【永久保存版】令和5年度事例Ⅰ 再現答案分析(得点:85/75/59) by たいしん

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一発合格道場では夏セミナー座談会(THE DANKAI 2024 Summer)を用意しています。ぜひご活用ください。

本日から計3回にわたって、令和5年度2次試験の15代目再現答案を分析して参ります!こちらは9代目だいまつさんの「超高得点シリーズ」の流れを汲んでおり、内容をブラッシュアップしつつ、脈々と受け継がれてきた記事になります。今回は令和5年度の事例Ⅰです!

私にしては超長文です。要注意です。PC閲覧推奨・ブックマークして復習のお供にお使い下さい!

再現答案分析の定義や目的

  1. 完全ネタバレになります。令和5年度の事例を解いてからお読みください。
  2. 15代目メンバーから3名分(松・竹・梅)の再現答案を使います。
  3. 「出題の趣旨」と「ふぞろい17」を使って、加点・減点ポイントを分析していきます。
  4. 加点要素に下線、設問ごとに採点・評価を行います。
  5. 各設問の評価は、6割以上でA、5割~6割でB、4割~5割でC、4割未満をDとしています。
  6. 最後にふぞろい採点と実際の得点の乖離も確認します。
  7. 設問ごとに導き出される「攻略のポイント」を纏めてお伝えします。

令和5年度事例Ⅰの問題用紙・解答用紙、出題の趣旨は、下記からダウンロードできますので、ご活用ください。(*ダウンロード元はAASの過去問ダウンロードサイトになります。)

本日も宜しくお願いします!

解答者紹介

まずは今回の再現答案分析に協力いただいた15代目メンバーを紹介します!AZUKIには切られ役をお願いしましたが、こころよく引き受けてくれる、ええにーちゃんです😊

おーちゃん(令和5年度事例Ⅰ_85点)

言わずと知れた15代目のリーダー(仮)
その万能さは、もはや(仮)を外して組長レベル

しん(令和5年度事例Ⅰ_75点)

最近クレーンを活用できていなのが悩みの種
製造一筋で15代目No.1のクセつよ

AZUKI(令和5年度事例Ⅰ_59点)

15代目最年少ながら、ぐいぐい引っ張る若き司令塔
そんなに仕事詰めて大丈夫?

第1問

(配点20点)

統合前のA社における①強みと②弱みについて、それぞれ30字以内で述べよ。

出題の趣旨

X社との経営統合前におけるA社の内部環境を分析する能力を問う問題である。

オーソドックスですねー。注意しなきゃいけないのは「統合前」という時制ですね。事例Ⅰでは特に大事です!

おーちゃん

おーちゃん

強み:①オリジナルメニューの開発力、②ゆったりとした座席配置。

弱み:原材料の仕入れが不安定かつ高騰化で収益圧迫顧客の高齢化

採点:14/20、評価:A

時制は外していません。ただ強みの「②ゆったりとした座席配置」が少し弱い気がします。確かに設問2の自身の解答に繋がる要素ではありますが、事例Ⅰであることを考えると、組織面や人事面での強みに言及しても良かったかもしれません。そして「30字以内」なので、出来れば3要素は詰め込みたいところ。弱みの方は言うことないですね。

しん

しん

強み:①相互に助け合うことによる従業員の定着、②看板メニュー開発力

弱み:①原材料の仕入が不安定、②新たな顧客の獲得ができていないこと。

採点:14/20、評価:A

しんも時制はOKです。強みの部分も確り取れています。また後述しますが、第4問でこの強みを生かしているところが、しんの緻密さを感じられます。弱みのところは、もうひと要素欲しかったところですね。②の新たな顧客の~が少し冗長的なので、短く区切ればもうひとつ入ったかもしれませんが、問題ないでしょう。

AZUKI

AZUKI

強み:メニュー開発力サービスの質自主的に問題解決する組織風土

弱み:原材料の高騰による収益の圧迫と、地元の顧客の高齢化による需要減。

採点:20/20、評価:A

時制も含めパーフェクトです!ふぞろい採点では。ではなぜ最終的な点数が違ってきているかってとこが、事例Ⅰ攻略のポイントとなりそうです。ここでAZUKIしか書いていないキーワードがあります。「サービスの質」と「自主的に問題解決する組織風土」ですね。どれも十分な加点要素です。

