それでもやっぱり、診断士として生きていきたいと思う人へ

9月も深まり秋らしい顔つきになってきた空のもと、東京都某市はオフィスビルの一角。

診断士になってまだわずか半年のTは、診断士仲間2人と、小規模事業者として商社を営む社長のもとを訪ねていた。

診断士協会の斡旋による実務案件は、診断士がチームを組んで関わることになっている。

それぞれにキャリアの異なる3人は、まだ訪問3度目ということもあり、幾分ぎこちない面持ちで社長に相対している。

 

まだ若いながらも、数年前に事業を立ち上げて以来取扱い商材や販路を着々と広げ業績を伸ばしている社長は商才とバイタリティに溢れ、ビジョンも明るく人脈作りにも長けている。

そんな優秀な社長のもとであるから、T達3人は経営上の悩みを聞くというより、さらに売上を拡大させていく施策のひとつについて、そのプランと実行をサポートすることを目的として派遣されていた。

 

前回の訪問で当初の施策について全体像が見え始めていたこともあり、この日は少しだけ話題が広がった。

いまメインで取り扱っている商材の販売促進について、もう少しテコ入れをしたいんだよね、と社長がおもむろに語り出したことがそのきっかけだった。

望ましいプロモーションの方向性や、現在利用しているメディアをどう活かすかなどについてブレーンストーミングを行う体になり、3人はそれぞれに閃いたアイディアを挙げてみる。

なかでもTは、ワクワクした気持ちを抑えきれずにいた。マーケティングやプロモーションはもともと彼女の本業なので、イメージは広げやすい。

そんな話の流れで、

「私の勤務先は広告代理店なのですが…」

と何気なくTが補足したその時。

社長の顔が、ぱっと輝いた。

「あっ、そうなんですか! それは頼もしい…いやぁ、失礼ながら皆さんただの診断士かと思っていたのですが、それぞれにそういう立派な専門性があるんですね。いや、それはありがたいです。」

そう言って3人の顔を、今までにない嬉しそうな面持ちで見渡した。

 

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こんにちは、うみのです。

今日はなご氏の代打で登場です。

前日の和尚にインスパイアされたというわけではないものの謎のシーンから始まりましたが、その解説の前に…

 

2次試験が終わってそろそろ一週間。

実感、ないですよね。

まだ現実感を取り戻しきれていない人も多くいらっしゃると思います。

 

無理もありません。

この1年間、あるいはもっと長い時間をかけて頭や気力を振り絞ってきたその成果がたった1日で量られてしまう、というものすごくドラマチックな経験をしたわけですから。

 

そして努力してきた人ほどそんな完了放心も大きく、「…結局なんだったんだっけ?」とモヤモヤし出す、ということもあると思います。

一昨日のきりの記事は、戦いが終わったときほど初心を思い出すべきである、という意味で、そんなモヤモヤした気持ちにまっすぐに刺さるような内容だったと思います。

 

そろそろお腹いっぱいかもしれませんが、今日は、私からもそんな話をしたいと思います。

来年の受験に向けて勉強を始められた方にも、できれば読んでいただきたいお話です。

 

 

結局この試験ってなんなんだっけ?」という問いに対し、最初にいきなり夢のない話をしてしまうと、

診断士試験を受けたこと、あるいは受かることそれだけで、「こういうことだったんだ!」という劇的なエンディングが勝手にやってくるわけではない。

2次試験というラスボスを倒したからといって、感動的なスタッフロールが流れるわけではない。

ラスボスの城を出て目の前に広がるのは、相変わらず、それぞれの「なんとかしなければならない日常」なんです。

 

じゃあ…なんのためにこの試験を受けるんだろうか?

そういう気持ちになる人もたくさんいると思います。

 

なんのためか、という問いに、たくさんある答えの可能性の中からひとつ指し示すなら、私はこう考えます。

 

診断士は、独占業務を持たない士業である。

つまりそれはどういうことか?

