【渾身】経営情報システム システム構成技術【中小企業診断士試験】
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皆様、こんにちは。3chです。
今日も道場ブログを読んでいただき有難うございます。
あと1次試験まであと一か月。本日は、渾身シリーズとして経営情報の「システム構成技術」を取り上げます。複数のシステムを組み合わせて信頼性を高める手法は、BCP対策の観点からも重要論点であります。昨年度の1次試験過去問事例を基に重点的に深堀したいと思います。
はじめに
情報システムの大規模障害というのは、HDD(及びその周辺装置)の故障、ネットワーク機器の故障が大半です。HDD故障については昔から壊れるものという前提でRAID構成等で対策が取られています。1台故障してもシステムを止めずに交換して継続できたりとあまり目立たなくなってきています。(私もIT業界にいて、実際現場では冷や汗モノの経験は多発しているのですが。。)最近の障害はネットワーク機器関連とか後は電源関連が目立ってきています。システムが複雑化してきているので、構成が複雑になってきてて、障害復旧手順も複雑化して復旧に時間が掛かっているケースが多いですね。
そもそもコンピュータ機器はめっちゃ精密なので一定の率で故障します。特にHDD。私も現場で何度も泣かされました。データがぶっ飛んで徹夜でバックアップから戻したこともあります。なので、実際に重要なシステムについては、複数の装置、コンピュータを組み合わせて使い、1つ故障しても継続できるようにする「冗長性(redundancy)」を持たせた構成が基本になります。
中小企業でも例えば設計事務所のCAD図面や、写真屋のデジタル写真データ等、仮にそのデータが飛んでしまえば事業そのものの継続にも影響するぐらいデジタルデータは重要な位置づけになってきています。紙があれば何んとなかる時代ではなくなり、商品そのものがデジタルデータであることが増えてきてます。CADは最悪人海戦術で作り直せば何とかならなくはないですが、結婚式の写真や動画などは二度と再現できません。仮にシステム障害でデジタルデータを失えば、中小企業は最悪倒産もあり得ます。デジタル化によって、情報システムの信頼性を高めることは、経営的にもBCPの観点からも非常に重要な位置づけになってきています。実際に中小企業白書2019でもBCP対策に多くのページを割いています。
このような背景を踏まえ、実際の経営情報システムの問題を基に道場の「鶏ガラ学習法」(私の命名は「芋づる式暗記法」)の実践例として、今回はシステム構成技術の「面」を広げてみたいと思います。
1.過去問
では題材として扱う実際の過去問はこちらです。
実際に解いてみて、関連するキーワードをどれだけ想起できるか考えてみてください。
(経営情報システム 令和元年第7問)
中小企業においても、複数のコンピュータを用いてシステムを構築することが少なくない。そのような場合のシステム構成に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア クライアントサーバシステムのクライアントで、データの処理や保管などの多くの機能を担うように構成したシステムをシンクライアントシステムという。
イ システムを 2 系統用意し、常に同じ処理を行わせ、その結果を相互に照合・比較することで高い信頼性を実現できるようにしたシステムをミラーリングシステムという。
ウ ネットワーク上で対等な関係にあるコンピュータを相互に直接接続し、データを送受信するように構成したシステムをグリッドコンピューティングシステムという。
エ 複数のコンピュータを相互に接続し、あたかも 1 台の高性能なコンピュータのごとく利用できるように構成したシステムをクラスタリングシステムという。
この問題はシステム構成技術として「シンクライアント」「ミラーリング」「グリッドコンピューティング」「クラスタリング」の用語理解を問う問題です。この用語を押さえるのは重要ですが、関連する派生用語もセットで覚えて理解しておくとこの分野での守備範囲が広がり得点の期待値が増します。(専門用語攻略については前回記事を参照ください)
では選択肢ごとに関連用語を整理していきましょう。
2.ファットクライアントとシンクライアント
クライアントサーバシステムのクライアントで、データの処理や保管などの多くの機能を担うように構成したシステムをシンクライアントシステムという。(×)
多くの機能を構成した→ファットクライアントシステムなので×です。
比較的切り分けしやすい選択肢だと思います。これで、はい終わり、ではなく関連する用語を絡めて整理していきます。全く同じ問題は診断士試験では出ませんので、過去問題を解いたときにはその周辺の関連用語を合わせて覚えておくことが必要です。
2.1.ハードウェア的視点
まず、シンクライアントとファットクライアントについてハードウェア的視点で整理します。
・シンクライアント(痩せてる)→最低限度、キーボード入力や表示だけの機能のPC
CPU、メモリ、HDDを最小限までそぎ落とし。プレゼンテーション(=表示、入力などの機能)のみ。小難しい処理は自分でやらない。低性能なPCです。ブラウザが立ち上がるだけ、リモート接続するためのツールが立ちあがるだけです。HDDすらついてません。機能制限されたWindowsやLinuxなどのOSが入ってます。めっちゃ軽くてコンパクトです。シンクライアント自体にはデータ保存できないので、情報漏洩するリスクを減らせます。
・ファットクライアント(太ってる)→多機能、何でもこなす
CPU、メモリ、HDD満載。クライアントサーバ方式のようにクライアント側で処理することが多い場合はファットPCが必要になる。普通に売っているノートPCを思い出してもらえればOKです。
2.2.ソフトウェア構成的視点
ちなみに
・Webシステム
・クライアントサーバーシステム(C/S)
の違いを正確にイメージできますか?