逆にAZUKIだけ入れていないキーワードもあります。弱みの「仕入れが不安定」ってとこです。このあたりと後の設問の繋がりが、何か関係してそうですね。

攻略のポイント

  • 時制は絶対に外しちゃダメ特に事例Ⅰ
  • 事例Ⅰは「組織」や「人事」の話
  • 強みや弱みで30字なら、3つぐらいの要素を入れる
  • 書いた強みは後の設問で生かせるか?を考える

第2問

(配点20点)

A社の現経営者は、先代経営者と比べてどのような戦略上の差別化を行ってきたか、かつその狙いは何か。100字以内で述べよ。

出題の趣旨

A社の現経営者は、入社以来、父である先代経営者と異なる経営戦略を展開してきた。本問は、A社を取り巻く経営環境の変化に伴い、過去の経営戦略との違いとその目的について、考察する能力を問う問題である。

前提条件として先代経営者と比べなきゃならないこと。そして問われていることは、新しい戦略をとってきた上での差別化をした方法、そしてその狙い。このあたりがポイントになるでしょうか。

おーちゃん

おーちゃん

差別化した点は、座席を減らし客層をファミリー層に絞り原材料を厳選したメニューを高価格で提供。狙いは近隣競合他社と比べ高品質な商品・サービスを提供することで価格競争を回避し集客を安定化すること。

採点:17/20、評価:A

まずすばらしいのが、問われている論点をそのまま解答で使っている点です。差別化した点は~、狙いは~。採点する側にとっても非常にわかりやすいですよね。こういったところもポイントになります。「座席を減らし」は加点としませんでしたが、おーちゃんは問1の強みで座席のことに触れています。先代と差別化した部分を強みとして捉えていますよ、とアピールできていそうなので、個人的には満点解答です。

しん

しん

差別化は、①客層の絞り込み、②原材料の選別による値上げ、③メニューの絞り込みと看板メニューの開発、である。狙いは、資源を集中し、商品とサービスの質を高めることで、近隣の競合との差別化を図ること、である。

採点:13/20、評価:A

しんも「差別化は~」「狙いは~」とわかりやすいですね。わかりやすいですが、狙いのところが少し薄いでしょうか。というのも、近隣の競合と差別化を図るのは何故なんでしょうか?ということですね。それがこの問題のポイントだと思います。何かを「狙う」ということは、今回の出題の趣旨を踏まえると「先代時代は悪かったもの」を「良い状態」にもっていくこと。先代時代に悪かったもの(悪くなってきたもの)は、売上げとサービスの質ですよね。なので「狙いは、商品とサービスの質を高めることで、競合と差別化を図り、売上げを拡大すること」でいいと思います。

AZUKI

AZUKI

現経営者は①そばへの経営資源の集中や、②看板メニューの開発やサービス品質の向上、③複数人向けの店舗改装で差別化し、①ファミリーや友人同士など複数で来店の顧客を増やし、②来店単価の向上収益性の向上を図った。

採点:10/20、評価:B

まず「現経営者は」がいらないです。ここは文字数がもったいないです。そしてやはり問われていることをそのまま解答で使った方がわかりやすいように思います。AZUIKIの解答では、後半の①の前後で、差別化した方法と狙いが分かれるんだと思いますが、一見わかりにくいですね。差別化の方法と狙いがごっちゃになってる風に見えます。

AZUKIの解答、少し順番を入れ替えてみます。

「差別化した点は、①そばへ経営資源を集中し②看板メニューを開発し③ターゲットをファミリー層に絞り④複数人向けの店舗改装を行ったこと。狙いは、サービス品質向上による、来店単価の向上や収益性の向上である。」

どうでしょう?論点を整理して書くことでスッキリした感じがしますね。

攻略のポイント

  • 問われている論点は、そのまま解答の主語で使う
  • 問われている論点ではない主語は、字数がもったいないので省く

第3問

(配点20点)

A社経営者は、経営統合に先立って、X社のどのような点に留意するべきか。100字以内で助言せよ。

出題の趣旨

今後、顧客や商品サービス、立地や店舗オペレーションなどの面で異質な2社(A社とX社)が経営統合するに当たって、A 社経営者が事前に留意しておくべき、経営戦略や経営組織に関わる諸課題を分析する能力を問う問題である。

