間違いだらけの「ローリスク」「複数解釈」
こんにちは。ハカセです。
今回は某大手予備校の「ローリスクメソッド」や「複数解釈」について考えたいと思います。
この話題について、実は道場で何回も取り上げています。
ふうじんは この記事 で「『複数解釈』『ローリスク』は(・・・わざと中略・・・)最大の不合格者数を生んでいる指導法」と 断言 しています。
実は私ハカセも、この記事「事例のルールが甘い時」 と、 この記事「キーワードやフレームワークに頼らない!」 で、「大きな間違いです」と 喝破 しています。
大手予備校が言っていることは誤っているのでしょうか?
■ 事例の「ルール」や「要求」を再確認 ■
「事例のルールを守るということ」という記事 や、「事例のルール。事例のゴール。」の記事 でも解説したように、事例を解くうえで一番大事なことは、
『 事例のルールを守って愚直にゴールを目指すこと。 』
です。
個人的には、「愚直に」の言葉に注目してほしいのです。
奇をてらうことなく、愚直にルールを守って、愚直にゴールを目指す。これが大事なポイントです。
また、ふうじんは この記事 で、
「事例の本質とは
要求に沿って解答することに尽きる」
という講師の言葉を引用しています。
両者の言い分は、ほぼ重複していると言っていいでしょう。
そして、ルールを守ると、この図が示すように、自然にゴールに導かれていきます。
だって、「進入禁止」のマーク(=事例のルール)がついているんですもの。
出題者にしてみれば、「どうしてゴールにたどり着けないか、不思議でしょうがない」のだと思います(罪なセリフですね)。
■ ルール違反の複数解釈はダメ ■
多くの迷える受験生が「複数解釈」を活用するシーンというのは、「何を書いていいか分からない時」です。
「分からないから、『複数解釈』と称して、思いついたこと・関係ありそうなことを列挙する」
というパターンです。
確かにそういうシチュエーションもあります。ルールが余りにも曖昧だった場合、そういう対応をせざるを得ないでしょう。
でもそれは、最後の最後の最後の最後の 手段です。
必ずルールがある。必ず要求がある。
そして必ずゴールがある。
そして、必ずそれを(またはそれに近い記述を)書ける受験生がいる。
(あ、ここ ↑ が ふうじん が言っていた 非差別化戦略 ですね)
それを意識して、ルールを読み込むべきです。
■ 要求解釈ならやってるよ ■
「知ってるよ、設問文要求解釈でしょ? やってるよ」という受験生もいます。
違うんです。
「ルール」というのは、設問文にのみあるわけではありません。
「事例本文」と「設問文」、「欄外の注記」や、「事例Iであること」も含めて、全てがルールです。
■ 正しい複数解釈とは ■
図を再掲します。しつこいですか? でも重要なんです。
ゴールが実践ではなく「点線」で囲われていることに注目してください。
そう。いくらルールを正しく読み込んだとしても、出題者側の意図は完璧には見えないのです。
だって試験なんですもの。そのものズバリを一字一句再現できるようなルールを提供したら、みんな書けちゃうじゃないですか。
だから、間接的に、やんわりとしたルールで伝えているんのです。
つまり、ルールにいくら厳格に従ったとしても、出題者側が示す「模範解答」を必ずしも当てることはできないのです。
ここで初めて、複数解釈が活躍するのです。つまり、
複数解釈は
点線で囲われた範囲でのみ検討されるべき
なのです。
例えば、
「いま、あなたは大阪にいます。これから、ヒッチハイクで移動してください。ゴールは東京です」
と言われても、東京のどこがゴールなのか、よくわかりませんよね。
東京に到着しても、「ゴールテープ」は見当たらない。そこで、皇居や、雷門や、お台場に行ってみるのは、正しい「複数解釈」です。
でも、「東京のように都会のイメージのある横浜」にいってみたり、「東京ディズニーランド(ひっかけ問題としてはアリ?)」にいったりはしないでしょう。これは誤った「複数解釈」です。
■ 「点線の中」の複数解釈とは ■
事例でいえば、こういうことです。
【例題】事例Iにおいて。
「変化に対応する必要に迫られている小売A社に診断士としてアドバイスせよ」
そして、解答としてあなたが「ローテーションを導入する」という「ゴール」たどりついたとしましょう。
でも、字数がだいぶ余っています。こんな時、どうしますか?
「ルール違反の複数解釈」とは:
- (すでに行われているけど)「社内研修の強化」にも言及する
- (たまたま思いついた)「社長のリーダーシップ」を追加する
- (事例Iなのに)「広告宣伝やダイレクトメール」をやってみる
「望ましい複数解釈」とは、
- ローテーションが「現在行われていない」ことに言及(要因サイド)
- ローテーションが「これまで行われていなかった理由」に言及(要因サイド)
- ローテーションで「どんな人材が育つか」に言及(結果サイド)
- ローテーションによって「変化に対応できるようになる」ことに言及(結果サイド)
- ローテーションでは極端すぎるかもしれないので、「情報やノウハウの共有」「部門間交流」という柔和な表現も盛り込む(点線内でのニュアンス補足)
- ローテーションの具体的なルール(定期的、希望に沿った、トップダウンで)について言及してみる(提案の補足)
- ローテーションによる弊害(士気低下、情報散逸)への対策(必要性の説明、納得性の確保)に言及する(提案の納得性強化)
こういう検討ができることが、僕が信じる「複数解釈」です。
つまり、複数解釈とは、
- ルールに「愚直に」従ったとしても、たどりついたゴールの範囲内で、何が聞かれているかはよく分からない
- だから、ゴールと思しき範囲内で、タテ(因果)とヨコ(フレームワーク)で解答要素を類推する
- 字数制限が許す範囲で、それらの解答要素をできる限り多く盛り込む
ということだと、僕は思うのです。
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「最大の不合格者を生んでいる」複数解釈ですが、正しく使えばこんなに素敵なメソッドはありません。
かくいうハカセも、最初は「典型的な勘違い受験生」でした。
それもこれも、「事例のルール」と「事例のゴール」を意識できたからこそ生きる「複数解釈」だということを認識することができたことは、ラッキーだったと思います。
今後は、
- 「模範回答を目指すべからず」
- 「プラスα な解答を書くには」
を取り上げたいと思います。本試験日までに間に合うかな。
by ハカセ