開示得点を分析して、改めてこの試験の意味を考える

こんにちは。

先日、再来週から執筆を開始する7代目を囲んでの飲み会を催したのですが、その時にオフラインでは初対面となったかおりんから、「うみのさんって女性だったんですね。記事の書きぶりから男性かと思ってました…ごめんなさい!!」と言われたうみのです。

実はそれは意識してそうしていたので(ネット黎明期だったころからずっと色々見てきた身としては「女性でーす」みたいな書き方をすればそれだけでPVを稼げることはよく知っていますが、それはなんだか下駄を履かせてもらってるような感じがして好きじゃないという無駄に依怙地な理由で)、何も謝ってもらうようなことはなく、むしろありがとうという気持ちなのですが(笑)。

 

そんなどうでもいい話は置いて本題に入りますと、この一年、道場や「ふぞろいな合格答案」などの活動を通して、数十件の開示得点を見る機会がありました。

それを通して、私の6代目としての最初の記事で書いたような、「この試験って一体何なの?何を問われているの?」ということを改めて考え直す機会があったので、今日はそんなことについて書こうと思います。

 

この一年私は、道場ではなるべく受験対策に沿った記事だけを書こうと心がけており、あまりこの手の観念的な話は書くつもりがなかったのですが、もうこれで最後ですし、昨日のなごの記事に刺激を受けたことと、少し前に別のブログで「診断士という資格の本質って何なの?」という記事を書いたところ「道場にも載せたらいいのに」と言われたこともあって書いてみてもいいかなと思った次第です。

 

さて、開示得点を見ていく中で最も意外であり、この記事を書くきっかけになったのは、「合格者の成績におけるオールA合格の少なさ」です。

もちろん数十件程度のサンプル数では全体の定性など導けるわけもないですが、模試で常に上位をキープしていたり2次試験に関してはかなり対策を重ねてきているような人でも、4事例通して優等生、という人は非常に少ない印象を受けています。

 

肌感覚としては、A評価の数は、4事例のうち2つ、くらいが合格者の平均に近いのではないかという印象を持っています。

 

また不合格者の開示得点も含めて見てみると、点数としては、50~60点が受験者のボリュームゾーンではないかと感じています。恐らくこのあたりに正規分布の山があるでしょう。

 

オールAを取るような「受かって当然」の優秀な受験生はさておき(もちろんそれだけでは合格率20%には決してならないので)、その下のボリュームゾーンにいる受験生の中で合否を最終的に分ける要因は、

 

「どこかで荒稼ぎして底上げする」

「40点以下を作らない」

 

の2つに尽きるのではないかと私は思っています。

即ち、40点以下(D判定一発退場)を食らわないようにして、得意事例で70点前後の荒稼ぎをし、トータル240点以上を目指す、という戦略です。

 

その中でも、事例I、III、IVは比較的70点以上を取りやすい事例なのではないかと感じています。

特にストレート生は、対策の質や量が本試験の点数に反映されやすい事例IVで手堅く得点していく戦略が大事だと思います。

IIは近年の傾向から言うと勝負の分かれ目になりやすい科目かなあという印象を受けています。(今後の傾向の変化でどうなるか分かりませんが)

 

かといって、目標を下方修正して良いというわけでもないと思います。

なぜならば、40点以下を取らないことを目指す、と言うとかなりハードルを下げたかのように見えるかもしれませんが、これは実はかなり難しいことだと感じるからです。

得意事例のはずなのに、多くの受験生が解答できた設問で大きく題意を外してしまったなどの「事故」を起こしてしまい、40点に届かなかった…という声は毎年多く聞くからです。

おそらく本試験は、70点レベルの解答を目指してようやく50~60点を安定して取ることができる、くらいの難易度なのではないかと思います。

やはり、4事例通してオールAを目指す、という取り組み方は正しい戦略であると考えます。

 

 

そして70点レベルをどう目指すのか、を対策面から考えると、やはりこれまで繰り返し書いてきた

 

「与件文のストーリーから題意を汲み取るトレーニングをする」

「分かりやすく因果と根拠を用いて分かりやすく答える解答フレームを持つ」

 

という2つが肝要なのは変わりないと思います。

 

開示得点で試験が大きく変わる、ということもよく言われていましたが、27年度の試験を見ても結局新しいことはあまりなく、受験において大事なことはこれまで議論されてきたこととそんなに変わらない気がしています。

 

そして、こういう議論のなかでよく耳にするのが、こうした試験制度や対策のあり方そのものが「中小企業の診断・助言をする専門家」を認定する仕組として本質的なのかどうか?という疑問です。

 

私はこの手の疑問が出るたびに「こんなの、あくまでもペーパーとたった一度の面接だけで量るしかない試験なんだから、構造的に限界があるのは当たり前じゃん」といつも思っています。

 

試験では1次7科目、2次4事例通して平均60点を合格ラインとしていますが、それは「中小企業診断士という資格を得るための最低ライン」であって、診断士として活躍できるかどうかはまた別の話です。

それは新卒採用と同じようなもので、「ポテンシャル採用」に過ぎないと思っています。

 

試験に合格して資格を取得する事と、その資格を使いこなすことは全く別の次元の話なわけです。

だからこそ、初代JCも、「診断士試験合格はゴールではない。ましてやスタートですらない」と語っていたのだと思います。

 

その一方で、試験に合格しなければ何も始まりません。

であれば、どんなに不合理に感じることがあろうと、試験のルールを理解し、その中で勝負するという心構えが大事だと私は思っています。

 

