【永久保存版】令和3年度_事例Ⅰ:趣旨とふぞろいで再現答案分析(開示得点:95/87/54) ~合格答案のポイントを探る~ byリット
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- 1. はじめに
- 2. 解答者紹介
- 2.1. リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
- 2.2. あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
- 2.3. まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
- 3. R03_事例Ⅰの全体像
- 4. 第1問
- 4.1. リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
- 4.2. あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
- 4.3. まん(R03事例Ⅰ:開示54点) ※見やすくするため再現答案には無かった番号を追加しています
- 4.4. 第1問 攻略の鍵と思われるポイント
- 5. 第2問
- 5.1. リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
- 5.2. あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
- 5.3. まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
- 5.4. 第2問 攻略の鍵と思われるポイント
- 6. 第3問
- 6.1. リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
- 6.2. あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
- 6.3. まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
- 6.4. 第3問 攻略の鍵と思われるポイント
- 7. 第4問
- 7.1. リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
- 7.2. あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
- 7.3. まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
- 7.4. 第4問 攻略の鍵と思われるポイント
- 8. 第5問
- 8.1. リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
- 8.2. あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点) ※分かりやすくするために再現答案になかった番号を振っています
- 8.3. まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
- 8.4. 第5問 攻略の鍵と思われるポイント
- 9. さいごに
本編前に、2次試験対策セミナー第三弾の告知です!
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皆さんのご参加を道場13代目一同、心よりお待ちしております!
はじめに
いよいよ9月ですね。
そろそろ二次試験本番が迫ってきました。
一次試験から約一か月、みなさんも事例研究に取り組まれていると思います。
そこで、このタイミングにて、道場の名物になりつつある事例研究シリーズをスタートします!
今年の担当はボクたちです。
…という訳で、ここから3回シリーズ(事例Ⅰ~Ⅲ)でお届けする『事例研究シリーズ』の第一弾、令和3年度の事例Ⅰをお届けします。
このシリーズは、説明不要の道場レジェンド記事、だいまつさんの超高得点シリーズの流れを汲んでいます。
↓のレジェンド記事もぜひご覧ください!
だいまつさんの超高得点シリーズでは超高得点・ボーダーライン・ボーダー下の再現答案を元に比較して分析をされています。
今回のシリーズでは道場13代目の再現答案から、僕がピックアップした再現答案を元に分析を行います。
そのため、だいまつさんのシリーズとは若干方向性が変わることをご了承下さい。
当シリーズでは「事例攻略の鍵(と思われるポイント)を探っていこう」というテーマで、公式から発表されている各事例ごとの【趣旨】と、解答を作る上での【観点】を軸に分析を進めていきます。
なので、今回の事例分析では【趣旨】に沿ってなかったら事故扱いとする感じです。
そして【観点】は【趣旨】に合わせた解答を行う上で、それを構成する要素(採点項目)として考えていきますので、ご了承下さい。
※なお、観点については『ふぞろい』シリーズを参考にしています(この記事のために、わざわざふぞろい15を買いました!)
当然ながら、事例分析の方法や観点は人それぞれです。
なので、今回の方法が必ず正しい訳ではありませんが、ひとつの分析方法としてご覧頂ければ幸いです。
長々と書いちゃいましたが、要はこんな感じです。
僕(リット)の視点で再現答案を分析してみたよ!
公式の【趣旨】とふぞろいの【観点】を参考にしてるよ!
【趣旨】やふぞろいを使った自己採点の方法の参考にもなると思うので、良かったら皆も試してみてね!
ちなみに、思いっきり令和3年度の事例Ⅰのネタバレになっちゃうので、直前の問題を温存したい方はブックマークだけお願い致します!
必ず一度は解いてから以下の記事を確認して見て下さいね!
解答者紹介
まずは今回の再現答案分析に協力いただいた13代目メンバーをご紹介!
リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
トップバッターは僕です!
事例Ⅰ道場トップの95点、道場セミナー等ではお馴染みの事例Ⅰ担当!
あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
再現性の鬼!13代目の良心…のはずがなぜか「ブラきち(邪悪な顔つきのあらきち)」がデフォに…
事例Ⅰ、Ⅱの開示得点、2年で3回80点オーバーは伊達じゃない!
まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
ゴロ合わせの開拓者!
圧倒的な受験経験から生まれた独自メソッドで隠れファン急増中!
と、こんなメンバーでお送り致します!
メンバーへは再現答案の使用について事前にOK頂いています!
好きに切ってくれと言われているので、遠慮なく行くぜ!
…ふむふむ、リットの記事で自分の95点を取り上げるのはなんかモヤモヤする、と。
分かります!でも大丈夫!
これをご覧ください →「リット_事例Ⅲ開示得点:46点」
そう、シリーズ最後にオチが待ってるのでお楽しみにね!
ちなみに、今回の3名分以外の再現答案分析はこっちのブログで作成中!
外部リンクになるけど、良かった見ていってね!
R03_事例Ⅰの全体像
事例Ⅰは事業承継がテーマになりやすいこともあり、社長が何代も出てくることが多いです。
時制表現(誰の代でやったか)が大事になりますので事例Ⅰでは特にご注意を!
今回のR03事例Ⅰの流れを、時系列で示したものが以下になります。
当然ですが、こんなもん試験中に書いている余裕はもちろんありません。
でも、練習時には非常に効果があると思っています。
慣れてくると、記号や略語で表現することで時短もできますので、最初の1~2事例くらいはここまで作ってもいいかなと個人的に思っています。
基本の流れは、初代が工場で印刷していたのを、二代目がファブレス化で外注を利用し始めた。
外部環境の変化による競争激化に対応すべく新天地に踏み出し、三代目のノウハウや人脈を活かして広告事業を始めたけどうまく行ってない。
どないしたらええんやろうか? みたいな感じですね。
それでは各問題の再現答案を比べていきましょう!