経営統合前に考えなきゃ行けないこと何?っていう設問です。出ましたよ「留意点」。これ扱いが悩むんですよね。調べたところ、留意とは「ある物事を心にとどめておくこと」だそうです。なので「気にしていればいい程度」だとすると、解決策やその後の効果までは期待されていないと解釈します。

それからこの設問、めちゃくちゃシンプルです。こういったときは「多面的に解答しなきゃな」ぐらいは思っておいた方がいいでしょう。実際に出題の趣旨でも「経営戦略や経営組織に関わる・・・」となっていますね。

統合・買収・M&Aは、これからも頻出論点になってくると思います。これらのメリ・デメはすぐに想起できるようにしておきましょう!

メリットデメリット
短時間で事業の再編、拡大を行える意思決定がスムーズにいかないことがある
自社の弱みを効率よく補強できる人事労務面で融合がスムーズにいかないことがある
M&Aのsampleです、これ以外にも自分で作っておきましょう!

おーちゃん

おーちゃん

留意点は、①従業員の意欲が低く繋がりが少なく、②大手外食チェーンとの価格競争で収益力が低下し、③仕事のきつさでアルバイト従業員の離職率が高く効率重視によってサービスの品質が低下している点である。

採点:20/20、評価:A

でました!満点。この設問に対しては、出題の趣旨に沿って「経営戦略」の観点と「経営組織」の観点で分析したいと思います。

まず戦略の方ですが、X社が「価格競争に陥っている」「オペレーションが違う(効率重視)」「サービスの質が違う」に言及しています。

対して組織の方ですが、X社が「従業員の繋がりが少ない」「仕事がきつい)「離職率が高い」に言及しています。

それぞれの観点で3要素づつ。見事に多面的な解答ができています!おーちゃんの解答からわかるように、ここはX社の問題点を挙げればいいのですが、全てA社の強みで補えそうです。シナジー効果発揮を期待できます(A社は仕入れ面でX社の取引先を使えるので、相乗効果が期待できる)。今後も買収やM&Aの題材は出てくるかもしれませんが、そんな時は両社の強みと弱みを一覧にしてみるといいかもしれません。

しん

しん

留意点は、①大手チェーンと、価格や営業時間で競争しており、商品とサービスの差別化ができていないこと、②従業員の横のつながりが少ない上に、オペレーションに忙殺されるているため、離職率が高いこと、である。

採点:18/20、評価:A

戦略の方は、X社が「価格競争に陥っている」「サービスの質が違う」に言及しています。

組織の方は、X社が「従業員の繋がりが少ない」「オペレーションに忙殺」「離職率が高い」に言及しています。

しんもまんべんなく拾えていますね。ただ戦略面ではオペレーションの違いに言及するともっと良いと思います。方や非効率、方や効率重視。こう見ると「A社とX社の比較で浮き彫りになる箇所を的確に捉えましょう」という問題と理解できます。

特筆すべきは「忙殺(第12段落)」という言葉をそのまま使っている点です。「忙殺」って皆さん、普段使います?私はあまり見ない言葉だなと思って解いていました。わざわざこんな言葉を使うのは、解答に入れて欲しいというメッセージと受け取っていいと思います!

AZUKI

AZUKI

X社の顧客ターゲット層オペレーションなどの経営方針、②淡々と日々の業務をこなす組織風土、③商品やサービスの差別化不足が、④A社の在り方と正反対であるため、統合によるシナジー効果が発揮されづらい点。

採点:10/20、評価:B

戦略の方は、X社が「顧客層が違う」「オペレーションが違う」「サービスの質が違う」に言及しています。

対して組織の方ですが、「淡々と日々の業務をこなす組織風土」がちょっと飛躍しているように思います。というのも与件分では「淡々と日々のルーティーンをこなしている状況(第11段落)」と書かれている為、どちらかというと戦略面でのオペレーションの違いに帰結する箇所かと。確かにAZUKIの言わんとしていることはわかるんです。淡々とした業務だったら、士気も低下すると想像されます。ですが組織風土を言い表すなら、直前の「横のつながりが少ない(第11段落)」に言及する方がベターでしょうね。