では、診断士としての本当のスタートラインはどこにあるのでしょうか。

私はそれについて、最近こんなことを思っています。

 

私が今お手伝いをしている先輩診断士の方で、受験生時代からすでに勤め先を辞め、診断士となってからは瞬く間にコンサルティング業としての自らのドメインを確立し、現在100社を超える企業から相談を受けている方がいます。

その先輩に先日会って話をしていたのですが、

 

「社長や中小企業を助けたい、と語る診断士はすごく多い。そんな時、俺は、人を助けたいならまず自分の身を立たせてから言えよ、といつも言ってる」

 

また、私は自身の本業でよく医療関係の人に取材するのですが、先日、とある作業療法士の方がこんなことをおっしゃっていました。

 

「人を助けたいと思ってこの仕事を選ぶ人は多いです。しかし、まずその前に自分自身が社会的にも精神的にも自立していなければ、必ずその難しさの前に挫折して去っていきます」

 

私もこれに似たことをかねがね思っていたので、ああ本当にその通りだなと改めて思いました。

自分の人生を価値あるものにしたくて人を助ける、というのはきっと順序が違っていて、人を助けることが、自分自身を助けることの手段になってしまってはいけないのだと思います。

最初のきっかけとしての動機はそういうことでも良いと思うのですが、それだけでは本当には人を救えないし、それを続けることも難しいのではないかと考えています。

 

私は職業柄、数百人を超える人を取材してきましたがいつも思うのは、人は経験したことしか本当には語れませんし、知識では人の心を動かすことはできないということです。

だからこそ、専門的知識と思考力の証明にしか過ぎない診断士資格は、やはりゴールでもスタートでもなく、ただの「手段」だと私は思います。

 

どう使うかは、自分次第。

もちろん、それだけが絶対的に正しい手段とは限りません。

その手段が正しいのかどうかは、「目的」に沿って選ばれることで初めてわかるものだからです。

 

自分の目的が何なのか。

診断士試験は、それを問い直すための小さなきっかけなのだと私は思っています。

私自身は、恥ずかしながら単純な知的好奇心だけで診断士試験を受験したのと、もともと今の仕事が自分の天職だと思っていたので、独立したいとかコンサル業をやりたいという考えはほとんど持っていなかったのですが、この一年を通して、普通に生きていたら絶対に出会えないような人、様々な中小企業の社長と出会ったことで、自分が何をして社会にコミットしていくべきかを改めて深く考えるようになりました。

そういうタイミングだったのか、公私ともに転機を迎えることになり、今までと違った道を選ぶことになりそうです。

 

あなたの目的はなんでしょうか?

それを定義することが、おそらく本当の「スタートライン」なのではないかと私は思っています。

 

何であれ、今の学び、今の経験が、すべてあなたの目的に向かっていく道であることを願っていますし、私も自分の目的に沿った道を自分で選んでいきたいと思います。

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開示得点を分析して、改めてこの試験の意味を考える”へ5件のコメント

  1. くろ より:

    うみのさん

    お返事ありがとうございます。
    こちらこそ100選に選んでいただき恐縮です(笑)

    またぜひお会いしたいです。

    その際はよろしくお願いします。

  2. うみの より:

    >くろさん
    コメントくださり、ありがとうございます。
    口述対策にご参加くださったのですね。あの公開処刑に耐えて下さって、よく頑張られました。
    私の勢いだけの文章にそのような過分なお言葉をいただき恐縮ですが、そう言っていただけると大変嬉しくありがたいです。
    くろさんのあたたかいお言葉、私の忘れたくない言葉100選にしかと組み込まれました。
    いよいよ、診断士としての人生が始まりますね。自分のこれまで経験してきた全てが生きるし、新たな自分にも出会える道がこれから広がっていきますよ。
    くろさんのこれからの活躍を祈念しております。
    また、ぜひお会いしましょう!
    今度は公開処刑じゃない形で(笑)

  3. うみの より:

    >こたんさん
    ありがとうございます。
    一年間書くことでむしろ自分自身にとって得られるものが大きかったと今振り返って思います。
    今は、こたん氏をはじめとする7代目に多いに期待しておりますよ。
    私の分析はまだまだ道半ばでしたので、その意志を受け継いでくれるものと思っています(笑)
    先代枠はどうでしょうね。6代目は歴代一の大家族なので、だいぶ先になるかも。
    そうそう、6代目のスピンオフブログもできるらしいので、そっちで書こうかな(笑)

  4. くろ より:

    うみのさん

    こんにちは、道場の去年12月の模擬面接でお世話になりました、くろと申します。

    その節はありがとうございました。

    実は、受験は四回目で、今年はあまり記事を読んでいなかったのですが、今回うみのさんの記事やその他過去記事、ふぞろい等の投稿を読ませていただき、その丁寧で読みやすい文章に込められた熱い想いに感銘を受けました。

    これから活動一年目ですが、うみのさんの記事を参考に自分の興味のある分野に積極的に挑戦出来ればと思います。

  5. こたん より:

    1年間、ブログ執筆お疲れさまでした。

    一連の記事、診断士や試験の本質に迫り、そこからの逆算のアプローチ、本質をとらまえた骨太な受験対策指南というべきもので、「サムライ…」と畏敬の念を抱いていました。(セミナー後懇親会での腰の低さとのコントラストがキャラですね)

    うみのリーダーの転機後の「今までと違った道」が気になります。先代枠で、本稿の続き、お待ちしております。

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