第1問
【第1問】(20点)
2 代目経営者は、なぜ印刷工場を持たないファブレス化を行ったと考えられるか、100 字以内で述べよ。
◆A:ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分 → 経営資源の集中投下
◆B:経営戦略の視点 → 戦略レイヤー(経営者視点)
「A:ニッチ戦略」「A:高付加価値分野への経営資源の再配分」の二点から、「ファブレス化により強みを強化し、得意分野に経営資源を集中したかったから」というメッセージが浮かび上がってきます。
また「B:経営戦略の視点」から今回は戦略レイヤーが求められていることが分かります。
「何を実現するか」を問われており、「どうやって実現するか」までは今回問われていないという認識で良さそうです。
次にふぞろいの観点は主に以下の3つになります。
二代目の戦略単体で問われているため、時制に注意し三代目の施策と混同しない様にする必要があります。
●D:戦略を記載しているか(今回はこれが趣旨の「経営資源の集中投下」に繋がる様に設定する)
●E:戦略の効果を記載しているか
先ほどの趣旨を満たす解答を、このC~Eの観点で作り上げていくことになります。
リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
理由は
①オフセット印刷機やデジタル化による単価減少と新規参入増加に対し
②ファブレス化による外部の高度なノウハウ活用により高付加価値化し
③分業体制構築で顧客ニーズへの対応力を強化し差別化した
◆A:ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分(経営資源の集中投下)
◆B:経営戦略の視点(戦略レイヤー)
Aのニッチ戦略と経営資源の再配分については「②ノウハウ活用により高付加価値化」と「③分業体制構築」で対応出来ていそうです。
また、この2つは「何をするか」を述べているので戦略レイヤーとしても問題なさそうです。
●C:外部環境の変化に言及
→①オフセット印刷機やデジタル化による単価減少と新規参入増加に対し
外部環境についてはクリアしていると考えて良さそうです。
要素も単価(金額面)と新規参入(競合)の2面で解答できており減点されにくい形になっています。
●D:戦略
→②外部の高度なノウハウ活用
→③分業体制構築
今回の趣旨は「ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分」ということで「経営資源の集中投下」が基本戦略になります。
「外部の高度なノウハウを活用して、分業体制を図る」の流れで、ここはクリアできていそうですね。
●E:効果
→③顧客ニーズへの対応力強化
→③差別化
「経営資源の集中投下」による効果として「対応力強化」と「差別化」の2つを挙げています。
顧客ニーズへの対応力については、与件文の第5段落にも「顧客の細かいニーズに対応できるような」との記載があるため、ここから拾います。
このままでも戦略の効果としては十分と思われますが、「競争力の獲得」も取り上げておくと「対応力強化=自社の強みを増す」+「差別化=競争力の獲得」と内部&外部の視点となり、多面的な解答ができるのでリスクを減らすのに役立ちます。
特に事例ⅠやⅡでは内部と外部の視点が重要となりますので、文字数に余裕があればこの2つの視点での解答を意識してみてください。
あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
理由は
①印刷業界は技術革新に伴う経営環境変化激しく代替品や新規参入容易で設備陳腐化するリスクあり
②高精度印刷の分野に絞り込んで経営資源集中し、顧客の細かいニーズに迅速に対応できる体制作りに努めたため。
◆A:ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分(経営資源の集中投下)
◆B:経営戦略の視点(戦略レイヤー)
Aのニッチ戦略と経営資源の再配分については「②高精度印刷の分野に絞り込んで経営資源集中」と「②顧客の細かいニーズに迅速に対応できる体制作り」でクリアできていますね。
「何をするか」を述べているので戦略レイヤーもしっかり捉えらえています。
●C:外部環境の変化に言及
→①技術革新に伴う経営環境変化激しく代替品や新規参入容易で設備陳腐化するリスクあり
「技術革新」「代替品」「新規参入」「設備陳腐化」と4つも要素を入れています。すごいなこれ…
今回は4つとも加点要素として考えられ、数もすごいのですが与件文からの抜粋を意識している点が素晴らしいです。
診断士二次試験では「与件文から拾える単語はできるだけそのまま使う」という不文律があり、減点を回避する有効な手段として考えられています。
なので、どれだけ与件の表現を変えずに要素を沢山盛り込むことができるか、という点が二次試験攻略の鍵となります。
●D:戦略
→②高精度印刷の分野に絞り込んで経営資源集中
→②顧客の細かいニーズに迅速に対応できる体制作り
ここは先ほどの僕の解答とほぼ同じ流れですね。
ただ、僕の解答は「分業体制構築」で終わっていたので「経営資源集中」まで書ききっているあらきちの再現答案の方が趣旨に沿っている気がします。
●E:効果
→②顧客の細かいニーズに迅速に対応可能
この部分は自社の強みを強化する効果にとどまっていますので、「差別化」まで踏み込むと加点があったかもしれません。
まん(R03事例Ⅰ:開示54点) ※見やすくするため再現答案には無かった番号を追加しています
理由は、
①技術革新による専門知識の不要と新規参入の容易化で印刷業の競争激化が見込まれるなか、
②高度な印刷技術を有する分野に対象を絞り
③ディレクション業務に特化する事で外部とのネットワーク強化し競争優位図る為。
◆A:ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分(経営資源の集中投下)
◆B:経営戦略の視点(戦略レイヤー)
Aのニッチ戦略と経営資源の再配分については「②高度な印刷技術を有する分野に対象を絞り」と「③ディレクション業務に特化する事で外部とのネットワーク強化」でクリア、「何をするか」を述べているので戦略レイヤーもしっかり捉えらえていますね。