ここで与件中に「ルーティーン」という言葉が2回、間髪入れずに出現してきています(第11段落)。こういう時はヒントと捉えた方がいいですね。

それから「統合によるシナジー効果が発揮されづらい点」の部分ですが、A社の在り方と正反対であるが故に、お互いの弱みをお互いの強みで補完できるシナジーが発揮できると考えられます。A社の経営者も「経営統合による新たな展開によって、これまで以上の売上高を期待できるという見通しを持っていた(第10段落)」という思いです。経営者の言葉に素直に従うのなら、見通しが立っているのでシナジー効果も発揮できるぞ!と捉えた方が良さそうですね。

攻略のポイント

  • 留意点と聞かれれば、解決策や効果まで書かなくて大丈夫
  • シンプルな問いには、多面的な内容で
  • 統合・買収・M&Aのメリ・デメは、すぐに想起できるようにしておく
  • 本番では、両社の強みと弱みを比較して一覧にしておくとわかりやすい
  • わざわざ出てくる言葉は、そのまま使っていいよというメッセージ
  • 与件を略す時は、論理が飛躍していないか要注意
  • 繰り返し語句も何かのヒントになる
  • 経営者(社長)の思いには、素直に応える

ちょっと休憩して蕎麦でも食べましょう

第4問(設問1)

(配点20点)

A社とX社の経営統合過程のマネジメントについて、以下の設問に答えよ。

(設問1)どのように組織の統合を進めていくべきか、80字以内で助言せよ。

出題の趣旨

A社とX社の経営統合プロセスにおいて、どのように統合後の経営の方向性を共有し、いかに両社間の意思疎通などを図るかについて、考察する能力を問う問題である。

経営統合過程のマネジメント!?うわー難しそう。。これってPMIの話かな?と思いますよね。私は思いました。でもPMIってぼんやりとわかるぐらいでプロセスを全部説明できる自信なんてないです。。

わからなくても対応できる問題なのですが、一応説明しておきます。PMIとは「Post Merger Integration」の略で、M&A成立後の統合作業、でしたね。プロセスは「経営統合」「業務統合」「意識統合」の3つです。図にするとこんな感じになります。

14代目さや姉さん作成の図ですが、元記事は↓こちらになります。読んで頂くとわかるんですが、この記事昨年の6月に投稿されたものです。なんとこの時点でPMIの出題を予想されていました!恐るべしさや姉。。

ではでは分析に入っていきます。「どのように」なので、具体的な施策が問われている問題です。A社とX社は違いが多すぎるけど、シナジー創出が可能。これが第3問でわかったことです。でも、とはいえ簡単じゃない。まずは、第3問の留意点を「組織成立」の観点から解消するシナリオを作る問題と置き換えましょう。組織成立といえば!当然思い浮かぶのが、バーナードの組織成立の3要素です。「共通目的・貢献意欲・コミュニケーション」ですね。そしてX社の弱みの部分をどうするか?なのでA社の経営資源やナレッジを投入することが想起されます。

あと「助言せよ」と言われれば「効果」まで言及する。これはmustで。「このように統合を進めていけばこういう感じで行きまっせ!」とか、社長は聞きたいはず。

余談ですが、先日とある企業様を訪問した時の話です。実話です。

今日は社長役
今日は社長役

X社の買収を考えてるんだけど、
中々ハードルが高いんだよね~。

まずは業務提携とかから始めてみてはどうでしょう?

業務提携?
そうだね、うちのチラシ置いてもらおうかな♪

懇親会やるとか🍺

そういうの考えてたんだよね。
うちの従業員を向こうへ行かせて一緒にやってみるとか。
まず仲良くなりたいんだよね。

現実はこんな感じだと本当に思います。勿論これ以外にめちゃくちゃ考えることはあるんですが、社長は「まず仲良くなりたい」と仰ってました。統合の最初のイメージ(PMIで言うところの意識統合かな)は、こんな感じだと思います。

