令和2年度高得点答案から読み解く事例の本質 〜事例Ⅲ編〜

どうも、のきです。

2次試験本番まで27日!

蒸し暑い日もなくなり、だいぶ過ごしやすい季節になってきました。

さて、ここまで続けてきました「読み解く事例の本質」シリーズ。
今回の事例Ⅲで最終回になります。

大好評(?)の「読み解く事例の本質」シリーズ、事例Ⅰと事例Ⅱはこちらからどうぞ↓

今回も本題に入る前に少し閑話を挟みます。(本題に急ぐ人は目次までスクロールをどうぞ)

2次試験まで1ヶ月を切りましたね。
どうも仕事が忙しくて2次試験の勉強で近づく本番に不安でいっぱいの方。本番が楽しみで早くこないかなと思っている方。2次試験攻略の鍵がなんとなく見えてきているかも!という方。

それぞれ置かれた状況と、学習の成果によって今の気持ちは違うと思います。

おそらく2次試験を1ヶ月後に控えて、過去問の事例を解き進める過程で程度の差こそあれ、各事例でどんなことを書いたらいいのかわかってきたり、うまく表現できるかどうかに試行錯誤している、というのが増えてきている時期なのではないでしょうか。

そんな方に伝えたいことがあります。

真摯に試験勉強に向き合っているうちは、解いた事例と書いた答案が必ずあなたに学びを与えてくれます。

裏を返せば、適当に試験勉強しているうちは事例企業はあなたに事例を一つ解いたという満足感しか与えてくれません。

過去問は解き尽くしたよ、というそこのあなた。

本当にその事例をしゃぶり尽くしましたか?

骨も残さないくらい検討したことがありますか?

あなたの書いた答案は100人が見て100人がわかりやすいと言ってもらえますか?

大丈夫!できてるぜ!という方に私からいうことはありません。

少しでも胸にチクリときた方。

今からでも遅くないです。全然間に合います。

過去問と真摯に向き合いましょう。

自分の答案と真摯に向き合いましょう。

根性論ちっくになりましたが、私からは以上です。

さて本題に入っていきましょう!

今回のご協力者〜クレジットに変えて〜

実は事例Ⅲは再現答案に収集にちょっと苦労しました。

80点台の答案がない!

40点台の答案が少ない!

と、ないない尽くしの状態から始めました。
もしかしたら令和2年度の60点周辺の点数に多くの人が集中していて、標準偏差は大きくないのかもしれないと勝手に考えています。あまりに50〜60点台が多すぎる……。

そんな中で、今回ご協力いただいたのはこちらの皆さんです。
改めて、みなさま再現答案の提供に感謝申し上げます。

  • TAKURO
    開示得点:72点
    道場12代目の法の番人。といいつつも、時折弁護士であることを忘れてしまうほど、気さくな30代後半男性。仕事とプライベート、道場で3つの顔を使い分けている説が濃厚。なお、筆者とは同じ網の焼き肉と違う皿のミニシロノワールを食った仲。
  • masumi
    開示得点:60点
    道場12代目の姐さん。世話焼きで色々なことに気がつくので、12代目一同ついつい頼りがち。webに関しての伸びが12代目No.1。デザインぢからなどをブログで遺憾なく発揮しているが、実は筆者と(いい意味で)同じ穴の狢。興味のベクトルが全然違うだけ。
  • のき
    開示得点:59点
    シリーズ3作目で知らない人は流石にいないはず、この記事の筆者。本業が製造業だからか、2次試験の解答にどうしても納得がいかず、事例Ⅲが嫌いな偏屈者(一番ダメなやつ)。実は、この記事を書いていて一番楽しい箇所はこの他己紹介の欄。
  • Yoshiさん
    開示得点:49点
    ココスタに参加されていて、令和3年度の2次試験合格を目指して学習中の受験生。同じコミュニティに所属としているというだけで再現答案の提供をお願いしたにも関わらず快諾いただいたとても良い方。

40点台の答案だけが道場内で見つからなかったので、勉強会で縁あって40点台の答案を拝見させていただいたYoshiさんに協力お願いしたところ快くご協力いただく運びとなりました。
繰り返しですが、ありがとうございました。

あ、道場メンバーもありがと〜。

第1問

第1問

C 社の⒜強みと⒝弱みを、それぞれ 40 字以内で述べよ。

設問解釈

事例Ⅲのいつもの冒頭のSWOT分析ですね。多くの受験生がこれは絶対に出ると思って勉強してきたことでしょう。

多くの人が対策してきたということは、この問題は落としてはいけないと言うこと。
字数制限もこれまでと大きく違いはないので、動揺した受験生はほとんどいなかったはずです。
このような基本的な問題を淡々と正確に対応しきれるかと言うのも診断士試験において重要ですね。

のきの設問解釈

事例Ⅲでは事例Ⅰと同様に、問題のタイプやレイヤー等を意識しながら解答の方向性を考えていきます。
加えて、制約条件と想起したことを設問解釈として付しておきます。

設問のタイプ:情報整理
SWOTは必ず与件文に根拠があります。逆にいえば、与件文以外から引っ張ってくることはほぼないと考えて大丈夫です。極力与件文の言葉を残しつつ、自分が書きたい文字数に意味が変わらない範囲で編集するのはOKです。

設問のレイヤー:経営戦略
SWOTを考えるときには生産設備や技術力と様々な候補があるので、ここでは大上段から与件文を俯瞰して考えていくことが肝要です。

【制約条件】

  • 特になし。とにかく強みと弱みを短文で抜き出していく。

【想起したこと】

  • SWOT分析ということで、与件文の情報をうまく解答に記載しよう
  • 40字の字数制限なので、2つか3つくらいの要素を詰め込むことになるだろう

再現答案比較

本日の前菜、4人分の再現答案です。以後もお楽しみに。

解答者再現答案
TAKURO強み:鏡面仕上等表面品質にこだわり、高い溶接技術・研磨技術を有す。設計から一貫対応可能。

弱み:製作期間を十分確保できない事や製作期間が生産計画を超過する等による納期遅延発生。
masumi強み:ステンレス製品の鏡面仕上げの高い品質、溶接や研磨技術と設計から工事までの一貫体制。