●C:外部環境の変化に言及
→①技術革新による専門知識の不要と新規参入の容易化で印刷業の競争激化
あらきちに続いて「技術革新」が取り上げられています。
「新規参入」と合わせて「競争激化」を生んだ、という流れも因果関係が明確になり説得力を増していますね。
●D:戦略
→②高度な印刷技術を有する分野に対象を絞る
→③ディレクション業務に特化する事で外部とのネットワーク強化
戦略の観点は今回取り上げた3人ともほぼ同じとなりました。
今回の問題は「ファブレス化した理由」だったため、一次試験知識からの推測ができたことで、内容に差がつきにくかったのかなと思います。
●E:効果
→③競争優位
この部分については一考の余地がありそうです。
「ネットワーク強化」→「競争優位性の獲得」としていますが、ネットワークを強化しただけでは優位性の獲得とは直結しづらい様に思います。
実際には「ネットワーク強化」→「外部の高い専門性を活用」→「競争優位性の獲得」となるかと思われます。
文字数の兼ね合いで難しいところではありますが、「ネットワーク強化により高度なノウハウを持つ外部資源を活用し競争優位性を獲得」とすると減点リスクを減らせると思います。
第1問 攻略の鍵と思われるポイント
・中小企業の常套手段である「経営資源を得意分野に集中する差別化集中戦略」をベースにする
・使用する要素は極力、与件文から使ってなるべくなら言い換えしない
・足りない要素は一次試験知識(ファブレス化のメリットなど)から補完
第2問
【第2問】(20点)
2 代目経営者は、なぜ A 社での経験のなかった 3 代目にデザイン部門の統括を任せたと考えられるか、100 字以内で述べよ。
◆A:事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げ
◆B:経営組織の視点 → 幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」を利用
後継者の育成を含めた次代の組織作りが問われています。
特に今回は「経営組織の視点」と趣旨に明記されていますので人事のみの視点にならない様に注意が必要です。
次にふぞろいの観点は主に以下の3つになります。
●D:前職の知見・ノウハウ
●E:戦略の効果
先ほどの趣旨を満たす解答を、このC~Eの観点で作り上げていくことになります。
リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
理由は
①3代目の持つ広告代理店のノウハウを新しく社内に取込み
②人脈を活かしたデザイナー採用で人材を多様化し新しい視点を得て組織活性化を図り
③広告制作の業務拡大への原動力としたいと考えた
◆A:事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げ
◆B:経営組織の視点(権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション)
「②人脈を活かしたデザイナー採用で人材を多様化」と「②新しい視点を得て組織活性化」で組織づくりについて言及しており、「③広告制作の業務拡大」を組織作りのゴールとして設定しています。
組織作りについての最低限の要素は盛り込めていると思いますが、事業承継の要素がちょっと弱いと感じます。
●C:事業承継
ここの部分の要素が弱く、もし改善するとすれば「3代目に適切な権限を与え広告制作の業務拡大を実現すると共に、後継者としての育成により事業承継を進めたかったから」など事業承継について明示する方法が考えられます。
●D:前職の知見・ノウハウ
→①3代目の持つ広告代理店のノウハウを新しく社内に取込み
→②人脈を活かしたデザイナー採用
ノウハウの取り込みと人脈からの採用で2面から解答できています。
「採用」のみでも十分かとは思いますが、これから伸ばしていく部門がデザイン部門であることと3代目がこの分野に強みを持っていることから「デザイナー採用」など業種まで言い切ることで加点に繋がる可能性が高くなると考えられます。
●E:戦略の効果
→②組織活性化
→③広告制作の業務拡大への原動力
今回は趣旨にも「経営組織の視点」とある通り、組織に対する効果を取り上げる必要があります。
代表的なものは幸の日も毛深い猫のフレームにもある「コミュニケーション」からの「組織の活性化」です。
また、趣旨では「新規事業の立ち上げ」にも言及されていることから「業務拡大する」の要素も加点に繋がっていると思われます。
あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
理由は
①前職の共同プロジェクト参画のノウハウや人脈が、アートディレクターがプロジェクトを統括するディレクション業務に活かせ
②採用した専門人材と共に組織活性化し、デザインと印刷のデジタル化を進めるため。
◆A:事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げ
◆B:経営組織の視点(権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション)
「①アートディレクターがプロジェクトを統括するディレクション業務に活かせ」と「②採用した専門人材と共に組織活性化」の2点で組織作りの方向性を明示しています。
ただ、趣旨から見ると、先ほどの僕(リット)の解答と同様に事業承継の要素が若干弱く感じます。
●C:事業承継
「ノウハウや人脈をプロジェクトをディレクション業務に活かし、部門を統括することで後継者としての知見を高め事業承継を促進する」など、事業承継の要素を追加できればもっと得点が伸びた可能性があります。
●D:前職の知見・ノウハウ
→①前職の共同プロジェクト参画のノウハウや人脈
→②採用した専門人材
社内へのノウハウの取り込みと人脈からの採用で2面から解答できています。
採用の部分で「専門人材」と文字数を省略しつつ、デザイナー部門で活躍する人材であることを示しているのは凄いと思います。
ただ、文字数に余裕があれば「デザイナー」などもっと絞り込んだ方が減点のリスクは減るため、文字数との兼ね合いで調整していくのがおススメです。