おーちゃん

おーちゃん

既存の従業員に同条件での雇用継続を打診し、②A社の接客リーダーを店長に抜てきして方向性の明確化、目的意識の共有、意思の統一繋がり強化を図りチーム作りをする。

採点:17/20、評価:A

具体的施策のところは完璧です!A社のリーダーをX社へ派遣するのか、A社経営者自らがX社へ赴くのか、これは意見がわかれるところだと思います(ちなみに多くの予備校やふぞろいの解答では、A社経営者が自らX社へ赴くのが主流)。私もおーちゃんと同じで、A社のリーダーにX社へいってもらう施策を書きました。だって第8段落に「将来は自分の店を持ちたいと思っていた」ってわざわざ書いてあるんですもん。

「俺がX社いってくるから、留守番任したぞ!」より、「俺がA社を見てるから、お前はX社へいってうちのノウハウ叩き込んでこい!」の方がモチベーション上がると思ったんですよね。そりゃ社長が行く方が、X社も安心なのは安心でしょうが。。とにかくこのリーダーをどこで活用するのかは本問のポイントの1つです。

ただおーちゃんの解答、効果面が少し薄いです。「繋がり強化を図りチーム作りをする」は組織成立の3要素であるコミュニケーションに該当しますが、おーちゃんが第3問で解答していた「離職率が高い」という点を折角だから使った方がベターですね。

少し入れかえ、追記するとこんな感じになりますが、如何でしょうか。

①既存の従業員に同条件での雇用継続を打診し②A社のリーダーを店長に抜てきして、方向性を明確化する。目的意識共有と意思統一を図り、連携強化と離職率改善を促進する。

しん

しん

助言は、①A社の接客リーダーをX社の全体統括責任者とし、②X社従業員との対話を通してA社の相互に助け合う土壌を浸透させることで、従業員の定着を図ること、である。

採点:17/20、評価:A

しんもほぼおーちゃんと同じような感じの解答です。効果をもう少し書けるとベターですね。ここでしんは、自身が第1問で上げた強み「相互に助け合うことによる従業員の定着」をそのまま使ってます。一貫性があります。一貫性を考えて解答していますよ!ともろにアピールできています(笑)。

これ、めちゃくちゃ大事なことかなと。実際の現場でコンサルにいって、「さっき言うてたことと違うやん!」て思われたら信頼度下がりますもんね。しんのこの解答、素晴らしいです。

ちなみに私も一貫性をとても意識していたので、第1問なんかは一番最後に書く派でした(そんな派閥ある?)。最初にアタリヤンだけつけておいて、後の問で使ったところを中心に最後に埋める感じで。参考までです。

AZUKI

AZUKI

統合後の会社の方向性や、②顧客ターゲットやオペレーション方法、③勤務体系や待遇を明確にし、④A社とX社社員両方に共有し⑤社員の不安を取り除き統合を円滑に進める。

採点:14/20、評価:A

AZUKIの解答、ポイントは3つ程あります。まず①②③の使い方ですが、これは並列で述べる時に使うべきでしょう。この解答では、①~③が施策の内容④がその方法⑤が効果と、順番を意味している使い方をしています。確かにこういう使い方もありますが、一見わかりにくいですね。設問文に「どのように」とあったので、AZUKIは順序だてて構成したものと思われます。

次に「顧客ターゲットやオペレーション」の部分です。この問題は「経営統合」の中の「組織統合」に関して答える問題です。そう設問文に書いてあります。ここで「顧客ターゲットやオペレーション」はどちらかというと戦略的観点かと思われるので、「組織」の観点からは加点されなかったと思います。

最後に効果の部分ですが、ここは完璧です。おーちゃんやしんも書いていなかった「円滑に進める」を書けています。そこなんですよね、実際。社長が一番思ってるのは「スムーズに何事もなく、がっちゃんこしたいな~」なんじゃなかろうかと。

攻略のポイント

  • PMIとは「Post Merger Integration」の略で、M&A成立後の統合作業
  • PMIのプロセスは「経営統合」「業務統合」「意識統合」の3つ
  • 組織成立の3要素とは、共通目的・貢献意欲・コミュニケーション
  • 「助言せよ」と言われれば「効果」まで言及する
  • わざわざ出てくる言葉は、そのまま使っていいよというメッセージ(2回目)
  • 解答に一貫性をもたせる、問1を最後に埋めるのも1つの手段
  • ①②③は、並列で述べる時に使った方がわかりやすい
  • 設問分の制約条件を正確に捉える

