築し、改良していかなければなりません。
しかも、人事の仕事ですから小さなミスもあってはいけないのです。ミスが包含された制度であったり、フリーライダーが生じうる制度であってはならないのです。
わかったわかった
こうした仕事の違いにしっかり向き合っていこうとすれば、ジョブ型の人事制度に行き着いていくことになりますね。ただ、これも日本のこれまでの慣行が色濃く残るぼくの会社では容易なことではないのですが。
話を戻しますね。。。
ナレッジワークが難しくて、マニュアルワークは難しくないということではなく、マニュアルワークにも難度に違いがあるってことですが、ただし、新たな価値を生み出すか否かという点では、マニュアルワークは維持活動です。
維持活動は、かける時間と生産性が基本的に比例するものです(これがダラダラ残業を正当化する余地を生んでいます)。
一方で、ナレッジワークは時間と成果(生み出す価値)は全く比例しません。むしろ長時間労働はナレッジワークの質を下げしめ、結果的に企業価値そのものを下げることになります。
だからこそ、裁量労働制が必要になるんですね。
裁量労働制は1900年代後半から規定されているんですから、制度化が時代を先取りしていたというのか、制度の浸透に時間を要するというのか。
どちらかといえば、後者のような気がしています。
健康経営の走りとなる改正(2008年)
2008年の改正点
- 月60時間超の時間外労働について割増賃金率を5割以上へ引き上げ。
(中小事業主の事業については当分の間、適用を猶予)
皆さんは健康経営はご存知ですか。
今では、大企業ではかなり取り組みが進んでおり、各種のアンケート調査から、中小企業にとっても関心は高いことが分かっています。健康経営優良法人の認定制度は2016年から始まっており、ぼくの会社も直近2年連続で「ホワイト500認定」を取得しています。
公的医療制度のないアメリカにおいて1992年から始まった動きであり、日本では2006年にNPO法人健康経営研究会が発足したことが始まりとなっています。
健康経営研究会発足から2年後の2008年、労働基準法の改正によって月間60時間を超える時間外労働の割増率が2割5分引き上げられることになりました。
脳・心臓疾患(過労死)や精神障害・自殺と長時間労働との関連性として、週20時間以上、月で80時間以上の時間外労働で健康障害リスクが高まることが分かっています。
そこで、健康障害を予防することを目的として、時間外労働60時間超で割増率2倍にすることになりました。
前回までの話は覚えていますか。
働き方改革の前身となる動きは1987年の改正で始まっていましたが、当時は欧米からの批判をかわすことに趣がありました。
しかし、今回の改正は労働者の健康リスクの予防を目的としており、長時間労働抑制という点では同じですが、文脈が全く異なっています。
ぼくとしては、この改正もまた一つの転換点だったのではないかと感じています。
働き方改革(2018年)
ようやく本丸に来ました!(記事3回つかった。。。)
長かったのぉ
5年前に行われた働き方改革を見ていきたいと思いますが、ここは深掘りしたい論点があるため、改正の具体的な内容はアタリヤン記事として触れていきたいと思います。
今回は概要的に触れていきます。
働き方改革関連法
- 時間外労働の上限規制の導入(2019年施行(中小企業は2020年施行))
- 中小企業の月60時間超の時間外労働について割増賃金率を5割以上への引き上げ猶予の撤廃(2023年施行)
- フレックスタイム制の見直し(2019年施行)
- 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設(2019年施行)
- 有給休暇の時期指定権創設(年5日取得義務化)(2019年施行)
「時間外労働の上限規制の導入」と聞いて、前回のぼくの記事を読まれた読者の方は、「おや?」と思いましたよね。
前に見たぞ、と。
そうですね、「限度基準告示」と同じことをやっていると感じられたら、記事の内容がアタリがつくレベルで定着しています。
ここは、具体的には次回お話しさせていただきますね。
今回は、60時間超の割増賃金率と有給休暇の年5日取得義務化について触れます。
中小企業にかかわる労働法の改正
60時間超の割増率引き上げは、さっき見た2008年の法改正によるものです。
その時点では中小企業は猶予されていましたが、10年後の2018年の法改正によって、いよいよ猶予を撤廃することが決まりました。
ただし、実際に撤廃されるのはそれからさらに5年後の2023年となりました。
中小企業にまで適用させるのにこれだけ時間をかけているんです。
それだけインパクトの大きいことであるということになりますので、その期間、いかに戦略的、計画的に新しいルールに適応できる体制を作っていくかをサポートしていかなければならないということになります。
15年猶予を与えられているということは、それだけ長い時間をかけて地道に前進する、または革新する努力を続けていかなければならないということになります。伴走するのも容易なことではありません。
時季指定権(年次有給休暇)
最後に、有給休暇の年5日取得義務化です。
これもぼくの前回の記事を見てくれている人は文脈がよく分かると思います。
(文脈を知らなければ、何で急に有休義務化なの?ってなると思います。)
年次有給休暇取得義務化の目的
- 祝日を増やすという発想からシフトチェンジする必要がある
- 労使ともに有休を取得することに慣れさせる必要がある
- 労働時間=成果の考え方から脱却し、労働生産性を高める必要がある
- 休日がばらけることによる経済的効果を追求する
このような理由が背景にあります。
ついでに有休にかかわる権利・義務も押さえておきましょう。
労働者が有休を取得することは、権利でもあり義務でもあります。使用者側には取得を拒否する権利はありません。
一方で、いつでも好きに与えていては、場合によっては正常な事業の運営に支障をきたしてしまう恐れがあります。
だから、使用者には「時季変更権」という権利があるんですね。
拒否はできないけど、労使の話し合いにより別の日に変更することができるということです。
そして今回新たに追加されたのが「時季指定権」です。
今回の法改正により、年10日以上有休が付与される労働者については、年間で5日以上取得させなければならない。取得していない場合、使用者には罰則があります!国の本気が伺えます。
そうは言っても、「取れ、取れ」言っても取らない人っているんですよね。ぼくの会社にもいます。。。
そこで登場するのが「時季指定権」です。
本来、自由に与えなければならない有休ですが、どうしても年5日取ろうとしない労働者については、会社は時期を指定して取得させることができるというものです。
To Be Continued(次回につづく)
ここまでお読みいただきありがとうございました
3回目の記事で、ようやく働き方改革に入ることができました。
3回も労働法の歴史の流れにお付き合いいただくと、それなりに労働法を”知っている”という気持ちになってくるのではないでしょうか(診断士取得後に、社労士もやったろかっと思ってくれた危篤な人がいたら嬉しいです)。
暗記しようとして覚えているわけではないため、何か具体的に質問されたらパッと答えられるわけではないと思います。
しかし、”文脈で流れ”を理解できていると、診断士1次試験のように選択式の問題だとアタリがつくようになると思います。
次回は、働き方改革について、アタリヤン要素を高めてまとめていきたいと思いますので、また次回もお付き合いください🎵
読者の皆さん、今日も勉強頑張ってくださいね!
明日はモチベーションを上げてくれるかます博士の日です♪
1次試験の過去問や模試の結果を初公開しちゃいます。まだまだ伸びます!伸ばせます!
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