「二次試験を見据えた一次対策」の意味

こんにちは。ハカセです。

このたびの震災、本当に胸が痛みます。被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。

受験生の皆さまの中にも、直接あるいは間接的に被災された方もいらっしゃるかもしれません。また、被災されなくても受験勉強に大きく影響がある受験生の方もいらっしゃると拝察します。

もし状況が許すならば、もし環境が許すならば、もしご自身にその意思があるなら、是非診断士の学習を継続してください。学習した内容は(合否にかかわらず)きっと世の中の役に立ちます。残された我々はこの世の中を精一杯生きる義務があります。何万人もの方が生きたくても生きられなかった今日を、明日を、未来を、僕らは全力で生きる義務があります。「全力で」生きるために、より正しい知識を、より多くの知識を、より適切なロジックを身につけ、世の中に還元しましょう。それが僕らができることの一つではないかと考えています。

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さて、今日は、「二次試験を見据えた学習とは」について考えてみたいと思います。冒頭で「合否にかかわらず」とお伝えしました。もちろん診断士試験の学習が合否にかかわらず有意義であることは間違いありませんが、合格にするに越したことはないし、一年でも早い方がベターでしょう。そう考えると、「一次試験の段階から二次試験を意識した学習」というのは合格への近道を構築する上で重要です。

■ 一次試験と二次試験の違い ■

一次試験と二次試験の違いはどこにあるのでしょうか。

一次試験はご存じのとおり、マークシートの選択式です。4~5つの選択肢が与えられ、どれが正しいかを検討して解答します。要は○×問題です。聞かれたことに「YES」か「NO」で答えることが求められています。

二次試験は記述式です。聞かれたことに対し、自分の頭の中から、適切な単語を見つけ、引出し、つなげ、説得力ある文章に仕立て上げなければなりません。

二次試験を攻略するためには「正しい知識」「より豊富な知識」が必要であることは間違いありません。しかしそれだけで十分でしょうか。

■ 「正誤」「仲間外れ」を探す知識中心の一次試験 ■

ここで例題を出してみましょう。

問題1:受注生産と見込生産の違いに関する次の記述のうち最も不適切なものはどれか。

ア 受注生産では、見積り精度の向上がより求められる。
イ 受注生産では、 生産リードタイムの短縮がより求められる。
ウ 受注生産では、柔軟な生産体制の構築がより求められる。
エ 受注生産では、受注の平準化がより求められている。

(参考図書:TACスピードテキスト)

すでに運営管理を終えている受験生の方にとっては、基礎的な問題の「はず」です。

答えは「ウ」です。柔軟な生産体制がより求められているのは「見込生産」の方なんです。テキストレベルの問題ですが、復習も終えていない段階でいきなり聞かれると答えられないかもしれませんね。

とはいえ、選択肢が与えられている一次試験では、それらの正誤が答えられれば何とかなる。選択肢の中から「仲間外れ」を探すのが基本的な論点です。そう、一次試験は知識の有無を試す問題なのです。

でも、二次試験はそうはいきません。

■ 二次試験で求められる能力① ■

次の問題はどうでしょうか。

問題2:受注生産の特徴について100文字以内で答えよ。



二次試験ではこのような設問が出題されます。もっとも、このような知識問題は「サービス問題」と分類されます。

上記の問題1と問題2の相違点は何でしょうか?

「選択式か記述式かの違いだろ?」なんて眠たい答えはしないでください。

僕はこの2つの問題の相違点は「選択肢があるかどうか」の違いだと思います。

空白の100文字を埋めるためには、「聞かれたら答えられる」とか「マルかバツかなら答えられる」という状態では対応できないのです。自分の頭脳に数多くある引き出しの中から、適切な引き出しを開けて、知識を取出し、その過不足も確認し、わかりやすく記述することが求められます。

二次試験では「自力で知識を引き出して、自分の言葉で説明できる能力」が求められているのです。それは二次試験では選択肢を自力で作る能力」と言い換えてもよいでしょう。

■ 二次試験で求められる能力② ■

こう説明すると、「なんだ、じゃあ一次試験の問題や選択肢を自分で作ってみればいいんだな?」。そう思う方がいるかもしれませんね。

では、次の問題はどうでしょうか。

問題3:新規事業を実行した場合、受注生産を行うC社には生産面でどのような課題があるか。150文字以内で答えよ。

うーん、事例IIIっぽいですね。実際の二次試験では、このような設問が出題されます。この問題にどう解答しますか?

「事例本文が与えられないと答えられないよ」という方がいそうな気がします。なるほど。では、どういう能力が問われていると思いますか?

ここでは、知識はもちろん問われます。でも、それ以外にも、

  1. 事例本文の理解力。
  2. 設問文の正確な把握力。
  3. 俯瞰視点と問題発見力。要約力。
  4. 問題解決力、提案力。
  5. 文章編集、取捨選択能力。
  6. 得点キーワード探索能力。
  7. 情熱と時の運。

などなど、様々な能力が求められています。特に1、2と3は重要です。これら二次試験に必要な能力を8月~10月でどれだけ鍛えることができるかが、二次試験の合否を左右するように思います。

二次試験で「わかっているつもりなんだけど、点にならない」と嘆く人が時々います。僕がこのタイプでしたが、それはこれらの能力が不十分だったためでした。

■ 二次対策に集中するためには ■

このように、問題3で問われるような内容に対応するためには、「知識力だけ」では当然ダメだし、「説明できる」レベルまで達していても難しいことになります。

それらを備えた上で、「俯瞰的に事例企業を把握して、聞かれたことに忠実に、過不足なく、加点が得られるキーワードを散りばめながら、適宜文章を編集して、問題解決を提案する能力」が求められているのです。あとは情熱と時の運も必要ですかね。