弱み:生産計画通りに生産できず、納期遵守出来ていない点、高度な技術が共有されていない点。
のき強み:強みは①高い溶接・研磨技術、②設計・製造・据付まで一貫して対応できる体制。

弱み:弱みは①生産計画の不備による納期遅延発生、②加工物の大型化に対応できない工場。
Yoshi強み:設計から製作、据付工事まで可能な一貫体制。高い表面品質を実現する溶接と研磨技術。

弱み:最近、増加する加工物の大型化で、作業スペースの確保が難しい工場。

【TAKURO】

のき的評価:(強み)A答案、(弱み)B〜A答案

少し日本語的にどうなの?と言うところはありますが、文章として破綻はしていないので、問題にはならなかったのではないでしょうか。
要素てんこ盛りな感じで、事例Ⅲの過去の事例でどこか見たことあるようなキーワードを与件文から適切に抜き出していると思います。

高得点答案ではありますが、あえて指摘したいことが2点あります。
一つ目は、強みの最後の「設計から一貫対応可能」と言う記述について。おそらく字数の関係で入れなかったのではと思いますが、「設計から」と書いている以上「〇〇まで」を入れないと一貫対応可能かは分かりにくいのでは?と思ってしまいます。
2つ目は弱みの視点。文章的に複数の視点で書いているように見せかけて、実はスケジュールのことしか書いていないのがややもったいない感じですね。
やはり40字という短めの字数制限の中でも多面的に、複数の要素を入れ込んでいくのが重要ですね。

【masumi】

のき的評価:(強み)A答案、(弱み)A答案

4人の中で最も第1問の「合計点数が高い」と思います。
masumiの答案は要素を淡々と短いキーワードで入れ込んでいく感じですね。
要素としては強み、弱みともに2要素ですが、強みとしては技術と事業範囲、弱みとして生産計画と生産性の視点とうまく視点が違う要素を端的に書き出せていると思います。

なので、要素を抜き出す時に、「解答要素の視点が偏っていないか?」と一度立ち止まって考えてもいいのかもしれません。

【のき】

のき的評価:(強み)A答案、(弱み)B〜A答案

私の答案は上2人と比べると少し要素が減っているのと、若干視点が異なりますね。

まずは強みについて。
上の2人には「鏡面仕上げ」や「表面品質」と言う言葉が入っていますが、私の答案には入っていません。
ですが、個人的にはこの解答に表面品質等の記述はわざわざ入れなくても大きな差はつかなかったのかなと思います。
と言うのも、鏡面仕上げや表面品質は研磨作業を通じて産み出すアウトプットなので、高い研磨技術だけで十分説明はついたではないでしょうか。

弱みについては工場についての記述でも加点はされていたと思うのですが、大きな金銭的な投資を行わずに解決できる「人への投資」に関係する弱みが優先順位は高かったような気がしますね。

あと、冒頭の「強みは」、「弱みは」の記述はなくてもいいですね。ただでさえ、字数が少ないのでもったいない。
皆さんは反面教師としてご査収ください。

【Yoshi】

のき的評価:(強み)A答案、(弱み)D答案

実は個人的に強みの記述が一番うまくかけているのはYoshiさんではないかと思っています。一貫体制とは何を指すのか、溶接・研磨技術によってどんなことが強みになるのか具体的に、そしてコンパクトに表現できている素晴らしい答案だと思います。正直、これが最適解だと思います。

一方で、残念だったのが弱みの記述。
明瞭な強みの記述とは打って変わって、ややだらだらと工場のことを書いてしまったきらいがあります。
最近、増加する加工物の大型化」という記述は明らかに「機会」の記述であり、弱みの記述として抜きだすのは不適切ですね。
なので、ここを別の視点に切り替えて、別の要素を入れ込むことができたら第1問全体で7割以上の点数が取れていたのでは?と思います。

「C答案だから」と言って軽視する人もいるかもしれませんが、今回のYoshiさんの強みの記述のようにC答案の中にもマネすべき答案があると思います。
C答案といっても全体で見ての話であり、局所局所で見たら価値のあるものが含まれていることが往々にしてあります。
「合計点数」という先入観を捨てて、いいところを積極的に吸収することが診断士試験に限らず学習全般に重要なことだと私は思います。

高得点答案 ここがPoint!!

  • 簡潔な短文で、多面的に複数の要素を入れることが重要!
  • 特に多面的に書くことで、加点要素をこぼさないリスクヘッジを忘れずに!

第2問(設問1)

第2問(設問1)

C 社の大きな悩みとなっている納期遅延について、以下の設問に答えよ。
(設問 1 )
C 社の営業部門で生じている⒜問題点と⒝その対応策について、それぞれ 60 字以内で述べよ。

設問解釈

事例Ⅲではあまり表立ってフォーカスされにくい「営業部門」に絞って問題点と解決策を書かせる設問です。

令和2年以前だと問題点と解決策をまとめて120字で書かせるような問題でしたが、今回はわざわ解答欄を分けて解答するように指示されています。試験直後は採点の効率あげるためだとか言われたりもしていましたが、個人的には「問題点」や「対応策」といった文言を解答用紙に書かずに、解答に専念しろという作問者のメッセージのような気がします。(本番では書いていますが笑)

のきの設問解釈

設問のタイプ:助言
問題点の解答だけであれば、情報整理や期待効果でいいですが、今回の設問では対応策まで回答する必要があるので、情報整理をした上で助言まで結びつける助言系の問題だと判断しました。

設問のレイヤー:経営戦略or生産管理

営業ということで経営戦略的な側面があると思いつつ、営業の行動が製造部門へ影響が与えている可能性と考えて、生産管理のレイヤーでも考える必要があると判断しました。

【制約条件】

  • 納期遅延について問われているので、納期遅延を引き起こしている問題点と問題点を解消する対応策を考える。
  • 必ず営業部門で起きていることを書く

【想起したこと】

  • 営業部門から後流の工程に設計や製造に行くときの問題があるのかもしれない。
  • 問題点と解決策をセットで書く必要があるので、問題点で挙げたことに解決策が対応するように書かないといけない。

本文の設問解釈は、解き終わった後であれば業務プロセスの視点で書けば良いので、経営戦略レイヤーではないと分かりますが、設問解釈時点ではそこまで絞りきれなくても問題ないと思っています。

