診断士の定石を理解する、ということ

<今週の道場(予定)>

12月1日(火)  経営戦略全史ネタ
12月2日(水)  2時対策を見据えた財務攻略法
12月3日(木)  2次対策を見据えた企業経営理論攻略法
12月4日(金)  独学者のスケジュールの立て方
12月5日(土)  予備校の答練の生かし方

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なごです。
今、このブログを読んでいる人は2次試験を終え、ゆっくりとしている人でしょうか。それとも来年の試験に向け、努力を重ねている人でしょうか。
今日は診断士試験を通じて得る学びについて、実際の活用方法を交えながら学びの本質について考えてみたいと思います。

 

皆さんが試験合格後、出会うであろう経営者の多くは、その業界で長年努力を重ねてきた方ばかりです。日々、試行錯誤を重ね、部下と議論を交わしながら、業界の荒波の中で必死に努力しています。ヘッドハンティングや起業してその業界に現れた新参の方たちも、古参の企業たちと戦うため、生き残るために必死なのは変わりません。そのため当然ですが、私たちより自分たちの業界について精通しています。
でも相手はこちらをコンサルタントとして見ているため、自分たちの業界など知っていて当然というスタンスで接してきます。まあ当たり前ですよね。こちらも「当然精通しています」というスタンスで臨む必要がありますし、そうでなければアドバイスをするどころか、私たちの話を聞いてもらうこともままなりません。そんな時、相手を知るために役に立つのが“定石”です

 

例えば、ざっと相手の企業を知るための手段として外部環境分析がありますよね。例えばPEST分析5フォース分析などを用いて知りたい業界を取り巻く現状を知ることができます。内部環境にも目を向ければSWOT分析VRIO分析などで自社の立ち位置を知ることも出来ます。
経営理念経営ビジョンを聞いて企業の目指す位置を知り、組織構造組織文化を見て、企業の姿勢を把握する。真の企業ドメインは何か、PDCAは短期間で回転しているか、など企業を知る上で押さえるべき点を“あらかじめ把握しておく”ことで、経営者と相対した時に、早期に同じ目線で会話することができるわけです。

 

また経営者が将来についてアドバイスを求めてきたとしましょう。業界に精通している経営者から、「ビジネスとしての本質」を聞かれているわけですから、私たちがその場で、思い付きの回答したところで、簡単に力量を見透かされてしまうでしょう。そういう場合も考え方としての“定石”を使うわけです。アンゾフの成長ベクトルに当てはめてみながら、狙うべき市場と活用すべき商品特性を鑑み、効果の高い戦略を提案するのも一案でしょう。ポーターの競争戦略に当てはめながら自社の強化すべき差別化された戦略を指し示すことも有効かもしれません。各社それぞれに取り巻く現状は様々なですが、経営戦略を考えるうえで“定石”の視点から方向性を指し示すことは、社長と議論を交わす1投目としては有効であると考えています。そしてその後は、経営者と対話を交わしながら、これまで経営者が独自の嗅覚で道を切り拓いてきた道に対し、論理的に“寄り添いながら”次の道筋を示すことが診断士には必要であると考えています。2次試験で独創的な意見を書いても合格できない、とよく言われますが、私もそうだと思います。まず社長の話(与件文)を正確に聞き(読み)、それに対して的確な判断を行う(設問に答える)。社長の想いに寄り添いながら社長と信頼関係を築いたうえで、自分自身の経験を踏まえた助言をしていく。そんなことが診断士には求められているのでは、と思うのです。

 

でもここで間違えてはいけないことが一つ。経営者に対し、例えば「御社はコモディティ化した業界の中でイノベーションジレンマを脱し、ラディカルイノベーションを実現させましょう」などと横文字ばかりを並べて経営者を煙に巻くようなことをしてはいけません。セオリー通りだからと言って、単に知っている知識を並べ、自分自身の力を誇示しても意味がない。相手のレベル感に合わせ、分かりやすい言葉で、経営者に寄り添いながら、具体的な提案をすることが私たちの役目なのです。

 