第4問(設問2)

(配点20点)

A社とX社の経営統合過程のマネジメントについて、以下の設問に答えよ。

(設問2)今後、どのような事業を展開していくべきか。競争戦略や成長戦略の観点から100字以内で助言せよ。

出題の趣旨

A社とX社双方の弱みを克服し、互いの強みを活かしていける競争戦略を立案すると共に、経営統合によるシナジーを活かせる今後の成長戦略を描く能力を問う問題である。

制約条件が3つあります。「どのような事業か」「競争戦略の観点」「成長戦略の観点」です。第3問の留意点を第4問の設問1で解消し、第1問で上げた強み+シナジー効果によって解消される弱みを強みに変えて、売上拡大を図っていく。そんな方向性になります。

競争戦略といえば、ポーターの競争戦略ですよね。差別化戦略・コストリーダーシップ戦略・差別化集中戦略・コスト集中戦略です。

競争戦略と言えば、必ずこの図を想起しましょう!但し、この2次試験に於いて問われる場合、ほぼ「差別化集中戦略」の一択と捉えても問題ないでしょう。

次に成長戦略ですが、こちらはアンゾフの成長マトリクスですね。市場浸透・新商品開発・新市場開拓・多角化の4事象ですね。

他の事例も含めて2次試験で何度も問われている超重要論点です。こちらも必ず想起できるようにしておきましょう!

おーちゃん

おーちゃん

SNSやグルメアプリを活用した外国人観光客や若者の新市場に、A社の開発力を活かし地元産の高品質な原材料を使った他社と差別化した新メニューを投入する多角化戦略を実施し、新たな販路での売上拡大を図る。

採点:18/20、評価:A

この問題、一見迷うんですよね。何故かって?どう答えようとしても事例Ⅱっぽくなるからです。それが証拠に、おーちゃんの解答も人事・組織のキーワードが入っていません。事例Ⅱでよく使うフレームワーク「ダ・ナ・ド・コ」をちょっと変形させています。ですが問われている論点に素直に正確に応えることが出来ているので、あまり気にしなくても良かったってことですね。(私は気になりすぎて無理やり組織風土を入れてハチャメチャな解答になってしまいました・・)

出題の趣旨から「互いの強みを活かしていける競争戦略」と「経営統合によるシナジーを活かせる今後の成長戦略」という観点から分析していきます。

まず競争戦略ですが「A社の開発力」「地元産の高品質な原材料」「他社と差別化」と綺麗に入ってます。両社の強みを確り入れてますね。第1問からの繋がりも見事です。

次に成長戦略ですが「外国人観光客や若者」「新メニューを投入」「多角化戦略」と、新規市場に新規製品を投入する多角化戦略を非常にわかりやすく書ききれています。聞いてる社長さんがウンウンと頷いている様子が想像できますね。最後に効果も書いているので、文章としての締りもいい。模範的な解答だと思います。

しん

しん

助言は、X社仕入れ先より、地元産の高品質な原材料を調達し、A社のメニュー開発力を活かした看板メニューを開発することで、地域の食べ歩き観光客を獲得する新市場開拓戦略をとり、競合との差別化を図ることである。

採点:12/20、評価:A

A社とX社の強みも入ってますし、競合との差別化も書けているので、競争戦略部分はOKです。第1問で挙げた弱みをX社とのシナジーで克服できていますね。繋がりもいいです。でも残念なのが成長戦略部分。看板メニューの開発(新商品)×地域の食べ歩き観光客(新市場)は、多角化戦略です。あと第2問に続き、効果(売り上げ拡大等)も入ればよりベターでした。

AZUKI

AZUKI

A社は①中堅の食品卸売業者から仕入れた高品質な原材料を用いた②食べ歩きに特化した軽食を販売する事業を展開し、③SNSやグルメアプリで高評価を得ることで、④外国人観光客や若者などの新規顧客層を獲得する。