設問のタイプとレイヤー分類を設問解釈時にされる方は、絞りきれない時は思い切って広めにレイヤーの候補を設定しておくのをオススメします。
レイヤーの設定はあくまで仮のストライクゾーンを設定する作業ですので。
当てるべきはレイヤーではなく、解答ということを忘れないようにしてください。

再現答案比較

本日の副菜、4人の再現答案です。

解答者再現答案
TAKURO問題点:製作・施工図承認時、仕様・図面変更やイメージ摺合せに時間を要す為製作期間を確保できず、製作段階の打合せも必要な故の納期遅延。

対応策:製作図、施工図のCADデータを顧客と共有し、顧客の要望を直接データに記入させてやりとりを減らし製作期間確保、打合せ減少。
masumi問題点:受注製品ごとに担当をしており、負荷が大きい。製作前プロセスに時間を要し、打合せが非効率である。

対応策:分業制にして作業を同時進行出来るようにする。契約時に以前使った製作図を利用する等で仕様変更を減らす。
のき問題点:問題点は①設計打合せを含む製作前プロセスの長期化による後工程の圧迫、②社内打合せや立会等の受注活動以外の業務過多、である。

対応策:対応策は①標準図面を用いることによる設計打合せの短縮化、②立会や設計業務の他部への移管による受注活動への専念、である。
Yoshi問題点:仕様変更や図面変更、造形物のイメージの摺り合わせや図面承認後でも打ち合わせが多く発生していること。

対応策:3次元CADを導入して顧客イメージの刷り合わせを早期に行うこと、仕様決定と図面作成の精度を向上させ、打ち合わせを抑制する。

※各論に入る前に正直に申し上げておくと、この設問のあるべき姿についてはこのブログを書いている今でも定まっていません。そのため、完全に客観的に分析できている気がせず、一部個人的な考えが含まれていることを先に断っておきます。

【TAKURO】

のき的評価:(問題点)B~A答案、(対応策)B答案

【問題点】
製作前後のプロセスに時間がかかっているということに焦点を合わせて、製作前、製作中の2点について問題点を挙げています。
解答要素としては営業の役割が多すぎて負荷が高すぎることを挙げてもいいと思いますが、試験本番の状況でそこまで考えが及ぶかどうかなので、現場対応としては満点だったと思います。

ただ、文章としてやや読みにくいのと、最後の「故の納期遅延」のくだりは書かなくてもよかったというのがB~A答案とした理由です。
設問のリード文で納期遅延についてと書かれているのであえて重複して書かなくてもいいのではと思います。

【対応策】
問題点としてあげた製作前のすり合わせ、製作中の打合せをCADデータのやり取りで解決しようとする対応策にしていますが、シンプルでいいですね。
ただ、データをやりとりして打合せが減少するイメージは湧くのですが、製作期間が確保できるイメージが湧かないのですよね。その辺りの具体性の不足を考慮して本答案はB答案と評価しました。

ただ、少し私見を入れさせていただくと「顧客の要望を直接データに記入させてやりとり」という対応策を提案していますが、受注生産品を仕事として取り扱っている私にはこの答案は受注生産を行なっている会社としては至極当然の対応策であるように読み取ってしまったのです。ダメではないですし、間違ったことは書いていないとは思うので、B答案の評価としましたが、正直この対応策の是非については個人的には疑問が残っています。

【masumi】

のき的評価:(問題点)B答案、(対応策)C〜B答案

ここではmasumiにサンドバックになってもらいます。(masumiファンの皆さん刺さないでね)
【問題点】
冒頭の、「受注製品ごとに担当で負荷が高い」という記述ですが、負荷が高いという点は加点された可能性がありますが、受注製品ごとの担当が負荷の高さの要因になっているというのは与件文から読み取れないですよね。
受注ごとに担当を決めるという記述は確かに与件文にありますが、それが負荷が高いことの直接的な原因であるかは読み取れません。今回の事例企業では営業の負荷が高いことは、受注・設計・据付工事施工管理と担当業務の多さに起因していると考える方が論理的だと思います。
このような事象を「因果の飛躍」と呼びます。
2次試験に合格して診断として飛躍するのは大いに結構ですが、因果の飛躍だけはしていけません。一発合格道場との約束です!

同じような話で「打合せが非効率」という記述もそうですね。因果関係としては「製作前プロセスに時間を要する→打合せが非効率」ではなく、「打合せが非効率→製作前プロセスに時間を要する」という因果の流れのほうが自然ですよね。

【対応策】

分業制という対応策を挙げていますが、やはり問題点のところで受注製品ごとの担当であることが高負荷の原因としたことでなんとも思いつき感の対策になってしまっているような気がします。俗にいう「ポエム答案」というやつですね。

また、「契約時に以前使った製作図を利用」とありますが、CADデータの流用程度に止めておいた方が与件文に書いてあるキーワードが使え、リスクが低かったのではと思います。なお、2次試験の本論とはずれてしまいますが、守秘義務等の理由もあり、以前使った製作図は同じお客さん向けのものしか使えませんよね。この文脈だとどう使うのか分からないので、記述として工夫が必要だったはずです。

【のき】

のき的評価:(問題点)B答案、(対応策)B〜A答案

【問題点】

私の答案は読みやすく書けているような気がしますが、それにこだわるあまり、要素が一つ漏れています。(とはいえ本番でできることとしてはやった感はあります)
そうですね、TAKUROのところでも触れた製作後に後戻り作業が発生してしまっていることです。
本事例の与件文でわざわざ「業務プロセス」と別の項目として分かりやすく書いているので、作問者としてはプロセスのところにしっかりフォーカスして欲しいという意図がそれとなく読み取れます。(こちらは試験当日には全く分からなかった後付けの考察です。)

私が答案を書いたときは「営業が色々やりすぎだろ〜」と思って、営業の負荷を分散させることに焦点をあてたのですが、よく考えると負荷が高いのならば残業をするなり(このご時世受け入れられにくいですが)人を補充するなりしてどうにかすることができる気がします。
なので、加点要素にはなったかとは思いますが、本当に大きな問題点を捉えられているかと言われるとちょっと弱いなと今となっては思います。