●E:戦略の効果
→②組織活性化
→②印刷のデジタル化
代表的な効果である「組織活性化」がここでも登場しました。
デザイン部門であることから「デジタル化の促進」まで踏み込めているのが流石です。
まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
理由は
①広告代理店に勤務しデザインのノウハウを有しており、デザイナー等との人脈を生かせる為、
②次世代経営者候補を統括者とする事で経営ノウハウや組織管理等を経験させ、幹部候補者の育成を図る為。
◆A:事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げ
◆B:経営組織の視点(権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション)
「②次世代経営者候補を統括者とする事で経営ノウハウや組織管理等を経験」と「②幹部候補者の育成を図る」で事業承継について言及できているのが素晴らしいです。
ただ、逆に組織の視点がやや薄くなっており、「①広告代理店に勤務しデザインのノウハウを有しており、デザイナー等との人脈を生かせる為」の部分も含めて、やや人事寄りの解答になっている印象です。
●C:事業承継
→②次世代経営者候補を統括者とする事で経営ノウハウや組織管理等を経験
→②幹部候補者の育成を図る
後継者としての成長の側面に触れており、事業承継の観点をクリアしています。
幹部候補の育成を図る次の段階、「事業承継を進める」まで言及できていればもっと得点が伸びた可能性があります。
●D:前職の知見・ノウハウ
→①広告代理店に勤務しデザインのノウハウを有しており
→②デザイナー等との人脈を生かせる
今回の再現答案では、ノウハウの取り込み、人脈の活用までは3人とも共通でした。
まんの解答を弄るとすれば、「①デザイナー等との人脈を生かせる」の部分で、人脈を活かして「採用」まで踏み込むことで加点要素を増やすことができたと思われます。
●E:戦略の効果
やや人事寄りの解答になったことで組織に関する効果の部分が薄い印象です。
「新規事業を拡大する」「組織を活性化する」など組織面での効果に触れることで点数を伸ばすことができたと思います。
多面的な解答は大幅減点のリスクを減らす効果があり、二次試験では必須です。
事例Ⅰでは「人事/組織」の視点で要素をピックアップし、なるべく多面的な解答が作れる様に意識するのがおススメです。
第2問 攻略の鍵と思われるポイント
・代替わりを含む場合、後進育成や事業承継要素の導入を意識しておく
・経営組織の観点(権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション)を漏らさない
※人材採用など人事寄りの要素を入れた場合も、最終的には組織観点に繋げるとリスク分散できる(〇〇な人材の採用により組織を活性化、など)
・人材採用については文字数に余裕があればどんな人材(今回ならデザイナー)まで踏み込むと加点が期待できるかも
第3問
【第3問】(20点)
A 社は、現経営者である 3 代目が、印刷業から広告制作業へと事業ドメインを拡大させていった。
これは、同社にどのような利点と欠点をもたらしたと考えられるか、100 字以内で述べよ。
◆A:競合との差別化、既存事業とのシナジー効果
◆B:事業戦略の視点で分析 → 「広告制作業で何をするか」を問われている
事業ドメインの拡大が生んだ利点と欠点、それを「差別化」「既存事業とのシナジー」で表現する問題です。
事業戦略視点のため「経営全体の戦略」からひとつレイヤーが下がり、「広告制作業の面」で考える必要があります。
利点と欠点については(内部/外部)の観点で見るのがセオリーの一つです。
要素が足りないときには(内部/外部)の観点で与件文から使えそうな要素を拾いましょう。
●D:欠点(内部/外部)
先ほどの趣旨を満たす解答を、このC~Dの観点で作り上げていくことになります。
リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
利点は
①川上へドメイン拡大しシナジーによる高付加価値化で差別化が可能
②経営リスクの分散を実現できた。
欠点は
①多くの競合が存在し競争が激しく新規市場開拓や受注獲得が困難
②経営資源の余力がなくなった
◆A:競合との差別化、既存事業とのシナジー効果
◆B:事業戦略の視点で分析 → 「広告制作業で何をするか」を問われている
利点で「①ドメイン拡大しシナジー」「①高付加価値化で差別化」と、「シナジー」「差別化」共に趣旨で明記されている言葉を使用しています。
事業(広告制作業)戦略の視点についても、欠点で「競合の存在」→「競争激化」→「新規開拓困難」と因果を踏まえて触れているので問題無さそうに見えます。
欠点で挙げている「②経営資源の余力がなくなった」については加点が入った可能性はありますが、一次試験知識を忠実に再現するなら「資源の分散につながった」というドメイン拡大に関する欠点をそのまま挙げた方が安全だったと思います。
●C:利点(内部/外部)
内部の視点からは「①シナジーによる高付加価値化」「②経営リスクの分散」、外部の視点からは「①高付加価値化で差別化」と、それぞれ要素を拾えています。
ただし、「川上へドメイン拡大」についてはリスキーな選択だったと今は思っています。
「川上」まで限定しなくても良かったし、この事業ドメインの拡大が「川上」とは言い切れないため減点の可能性があったからです。
加点を狙っての具体化もひとつの試験戦略ですが、二次試験は60点を目指す試験。安全を期するなら無難に終わらせておくのもアリです。
●D:欠点(内部/外部)
内部の視点からは「②経営資源の余力がなくなった」、外部の視点からは「①競争が激しく新規市場開拓や受注獲得が困難」と、それぞれ要素を拾えています。
営業力の不足についての言及があれば加点が期待できたかもしれません。
あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
利点は
①地域内の中小企業が大半の既存顧客に提供できる価値が増え売上拡大し
