【経済】アベノミクスって?

皆さん、まいどです。ひろいんです

 

試験合格に向けて勉強中の皆さんも、「アベノミクス」は聞いたことがあるんじゃないかと思います。安倍内閣のマクロ経済政策のことですね

効果があってのことなのか、色々と議論されているようですが、株価が上がり、円安となっているのは事実。

折角のタイムリーなネタなので、これを機会に、試験対策として見てみるのもよいかと思いますっ!

 

という訳で、今日は、アベノミクスの3本の矢の一つである金融政策に関わる論点である「マンデル=フレミングモデル」について、ちょっとだけその理論を覗いてみたいと思います。

 

◆IS-LM-BP分析◆

IS-LM分析に資本移動と海外取引とを加え、①資本移動が完全に自由②為替制度を考慮したケースを、マンデル=フレミングモデルと呼びます。

IS-LM分析にBP曲線が追加されています。

IS-LM分析は、閉鎖経済、つまり自国内のみで考えるモデルですが、IS-LM-BP 分析では海外も考慮に入れたモデルなので、より現実に近いモデルだと言えます。

さらに、マンデル=フレミングモデルでは、自由な資本移動と為替制度といった、より現実に即したケースを考えて、金融政策と財政政策の有効性を論じているのです。

政策の効果について説明する前に、簡単に言葉の注釈をしておきますね。

IS-LM-BP分析のISとかLMとか、いったい何なのか。もちろんただの記号ではありません。

その意味も押さえておくと、きっと忘れにくくなると思いますよ。

IS曲線のISは、「Investment(投資)」と「Savings(貯蓄)」の頭文字を取っていて、I=Sとなる曲線、 つまり投資と貯蓄が等しくて、 財市場が均衡していることからきています。

LM曲線のLMは、「Liquidity Preference(流動性選好)」と「Money Supply(貨幣供給量)」の頭文字からきています。
LM曲線の意味するところは、貨幣市場を均衡させる国民所得と利子率の組み合わせの集合となる曲線なのです。

BP曲線のBPは、「Balance of Payment(国際収支)」のことで、BP曲線は国際収支が均衡する国民所得と利子率の組み合わせの集合からできた曲線です。

BP曲線は、完全に資本移動が自由なケースでは、水平なグラフで表されます。

 

◆現実の経済で一体何が起きるのか◆

アベノミクスでは、金融政策では金融緩和策を取っていて、貨幣供給量を増加させています。

どのような効果があるのか、より現実に近い変動相場制のケースでマンデル=フレミングモデルで説明すると、こんな感じです。

①金融政策の発動により、LM曲線がLM’へと右シフトします。

すると、EからE1へと利子率が低下します。

利子率が下がると、より高い利子率を求めて資本の流出が起こります。

資本の国外流出は、円を売ってドルに換えることを意味するので、円の価値が下がり、円安ドル高となります。

円安ドル高は、輸出が増えて輸入を減らすことになります。

②そうすると、国内の財市場の需要が増えて、IS曲線が右シフトして、E1からE2へと均衡点が移動することになるのです。

国民所得(Y)は、めでたく増加して、金融政策は有効との結論になる訳です

 

次に、財政政策を発動するとどうなるか、マンデル=フレミングモデルで説明します。

 

①財政施策の発動によって、IS曲線が右シフトします。

すると、利子率が上昇して、外国からの資本流入が起こり、EからE1へと均衡点が移動します。

ところが、資本流入が起きるということは、海外資金のドルを売って円を買うということなので、つまり円高ドル安になります。

日本にはドルがどんどん入ってくることになるのです。(円の貨幣供給量は増えませんので、LM曲線は動きません。

近年の日本経済を見ればお分かりのとおり、円高ドル安になると輸出は減って、輸入が増えることになります。

そうすると、国内の財市場は需要が減って、②IS’からISへと戻ってしまうことになります。

結果、財政政策は無効であると、マンデル=フレミングモデルでは説明されることになります。

 

さて、いかがでしょうか。

今回は変動相場制のケースだけを取り上げましたが、基本となる財市場・貨幣市場について、きちんと理解していないとマンデル=フレミングモデルも、なかなか腑に落ちてきません

逆に言うと、マクロ経済の全体像をつかんで、俯瞰的に理解できるようになると、すべてが有機的につながって、スッと頭に入ってくる瞬間が来るんです

少し硬めの話になりましたが、とっても大事なことなんです。一昨年の経済WEEKでのwackyきょくしんの記事でも全体の流れをつかむことの大切さを言っています。

ひろいんの以前のエントリーでも書きましたが、少々分からない点があっても、経済はとにかくひと通りやり切って全体像をつかんでください。

そうすれば、本当に、びっくりするほど理解が進むようになる時がやって来ますよ

今日はここまで。

ほな、また

By ひろいん

*なお、IS-LM-BP分析の変動相場制の場合のみをマンデル=フレミングモデルとしていましたが、固定相場制のケースもありますので、加筆訂正しています。

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【経済】アベノミクスって?”へ5件のコメント

  1. ひろいん より:

    あっきー様

    ご指摘いただき、ありがとうございます。
    確かに「E’からE”」ではなく「E1からE2」です。表中の記号と本文とが合っていませんでした。大変失礼しました。
    ご指摘を受け、修正いたしました。

    きちんと細部まで読んでいただいて、大変うれしい限りです。校正には注意を払っているつもりでしたが、今後はより一層、間違いのないように留意して参ります。

    これからも、一発合格道場に、忌憚のないご意見をお願いいたします。

  2. あっきー より:

    記事、興味深く拝読しました。

    細かな点で恐縮ですが、金融政策発動の場合のご説明で、
    「そうすると、国内の財市場の需要が増えて、IS曲線が右シフトして、E’からE”へと均衡点が移動することになるのです。」とあるのは、図を見るにE1からE2(もしくはEからE2)へ移動とするのが正しいのではないでしょうか?

    お手数ですがご確認お願いいたします。

  3. ひろいん より:

    通りがかりの診断士の卵 様

    コメントいただき、ありがとうございます。そのように読めてしまう可能性があることは、ご指摘のとおりですね。
    マンデル=フレミングモデルでは、基本的に流動性のわなを前提条件にしていないので、特に注釈を付けていませんでした。あくまで、アベノミクスは導入として旬の話題であり、決して金融政策だけが成功するという趣旨ではないことを、ご理解いただければ幸いです。
    これからも、一発合格道場をよろしくお願いします。

    名乗るほどの者ではありません 様

    ご意見ありがとうございます。
    おっしゃる通り、経済学は現実の世界を説明するために、様々な制約条件を付けることでシンプルにして、その仕組みを解明しようというものだと理解しています。
    ご指摘の通り、話のキッカケとして、アベノミクスを取り上げたのですが、通りがかりの診断士の卵様のご意見にもあったように、誤解を生む可能性も否定できません。
    今後も、より分かりやすくて親しみをもって読んでもらえる記事を目指していきたいと思います。そのためには、皆様のコメントはとても大事なものだと思っています。
    同期合格者として、今後ともよろしくお願いします。

  4. 名乗るほどの者ではありません より:

     通りがかりの診断士の卵 様、初めまして。
     私は、平成24年度診断士試験に合格し、実務補習を終えていない者です。
    「流動性のわな」が発生してないことを前提として説明をした方がよいとのご意見ですが、私は、マンデル=フレミングモデルは、当然に「流動性のわな」に陥っていないことを前提にしていると理解していました。なぜなら、LM曲線が右上がりに書かれているからです。貴見のとおり、「流動性のわな」に陥っているときは、LM曲線は水平になりますが、モデルとして、LM曲線は右上がりに書いているということは、つまり、わなには陥っていないことを前提にしているはずです。
     また、付け加えれば、資本移動が完全に自由という点もフィクションであって、現実には一定額以上の資本移動が禁止されたり、許可制、届出制となっていたり、移動手続が煩雑だったりして、現実のBP曲線は右上がりになるだろうと思います。
     ご存知のとおり、経済学は、あくまでも一定の前提を設定した上でモデルを提示するものであって、現実経済の動きをすべて説明しつくせるわけではないとの相互理解の上で、いかにうまく現実経済の動きを説明できるモデルを構築するかという優劣を競っているのでしょう。
     ひろいん様の記事のご趣旨は、診断士試験で出題される論点を身近な話題に引き付けて考えると納得しやすくよく理解することができるという、これまでにも一発合格道場様の他の記事にも見られたことと同じことを主張しているのだと、私には理解できました。ヒロイン様がアベノミクスを持ち出したのは話のまくらとしてであって、マンデル=フレミングモデルに少しでも興味をひいて話をつなげる意図であったかと拝察します。
     敢えて厳しいことを言えば、ひろいん様の記事を読んで、「アベノミクスは金利政策のみ成功する」ということを主張していると理解する程度の読解力では、1次試験に合格できても、
    2次試験には到底合格できないでしょう。
     不躾に貴見とは異なる意見を述べてしまいましたが、これも意見の多様性の現れとして、お気を悪くせず、ご理解ご容赦いただけたら幸いです。 
     全くの部外者が長々とコメントしてしまい、失礼いたしました。一発合格道場様のご趣旨にそわないようであれば、私のコメントは削除していただいて結構です。

  5. 通りがかりの診断士の卵 より:

    「アベノミクスは金融政策のみ成功する」と受験生にミスリードさせる内容で、不安を感じました。

    試験対策的にはOKだと思いますが、
    実際には「流動性のわな」の状態で、LM曲線が水平になっていますので、結論が別の方向に向かうのではないでしょうか。

    「流動性のわな」が発生していない事を前提として、説明をした方がよいと思いました。

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