また、比較的具体的に業務プロセスの名前を付すことでより答案に具体性を持たせようとしてみたのですが、今回の解答においてはやや蛇足的な表現だとみなされてしまった可能性があります。
正直この設問の得点予測はすごく難しいです。(書いている今でも悩んでいます)

【対応策】

問題点としてあげたことに対しては一つ一つ対応して書いていますので、その分の加点はあったと思います。しかしながら、製作中の打ち合わせの存在に触れていないので、その分要素が1つ分マルっと抜けてしまい、結果的にもうひと伸びが足りない答案であったと思います。

【Yoshi】

のき的評価:(問題点)B答案、(対応策)A答案

【問題点】
要素として今回書くべき要素はほとんど入っていたのではないかと思います。

ただ、もったいないなと思う点が、何が問題点かが一読して分かるようになっていればという点と原因から起きている事象を書いているとより分かりやすさが増したという点です。
ちゃんと読むと①仕様変更や図面変更、②イメージの摺り合わせ、③承認後の打ち合わせ、の3つが多く発生していることを問題点として挙げていることを理解できますが、私は最初一読してそのように理解できませんでした。要素を並列で記述するのであれば、記述の趣旨を読んだ人に容易に理解してもらえるように書き方を工夫することが必要ですね。(設問文の方も読みやすくしてくれるといいんですけどね笑)
また、打合せの多さによって「製作期間が確保できない」や「プロセス期間が長期化してしまう」といったことを書いておければより具体的に、そして説得力を持って問題点を記述できたような気がします。

【対応策】

第1問の強みに続いて、実は今回の4人の中で最もまとまりがよいと思うのがYoshiさんの答案です。
それだけに弱みの記述や第3問以降の内容が本当に惜しいと思います。
こういう文章が書けているということは基本的な文章を構成する能力はあると思うんです。

こちらも強いて指摘をすると「仕様決定と図面作成の精度向上」というのが漠然としすぎていてやや具体性に欠けるかなーと感じるくらいです。

上で触れたことを国語の添削に躍起になっていると吐き捨てるのは勝手ですが、数千枚の受験生の答案を採点をする採点者の気持ちを考えてみると答案の読みやすさ、見やすさというのは最重要とは言わないまでも、少なからず追求するべき要素なのではないかと私は考えています。

高得点答案 ここがPoint!!

  • やはり多面的に解答を書くことで加点要素を大きく失うリスクを軽減させる。
  • 解答の中での因果関係を飛躍させず、丁寧に論理的に
  • 与件文の記述から大きく逸脱したことは書かない。全ての根拠は与件文中に埋まっている。
  • 読みやすい答案を意識して。

第2問(設問2)

第2問(設問2

C 社の製造部門で生じている⒜問題点と⒝その対応策について、それぞれ 60 字以内で述べよ。

設問解釈

(設問1)に続いて今度は製造部門に関する設問。いつもの事例Ⅲで問われていることのため、こちらは比較的対応しやすかった受験生が多かったのかもしれません。

のきの設問解釈

設問のタイプ:助言
(設問1)と同様に情報整理をした上で助言まで結びつける助言系の問題だと判断しました。

設問のレイヤー:生産管理
納期遅延が起きている製造部門といえば、生産計画と生産統制がうまくいっていないに違いないということで、生産管理レイヤーに設定しました。
ただ、今思い返すと生産性の面での視点も入れ込むべきだったかなと思います。

【制約条件】

  • 納期遅延について問われているので、納期遅延を引き起こしている問題点と問題点を解消する対応策を考える。
  • 必ず製造部門で起きていることを書く

【想起したこと】

  • 納期遅延を起こしている製造部門には生産計画か生産統制の問題があるはず。
  • 設問文だけでは想起のしようがないので、与件文中にある問題点と思われる事象のうち製造部門のことをうまく分類する。対応策は問題点を抜き出してから考えれば大丈夫。

再現答案比較

どうも、毎度再現答案です。

解答者再現答案
TAKURO問題点:①高度な加工技術等に対応できるチームに処理能力を超える負荷が集中している事②作業途中での加工物の移動による効率の悪さ。

対応策:①高度な加工技術等を標準化マニュアル化してOJTで教育し、チーム間技術格差をなくす②SLP実施の上5Sを徹底、作業効率向上。
masumi問題点:作業チームの技術力に差がある。生産計画の見直し頻度が少ない。工程順や工数が標準化していない。作業員の稼働率が低い。

対応策:作業や工程、工数は標準化、作業員教育を行う。生産計画は適宜見直す。5S徹底やSLPにより作業スペースの確保により納期短縮。
のき問題点:問題点は①主要工程の作業スペースが確保できず、モノの移動が多い点、②基準となる工程順序や工数見積りの標準化未実施、である。

対応策:対応策は①SLPによる機能別レイアウト採用でスペース確保、②標準工程や標準工数の設定による生産計画の精度向上、である。
Yoshi問題点:製品毎の工程順序や工数見積もりの標準化されていないこと、材料・工具運搬と歩行等のモノの移動に関する作業で不稼動が多いこと。

対応策:熟練作業者の工程順序や工数見積もりを標準化、マニュアル作成、研修やOJTで共有化。段取り作業の外段取り化で、不稼動を削減。

【TAKURO】

のき的評価:(問題点)A答案、(対応策)A答案

【問題点】
TAKUROの答案は面白いですね。
(設問1)と(設問2)の間で人が変わったように解答の書き方が変わっています。
個人的には(設問2)の方が記述が整然としていて読みやすいと思います。
また、書いている内容も基本的には与件文中の『【生産の現状】』の項から明らかに問題点だとして挙げられている項目を抽出して書いています。

1点あげるとすると、11段落の記述(「高度な技術が必要な製作物の場合には任せられない作業チームもある」)から高度な技術を持ったチームに負荷が集中していると書いていますが、若干飛躍気味の解答かなと思います。
もし書くのであれば「各作業チームの技術力に差がある」(与件文ママ)、程度の記述でも十分だったような気がします。