一般的にシステムについてはデータベース層、ファンクション層、プレゼンテーション層の3つの層があります。
・データベース層はRDBMSの読み書き保存を行う機能です。大事なデータの入出力と保管・管理を行ういわば金庫みたいな部分ですね。
・ファンクション層とはファンクション=機能で、給与計算をしたり、需要予測計算をしたりといった処理をしてくれる部分です。銀行ではバックオフィスで一所懸命に事務処理してくれている人たちです。
・プレゼンテーション層とはプレゼンテーション=表現で画面に計算結果を表示したり、またデータ入力するための入力画面を提供したりといった表示機能です。ATMの画面や窓口対応してくれている方をイメージしてください。
これらをどのように配置するかの設計思想で2層アーキテクチャと3層アーキテクチャに分かれます。詳しくは以下の図を参照ください。(クリックで拡大)
一般的に、データベース層(+実は一部のファンクション層も)をサーバ側、ファンクション層+プレゼンテーション層をクライアントPC側で実行する仕組みをクライアントサーバーシステムと呼ばれます。その際のクライアント部分は計算処理も表現も一手に担う多機能な力持ちなので「ファットクライアント」と呼ばれ、そのようなシステム構成は「ファットクライアントシステム」と呼ばれます。(2層アーキテクチャと呼ばれます。)
データベース層、ファンクション層、プレゼンテーション層をそれぞれ分離し、特にクライアントはプレゼンテーション層(表示・入力画面のみの機能)に特化した3層構造のシステムを3層アークテクチャといい、そのクライアントPCで実行するプレゼンテーション層のクライアントのことを、表示だけしかしない薄い役割であるので「シンクライアント」といいます。そのようなシステム構成は「シンクライアントシステム」になります。
実際のシステムは複雑なのでそんなに単純にキレイに分かれませんが、試験対策上は以下の理解でOKです。
●3層アーキテクチャ → Webシステム(に多い) →クライアントはシンクライアント
2.3.リッチクライアントとは
似たような用語に「リッチクライアント」があります。こういうのが出てくるのでITが苦手になるんですよね。同じ「クライアント」とありますが、こちらは見栄えや操作性が良いWebアプリケーションのことを指します。
クライアントサーバシステムの場合、ローカルPCの環境に依存します。WebアプリケーションはローカルPCにいろんな専用ソフトやプログラムをインストールしなくても“ブラウザ上で動く”ことが売りのシステムでした。(厳密には色々定義があります。)ブラウザはあくまで表示用の仕組みなので、データ入力などでは少し使い勝手が悪かったので、いろいろとブラウザ上で動く共通プログラム(=プラグイン)が開発され、言語も進化し、段々Webアプリケーションが高機能になってきました。
閲覧(=browse)だけの機能から入力機能等が充実して豊富(=rich)になってきたのでリッチクライアントと呼ばれます。
Webアプリが黎明期頃からブラウザだけでクライアントとして、「HTMLクライアント」と言われてましたが、私の主観ですがこの用語はあまり浸透していません。(IT用語は時代変遷によって変わることもあり、ふわふわした定義がネット情報でも見解が微妙に違うことがあり、理解を余計に難しくします。)
試験対策のため、あえて対比させると以下の通りとなります。
●ファットクライアント←→シンクライアント (一般的にはハードウェア的な区別。ソフトウェア構成的区別で使うときもある。)
●リッチクライアント←→HTMLクライアント (Webアプリケーション上の区別。)
3.システムの多重化構成技術
システムを 2 系統用意し、常に同じ処理を行わせ、その結果を相互に照合・比較することで高い信頼性を実現できるようにしたシステムをミラーリングシステムという。(×)
キーワードだけ見れば正解のようですが、×です。
ミラーリング(mirroring):同じ内容を同時に二ヶ所に反映すること。複数の記憶装置に同じデータを同時に記録することや、複数の表示機器に同じ内容を同時に映し出すことなどを表す。(出典:IT用語辞典e-Words)
