【経済】理屈を理解して、グラフを書いて・・・

こんにちは。今週2回目の登場wackyです。

今週は経済WEEKということですが、今日はミクロ経済学について記事を書いてみます。
ミクロ経済学を一言でいうと「行動分析」につきます。登場人物は、企業と消費者。それぞれがどのように物を生産し消費(購入)するのかという、「経済活動」をモデル化して説明する学問です。ですので、それぞれの論点を個別撃破するのではなく、「ミクロ経済学」という一つのストーリーbookだと思ってください。

1.企業の行動分析
まず導入は「企業の行動分析」ですが、そもそも企業は利潤を追及するために生産活動を行っています。もっと言えば、できる限り利潤が大きくなることを考えている。じゃあ、利潤が最大化になる生産量ってどうやって決めるの?という疑問に対してモデル化を通して解答を求めようとしているわけです。ここがポイントflair

まず利潤(利益)は簡単に言うと、「利潤=売上-費用」といえますね。
利潤が最大化するためには、費用構造がどうなるのかを定義する必要があるのですが、そこで登場するのが費用曲線です。
企業の総費用を以下のように定義します。
総費用=固定費用+可変費用

これって財務会計でも出てきましたね。ただ用語は可変費用ではなく変動費でしたけど。財務会計では生産効率は常に一定なのですが、経済学ではよりリアルに定義されています。生産量が増えるほど生産効率は上昇するupがある生産量を超えると逆に生産効率は低下するdown。ここもポイントflairです。

ここでふとした疑問。生産効率が変動するということは、最も生産効率が高い生産量が企業にとって利潤が高いといえるのでは?
モチロン答えはノーです。生産効率が高いからといって利潤が最大化するとは限りません
利潤最大化を考える上で必要な概念として、「平均費用」と「限界費用」があります。言葉の意味に惑わされずにしっかり意味を理解しましょう。
平均費用=生産量1単位あたりの総費用
限界費用=生産量を1増やした時の費用(=可変費用)の増加分

さてここまでくればゴールは目の前です。企業行動分析を行う際の前提として「企業は価格受容者(=プライステイカー)である」ってありましたね。つまり企業が生産量を変更しても市場価格には影響ないよってことです。またちょっとわかりにくいですが、生産したものはすべて売れると考えてください。(不良在庫などは考えない)
では利潤が最大化する生産量とはいくつになるのでしょうか?
テキストによると、「価格=限界費用となる生産量」と記載されています。なぜでしょうか?
まず価格>限界費用のケース
この場合はもう1単位生産量を増やした時の追加費用よりも価格のほうが高いですから、もう1単位生産したほうがより利潤が増えます。ですので利潤は最大化されていません。

次に価格<限界費用のケース
この場合はもう1単位生産量を増やした時の追加費用よりも価格のほうが安いですから、もう1単位生産したほうがより利潤が減ります。ですので利潤は最大化されていません。

というわけで価格=限界費用となる生産量で利潤が最大化されると言えるわけです。

利潤最大化を考える際の最大のポイントは、企業の費用構造において生産効率(限界費用)は生産量により異なるということです。財務会計のように生産効率が常に一定だと定義すると、価格>限界費用となる限りは、生産すればするほど利益がでるので、利潤を最大化する生産量が求まりません。

さてもう一つ重要なポイント。損益分岐点と操業停止点について
「価格=限界費用」となる生産数量で利潤が最大となることがわかりましたが、しかし利潤は常に+になるとは限りません。価格はあくまでも市場が決めるものなので、企業の費用構造とは無関係です。よって価格によっては利潤がマイナスとなることもあります。
下図を見てください。よく見る図ですよね。

①価格がP1の時
この時は価格>平均費用となりますので利潤はプラスになります。
②価格がP2の時
この時は価格>平均可変費用となりますので、可変費用は賄えるものの固定費用までは賄えていない状態、つまり利潤はマイナスです。
③価格がP3の時
この時は価格<平均可変費用となりますので、可変費用すら賄えていない状態で、利潤はもちろんマイナスです。

特に、平均費用が最低となる価格を「損益分岐点」、平均可変費用が最低となる価格を「操業停止点」といいます。

最後にまとめると…
①企業にはそれぞれの費用構造がある→費用関数を持つ
②企業は利潤が最大化するように生産量を決める→価格=限界費用
③利潤がマイナスとなる場合、可変費用すら賄えないと生産をやめてしまう(操業停止)

これが企業行動分析における結論shineです。これが理解できていれば先に進んでもokです。
これらの論点が理解できたかどうかは、過去問H19年第13問が解けるかどうかで試してみてください。とても良問ですよ。

2.市場均衡と厚生分析
次はこの領域で重要な論点の「厚生分析と自由貿易」を過去問をベースに考えてみます。
H21年の第10問。非常に典型的で基本的な厚生分析の問題ですが正答率はC。