【対応策】
こちらはいうことありません。
問題点に呼応した対応策の記述。完璧だと思います。さすが17点上積みした男です。

【masumi】

のき的評価:(問題点)A答案、(対応策)A答案

【問題点】
masumiの答案はTAKUROとうって変わって、(設問1)の時と同じく短文での解答要素乱れ打ちという感じです。サバサバしてる姐さんらしい解答ですね。
短文での解答ではあるものの、一つ一つの解答要素はかなりしっかりと、そして明確に指摘されているので十分A答案だと思います。

1点、「生産計画の見直し頻度」を問題点としてあげていますが、製造部長が月次で作成しているとあり、色々と考えた上で作成している旨が与件文13段落目に書かれているので、問題点としてあげる要素ではなかったのでは?と思います。
とはいえ、大量に解答要素を織り込んでいるこの答案は立派です。

【対応策】
若干、問題点と記述の順番が違うところがありますが、こちらも解答要素乱れ打ちです。
問題点の時と同じく、各文で書かれている主張は明確であり、問題点の裏返しとして対応策を提示するという事例Ⅲの解答の王道といった感じでしょうか。

この答案も文句なしのA答案でしょうね。

【のき】

のき的評価:(問題点)B〜A答案、(対応策)B〜A答案

【問題点】
私の答案に決定的に欠けているのは「生産現場の技術力の差」という解答要素ですね。
設問解釈の段階で生産管理系のレイヤーに絞ってしまったのに加えて、生産現場で発生している技術力の差を第3問、第4問の解答要素に振り分けたことが凶と出たようです。
レイヤー設定の時に深く考えずに生産管理の問題だ!と断定してしまったことが個人的敗因だと思います。
なので、根拠を持って断定できない限りにおいてはある程度レイヤー設定には裕度を持たせた方がいいと思います。
特に本文のように「製造部門の問題点」程度しか書いていない設問文がシンプルなものほど、広い可能性を念頭に入れて、レイヤーを決めつけすぎない方がいいですね。

【対応策】
技術力の差について問題点で書けていないので、触れられていないのは当然ですね。
レイヤーを絞りすぎた結果のやらかし事例ですが、大火傷というわけではなかったと思います。

しかしながら、SLPについて言及したところの「機能別レイアウト」
これは明らかに思いつき答案でしかないですね。
今現在どんなレイアウトを採用しているかわからない中で機能別レイアウトに決め打ちするのは性急です。
やはり与件文の情報から合理的に推測できないことは書くべきではありません
どれだけ当日の自分が焦っていたかがよく分かります^^;

【Yoshi】

のき的評価:(問題点)B答案、(対応策)B答案

【問題点】
Yoshiさんの答案は解答要素としては私の答案と変わらないものを選んでいるのかなと思います。

前段の工程順序や工数見積もりが標準化されていない点については問題ないと思います。
受注生産なので、製品毎に標準化をする必要があるのかという疑問はありますが、まぁそれは置いておきましょう。

後半の不稼働が多いという解答はわざわざ論理展開を1段階進めすぎてしまった嫌いがあります。
不稼働が発生していることの原因は材料・工具運搬とモノの移動です。
であれば、今回の提示すべき問題点としては、「不稼働」ではなく「運搬や移動が多いこと」ですよね。
問題点を問われているので、最大限根源的な原因や問題点を最終的な結論に持ってくるのがベストです。

論理展開の順番や、提示の仕方だけで提示すべきことへのピントがずれてしまったような気がします。

【対応策】

工程順序や工数見積もりの標準化やマニュアル作成、教育の実施等は全然ありだと思います。

1点、妙に気になるキーワードが「段取り作業の外段取り化」

まず与件文中のどこを探しても段取り作業が問題になっているとは書いていませんね。
続いて、仮にものの移動や工具の運搬等が内段取り作業として、この作業は外段取り化できるのでしょうか?
以上の点からも今回は段取りについての議論は本論からずれていたのではないかと思います。

個人的に数多くの受験生の答案を見る機会がありますが、この「外段取り化」という言葉を安易に使いすぎている気がします。
本当に外段取りかできる作業なのかをよく考えて使った方がいいと思います。
そのため、自分が考えた施策が本当にその事例企業が直面する現実に本当にマッチしているかをしっかりと考えて解答を作成するよう心掛けなければなりません。

高得点答案 ここがPoint!!

  • 与件文に書いてある「問題点」だと思われるところを丁寧に抽出する。
  • 設問文がシンプルなほど様々な可能性を考慮して、レイヤーを絞りすぎない
  • 考えた施策が事例企業にマッチしているかをよく考えて!
  • 問題点を淡々と列挙するだけでもよかったかもしれない(要検証)

第3問

第3問

C 社社長は、納期遅延対策として社内の IT 化を考えている。C 社の IT 活用について、中小企業診断士としてどのように助言するか、120 字以内で述べよ。

設問解釈

こちらも事例Ⅲで頻出のIT化の問題。ただし本文では「納期遅延対策として」という制約条件付きです。
IT化といえば、何を思い浮かべるか。
個人的には令和2年度の事例Ⅲの中で最も難しい設問だったと思います。

のきの設問解釈

この問題も結構乱暴に設問解釈をしていたと思います(反省)

設問のタイプ:助言
どのように助言するかなので、助言ですね。

設問のレイヤー:生産性向上
IT化といえば生産性向上。
これくらいのテンションでレイヤーを決めました。(多分間違っている)

【制約条件】

  • 納期遅延対策になるIT活用になっていないといけない
  • ”社内”のIT化になっていること

【想起したこと】

  • DRINK(データベース化、リアルタイム、一元化、ネットワーク、共有)
  • 助言問題なので忘れずに”効果”を書かないといけない

再現答案比較

お待たせしました。本日のメインディッシュ、再現答案〜のきのコメントのせ〜でございます。

解答者再現答案
TAKURO工程順序や工数見積等のIT化の前提となる基準情報を確定させるために、これらの標準化マニュアル化を行う。製作プロセスを含む業務プロセスの全体的な見直しを行う為、生産計画、進度管理を中心にした生産統制もITを活用して行う。
masumiIT化に備えて、製作、業務プロセスの標準化を行い、見える化して情報はデータ化する。その他、受注情報、進捗情報、在庫情報や納期情報等は整理してデータ化をしてIT化を納期短縮に繋げる。
のき①CAD図面のデータベース化による設計業務の省力化、②熟練技術者の持つノウハウを標準化し、データベース化で共有することによるチーム間の技術力の是正、③受注情報のリアルタイムの共有で生産計画・作業計画への反映、により生産性向上を図る。
YoshiIT化は、①製造部長が作成する月次生産計画、②営業部の受注情報、③製造部の製品仕様情報、④各作業チームの作業状況と過去の担当製品情報、を登録・共有化を行い、全社的な生産計画で納期管理を行い、円滑な生産統制を実施し、納期遅延の解消を図る。