②紙媒体依存脱却で経営リスク分散できた。
欠点は
①自社の印刷技術活かしにくい競争の激しい環境で
②新規受注困難で営業に資源要すること。
◆A:競合との差別化、既存事業とのシナジー効果
◆B:事業戦略の視点で分析 → 「広告制作業で何をするか」を問われている
利点「①提供できる価値が増え売上拡大し」とシナジー効果についての言及があり、事業(広告制作業)戦略の視点についても利点「②紙媒体依存脱却で経営リスク分散」、欠点「①自社の印刷技術活かしにくい競争の激しい環境」「②新規受注困難で営業に資源要する」と多面的に要素を網羅できています。
趣旨で挙げられている「競合との差別化」については「提供できる価値が増え」で拾えているように見えますが、「差別化」まで明記があればより得点が伸びた可能性があります。
●C:事業承継
内部の視点からは「①価値が増え売上拡大」「②経営リスク分散」とそれぞれ要素が拾えています。
特に「②経営リスク分散」については「紙媒体依存脱却で(因)」「経営リスク分散(果)」と因果関係がはっきりしておりスマートな印象を受けます。
逆に「①価値が増え売上拡大」の前に記載されている「地域内の中小企業が大半の」についてはどちらかと言えば事例Ⅱのマーケティング目線になっている様にも見えます。
因果関係の補足になっているため加点対象になった可能性もありますが、ここの文字数を使って「シナジー」や「差別化」など鉄板のキーワードを盛り込んでおくのもアリかなと感じました。
外部の視点からは「②紙媒体依存脱却」と競争力の強化につながる要素を盛り込んでいます。
●D:欠点(内部/外部)
内部の視点からは「①自社の印刷技術活かしにくい」で既存事業のノウハウが活かせなかったこと、「②営業に資源要する」で経営資源の分散に言及、外部の視点からは「①競争の激しい環境」とそれぞれ要素を網羅しています。
与件でも触れられている営業力不足について「営業に資源要する」と表現されており意味は通りますが、よりリスクを減らすのであれば「営業への資源が不足」とハッキリと言い切った方が良いかもしれません。
「資源要する」「資源が不足」どちらも意味は同じですが、今回は設問に「欠点」と明示されていることもあり、より強い表現の方が題意に沿っていると考えられます。※資源要する、のままでも欠点として十分意味は通ります。あくまで採点者の目線で見た場合のいちゃもんとしてご容赦ください…
まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
利点は
①事業領域の拡大により対象市場が拡大し、新規事業開拓が図れる事、
②既存事業とのシナジーを発揮できる事。
欠点は
①事業拡大により経営資源が分散してしまう事、
②外部企業の管理強化の必要性が生じた事。
◆A:競合との差別化、既存事業とのシナジー効果
◆B:事業戦略の視点で分析 → 「広告制作業で何をするか」を問われている
利点で「②既存事業とのシナジーを発揮」とシナジー効果についての明記があり、欠点で「①経営資源が分散」「②外部企業の管理強化の必要性」とそれぞれ事業戦略の視点を示しています。
●C:事業承継
内部の視点からは「②既存事業とのシナジー」と、趣旨にもあった「シナジー」の用語を使用しています。
欲を言えば前の2人の解答にある様な「経営リスクの分散」の要素も取り上げておきたいところです。
「経営リスクの分散」は一次試験の事業ドメインの拡大や多角化のメリットで、真っ先に挙げられる項目です。
「①事業領域の拡大により対象市場が拡大し(因)、新規事業開拓が図れる事(果)」と因果関係を踏まえて分かりやすい解答になっている反面、伝えていることは「売上拡大」の1点になってしまっている点が勿体ないと感じます。
今回の問題では「事業ドメイン拡大の結果」が求められているため、問題文との重複を削除し「対象市場の拡大により(因)、売上拡大(果)と経営リスクの分散が図れること(果)」とすると、ほぼ同等の文字数で要素を一つ足すことができます。
外部の視点からは「①事業領域の拡大により対象市場が拡大」「②新規事業開拓」とドメインの拡大によるメリットとして代表的な「売上拡大」について言及しています。
こちらは過不足なく文字数制限の中で上手く纏められていると感じます。
●D:欠点(内部/外部)
内部の視点からは「①事業拡大により経営資源が分散」が挙げられており、良いと思います。
外部の視点からは「②外部企業の管理強化」が挙げられています。これももちろん欠点ではありますが、優先度が低いと感じます。
今回の問題で問われているものは、事業ドメインを拡大した結果、引き起こされた欠点になります。
事業ドメインを拡大したことで外部との連携強化が必要になり、そこに経営資源を投入する必要が出てきたのは確かです。
ただし、これは事業ドメインの拡大結果というよりは、外部企業との連携についての視点であり、どちらかと言えば後続の第4問で求められている要素になります。
「事業ドメイン拡大 → 外部との連携強化の必要性 →管理強化の必要性」、と若干連想ゲーム寄りになっている点が、採点者がどう感じるかという点で賭けになってしまう可能性があります。
今回は賭けに出るよりも、もっと無難に「競争環境が激しく受注が取れない」などを取り上げておく方が解答のリスク分散になったと思われます。
第3問 攻略の鍵と思われるポイント
・趣旨にもある「差別化」、「シナジー」という定番キーワードをそのまま利用する
・利点、欠点ともに内部と外部から多面的な解答をする
・取り上げる要素は与件に明記がある、もしくは一次試験知識直結の内容を優先(つまり誰でも思いつくものを優先)
第4問
【第4問】(20点)
2 代目経営者は、プロジェクトごとに社内と外部の協力企業とが連携する形で事業を展開してきたが、3代目は、2代目が構築してきた外部企業との関係をいかに発展させていくことが求められるか、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
◆A:協力企業との関係
◆B:ネットワークの構築
ここだけすごくフワッとしています。
捉えどころの無い趣旨なだけに、受験者の中でも最も解答に差が出たことが予想されます。