鏡のように同じものを映すのでミラーリング。ハードディスクの障害に備えて二重化する技術のことです。何となく意味合い的にあってそうなので○にしてしまいがちですが、ここではハードディスクの話ではなく、システム全体の構成に関する設問と切り分けられるかがポイントです。次のデュプレキシングを理解していれば×だとわかります。
では関連用語を整理していきましょう。
3.1.システムの多重化構成
(1)デュプレックスシステム
・デュプレキシング (duplexing):
デュプレキシングとは二重化の意味です。個人的にはあまり使いません。ちょっと昭和ですが2人で歌うことをデュエット(duet)って言いますよね。duplexとはあまり馴染みがないですが二重という意味です。
・デュプレックスシステム(duplex system):
機器やシステムの信頼性を高める手法の一つで、同じシステムを二系統用意して、普段は片方を稼働させ、もう片方は待機させておく方式。「アクティブ/スタンバイ構成」とも呼ばれる。(出典:IT用語辞典e-Words)対義語はシンプレックスシステム(simplex system)です。こちらは1系統しなかく止まったら終わりです。主系の1つで動かし、壊れたらもう片方に切替るシステムですね。
(2)デュアルシステム
一方、デュアルシステム(dual system)は常に2台で同じことを行い相互監視、照合・比較します。
機器やシステムの信頼性を高める手法の一つで、同じシステムを二系統用意して、常に両者で同じ処理を行う方式。処理結果を相互に照合・比較することにより高い信頼性を得ることができる。(出典:IT用語辞典e-Words)常に立ち上げておいて相互監視しますので、当然コストも高くなります。
まとめると、同じシステムを二系統用意するのは一緒。
●デュプレックスシステム・・片方は待機、いざというとき切替る。切替までに時間が掛かる。デュアルよりは費用は安い。
●デュアルシステム・・常に同期をとってチェックする。即座に切り替え可能。ただしコストが高くなる。
(3)スタンバイ3兄弟
デュプレキシングの切り替えの仕方でスタンバイ3兄弟がいます。
●ホットスタンバイ・・複数の系統を常時稼働状態に置き、一つに異常が生じると即座に他の系統に処理を引き継ぐ方式。
●ウォームスタンバイ・・待機系を起動状態にしておくが本番系と同期などは取らず、障害時にシステムを稼動状態に移行して切り替えを行う方式。
●コールドスタンバイ・・稼働中の系統と同じ構成の予備の機材などを用意しておくが普段は停止させておく方式。(出典:IT用語辞典e-Words)
ご飯を食べている時、万が一落としてしまったときに、炊き立てのご飯を用意してさっと出せるようにしておく(ホットスタンバイ)、常温のご飯を用意しておき、さっとレンジで温める(ウォームスタンバイ)、冷蔵庫に入れたまま保管(コールドスタンバイ)と覚えておきましょう。
3.2.データの信頼性向上策-レプリケーションとバックアップ
信頼性向上策は色々あるのですが、データ面に着目した仕組みとしてレプリケーションがあります。
レプリケーション:同期のことです。同じシステム、データをコピー。これもわかりにくいですが、一般的には遠隔地にコピーして大規模災害時に切り替えるようなイメージです。主にデータベースの複製を持つことを指します。データに着目した多重化技術のことです。単純なコピーとの違いは、削除・変更も反映するということでしょうか。削除も含めてそっくりそのまま複写するイメージです。
バックアップとの違い
バックアップはある時点での複製です。日次の営業終了後にいったん退避させておく等ですね。不具合があったらその時点に戻せますが、バックアップより前のデータは残せません。レプリケーションは同期をとっているので、常に最新です。ただし、データを間違って大幅に更新してしまったらレプリケーション先も同時に更新されてしまいます。一般的にレプリケーションしていてもバックアップはバックアップで取得するのが一般的です。
3.3.HDDの信頼性向上策-RAID
二重化対策は重要です。機械は故障がつきものです。特にHDD。なぜか現場ではデータが入っている最も壊れてほしくないHDDが壊れます。