採点:7/20、評価:D

ここですね、AZUKIがやっちゃってるところ。かろうじて成長戦略部分のキーワードは書けています。問題は競争戦略部分です。両社のシナジー効果を発揮して、より強みを増して、他社と差別化を図っていく必要があります。高品質な原材料(X社)×メニュー開発力(A社)=差別化集中戦略、という図式です。AZUKIもキーワードは入っているのですが、全て成長戦略(新市場開拓)へ紐づけているように見えます。前半部分を切り離して差別化や高付加価値化を表現することで、A答案に届いていたと思います。やはり、題意を正確に捉えて、素直に解答することが攻略のポイントですね。

攻略のポイント

  • 競争戦略と言えば、ポーターの競争戦略(秒で答えれるように)
  • 競争戦略が2次試験で問われる時は、ほぼ一択で差別化集中戦略
  • 成長戦略と言えば、アンゾフの成長マトリクス(秒で答えれるように)
  • 題意を正確に捉えて、素直に解答すること

実際の点数との比較/追加の考察

ここで、今回の採点と実際の点数を比較してみます。

なんと驚くほど全員ニアリーという結果に!いやはや、ふぞろいさん凄いっす!

で、なんですが。追加で考察したいのが、AZUKIは何故第1問で満点だったのに、最後に息切れしてしまったのか?というところです。

この事例企業を乱暴に纏めると「同業他社と統合して、弱みを補完し、収益拡大を目論んでいる」企業です。とするならば、第4問で高品質な原材料(X社)×メニュー開発力(A社)=差別化集中戦略を提案するのは必須かと考えます。何故ならば、A社の弱みである「原材料の仕入れが不安定」をX社との統合によって解消し、新たな強みを手に入れているからです。もしAZUKIの第1問の解答が「原材料の高騰による収益の圧迫」ではなく「原材料の仕入れが不安定」としていたら、第4問の解答も変わっていたかもしれません(それを解消して差別化を図るというふうに繋げる意識が働いたかも?)。

それから強みで挙げていた「自主的に問題解決する組織風土」を後の問題に活かしきれなかったことも、失速の1つかと思います。

設問1つ1つでは解答出来ていても、全体の流れを汲んだ解答になっているかどうか。これも攻略のポイントに挙げておきます。

本日の攻略ポイント纏め

最後に本日出てきた攻略のポイントを纏めておきます。

本日はここまで!
明日はせーでんきです、せーちゃんよろしく!

事例Ⅳの不安、払拭したるで~♪

☆☆☆☆☆

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【永久保存版】令和5年度事例Ⅰ 再現答案分析(得点:85/75/59) by たいしん”へ7件のコメント

  1. ひでまる より:

    たいしんさん

    いつも記事を拝見させていただいております、ひでまると申します。

    おーちゃんさんををはじめとする合格者の方の読みやすく的確な答案と、それを基にしたたいしんさんの洞察で、深く勉強させていただいております。

    ここで一点悩んでいる所がございまして、可能であればご助言をいただけないでしょうか?

    ご質問は第三問の設問解釈に関するものです。
    本問では「留意点」を助言する問題が出ました。そこでたいしんさんは「留意点と聞かれれば、解決策や効果まで書かなくて大丈夫」と結論づけられております。
    一方で、同じく事例1で「留意点」を助言する問題がでた令和2年度の第四問では、過去記事(https://rmc-oden.com/blog/archives/143889)を拝見すると、留意点といいつつもほぼ皆さん施策を書かれておりました。
    ここで、この2問が同じ「留意点」の助言問題であるにもかかわらず、高得点者の方の回答スタイルに違いが出る理由がわからず、設問解釈をどうすればよいのか悩んでいます。

    もし可能でしたら上記についてアドバイスをいただければ幸いです。
    お忙しいところ恐れ入りますが何卒宜しくお願い致します。

    1. たいしん より:

      ひでまるさん
      日々の勉強お疲れ様です!
      そしていつも道場記事を読んで頂き、有難う御座います。
      深く活用して頂いているご様子で、大変うれしく思います!