この設問はそもそも問題として難しいため、私のコメントも若干なまくら模様でございます。

【TAKURO】

のき的評価:B〜A答案

TAKUROの解答は第2問(設問2)で使わなかった工程や工数見積もりの標準化を第3問で使用しています。
実は今回の4人の中で唯一、第3問で書いているのです。

さらにはIT化の定石だと私が設問解釈の時に想起したDRINKの視点も全く書いていません。

実はこの答案が今回の再現答案分析で最も私を悩ませたものです。
帰納的な分析ではありますが、このTAKUROの答案が低得点であるとすると、72点になる辻褄が合わないんです。
なので、今回私はTAKUROの答案がA答案(Bよりかもしれない)であると仮定して、この問題は生産管理のIT化に関する設問であったと仮説を立てたいと思います。
事例Ⅲは切り分けが重要だとよく言われますが、今回のTAKUROの切り分けが採点者が想定していた切り分けにハマったのではないかと思います。

ただ、後半の文章がよくわからないんですよね……。
「プロセスの見直しをするため、生産計画や生産統制にITを活用する」
う〜ん。なんだか納得感がないんです。
今思いつく解答案としては、
標準化した工程や工数見積もりをデータベース化 → 生産計画の立案への活用
営業・設計・製造の各プロセスで情報共有 → 生産統制の実施+業務プロセスの効率化(≒リードタイム短縮)への活用
といった論理展開でしょうか?
字数制限を考慮していないので、TAKUROの答案にそのままはめこめるとは思えませんが、解答の前半をコンパクトにすれば入りそうな気もします。
是非については読者の皆様に委ねたいと思います←

とはいえ、今回TAKUROの解答をベンチマークにしますので、コメントもそこそこに次にいきましょう。

【masumi】

のき的評価:C〜B答案

masumiの答案は前半はいい気がします。
IT化活用においてよく出てくるキーワード、「標準化」・「データ化」。これは外していないはずです。
一方で、後半の「情報を整理・集約してIT化を納期短縮に繋げる」という解答はやや乱暴かなと。
情報を整理するだけで納期短縮につながるのであれば、世界中から納期遅延がなくなるはずです。

その点も考えると、上のTAKUROの答案考察のところで書いた通り、標準化してデータベース化した情報を、現在問題が起きている業務プロセスの効率化に活用するという筋書きが良かったのではとやはり思います。

【のき】

のき的評価:C〜B答案

この設問のサンドバック担当は私です。

私の答案はレイヤー設定のところで見込んだ通り生産性向上を最後の効果に書いていますが、挙げている施策を改めて見ると生産性向上につながるとは思えない施策が挙げられています。
改めて、挙げた施策と書きたい効果がチグハグな答案になってしまっていると思います。

何度見ても出来の悪い答案ですねぇ。

第2問であえて使わなかったチーム間の技術力の格差について第3問で触れていますが、IT化で納期遅延対策という設問要求にはやはりそぐわないですし、具体性がないですね。
思い返すと、時間が足りなくなっていく焦りで「納期遅延対策」という制約条件を完全に忘れていました
合格者と言ってもこんなもんです。
所詮ただの人間です
うまくいく時もあれば、動揺して訳がわからなくなる時もあります。
そういった、本番で発生しうる変動要因を少しでも抑え込むために解答プロセスを固めているんです。

とにかく、私の事例Ⅲ全体を通して、レイヤーも解答の方向性も大きく外している事故答案がこの第3問だと思います。
ただ、一方で1つ大きく事故ってもなんとか60点近傍に持って来れたのは他の答案でリカバリーできていたからではないかと思います。
やはり最後まで諦めずに解答を書いて食らいついていくことが重要です。
はい、そうです。ここにきて根性論です。ですが、時には根性論も重要な時があるんです。

【Yoshi】

のき的評価:C〜B答案

Yoshiさんの答案は解答の半分が何を共有するかの列挙に終始してしまっていて、解答要素の分量のバランスがちょっと頭でっかちですね。
文章全体を見ると、解答要素の関連性がやや見にくいような気がします。
①登録・共有化、②生産計画、③生産統制 という要素が挙げられていますが、それぞれが一連の対応として順を追って実施していくというよりかは、それぞれを独立で実施していくように読めます。
masumiのところで述べた通り、情報を収集してもそれを活用しなくては意味がありません
収集した情報を活用する手段としてITがあるという書き方をしていたらこの解答は点数が伸びたのではないかなと思います。

高得点答案 ここがPoint!!

  • 制約条件を最後まで忘れない!(特に午後の疲れている時間帯や焦っている時に要注意!)
  • IT活用で集めた情報はどう活用するかまでセットで考えること!

第4問

第4問

C 社社長は、付加価値の高いモニュメント製品事業の拡大を戦略に位置付けている。モニュメント製品事業の充実、拡大をどのように行うべきか、中小企業診断士として 120 字以内で助言せよ。

設問解釈

これまた事例Ⅲ最終問題定番の未来に向けての戦略問題。
簡単ではありませんが、比較的これまでの事例Ⅲのパターンで解けた可能性があります。(私ができたとは言っていません)

のきの設問解釈

設問のタイプ:助言
わかりやすい事例Ⅲ恒例の未来に向けた助言問題です。
難しいことを考える必要もなく助言に分類できるはずです。

設問のレイヤー:経営戦略
事業拡大のための施策を考えるということで、経営戦略レイヤーの設問でしょう。

【制約条件】

  • モニュメント製品事業向けの施策を提案しないといけない。
  • 事業の拡大・充実を実現する施策を考える。

【想起したこと】

  • ここまで触れてきた問題点を総ざらいして施策を考える。
  • 戦略系問題の定番である営業拡大の視点を入れる。
  • 営業に触れるなら、設計・製造と触れることで多面的に書いていく必要があるか?
  • 「拡大」と「充実」ってなんだ?