一次試験のフレームワークに沿うなら、幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」、特に「ネットワーク」「コミュニケーション」あたりに照準を当てて解答していくのがセオリーとなるのかなという印象です。
●D:取組の効果
先ほどの趣旨を満たす解答を、このC~Dの観点で作り上げていくことになります。
リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
助言は
①外部の協力企業と双方向に積極的な交流を図り
②関係性を良化することで一時的でない強固な協力体制に変化させ
③多様性を意識した人材活用で内部や外部の人材を有効活用できる体制を構築する
◆A:協力企業との関係
◆B:ネットワークの構築
「②関係性を良化」で協力企業との今後の関係性について、「①双方向に積極的な交流」「②協力体制」、「③外部の人材を有効活用できる体制」でネットワークの構築についてそれぞれ言及しています。
この問題は非常に事例Ⅱっぽく、「双方向コミュニケーション」→「関係性の良化」→「愛顧の獲得」と機械的にやってしまいそうな部分です。
実際に僕も最初は思いっきり上の流れ「双方向コミュニケーション」→「関係性の良化」と書いていました。
途中で事例Ⅰであることに気づき、体制面についての記述を入れたのが自分的にファインプレイでした(自分で言うなとツッコミ入りそうですが)。
ただ、他の再現答案やふぞろい等を見ていても、この部分は事例Ⅱ寄りの解答(「双方向コミュニケーション」→「関係性の良化」)で留めているパターンが多く見られ、趣旨でも「協力企業との関係とネットワークの構築について助言」とされているため、無理やり組織面での解答にまで踏み込む必要はなかったかもしれません。
ただ、「関係性を良化」に留めず、組織面での「協力体制の構築」や次のあらきちの解答にもある「新規需要の創造」など、一歩踏み込んだ所まで解答している場合は加点があった可能性が高いです。
この問題を素直に考えると、要素は「関係性の良化」くらいしか確実に取り込めるものが見当たりません。
趣旨が「協力企業との関係とネットワークの構築」とフワッとしていることもあり、最低限押さえるべきは「関係性の良化」まで。
関係性良化のための施策や効果についてはある程度は振れ幅があり、因果関係がしっかりしていて与件と齟齬の無い内容であればOKというものだったのかなと思います。
●C:発展のための取り組み
→①双方向に積極的な交流
→②関係性を良化
→③人材を有効活用できる体制を構築
取組の起点は交流による関係性の良化、そしてその実現のための体制構築を要素として使用しています。
もしここから弄るとすれば、「交流」から発展させて「情報共有を進めお互いのノウハウを活用し」など、交流の内容にまで踏み込むことが出来ればさらに加点が見込めたかもしれません。
●D:取組の効果
→②強固な協力体制
→③内部や外部の人材を有効活用できる体制
「②強固な協力体制」で外部との関係性に対しての効果を、「③内部や外部の人材を有効活用できる体制」で内部の視点も交えた解答になっています。
ただ、どちらもほぼ同じことを言っている点は否めないので、この2つを1つに纏めてしまい「新規需要の開拓」など、この施策に期待する効果まで入れることが出来ればより多面的な解答になったものと思われます。
あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点)
求められるのは
①新規需要創造するためのニーズ収集できるようコミュニケーションを円滑化し
②共通の目的を持ち
③協力企業の強みに応じて連携し
④事業間も含めたシナジーを発揮できる関係性構築し、売上向上すること。
◆A:協力企業との関係
◆B:ネットワークの構築
この問題に関していえば僕の解答よりもあらきちの解答の方が得点が高かったように思います。
「②共通の目的」「③協力企業の強みに応じて連携」「④シナジーを発揮できる関係性構築」と組織面での要素を押さえつつ、「①新規需要創造するためのニーズ収集」「④事業間も含めたシナジー」という方向性を示した上で、ゴールの「④売上向上」にまで繋げています。
趣旨の「協力企業との関係」「ネットワークの構築」についても取りこぼしが無く、ここは正直、いちゃもんが思いつきません。
●C:発展のための取り組み
→①ニーズ収集できるようコミュニケーションを円滑化
→②共通の目的を持ち
→③協力企業の強みに応じて連携
要素の量も多面的な見方も問題なく、ほぼ減点無しだったのではないでしょうか。
欲を言えば、1点。
与件文から現在の外部企業とは案件ごとの関係であることが示唆されています。
そのため「②共通の目的を持ち」の部分に補足として「継続的な関係」「全社的な関係」などの要素を追加することができれば、より外部企業との方向性が具体的になります。
●D:取組の効果
→④事業間も含めたシナジーを発揮できる関係性構築
→④売上向上
文句が思いつかないので1点だけ。
「関係性構築」でも良いとは思うのですが、この外部企業との関係は既存のものも含まれると思われることから「関係性強化」の方が良いかもしれません(苦しい…これくらいしか言えることが無い…)。
まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
①デザイン部門のデザイナー等を外部企業との共同PJに参画させる事で士気向上を図り組織活性化を図る事、
②オペレーションの管理担当者を選任しサプライチェーンの管理徹底し連携強化し高付加価値化で差別化図る事。
◆A:協力企業との関係
◆B:ネットワークの構築
「②連携強化」と趣旨を捉えつつ、具体的な手法について言及しています。
特に「①共同PJに参画」「②オペレーションの管理担当者を選任」などは施策として非常に具体的で分かりやすく、それぞれ後続の「①士気向上を図り組織活性化」と「②サプライチェーンの管理徹底し高付加価値化で差別化」との因果関係がしっかりしています。
●C:発展のための取り組み
→①デザイン部門のデザイナー等を外部企業との共同PJに参画
→②オペレーションの管理担当者を選任しサプライチェーンの管理徹底
→②連携強化
因果関係がしっかりしており非常に分かりやすい反面、表現が丁寧すぎる印象です。