HDD故障といえばHDDを複数組み合わせるRAID構成がすぐに想起されないといけません。企業のサーバでは大抵RAID構成が組まれています。
<RAID構成>
RAID 0 (ストライピング):
複数の装置に均等にデータを振り分け、並行して同時に記録する方式。(出典:IT用語辞典e-Words)ストライピングは信頼性向上にはなりません。2台で1つとみなします。1台でも故障すれば故障です。広大なディスク容量が必要な場合はRAID0構成を組みます。たださえ壊れるリスクの高いHDDなので、一般的にはRAID1+0(イチ・プラ・ゼロ、RAID10とも言います)としてミラーリングと組み合わせて実現します。ストライピングだけ構成するのは故障リスクが高まります。
RAID 1 (ミラーリング):
同じ内容を同時に二ヶ所に反映すること。複数の記憶装置に同じデータを同時に記録することや、複数の表示機器に同じ内容を同時に映し出すことなどを表す。(出典:IT用語辞典e-Words)この設問ではHDDの構成技術であるミラーリングという専門用語を正しく理解しているかどうかが問われました。
RAID5:
書き込むデータから誤り訂正符号(パリティ)を生成し、データとともに分散して記録する方式(出典:IT用語辞典e-Words)です。仕組みについては次の章で説明しますので時間があればご覧ください。
まとめると
●デュプレックスシステム(壊れたら片方に切替)
●デュアルシステム(常に相互監視、双方で照合)
●ミラーリング(RAID 1)
3.4.<Coffee Time> RAID5の仕組み
RAID5がなんのこっちゃわからない方にちょっとだけ深く説明します。
経営情報としてはここまで勉強する必要はありませんので、頭の体操程度に興味のある方だけ読んでください。
RAID5の仕組みはHDDは3台以上で構成し、1台故障しても“パリティ”から復元できる仕組みです。このパリティの仕組みを理解してはじめて訳のわからないRAID5を理解できます。
まず、パリティは2つのデータのXOR(排他的論理和)で求めます。いきなりXORって何やねんですが、XORは排他的( eXclusive )論理和(OR)です。
難しく考えず、A、Bが違ってたら1を同じなら0を返すものだと思ってください。
XORの演算結果は以下のような図になります。
RAID5ではHDDを3本用意し、HDD1にはA,HDD2にはBのデータをそれぞれ書き込みます(RAID 0的な動き)。3本目のHDD3にはA XOR Bのパリティを書き込みます。(その次は1本毎にずらして書き込みます。)
この仕組みを使えば、XORで生成されたパリティから逆算する形でデータを復元できます。
・Aが故障して読めなくなっても、B=0とパリティ:A XOR B=1というデータが残ってたら、逆算してAが1であるとわかります。(1本損失しても復元できる)
・Bが故障して読めなくなっても、A=1とパリティ:A XOR B=0というデータが残ってたら、逆算してBが1であるとわかります。(1本損失しても復元できる)
・パリティ:A XOR Bが読めなくなっても、A,Bのの元データは正しく読めます。(パリティは計算して求めるもので消えても実データには影響なし)
簡単に言うと、この原理を使って3本のHDDで1台故障しても残り2台から1台を復元できるという仕組みです。2台同時にぶっ壊れたらダメです。
ちなみに、ミラーリングはHDDを必ず2本使うので単純に50%の使用効率ですが、3台構成のRAID5なら66.6%です。RAID5は使用効率が良いこと、信頼性が高い上に複数ディスクから読み取るため読み取りは早いのですが、いちいちパリティを計算して書き込むので書き込みが遅くなるデメリットがあります。
もともとはHDDが高価であった時に生み出された技術なのですが、最近は1本あたりのディスク容量が増えたのでシンプルな仕組みであるRAID1+0構成も多くなってきています。余談ですが、かなり前、私の実務で本番システムのRAID5のHDDが実際に1本故障したことがあります。HDDを新品に交換した後、リビルドといって上記のようにパリティから逆算してRAID構成の復元作業を行いました。当時のハードウェアではパリティ復元がものすごく遅く、めちゃくちゃ時間が掛かり(5~6時間)焦った記憶があります。データは無事に復旧でき、RAID5のありがたみを実感しました。