再現答案比較

では、デザートの再現答案でございます。

解答者再現答案
TAKURO高度な溶接技術や研磨技術、特別仕様の装飾性にも対応できる特殊加工力、仕上げ品質を訴求する。都市型建築の増加状況を生かし、ビル建築用金属製品の受注の際にモニュメント製品の営業を行う。据付の協力会社にも営業協力を依頼する。営業の強化が必要になる。
masumi都市型建築の増加需要を取り込む為、自社の高い加工技術を訴求し、ホームページの活用や展示会への積極的な出展、デザイナーからの紹介によって新規顧客の開拓を行い、事業の拡大を図る。
のき①設計業務の専属化による様々な顧客ニーズに対応できる設計力の強化、②製作図理解や加工技術の向上を通じた複雑な形状に生産体制の構築、③様々な顧客ニーズに対し、自社の技術力を踏まえた提案ができる営業体制の構築、により他社と差別化を図る。
Yoshi戦略は、営業部での据付け工事の施行管理と製造部のビル建築用金属製品製造外注化を進めて余力を創出すること、全社的にモニュメント製品の受注を進め、全作業チームでの作業を実現し、受注獲得強化と生産量拡大を図る。

【TAKURO】

のき的評価:B答案

TAKUROの答案は一番初めに強みの技術への言及をしています。
文末の「訴求」という表現が事例Ⅱっぽさを感じますが、ひとまずよしとしましょう。

「都市型建設の需要増という与件文の情報を生かして既存顧客に対して、モニュメント製品の営業を行う」については、ビル建築用金属部品を発注する事業者がモニュメントを求めることがあるのかという疑問が残ります。
これまでモニュメント製品の注文をもらっているのはデザイナーからということなので、ビル建築用金属製品の顧客である建築用金属製品メーカーがモニュメント製品を欲しがるか?とよく考える必要があると思います。

後半の営業に関する記述で、据え付けの協力会社の活用もやや思いつき感があります。

営業の強化が必要という指摘はその通りだと思いますが、営業を使った「拡大」について書いてあるのみで、「充実」については言及できておらず、これまでの答案と比べるとやや性急な印象です。

【masumi】

のき的評価:C〜B答案

masumiも強みの技術を訴求することはしっかりとかけています。
しかしながら施策がややアイデア答案になってしまっているような気がします。
ホームページや展示会でのチャネル開拓は与件文から読み取れないので加点はあまり期待できなかったと思います。
デザイナーからの紹介はこれまでのチャネルもデザイナーだったのでありかなとは思います。

ただ、自社技術はそのままで、チャネル開拓をするだけでは拡大は実現できるかもしれませんが、充実は実現されていませんね。
拡大面だけに焦点を当てた解答で多面的な解答ではないため、評価は低めにしています。

【のき】

のき的評価:B答案

私の答案はまず、「強みを活用する」旨の記述がないです。
いいですか、最後の戦略問題は「強みを活用した戦略」を提案してください!
私のようになってはいけませんよ。

私は、①で設計、②で製造、③で営業というふうに視点を分けました。
社内の部門や役割ごとに視点を分けたのは良かったと思うのですが、①の設計に関する記述は第2問(設問1)で思い描いた営業の負荷低減の幻影に囚われ続けているのがよくわかります。
もう、事例Ⅲ中の私の頭の中には「営業から設計業務を切り離して、負荷を下げる!」という固定観念が出来上がってしまい、なかなかそこから脱却することができていないわけですね。

解答の一貫性という意味で事例企業に対しての提案の方向性を意識するのは大事ですが、それに囚われ続けて軌道修正ができなくなっている悪い例だと思います。
みなさんは気をつけてくださいね。

あと、最後にですが、せっかく設計・製造・営業に視点を分けたのであれば、それぞれの提案を拡大と充実のいずれかに振り分けて「〇〇が充実の施策ですよ、××が拡大の施策ですよ」とわかりやすく文章で表現できていればより点数が取れたかもしれないと反省です。

【Yoshi】

のき的評価:D答案

本設問のYoshiさんの解答はツッコミどころ満載です。

まず、「外注化を進める」という記述について。
第1問でC社の強みは一貫体制であると挙げている一方で、工事施工管理を外注するというのは強みを自ら放棄していることになってしまわないでしょうか?
事例としての解答の一貫性が損なわれてしまう助言であり明らかにアウトな解答要素でしょう。

そして、私の答案と同様にC社が持つ強みの活用の視点の活用がありません。
解答の中でモニュメント製品の受注を進め、という記述がありますが、受注の拡大の実現可能性を示すための根拠として強みの存在を示すことで、助言の妥当性を示す効果があるんです。
(正直実際のコンサルティングの現場で強みで差別化できますといっても、できないケースがほとんどだと思いますが、ここは診断士の2次筆記試験。あくまでペーパーコンサルティングと割り切りましょう。)

大きく2つを指摘しましたが、おそらくこの答案にはほとんど点数が入らなかったのではないかなと推測します。
与件文やC社に寄り添った助言ではない解答になってしまっている印象です。

高得点答案 ここがPoint!!

  • 最後の戦略問題は強みを活用した戦略を設定すること!
  • 強みの活用を考える際には与件文やC社に寄り添って考えること!
  • やっぱり多面的な解答が重要!(今回なら「拡大」と「充実」に分けるとわかりやすそう)

再現答案分析まとめ

さて、ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。
ここまで見てきた再現答案への私の評価と実際の得点の比較をしていきます。

これまでは4人の答案をバラバラに見ていきましたが、まとめてみると差がついたポイントというのがわかりやすいですね。

TAKUROの解答を改めて見てみると第1問から第3問までそつなく点数を積み上げていって、第4問で数点失ったくらいなのではないかと考えています。
第3問はやや恣意的に B~A評価にしているところはありますが、それ以外は全体的に解答要素がきっちり入った解答になっていたと思います。

masumiは後半失速したように見えますが、前半の3問で華麗に逃げ切って60点に着地したという感じです。

一方59点の私は前半の得点の取りこぼしがある状態で、難しい後半の問題を焦りの中解答した結果、60点に一歩足りなくなったと考えます。

Yoshiさんは第1問のWと第4問と2つの大事故をやらかしています。
私が一つ大事故していることを考えると、診断士2次試験においては1つの事例において2つの事故をやらかすと取り返しがつかなくなるのかもしれません。

上記のまとめを踏まえると事例で60点を取るポイントが見えてきました。

2次試験で60点以上を取るポイント!