もちろん、こんなことしなくても二次試験に受かる方もいるかもしれません。でも、上記のような能力(論理思考と言い換えてもいいかもしれない)を持っている方は二次試験に合格しやすいのではないかと考えます。つまり、これらの能力を備えることで、合格の最短距離にいることができるようになる、ということです。

これらの能力は、一朝一夕に身がつくものではありません。まして、一次試験後、二次試験の前までのたった2か月余りでそれらを身につけることは非常に難しい。しかも二次試験用にカスタマイズしなければいけません。これは難儀なことです。

では、どうするか。

答えは、「8-10月は、上記の能力の習得・向上に集中する」ことです。

そして、「そのために、選択肢作成能力(自分の知識で自分の言葉で説明する能力)までを8月に完成させる」ことです。

上記の図でいえば、青い「選択肢作成・表現能力」までを、8月の一次試験までに完成させてしまいましょう。

「聞かれたら答えられる」ではなく、「その単語さえ出てくれば、言うべきこと、関連知識までが芋づる式に出てくる状態」を作り上げるのです。そうなって初めて、「自分で選択肢を作る」ことも出来るようになると思います。

具体的には、一次試験までに、「受注生産と言えば・・・」と言われたら、瞬時に問題1の選択肢ア、イ、エの内容が頭に浮かんで来る状態を、8月の一次試験までに作っておく、ということです。

そして、一次試験後の8月-10月は、赤い「二次試験対策能力」の育成に集中するのです。

具体的には、一次試験と二次試験の間は問題1の選択肢ア、イ、エの内、どれを中心に、どういう論理展開で書けばよいかを判断する能力を養うことに集中するのです。

一次試験をギリギリで合格すると、青い「選択肢作成・表現能力」を8-10月の間に慌てて育成するか、または、その能力を置き去りにしたまま、赤字の二次試験対策能力の育成に取りかかってしまいます。

二兎追うもの一兎をも得ず。

■ 二次を見据えた一次対策の意味 ■

よって、結論。

よく言われる「二次試験を見据えた一次試験対策」とは、僕は、

「一次試験までに、知識の習得だけで満足せず、自分の言葉で説明できるレベル、選択肢すら作成できてしまうレベルまで自分を高めること」

であると考えます。

自分は本試験で500点獲得を目指して学習をしていました。その目標があったために、結果的に知識の吸収と定着を高め、一次試験ごろには、多くの知識を「説明できるレベル」にまで引き上げることができたように思います(それを意図していたわけではないのですが)。

その後、二次試験対策では答練・模試の点数は伸び悩みましたが、その基礎があったからこそ、8-10月の二か月間になんとか「得点する能力と編集力」を身に着けることで、ストレート合格を成し遂げることができたと思います。

一次試験対策を妥協せずに、あくなきベースアップを図ること

これが「虹(二次)を見据えた一次対策」だと思います。

by ハカセ

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「二次試験を見据えた一次対策」の意味”へ2件のコメント

  1. ふうじん より:

    さすがハカセ。
    .
    1. 世の中でまだ明文化されていないことを
    2. いち早くかつ視覚的に提示する
    .
    能力は、新旧執筆陣の中でも随一の実力。かついかに「上から目線」と揶揄されようと全く動じない、「一発合格道場」の本領発揮たる秀逸な投稿。
    .
    もっとも診断士スト本科生諸兄はご安心あれ。例え「当記事が何を言いたいのかさっぱり理解できなくても」無問題。それはこの記事は「合格後に初めて気づく要素」を多分に含んでいるから。本人の了解なく断言すると、ハカセも私ふうじんも当時ここまで考えて1次対策してたワケではない。そしてハカセが伝えたいのは
    .
    「ボクはこのことを無意識に実行してたけど」
    「これを今から意識的に実行すればとっても有利!」
    .
    というアドバイスであろうと。とするとこの記事を読んで何か気づくことがあれば、最短合格への大チャンス(←ここまで来ると2次合格者の上位5~6割の仲間入り。※一発合格道場オリジナル基準)。
    .
    .
    2次ネタついでに。
    毎年10月下旬、明大リバティータワー他に全国5,000人強を集めて行われるあの「イベント」が、頭脳明晰や博識な人を選抜する「試験」などでは決してなく、実は巷で良く言われる「合格証書を受け取りにいく手続き」に過ぎないことは診断士受験界においてまだ理論的に立証されていない(笑)。またこのことは「受験校は絶対教えてくれない」(爆笑)。現執筆陣wackyくれよんらいじんのうち、誰が真っ先に言い当ててくれるか、とっても楽しみ。
    .
    少しだけ私見を述べると「試験に合格しようとする」のではなく、ハカセが今日指摘した通り「診断士たるに必要な能力を備え」る方がよっぽど先決(なお予め断っておくと「受験ノウハウ」などと恥ずかしい勘違いをしないこと!)。ここに気づけば合格者上位2~3割の仲間入り資格あり。さて残る合否要素が運不運だとすると、最善策は日頃の行いを良くしておくこと・・?

    1. ハカセ より:

      ふうじんさん、ふうじんさんの「断言」、まさにその通りです。420点で合格できるのに500点を目指すことは、一見無駄に思えるけど、実はそれは二次試験で無形の基礎力になっていたと思いまーす。

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