ここの表現で、かなりの文字数を食われています。
●D:取組の効果
→①組織活性化
→②高付加価値化で差別化
組織活性化、高付加価値による差別化ともに取組の効果としては定番で、内部/外部と多面的に網羅できています。
先の「C:発展のための取り組み」の施策を簡略化し、「需要の創造」や「売上向上」など別の要素を追記すれば隙のない解答になりそうです。
第4問 攻略の鍵と思われるポイント
・発展のための取組の観点として関係性の強化をベースに考える
・他の発展のための取組として、組織面で情報共有やコミュニケーションの活発化、連携体制の強化を挙げると加点が期待できそう
・効果については内部の視点で組織活性化、外部の視点で新規需要開拓や売上向上などA社の抱える課題にリンクさせると説得力が増す
第5問
【第5問】(20点)
新規事業であるデザイン部門を担う 3 代目が、印刷業を含めた全社の経営を引き継ぎ、これから事業を存続させていく上での長期的な課題とその解決策について 100 字以内で述べよ。
◆A:次世代経営者の事業戦略
◆B:経営組織の構築 → 幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」を利用
次世代となっているので3代目の事業戦略、つまり現時点から未来に向かっての戦略を提言します。
提言という言葉を使っていますが、ほぼ助言問題ですので助言と言い換えてしまっても問題ないと思います。
●D:解決法
先ほどの趣旨を満たす解答を、このC~Dの観点で作り上げていくことになります。
リット(R03事例Ⅰ:開示95点)
課題は
①新規の需要を創造し案件獲得により収益性を向上させる。
解決策は
①人材の多様化による活性化でシナジーを発揮し差別化し
②高精度重視の分野に絞り価格競争を避けて余力を生み
③投資により営業力を強化する
◆A:次世代経営者の事業戦略
◆B:経営組織の構築(権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーションを利用)
趣旨から見ると「3代目が採るべき、未来に向かっての長期的な施策」を解答する問題です。
「経営組織の構築」と明記されていることから、施策には組織構築の要素を含むと思って間違いなさそうです。
事例Ⅰが人事・組織の観点で回答することは周知ですが、広く「経営組織の構築」と捉えた場合は、採用や配置等を含めた人事もこの中に含まれることになります。
以前の、事例Ⅰのフレーム記事でも挙げた通り、
「雇用」→「活用」→「構造」→「運営」と、それぞれの要素を通して、最終的には組織作りに繋がるからです。
事業戦略が問われていることから「何をすべきか」を解答する必要があり、与件から最も素直に読み取れるゴールは「売上拡大(新市場開拓)」ではないかと思われます。
また、営業力が不足している点も与件文から読み取れるため「営業力の強化」もこれに当たるでしょう。
僕(リット)の場合は「営業力の強化」を「解決策」の方で取り上げていますが、課題でも解決策でもどちらでも得点が入ったのではないかと考えています。
「売上拡大」を課題に設定した場合は「営業力の強化」は解決策(手段)として捉えることが出来るし、「営業力の強化」自体を長期的な事業戦略として捉えることもできるからです。
●C:長期的な課題
長期的な課題については与件から読み取れる「①新規の需要を創造」と、その結果としてのゴールの姿「①収益性を向上」を取り上げています。
●D:解決法
課題で取り上げた「①新規の需要を創造」を実現するための方法として、「①人材の多様化による活性化」「②高精度重視の分野に絞り」「③投資により営業力を強化」の3つを挙げています。
人事面と組織面両面での解答が出来ていると思います。
「③投資により営業力を強化」から繋げて「競争力の獲得」など具体的な強みの記述まで出来ていれば、かなり隙のない解答になったのではないかと感じます。
あらきち(R03事例Ⅰ:開示87点) ※分かりやすくするために再現答案になかった番号を振っています
課題は
①営業体制強化による新規客獲得
②経営環境変化に対応できる体制作りである。
解決策は、
①営業部門新設、
②公平な評価制度導入、
③優秀人材の希望プロジェクトへの配置と権限委譲、
④育成で、士気向上・組織活性化図る。
◆A:次世代経営者の事業戦略
◆B:経営組織の構築(権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーションを利用)
「①新規客獲得」「②経営環境変化に対応できる体制作り」と趣旨を捉えた長期的な戦略を示しています。
●C:長期的な課題
長期的な課題としては、あらきちもほぼ同じもの「①新規客獲得」を挙げています。
与件文に「新規市場の開拓がうまく行っていない」旨の記載があったため、おそらく多くの受験生がこれを取り上げたのではないでしょうか。
ちなみに、与件文で示されるヒントに「〇〇が実現できていない」「▲▲が不足している」など否定表現が登場することがあります。大抵の場合は、この否定表現をひっくり返せば採るべき施策になりますので、真っ先に疑いましょう。
また、「②経営環境変化に対応できる体制作り」についても、趣旨の「経営組織の構築」を捉えています。
こちらにも加点が入ったでしょう。
●D:解決法
課題で取り上げた「①新規客獲得」を実現するための方法として、「①営業部門新設」「②公平な評価制度導入」「③配置と権限委譲」「④育成で、士気向上・組織活性化」と、幸の日も毛深い猫のフレームワークを広く網羅しています。
おそらく、ほぼすべての項目で加点が入ったのではないかと思います。
あらきちの解答がスマートなのは
課題の
「①営業体制強化による新規客獲得」に対して
解決策
「①営業部門新設」
次の課題の
「②経営環境変化に対応できる体制作り」に対して
解決策
「②公平な評価制度導入」
「③優秀人材の希望プロジェクトへの配置と権限委譲」
「④育成で、士気向上・組織活性化図る」
と、因果関係が非常にすっきりしていて分かりやすいことです。
採点者の観点に立つと、あらきちの解答は素直に〇を付けやすい作りになっているのが感じられると思います。
まん(R03事例Ⅰ:開示54点)