  • 比較的優しい(or みんなが取れた)問題を安定して点数を取れている。
  • 大事故は最小限に! どんなにやらかしても1問まで!

合格者の答案をもとに分析しているので後付けと言ってしまえばそれまでなのですが、おそらく高得点をとっているTAKUROは「ここ落とせないぞ」という設問はなんとなくわかっていたのではないかなと思います。

その辺りも含めて明後日、TAKURO自身で当日の実況中継をしてくれるそうなので、乞うご期待!

のきの考える事例Ⅲの本質

さて、最後にまとめです。

今回再現答案の分析をしていて思ったことがあります。
それは、

自分がファイナルペーパーに書いていたことはそこまで事例Ⅲの本質的なものを外していなかった

ということです。(手前味噌ですが)

試験本番で実践できたかといえば、苦手意識の強い事例でかつ最後に時間がなくなって焦った結果、できませんでした。
しかし、改めて見返してみると自分のファイナルペーパーに書いてあることをきちんと意識して答案にぶつけることができたら良かったのかなとも思います。

なので、私のファイナルペーパーに書いていたことを簡単に紹介して、大きな枠組みをこの記事で捉えて帰っていただければと思います。
なお、私は事例Ⅲはそれぞれのレイヤごとに大きな考え方の枠組みを設定していました。

ファイナルペーパーについての記事は次回書きますが、先出しとして以下に示したいと思います。

経営戦略レイヤの考え方

実は事例Ⅲのあるべき姿として、QCDがあることをアヤカも過去にブログ記事にしていました。

やはり事例Ⅲで取り扱う企業は製造業である以上、QCDの視点は絶対に外してはいけないと思います。
令和2年度の場合はほとんどの設問が”D”について問われていましたが、過去の事例をみる”Q”について(例えば平成28年度の事例)も”C”について(例えば平成26年度の在庫管理等の問題)も問われています。
つまり診断士の2次試験では”D”について問われることが多いものの、QCD全般に対応できるようにしておかないといけないということです。

加えて、経営戦略レイヤの問題では事例企業の未来を描く助言が問われるため、作ったものをどうやって売るのかという視点は外せません。
せっかく作った製品が売れなくては事業として継続していくことはできません。

結論、QCDの整った生産体制+適切な営業という両輪で事例企業の成長戦略を実現していくということが大きな方向性だと言えると思います。

前回の事例Ⅱの記事でも述べたように大きな方向性を意識することで考え方の振れ幅が減り、解答の焦点が合わせやすくなるので意識されることをオススメします。

生産管理レイヤの考え方

産管理とは生産計画と生産統制の両輪で実現するものです。

そのため、「生産管理について」という問われ方をしたときは、生産計画と生産統制に視点を分解して与件文に書いてある情報を大きく二つに分類します。
そこからさらに生産計画であれば手順計画・材料計画・工数日程計画に、生産統制であれば進捗管理・現品管理・余力管理に要素分解できるため、さらに分類を細分化して真の原因や本当に手を当てるべきポイントなどを洗い出しいくということです。

今回は本体の記事が長いので、詳細の説明を割愛しますが、事例Ⅲの女王、アヤカが詳細をブログ記事で説明してくれているので、そちらもぜひ見てみてください。

もしくは次回の私の記事でファイナルペーパーそのものを公開するのでそれまで待っていただくのでもいいですよ!

生産性向上レイヤの考え方

生産性向上レイヤで押さえておくべきポイントは標準化とIT化のフレームワークです。

上の再現答案でも出てきていますが、標準化と一口に言っても段階があります。
まずは設計や作業を標準化すること。そして標準化した内容に基づいてルールを設定し、そのルールや標準を共有・浸透させること。
この一連の流れのうち、どこまで書く必要があるかは設問で求められている内容によって帰れば良いと思いますが、標準化することが目的になってはいけないことを肝に銘じてもらえればと思います。

そしてIT化といえばDRINK。DRINKが何かは「まとめシート流! ゼロから始める2次対策」を参照してください。(ここでの説明は割愛します)

おわりに

こんな長い記事に最後までお付き合いいただきありがとうございます。
もちろんここだけを目にしてくださっている方もありがとうございます。

これにて「令和2年度高得点答案から読み解く事例の本質シリーズ」完結です。

これ以上はないというくらい私が人の答案を見て考えること、自分の答案の振り返り方、事例ごと・事例共通で意識すべきことをこの3部作に全て詰め込んだつもりです。

頑張って書いた3つの記事が受験生の皆様の学びの助けになっていましたら幸いです。

最後はあっさり終わらせます。

明日はにのみです!

ではでは〜ノシ

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令和2年度高得点答案から読み解く事例の本質 〜事例Ⅲ編〜”へ1件のコメント

  1. ロム より:

    のきさん、令和2年事例Ⅲの解説記事をありがとうございます!

    過去と違い、既に二週をして今週三週目をやろうと思っているので、今回はちゃんとコメントができる……!

    問3のIT化に関しては、やはり難しい問題という位置づけだったのですね。自分も過去問を解く度に頭を捻ってしまう問題なので、ちょっとほっとしました。
    今回の記事やふぞろいでもそうでしたが、工程順序や工数見積等の標準化することが何でIT化に繋がるのかいまいち分かりませんでした……。
    「工程順序や工数見積等の標準化は別にIT化をする必要がそもそもないだろう、標準化することが大事なんだから」と思っていたんですが、標準化すること自体がIT化に直結するのではなく、IT化するための下準備として標準化するという風に飲み込むことにしました。

    ただ、実際の試験で同様の問題が出題されてもこのように判断することができるか自信がないので、置きに行く回答にするか判断しようと思います。

    これまで、濃密な分析記事をありがとうございました。
    試験まで昨年の過去問はもう何度か周回するつもりなので、フルに活用させていただきます!

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