そのためには、私たちがこれから学ぶ単語一つ一つに対し、「これはどんな時に使うんだろう」と頭の中でシミュレーションを行いながら学んでいくことが、実は結構将来に役立つと考えています。というのも私が診断士の試験を見る限り、毎年、難関試験と称しつつ診断士としての“定石”を受験生に問う試験問題ばかりであると思っているからです。
逆に診断士としての“定石”を徹底的に学ぶわけですから、経営者からどんな種類の投げかけがこようとも、最低でも定石通りに応えることができるよう、幅広い強固な知識の構築を行う必要があるわけです。

 

またビジネスとしての“定石”を知るようになると、企業が実施する施策の矛盾点がとてもたくさん見えてくるようになります。
衛生理論によると、自社が実施している従業員の不満を解決する施策は、もっとほかの方法が良いのでは?」
職務拡大ではなく、職務充実を目指そう」
内発的動機付けを仕掛けるために目標設定理論を使ってみよう」
「まずい、この状態はグループシンクだ!」
自分の職場ひとつ見渡しても、たくさん事例があるのではないでしょうか。学びはテキストにとどまる必要はありません。実社会の至る所で、良い事例、悪い事例が溢れています。例えば新聞一つとっても、企業が良かれと思って実施した施策実例の宝庫です。批評家になる必要はありませんが、「この新聞記事、自分だったら、○○のようにすると良いのでは」とシミュレーションするだけで勉強になります。皆さんはこれから様々な受験科目に取り組むわけですが、単に知識を丸呑みするのではなく、実社会に当てはめて考えてみることで、きちんと“噛みしめる”ことができ、自分自身の力となっていくと私は考えています。

 

また新聞等だけでなくもっと知識が欲しい、そういう人はJ-NET21という中小企業基盤整備機構が運営しているサイトを読むと良いですね。中小企業の実例がとてもたくさん紹介されています。特に2次試験のみを残している人は、2次の事例で取り上げてもよさそうな企業がたくさん紹介されていますので、読んでみる価値はあると思います。ちなみに執筆陣があまりこれまでJ-NET21に触れてこなかったのは、実は大きな理由があります。とても興味深いサイトのため、ネットサーフィンしていると時間があっという間に過ぎてしまうからです(笑)。勉強の合間にでも、時間を決めて読んでみながら、将来に希望を膨らませるのも良いのではないでしょうか。

 

最後に。
実社会から学ぶことはたくさんあると上記に記載しました。確かに成功事例は新聞や雑誌を読む限り無限にあります。でも日常生活を見渡してみたらいかがでしょう。むしろ失敗事例のほうが多いのではないでしょうか。その原因探究に、自称診断士として意識して取り組んでほしいのです。

多くの人が仕事に不満を持つ、原因はモチベーション管理にあるかもしれません。売れていない小売店がある、それは商品陳列や品ぞろえに問題があるかもしれません。対策が場当たり的であるがゆえに、現状としては問題が発生していないもののQCDを改善すれば劇的に作業効率が改善する職場も多いでしょう。皆さん自身が問題の本質を見極め、なぜそうするのか?(WHY?)を重ねて真の問題点を突き詰めるためには、診断士としての知識の習得は、将来大きな武器になります。
少なくともあなたが見つけることのできる「身近な問題点」はあなた自身が解決することのできる「チャンス」であると言えるのではないでしょうか。矛盾の数だけ、あなた自身を必要としている人たちがいます。その人のためにも、今は学びを深めてください。

これから長いようで短い道のり。試験はまだ来年、ずいぶんと先の話だと、ほとんどの人が感じていると思いますが、実は1次試験まであと260日程度です。1次試験は7科目あるので毎日1科目を、今後休まず勉強したとしても1科目あたり平均37日程度しか費やすことができません。意外に時間は短いですよね。そのため自分自身を取り巻く実社会も学びの一つとしてアンテナを張ると良いかと思うのです。

 

まだ見ぬ未来のパートナー(仕事仲間・経営者など)のために、皆さんの今の努力が、将来、大きな実を結ぶことを願っています。

なごでした。

 

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