      留意点を問われた時の解答スタイルについて、お悩みということですね。
      私の個人的見解となりますが、以下のように考えております。

      まず「対応策は?」や「施策は?」と問わず、敢えて「留意点は?」と聞いているので、「ある物事を心にとどめておくこと」「解決策やその後の効果までは期待されていない」と解釈するのが基本線だと考えます。

      その上で、文脈によっては「留意点≒施策」のような時になることもあります。「OJTによる教育」なんかは、留意点にもなるし施策にもなりえます(施策の場合はもう少し具体的な装飾が入るでしょうか)。

      おそらくですが、留意点と施策には、あまり違いがないかもしれません。要は文脈に沿った答え方の違いぐらいかと。
      「もし新人比率が高くなったら、教育関連とか整備しとかなあかんかな」(留意点)
      「新人比率が高くなりそうだから、ベテランAさんからのOJTによる教育をせなあかんな」(施策)

      このように、1つの方向性としては、行動の実施前後で留意の意味合いの幅が変わるのでは?と考えています。
      実施前では抽象的、実施後ではより具体的(なのでほぼ施策に近い形になる)、みたいな感じですかね。

      答えになっていないかもしれませんが、あくまで個人の見解な故、ご参考までにということで。
      タイムリーに明日投稿予定の事例Ⅲ分析記事でも、留意点について触れております。
      そちらもご確認頂き、是非ひでまるさんなりの解釈を進めて頂ければと思います。

      2次試験までもう少しですね。頑張ってくださいね!応援しています^^

      1. ひでまる より:

        たいしんさん

        お世話になっております。ひでまるです。

        早速の詳細なご返信を頂き、誠にありがとうございます。
        頂いた内容を拝見して、設問分析に関する自身の解像度が上がりました。

        仰る通り、出題者があえて「留意点」と記載されているので、対応策は不要というのは納得感があります。
        また、「留意点≒施策」であるため、文脈によっては施策のような答え方になるということも仰る通りかと思います。

        その上で、どちらかというと難しいのは、どのような文脈があるときに「留意点」といいつつ施策(解決策)まで踏み込む判断をするべきかだと思います。
        それに関しては、明日に投稿される事例3の分析記事で触れておられるのではないかと思いますので、そちらを拝見してさらに理解を深めたいと思います。

        診断士試験は「問題点」「課題」「施策」「留意点」と色々な聞かれ方をするので、非常に難しいなと感じますが、たいしんさんのご知見を少しでも吸収して、少しでも合格に向けて理解を深められればと思います。

        お忙しいところ、お時間を割いてくださり、またエールもくださり、誠にありがとうございました。
        また明日の記事も心待ちにしております。

  2. にっく より:

    こんばんは!
    AZUKIさんのSWOT分析の記事からやってきたにっくです。
    特に本日のまとめは参考になりました!
    AZUKIさんのノウハウと共に整理、カスタマイズして使わせて頂きます!
    ありがとうございました!
    にっく

    1. たいしん より:

      にっくさん
      2次試験勉強真っ只中の中、コメント頂き有難う御座います。

      AZUKIの記事と共に参考にされているとのこと、大変うれしい限りです。
      是非これらのノウハウで使えるところは吸収して頂いて、前進して参りましょう!

  3. tomi より:

    たいしんさん

     先日の座談会ありがとうございました。
     昨日、去年の二次試験以来、久々に今事例を解きましたので、記事を見ながら振り返りさせて頂きました。
     本日の攻略ポイント纏めは重要事項満載ですね。
     その中でも、
     ◯シンプルな問いには多面的な内容
     ◯書いた強みは後の設問に活かせるか 
     あとは記事内で書かれていた、
     ◯弱み、留意点を後の問題で解決しているか
     これらは、自身の課題と長く感じている項目でもあります。
     今回、再現答案の実例をもとに、わかりやすく記事にして頂いたので、しっかり復習ノートにまとめ、本番に必ず実行できるよう工夫していきます。
     次回以降の記事も楽しみにしております。

    1. たいしん より:

      tomiさん
      前回に続いて今回も座談会へご参加下さり、ありがとうございます!

      久々に事例を解いて現状を分析し、改めて課題を抽出されたご様子。
      そしてご自身が課題と感じられているところを、しっかりとご自身でまとめて更に工夫されていくとのこと。

      大変素晴らしい取り組みだと思いますし、tomiさんなら必ずや本番で使える形にもっていけると思います!
      次回以降の記事も、Tomiさんや受験生の皆さまのお供となれるよう、鋭意執筆中で御座います。
      是非、道場の記事を使い倒して下さいね。応援しています!

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