課題は
①既存顧客からのニーズ収集力を強化し新規需要創出を図る事、
②外部企業と連携し新規事業創出する事。
解決策は
①営業人員育成し営業力強化図る事、
②外部企業から情報を集め、印刷以外の受注獲得に繋げる。
◆A:次世代経営者の事業戦略
◆B:経営組織の構築(権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーションを利用)
長期的な課題としては3人とも同じ「新規需要創出」という結果になりました。
●C:長期的な課題
長期的な課題を「①新規需要創出」「②新規事業創出」としています。
組織作りに関しては外部連携を取り上げているところが前の2名の解答と異なります。
外部連携については既に第4問で協力企業との関係性について問われており、この部分についても作問者の求める方向性に合致していたと思われます。
気になる点としては、まんの解答の場合「新規需要創出」「新規事業創出」の2つを課題に挙げていますが、この2つはほぼ同じ意味のため同一の要素と捉えられた可能性は否定できません。
もし少し弄るなら「外部企業との連携による新規事業創出とニーズ汲み取りによる新規需要創出で売上拡大」など、収益性への言及が出来ていればさらに加点が期待できたと思われます。
●D:解決法
課題で取り上げた「①新規需要創出」「②新規事業創出」を実現するための方法として、「①営業人員育成し営業力強化」「②外部企業から情報を集め、印刷以外の受注獲得」を挙げています。
「①営業人員育成し営業力強化」については課題と因果関係もはっきりしており良いと思います。
ただ、「②外部企業から情報を集め、印刷以外の受注獲得」については、課題「②外部企業と連携」と解決策「②外部企業から情報を集め」の部分がほとんど同じになっているのが勿体ないと感じました。
趣旨にある「経営組織の構築」の視点で、まんの解答を見ると、課題「②外部企業と連携」と解決策「②外部企業から情報を集め」で、幸の日も毛深い猫のフレームワークから「ネットワーク」「コミュニケーション」を満たしているように見えます。
ただ、どちらも連携先が外部企業であり、内部の組織体制変更には直接言及していないことが分かります。
「情報共有を密に行う体制づくり」「外部人材を活用しやすい部門の整備」など自社の組織構造変化についての言及があれば、より多面的な解答になったと思います。
第5問 攻略の鍵と思われるポイント
・長期的な課題は与件文から拾うなら「売上拡大」や「営業力強化」
・経営組織の構築を内部の視点(組織作り/活性化等)と外部の視点(連携等)で捉えると多面的な解答に
・課題と解決法の因果関係を意識する
さいごに
R03事例Ⅰの再現答案分析、いかがだったでしょうか?
予想通りめちゃくちゃ長くなりました💦
色々と再現答案に対して分析・指摘をしてはいますが、これも絶対に正解かと言われるとそんなことは無いと思います。
ただ、二次試験は受験生の皆さん自身が自分で事例を分析し、自分が80分で解答できるだけの解法を作り上げていく試験です。
「解法を育てていく試験」というのがミソで、他人の方法をモロパクリしていても安定した実力は身に付きません。
パクってから如何に自分に合わせてカスタムできるかが勝負です!
解法を練り上げた者の強みは、2年で事例Ⅰ&Ⅱの合計4回の試験で3回も80点オーバーを叩き出している「あらきち」が示してくれています。
とはいえ、あらきちも最初からそこまで完成度の高い解法を作り上げていたわけではありません。
あらきちも、僕も、まんも、他の道場メンバーや他の合格者の皆さんだって、最初は皆さんと一緒のスタート地点でした。
試験に合格できるだけの解法を作り上げるために必要なのは、自分で事例を解き、徹底的にその結果を分析することです。
泥臭い方法ですが、それが一番の近道だと信じています。
僕は二次試験はほぼ独学(診断士ゼミナールを事例Ⅳだけ使用)でした。
一番困ったのは自己採点で、事例Ⅰ~Ⅲではふぞろいを使ったキーワード採点しかできなかったこと。
そして勉強仲間が居なかったので、効率の悪い方法になっていても誰も指摘してくれなかったことです。
趣旨に沿って真正面から解答したり、キーワードの因果関係を意識したりといった手法に出会い、納得の行く解法に到達したのは二回目の二次試験前でした。
ブログ読者の皆さんには、解法完成までの手順を少しでもショートカットして頂こうとの想いから、今回の事例分析では「自分で採点出来るようになる」というのを意識して記事を作っています。
皆さんも事例を解いた後、公式から該当年度の趣旨を探し、ふぞろい片手に解答を分析してみて下さい。
今回の記事で使っている分析の方法はスマートとは言えませんが、逆に言えば【趣旨】とふぞろいさえあれば誰でもできる方法です。
慣れてきたら自分なりの分析を加え、ブラッシュアップしてみてくださいね。
二次試験終了後のセミナーで「この記事の分析手法はもう卒業したぜ!」という声を頂くのを楽しみに、この記事の筆を置きたいと思います。
最後に、令和3年度の道場13代目のリンクと、僕(リット)・あらきち・まんの事例Ⅰに関連する記事のリンクをご紹介しておきます。
事例分析を進める際の材料として、ぜひお使いください!
まず、こちらが道場13代目の再現答案一覧です!
事例Ⅰ~Ⅳまで全部入ってるよ!
今回の事例分析でも使用した、令和3年度_事例Ⅰの80分の過ごし方です。
ファイナルペーパーをどうやって作っていったかも載せています。
2年連続で80点オーバーを叩き出した事例Ⅰの設問解釈です。
対策しづらいと言われる事例Ⅰの攻略にぜひお役立てください!
事例Ⅰのレイヤーや設問について紹介するよー!
人によって解釈の視点が変わってくるのを実感して欲しいな。
次は事例Ⅱの分析で会いましょう!
明日はhotman🔥の出番ですよ!
あなたのやる気を整えます!
ちなみに今回の記事で23,000字オーバーでした!
これをあと2回…💦
フフフ…
事例Ⅱでは私も登場しますよ
今回、再現答案を取り上げきれなかったメンバーの分は個人ブログでやってるよ!
良かったら、こっちも見ていってね!
※注:外部リンクになります
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