【渾身】財務指標を理解しよう(収益性・効率性・資本構造)

こんにちは、どいこうです。過去記事はこちら

財務指標を掘り下げて考える

今回は財務指標を採り上げます。財務指標は、一次試験でも二次試験でもきわめて高い頻度で出題される分野ですから、パッと回答できるよう、慣れ親しむことをおすすめします。

さて、資金の貸し手(銀行等)や株式の保有者(オーナー社長や他の投資家)は、企業の現状に関して、何を把握したいでしょうか?

 

一般的に重要だと言われる項目は以下のようなものです。
・投下した資金に対して、どの程度の利益が出ているか
・投資・融資したお金が戻ってくるか

投下した資金に対して、どの程度の利益が出ているか(資本利益率)

利益は元利返済・配当収入・株価上昇の源泉となりますから、極めて重要な概念です。

資金の出し手にとって、最も包括的な利益の指標は、
1)「資本利益率」(資本に対してどれだけの利益があがるか)です。

資本利益率(特に自己資本利益率)を以下のようないくつかの要素に分解し、改善ポイントを探ることがあります。
1-1)収益性(≒売上高利益率): 企業が利益を出せているか
1-2)効率性(≒回転率): 企業が資産を活用してどの程度の売上を出せているか
1-3)資本構造:他人資本をどの程度活用しているか

投資・融資したお金が戻ってくるか(安全性)

投資や貸付も事業活動ですから、倒産してお金が戻ってこなくなることを警戒します。そこで、

2)安全性: 債務の返済や利払をきっちり行えるか

を検証します。

さて、以下では、それぞれのグループについて、確認していきます。あなたも自分が気になる上場企業の決算短信(有価証券報告書でもよい)を見て計算してみてください。気になる会社がない方は、例えば最近、話題になっている企業から選定してみてはどうでしょうか。

1)資本利益率

資本利益率には複数の種類があります。以下のものを把握しておくとよいでしょう。

・総資本経常利益率
計算式: 経常利益 ÷ 総資本
総資本を使って経常利益をどれだけ上げたかを示します。分子は経常利益ですから、利払後の利益となります。

総資本事業利益率(ROA: Return On Assets)
計算式:事業利益 ÷ 総資本
総資本を使って、利払前・税引前の利益をどれだけ上げたのかを示します。この指標は管理会計上の重要概念です。

自己資本利益率(ROE: Return On Equity)
計算式: 当期純利益 ÷ 自己資本
自己資本を使って、利払後・税引後の利益をどれだけ上げたのかを示します。この指標はROAと同じく管理会計上の重要概念です。

1-1)収益性の指標

企業が利益をあげているかどうかを検証するには、各種「利益率」の指標を利用します。利益の概念には、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「当期利益」などの概念があり、その時何を分析したいのかに応じて使い分けます。

売上高総利益率(gross margin rate / gross profit rate)
計算式: 売上総利益 ÷ 売上高
企業が提供している製品やサービスそのものの収益性を表します

売上高営業利益率(operating margin rate / operating profit rate)
計算式: 営業利益 ÷ 売上高
企業の本業による収益性を表します。

・売上高経常利益率(ordinary profit ratio / current profit ratio / recurring profit ratio)
計算式: 経常利益 ÷ 売上高
財務活動なども含めた通常の企業活動における収益性を表します。

売上高当期利益率(net income ratio)
計算式: 当期純利益 ÷ 売上高
会社全体の収益力を表します。

1-2)効率性の指標

流動資産(例えば棚卸資産)や固定資産(例えば工場)が効率的に売上をもたらしているか、という指標です。売上を資産で除した「回転率」と、資産を売上で除した「回転期間」とが利用されます。以下では回転率の指標をとりあげます。回転率は通常は1年間の回転回数で算出されますから、回転期間(年表示)が回転率の逆数となります。

総資本回転率(total assets turnover)
計算式: 売上高 ÷ 総資本
企業の総資産額が、1年に何回売上高という形で回転したのかを示す数値です。これが高いほど、資産が効率的に売上に結びついていることを表します。総資産回転率を向上させるためには、総資産を増やさずに販売戦略などによって売上高を増加させるか、あるいは、現在の売上高を維持しながら、不要な資産を処分して総資産を減少させることが必要となります。

売上債権回転率(receivables turnover)
計算式: 売上高 ÷ 売上債権
売上債権回転率とは、企業の売上債権の回収が、どの程度効率的に行われているかを示します。これが低いほど債権回収に時間がかかることを意味しており、売上発生後、売上債権として資金が拘束される(現金化できない)期間が長いことを意味します。
店頭での現金販売を原則としている飲食店(例:サイゼリア)では、売上債権回転率が大きくなり、事業の構造上、資金的に効率的だといえます。

棚卸資産回転率(inventory turnover)
計算式: 売上高 ÷ 棚卸資産
棚卸資産回転率とは、企業が棚卸資産を、どの程度減らせているかを示す比率です。
ジャストインタイム方式で原材料や仕掛品の在庫を減らしている会社、受注生産を行う会社などでは、棚卸資産回転率が大きくなります。

有形固定資産回転率(tangible fixed assets turnover)
計算式: 売上高 ÷ 有形固定資産
有形固定資産回転率は、企業が有形固定資産をどの程度効率的に活用しているかを示す比率です。
工場を持たない(ファブレスの)製造業などでは、有形固定資産回転率が大きくなります。

1-3)資本構造

他人資本をどの程度活用しているかを表す指標です。

自己資本比率(equity ratio)
計算式: 自己資本 ÷ 総資産
総資本に占める自己資本の比率を表します。指標の性質上、◯%という表示となります。

財務レバレッジ(financial leverage)
計算式: 総資産 ÷ 自己資本
自己資本に対して、何倍の資本を活用しているかを表します。自己資本比率の逆数で、◯倍という表示となります。

おまけ:デュポン分析

なお、有名なデュポン分析(DuPont Analysis。デュポンシステム、デュポン式とも呼ばれる)があります。以下のようなものです。

ROE  = 売上高当期利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
= (当期純利益÷売上高) × (売上高÷総資産) × (総資産÷自己資本)

上記のように要素分解することにより、課題がどの部分にあるのかを把握することができます。

このデュポン式から明らかなように、財務レバレッジが効いているほど、ROEが高まります(以前の「資本利益率」に関する記事にも書きました)。

「ウチは無借金経営ですから!」と自慢するのは、ファイナンス理論から見ると、必ずしも正しいと言えません。倒産しにくいという意味では確かにそうですが、オーナー(株主)の利益率を結果的に犠牲にしているという解釈も成り立ちます。

「ウチは自己資本に何倍ものレバレッジを効かせていて、かつ当期利益と現金収支が安定的にプラスなんだぜ!」という経営者もカッコイイのです(私はこちらのほうが好みです)。

まとめ

今回は、「投下資本が利益を出すかどうか」を検証するためのもろもろの指標を取り上げました。いずれも業界特性などにより状況が異なり、例えば携帯通信の会社と家具製造販売の会社との数値を比較してもほとんど意味がありません。基本的には同業種と比較することで意味を持ちます。

安全性については次回とりあげます。


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