経営法務:試験の費用対効果は低いが、色々と知っておきたい民法
こんばんは。ZonEです。
今週は経営法務Week。本日は「民法」分野の学習についてお話させていただきます。
「民法」はそれほど重視すべき分野ではない?
出題領域表を一目見ればわかるように、経営法務では分野によって出題頻度に大きなバラツキがあります。
皆さんもご存知の通り、ズバリ重視する分野は「会社法等」と「知的財産権等」の2分野です。
ハカセのデータ分析ではさらに詳細な分類まで落とし込んでいるので逆に気付きににくいかもしれませんが、毎年約6~7割がこの2分野から出題されています。
よって、今さら言うのもおこがましいですが、まず重点的に学習すべきは上記2分野で、「民法」は試験対策上はそれほど重視すべき分野ではありません。
しかし、長い目で見るとどうでしょう?「民法」は人生のおいても軽視してよい分野なのでしょうか?
せっかく民法を勉強する機会に恵まれたのだから
急に「人生において」など高尚なことを言い出してスミマセン。
「いつも費用対効果(学習時間 対 期待値得点)ばかり気にしているオマエに言われたくないよ!!」…というツッコミが聞こえてきそうではありますが、私だって学習効率ばかりを追いかけているわけではありません。
そもそも皆さんが中小企業診断士の受験を決意したきっかけは何ですか?
「診断士になって、中小企業を救い、日本経済の発展に寄与したい」という志の高い方もいるでしょうし、「自己啓発の一環として…」(←私はこちら)という方もいらっしゃると思います。
前者であれば、言い換えれば中小企業(の社長)のブレーン(頭脳)になろうと決意したわけですよね?そのブレーンが、社長に相続について相談されて何の知識も無い…というのはいかがなものでしょうか?もちろん、細かな部分は専門家(弁護士など)にお任せするにしても、表面的な知識は持っておくべきではないでしょうか?
また後者であっても、民法など身近な法律を知っておくことは、法治国家において自分の身を守り安心して生活していく上で、知っていて損はない知識なのではないでしょうか?
もちろん、診断士試験に合格してからゆっくり勉強し直せば良い…という考え方はありますし、今は試験に合格することを優先的に考えるべきだとも思います。
ただ、診断士試験合格後も多忙な日々は続くでしょうし、民法などを勉強するきっかけも意外と少ないのも事実です。
そこで、試験勉強を良いきっかけと捉え、費用対効果は低いかもしれませんが、下記2点だけこの機会に抑えておいてください。
耳慣れない独特な用語を記憶してアンテナ強化
経営法務の勉強を始めた直後に誰しも「うわぁ…」と感じるのが、独特な用語や言い回しだと思います。
心裡留保や錯誤、債務不履行、諾成契約…と日常生活で耳慣れない用語や善意・悪意など日常生活とは違った意味で使われる用語が多数ありますが、これらはぜひ覚えておいていただきたいです。
試験対策としてはそれほど重要ではないかもしれませんが、これら独特な用語をこの機会に覚えておくと、色々な書籍を通して法律系の知識を身につける際に苦労しなくて済みます。
ちなみに私は診断士試験合格後、故あって宅建の勉強をしている(試験は今年の10月)のですが、民法に関しては診断士試験より深い論点を問われるものの、独特な用語に関するアドバンテージがあったので非常に助かりました。
いずれにせよ、法律系の独特な用語をこの機に記憶しておくことは、ある種の情報を収集するアンテナを強化することに繋がるので、長い目で見て良い投資になると思います。
身近なテーマを当事者になった気分で理解
範囲の広い民法のテーマの中には、連帯保証や危険負担、相続など身近なテーマも結構あります。これらのテーマに関しては、自分を当事者に置き換えてシミュレーションする「なりきり学習法」が有効です。
例えば、
- 連帯保証であれば、自分の配偶者が友人に「連帯保証人になってくれ」と言われた際に、保証人と対比して連帯保証人になることの恐ろしさを説明するシーンをシミュレーション
- 危険負担であれば、マンションや戸建て住宅を購入した際に、契約完了後~引き渡し前に大地震が起きて建物が崩壊した場合にどうなるかを考慮して、契約書に特約が記載されていることを確認する(ややこしい)シーンをシュミレーション
など、自分が当事者だったら…と仮定して身近なテーマを真剣に考えると、無理に記憶しなくても自然に粘着性のある知識が頭に残ります。
連帯保証や危険負担などは、民法の中でも比較的出題頻度の高い「債権・契約」に関する事項なので、学習済みでイマイチ実感が沸かないかもしれません。
そこで、今回は試験対策上はサラっとしか学習していないであろう相続について一例をご紹介したいと思います。
あなたが、両親との間に弟と2人兄弟で育ったとします。残念なことに父親が他界し、財産を相続分割することになったのですが、とんでもない遺言書が出てきました。
全財産を愛人であるDさんに贈与する…という内容だったのです!!
「何してくれてんだよぅ、親父ぃぃぃ!!」という心の叫びは置いておいて、このケースで遺留分を理解してみましょう。
遺産が8,000万円あったとすると、上記遺言書が無ければ、母Bは1/2の4,000万円を、あなたと弟Cは1/2×1/2=1/4で2,000万円ずつを相続できます。
しかし、遺言書では8,000万円全額を愛人Dに贈与するとあります。これでは、あなた達遺族が困ってしまう…ということで、一定の法定相続人を保護する遺留分を主張することができます。
このケースでは、全体の1/2を遺留分として請求して取り戻すことができるので、母Bは1/2×1/2=1/4で2,000万円を、あなたと弟Cは1/4×1/2=1/8で1,000万円ずつを相続できます。
つまり、遺留分滅殺請求権を使えば、合計4,000万円分の遺産を愛人Dから取り戻すことができるわけです。
でも、これ(遺留分)を知らずに請求しないと、全財産を愛人Dに持っていかれてしまうのです。知っているのと知らないのとでは大きな差がありますよね。
相続は誰しも必ず一度は携わる問題かと思います。試験勉強では不要と合理的に考えるのも良いですが、たまには回り道するのも悪くないですよ。
とは言え、まずは「会社法等」と「知的財産権等」
…とまぁ、1週間を通して分野別に担当分けして執筆している関係で、民法についてガラにもなく熱く語ってしまいました。
しかし、冒頭に述べたように、この科目でまず重点的に学習すべきは「会社法等」と「知的財産権等」の2分野です。
この2分野の学習ポイント等は、明日以降に他のメンバーが色々と語ってくれると思いますので、ご期待ください。
怒涛の7週間も気付けばあと2週間。合格からの逆算で、いつ何をやるかを計画しつつ、引き続き頑張ってください。
それでは、今日はここまで。
by ZonE