次の輸入関税と生産補助金の効果に関する文章を読んで、経済厚生分析の説明として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ。
下図は、輸入競争財市場(たとえば農産物)を描いたものである。いま、当該財の国内需要曲線がDDで、国内供給曲線がS1S2で描かれている。ここで、自国は「小国」であり、当該財の国際価格をPfとする。自由貿易下での消費量はQ1、生産量はQ2であり、輸入量は(Q1-Q2)に等しい。
ここで、当該財の輸入にTの関税を賦課した場合、国内価格はPd(=Pf+T)に上昇する。この結果、消費量はQ3に減少し、生産量はQ4に増加する。他方、生産補助金を交付することで輸入関税の場合と同じ生産量Q4を実現することも可能である。このとき、生産補助金の交付により、国内供給曲線はS1S2からS3S4に平行移動する。
ア 生産者に対する補助金交付額は、四角形S1HIS3に相当する。
イ 生産補助金交付時の経済余剰の損失は、三角形EFGになる。
ウ 生産補助金交付時の生産者余剰は、三角形PfIS3に当たる。
エ 輸入関税下における経済余剰の損失は、三角形EFGと三角形HIJの和になる。
※グラフは省略

与えられたグラフは輸入関税と補助金が一緒に書かれているので非常にわかりにくい。この問題を解くポイントは、まず自分でグラフを書くpencilこと
まずは輸入関税がない状態のグラフを1つ書く。そして次に輸入関税を課税した時のグラフを書く。最後に生産補助金を交付した時のグラフを書く。
まずは輸入関税を考える上でのグラフは下図の通り。

青(消費者余剰)と緑(生産者余剰)で塗りつぶした領域が社会余剰です。

まず輸入関税のケースを考えます。国際価格PfにTを課税するので価格はPdになり、その時の国内生産量はQ4国内需要量はQ3で輸入量はその差分のQ3-Q4になる。この時の状態をグラフで書くと以下の通り。

見ての通り、関税賦課時の死荷重はオレンジ(関税収入)の隣の小さい三角となるので、選択肢エは正解

次に生産補助金を交付する場合。価格はPfだが、国内生産者にはT分の生産補助金が交付されるので、供給曲線が下方にシフトし、価格Pf時の生産量はQ4となる。需要量はQ1でその差額Q1-Q4が輸入量となります。交付される補助金額は国内生産量Q4×交付額Tとなります。

生産補助金を交付した場合のグラフは下図の通り。

ちょっとわかりにくいですが、紫(補助金交付)の領域は青の領域でもあります。ということで死荷重は補助金交付分の紫の領域のうち点線部の三角形(HIJ)

では残りの選択肢を吟味します。
まず選択肢アですが、補助金交付額は紫の領域(PdHIPf)なのですが、S1S2とS3S4が平行なので、S1HIS3は平行四辺形となり紫の領域と同じ面積になります。ということで選択肢アは正解
次に選択肢イですが、死荷重は上記グラフの通りなので明らかに三角形EFGではありません。選択肢イは誤り
最後に選択肢ウですが、生産者余剰はグラフの通りPfIS3です。選択肢ウは正解

ということで誤っている選択肢はイになりますね。
※ちなみにパッと見三角形HIJと三角形EFGは同じ大きさに見えますが、JIとFGが同じ長さとは限らないので同一ではないと判断します。

きれいにグラフを書かなくても、必要な情報がわかるレベルでサッとグラフをかけば、全然難しくないレベルの問題でした。

3.まとめ
今回は直前期ということですが、まだ経済に苦手意識bombがある方のために、ミクロ経済学の導入部分である「企業の行動分析」の解説を行いました。またグラフを書いて問題を解くという観点から、厚生分析の過去問を取り扱いました。他の重要な論点については、こちらとか、こちらとか参照してみてください。
経済すべての領域に言えることですが、「解き方を覚えること」ってすごく大事flairです。昨日のらいじん記事にあるように同じ問題を繰り返し解いて慣れることが大事。私の場合は、スピード問題集を何度も繰り返し解きました。グラフの問題は自分でグラフを書くpencil練習を何度もして、手順を確認しながら何度も愚直に解きましたよ。
理論を覚えることは大事、もっと大事なのは理論を使って問題を解けるようにすることです。みなさんが目指しているのは、経済学者ではなく診断士のはずbleah

諦めないで最後まで頑張ってみてくださいgood

4.おまけ
下図は私が基本講義と完成期に作成した経済用まとめ資料です。

自分が微妙だなぁと思う論点を自分の言葉でまとめながら作成した資料です。経済すべての論点について網羅されていないし、もしかしたら間違いがあるかもしれませんが、もし「見たい」という方いらっしゃればメールでお送りします。WORD文書かPDFで配布しますので、メールアドレスと希望の文書形式をコメント欄に残してください。

(道場注: この記事は2011年の記事です。現在は資料提供をしておりませんのでご了承ください)

by wacky

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【経済】理屈を理解して、グラフを書いて・・・”へ17件のコメント

  1. ハカセ より:

    ゆうのさん、合格目標者さん、岩崎さん、椿さん、コメントありがとうございます。この記事は2011年の記事です。当時執筆したWackyは現在は執筆を離れており、残念ながら資料を提供できる状態ではありません。記事の中に埋め込まれている画像をご活用いただければと思います。もちろん、これは経済のまとめ資料の一部だけです。資料提供を申し出ていながら矛盾することを言うようで恐縮ですが、「まとめ資料」はご自身でまとめることに意義があります(まとめた時点で目的の半分以上を達成している)。この画像を参考にしてご自身でまとめ資料を作成するのも一案と思います。合格を心から祈念しております。

  2. 椿 より:

    経済学の勉強でいきなりつまずき大変困っていたところ、とてもわかりやすい解説をしていただき救われた思いです。
    よろしければ資料を送付いただければありがたいです。WORDでお願いします。

  3. 岩崎弘之 より:

    岩崎と申します。ミクロ経済を受験者目線で解説頂きとても分かり易かったです。まとめられた資料送っていただきたいです。何卒よろしくお願い申しあげます。wordでお願いします。

  4. (できれば)2012合格目標者 より:

    wackyさんへ

    とてもわかりやすく、興味深く参考に
    させて頂いております。ありがとうございます。

    先の皆様のコメントに記載のある
    経済まとめノート(word)というものはお譲り
    いただけるものなのでしょうか。

    もしお譲りいただけるなばら、どのように御礼
    させて頂ければ良いか含めご連絡頂けますと
    幸いです。

    1次試験直前ですが、頭の整理のために是非参考に
    させていただければと存じます。

    何卒宜しくお願い申し上げます。

  5. 2013合格目標者 より:

    経済学に大変不安を抱いております。
    ぜひ参考としたく経済まとめノート(Word)をお送りください。
    よろしくお願い致します。

  6. ゆうの より:

    いつも、参考にさせて頂いてます
    経済学は科目の中でも不安だらけの科目です。
    ぜひノート(Word)を参考にさせて下さい。
    よろしくお願いします。

  7. wacky より:

    >じゅのさん
    経済まとめノートお送りしました。
    経済は初学者にはとっつきにくく難しい科目だと思います。わからないことはじっくり考えるなり、解説書を読むなりして理解できるようにすることをお勧めします。
    それでは頑張ってください。

  8. じゅの より:

    いつも楽しみに拝見しております。
    ときどきドキッとするようなコメントに気持ちを引き締めています。
    そろそろ、経済学の予習に取り組もうとテキストを読んでみたのですが、かなり高い高い壁が立ちはだかっているという感想です。恐縮ですが、経済まとめノートを参考にさせて頂けないでしょうか。よろしくお願い致します。

  9. wacky より:

    >Georgeさん
    コメントいただきありがとうございました。
    遅くなりましたが、経済まとめノートお送りさせていただきましたのでご確認ください。

  10. George より:

    wackyさんへ
    今年の2次試験に敗退し、来年新たに1次試験に挑戦します。
    お手数ですが、まとめをPDFで配布お願いします。

  11. wacky より:

    >keiさん

    コメントありがとうございました。
    まとめノートお送りしましたのでご確認ください。

    気が付けば1次試験まで1か月ですね。ラストスパート頑張ってください。まとめノートが少しでもお役に立てれば幸いです。

  12. kei より:

    wackyさん

    いつも参考になる投稿ありがとうございます。

    経済用まとめ資料をお譲りいただけないでしょうか?

    7科目の記憶の維持に悪戦苦闘しているので、お譲りいただけたら助かります。

    よろしくお願いいたします。

  13. wacky より:

    >うちあーのさん
    御礼コメントわざわざありがとうございます。
    まとめノートは最初からまとまっていたというより、いろいろ試行錯誤した結果なんですけどね。きっちり使い倒してください。

    >匿名さん
    試験に合格することが全てではありません。試験に合格したいと思うなら、何をすべきなのか?を意識することをオススメします。また以前の経験がある以上ゼロからのスタートではありません。少しづつでも積み上げていくことが重要ですよ。

  14. 匿名 より:

    ここ数年一時にトライして、昨年場は受験放棄ゼロからやり直しです。

  15. うちあーの より:

    wackyさん、

    早速お送り頂きありがとうございました。
    さすが、綺麗にまとまっていますね。ポケットテキストよりも整理しやすいかも!
    自分なりにカスタマイズしながら使い倒していこうと思います!

    うちあーの

  16. wacky より:

    >うちあーのさん
    経済のまとめノートお送りしました。
    今年こそ経済にリベンジですね。きっと格好よくKOできると信じております。これからもがんばってください。応援しています!!

  17. うちあーの より:

    wackyさん、

    大変参考になる記事ありがとうございます。
    昨年はあえなく足切りを喰らった経済学ですが今年はwackyさんのように60点獲ってリベンジしたいと思います。

    wackyさんのまとめ資料をwordで頂ければ幸甚です。お手すきの時にお送り頂けます様お願い致します。

    うちあーの

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