データ復旧を高速化するためにはRAID構成をコントロールする装置の高性能化が必要になります。最近はハードウェアの進化で随分と高速化し、安定してきていると思います。RAID構成全体の高速化を図る場合、HDDの代わりにSSDで構成することも増えてきました。
4.分散処理技術(グリッドコンピューティングとクラスタリング)
ネットワーク上で対等な関係にあるコンピュータを相互に直接接続し、データを送受信するように構成したシステムをグリッドコンピューティングシステムという。(×)
中々迷う選択肢ですね。
グリッドコンピューティングとは、ネットワークを介して多数のコンピュータを連携させ、全体として高性能な並列システムとして利用する方式。特に、インターネットなどを通じて広域的に、あるいは様々な機種のコンピュータを束ねて処理を分散する方式のこと(出典:IT用語辞典e-Words)です。ここでは「対等じゃなくてもOK」というのがポイントです。対等な関係のコンピュータをつなぐこともありますが、大小いろいろなコンピュータをつなげて処理する仕組みを言います。なので×。
グリッドとは格子とか方眼の意味ですが、もともとはパワーグリッド(=電力送電網)から転じた言葉といわれています。ネットワークで様々なコンピュータをつないで処理する仕組みです。分散して処理することで大規模な高性能コンピュータと同等かそれ以上の処理をができるような仕組みです。
分散処理技術で複数で仕事をしたらすごく早いってことは共通です。次の設問と合わせて対比させると、
●クラスタリング
→比較的小規模な仕組みを指す(企業内のサーバの仕組み等)
●グリッドコンピューティング
→比較的大規模・広域な仕組みを指す(世界をまたいだ学術研究用のシステムなど)
と覚えます。(厳密に区別するものではないので難しいところですが、試験対策としては上記理解でOKです。)
5.複数のコンピュータを1台のように扱う技術
複数のコンピュータを相互に接続し、あたかも 1 台の高性能なコンピュータのごとく利用できるように構成したシステムをクラスタリングシステムという。(〇)
クラスタリングの説明そのもので〇です。
実際には選択肢イはHDDのことかなと何とか外せても、選択肢ウも正解っぽいので切り分けが難しいですね。
5.1.クラスタリングの方法-スケールアウトとスケールアップ
クラスタリング(clustering)とは性能を上げる仕組みです。クラスターというのは今年は何度もニュースで取り上げられている通り、「集団」「群れ」といった意味です。コンピュータを組み合わせて集合体にして、性能を上げる仕組みのことを指します。ちなみに性能を上げる方法は大きく分けると2つあります。
●スケールアウト・・台数を増やす。数で勝負。
●スケールアップ・・性能を強化する。質で勝負。
この2点は押さえておきましょう。
5.2.負荷分散と信頼性向上
複数のコンピュータを1台のように扱う目的は、大きく2つあります。1つは負荷分散を行う(同時に使う)ことで性能を高めることと、2つ目は障害のときの予備とするために信頼性を高めることがあります
(負荷分散・性能向上が主目的)
・負荷分散クラスタ/ロードバランスクラスタ・・・アクティブ/アクティブ構成
⇒常に稼働状態(=アクティブ)で両方で捌くシステムです。倍仕事します。頼れるやつです。
(信頼性向上・故障時でも止めないことが主目的)
・フェイルオーバークラスタ・・・アクティブ/スタンバイ構成
⇒通常時に使用する稼働系と通常時は使わずに待機している待機系に分けておいて、障害発生時に瞬時に切り替わる仕組みです。
いざというときに即座に代わってくれるやつです。
5.3.負荷分散の仕組み
負荷分散の仕組みについてはCPUの負荷分散の仕組みと、負荷を振り分ける仕組みが問われます。
(1)CPUの仕組み
・マルチプロセッサ
複数のプロセッサで異なるデータや命令を並列に処理することでシステム全体の処理能力を向上させること。(出典:IT用語辞典e-Words)CPUを複数同時に使って高速化する仕組みのことです。
・タンデムシステム
複数の処理装置やコンピュータを直列につなぎ、それぞれが特定の処理に注力して役割分担する構成のシステム。“tandem” とは馬を前後直列に並べた二頭立て馬車のこと。(出典:IT用語辞典e-Words)自転車で前後に2人乗りすることもタンデムといいますね。実際にはバケツリレーのように役割を分担して高速化する技術です。
(2)負荷を振り分ける仕組み
・ロードシェアシステム
情報システムや通信システムの構成法の一つで、同じ機材などを複数用意して、処理を振り分けて負荷を分散する方式。(出典:IT用語辞典e-Words)
ワークシェアリングをイメージしてもらえれば。
・ロードバランシング
同種の複数の機器やシステムの間で、負荷がなるべく均等になるように処理を分散して割り当てること。そのような負荷の振り分けを行う機器やシステムをロードバランサ(load balancer)という。(出典:IT用語辞典e-Words)ロードバランサ―は負荷分散の役割として非常に重要です。銀行窓口に入った時に窓口に案内してくれるフロアマネージャみたいなものだと思っていただければOKです。
両方は同義として使われることが多いですが、あえて覚えるために区別すると、
●ロードシェアシステム→最初から固定的に(=静的に)割り当てを決めておくという仕組み。
●ロードバランシング→Webアクセスが急増した時に動的に(その時のアクセス状況とサーバの空き状況を判断して)振り分ける仕組み。
6.信頼性向上について
さらに、システム構成技術では信頼性を高めるためのfから始まる単語シリーズがあります。ただでさえ複数のシステムを組み合わせるなどイメージしにくい上に、似たようなカタカナ用語が連続し、解説やネットを読んでも良くわかなないと思います。勝手にシリーズfと呼んでますが、どれも瞬時に意味が出てきにくい言葉です。
●フォールトトレランス(fault tolerance)
●フェイルソフト(fail soft)
●フェイルセーフ(fail safe)
●フールプルーフ(foolproof)
●フォールバック(fallback)
●フェイルオーバー(failover)
●フェイルバック(failback)
これらの説明については8代目TOMの記事【経営情報システム】迷いやすい用語を覚えるにはの説明が秀逸です。
この記事の中にあるまとめのExcelを読めば一発で理解できます。
逆に言えばこういった間違えやすい専門用語は、試験出題者としても作問しやすい論点で、いやでも押さえておく必要があります。1次試験では焦ってキーワードを読み間違えないように注意してください。(フから始まるキーワードが来たら意識してゆっくり読んでください。せっかく覚えているのに緊張していると読み間違えて正誤判断を誤ることがあります。特に経験者の方ほどご注意を。私も模試でやらかした経験があり、1次本番では特に意識しました。)
7.まとめ
長くなりましたが、最後にまとめ。この問題だけで芋づる的に以下の用語を引っ張ってこれたと思います。
●2層アーキテクチャ←→3層アーキテクチャ
●リッチクライアント←→HTMLクライアント
●デュプレックスシステム(壊れたら片方に切替)
●デュアルシステム(常に相互監視、双方で照合)
●RAID0/RAID1/RAID5/RAID1+0
●グリッドコンピューティング(比較的大規模)
●スケールアップ・・性能を強化する。質で勝負。
●フェイルセーフ・・ぶっ壊れないように安全な状態にする(安全に停止するとか)
●フールプルーフ・・アホが誤操作してもぶっ壊れないようにわからす
●フォールバック・・性能を落としたり機能制限して限定的に稼働続行させること
●フェイルオーバー(予備系に切替える)←→フェイルバック(主系に戻す)
長文ここまで読んでいただきありがとうございました。一次試験、経営情報の突破を祈っております。
以上、3chでした。
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