 

「診断士とは、この仕事をする人である」という明確な定義が与えられていない。

つまり、自分のドメインを自ら決めなければならない、ということ。

 

口で言うのは簡単ですが、これはとても難しいお題です。

しかし、私の周りを見る限りですが、活躍の幅を広げ続けている診断士の方はすべて、明確な「自分のドメイン」「自分の市場」「自分の強み」を持っています。

 

経営分野の専門家というとゼネラリストのイメージが強いかと思いますが、全ての分野に強い完璧超人(©キン肉マン)などいません。

重ねて、独占業務が与えられていない以上、士業の中で診断士ははっきり言って、ビハインド的ポジションです。

そういう内部及び外部環境において頭角を現そうと思ったら、弱者の戦略である「一点突破」が最も強いのではないだろうか、と私は考えています。

診断士×自分の強み」をもって、自身のドメインを明確にする診断士の存在はその証左ではないかと思います。

冒頭のエピソードは私が経験した実話で、このことを改めて強く感じる出来事でした。

社長の立場に立ってみれば、もっともですよね。

わざわざ診断士という存在に何かをアウトソーシングするわけで、

アウトソーシングの原則は、「自社にない機能を外部に委ねる事」なのですから。

 

 

 

皆さんは、「運根鈍」という言葉をご存知でしょうか。

成功するには、幸運と根気と、鈍いくらいの粘り強さの三つが必要である、という意味だそうです。

 

作家のやなせたかしさんも、こちらのインタビューで「運根鈍」を引用しています。

私はこのインタビューがとても好きで、行き詰った時はいつも読み返しています。

 

“僕はもっと若い頃に世に出たかったんです。
ただ遅く出てきた人というのは、いきなりダメにはなりません。こんなことをしていていいのかと思っていたことが、みんな勉強になり、役に立っていく。人生にムダなことなんて1つもないんですよ。”

 

診断士のキャリアも、これと同じではないか、と私は思っています。

自分では大した経験ではないと思っていても、社長の顔を輝かせる可能性がある。

そういう前提に立つと、自分の経験してきたこと全てが、自分のドメインに生きる可能性があるって思えませんか。

 

 

夏目漱石は、まだ世に出る前の芥川龍之介と久米正雄にこんな手紙を送っています。

有名ですが、あえて引用します。

 

“あせっては不可(いけ)ません。

頭を悪くしては不可(いけ)ません。

根気づくでお出でなさい。

世の中は根気の前に頭を下げる事を知っていますが、

火花の前には一瞬の記憶しか与えて呉れません。

うんうん死ぬ迄押すのです。

それ丈(だけ)です。

決して相手を拵(こし)らへてそれを押しちゃ不可ません。

相手はいくらでも後から後からと出てきます。

そうして我々を悩ませます。

牛は超然として押して行くのです。

何を押すかと聞くなら申します。

人間を押すのです。

文士を押すのではありません。”

 

最後の「人間」は、“自分が押すべきものは何なのか?”を考えて当てはめてみると良いのではないかと思います。

「文士」は「診断士試験」ですね、多分。

 

さあ、試験が終わって最初の週末です。

休んでリフレッシュするもよし、新しいことに取り組んでみるもよし。

どんな「牛の一歩」にしてみましょうか。

 

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お知らせ3つです。

 

☆「ふぞろいな再現答案」再現答案募集☆

私も執筆メンバとして参加した「ふぞろいな合格答案」では、来年の「ふぞろいな合格答案 エピソード9」の制作に向けて、平成27年度受験生の皆様の再現答案を募集しています。

詳細な添削が返ってくる特典がありますよ。(特典についての詳細は下の画像をクリックしてください)

 

再現答案募集フォームはこちらから

ふぞろいブログはこちらから

 

 

☆11月からの道場記事について☆

来月からは、次年度合格を目指す人向けの記事も織り交ぜて展開していきます。

週の初めに、その週の主な予定をお知らせしますのでご参考いただければと思います。

引き続き道場ブログをご活用いただければ幸いです。

 

☆一発合格道場 2次試験お疲れ様会☆

目的は、ただ飲むだけです。

2次試験を受験された方であれば、どなたでも参加OKです。

話題は、これまで苦労したこと、試験の内容なんでもOKです。

これまで溜めたことを、すべて吐き出しちゃってください。

合格とか不合格とかも関係ないです。合格発表がまだなこの時期は、全員が合格候補者です。

 

先着20名様なのでお早めに下記からお申込みください。

一発合格道場 2次試験お疲れ様でした会

<開催概要>

日時 2015年11月07日(19:00開始)

開催場所 東京駅近郊の居酒屋(東京都中央区)

参加費 3,500円(税込)

http://kokucheese.com/event/index/348751/

皆様にお会いできるのを楽しみにしています。

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それでもやっぱり、診断士として生きていきたいと思う人へ”へ2件のコメント

  1. うみの より:

    zenzenさん
    コメントありがとうございます。
    その逃げたい気持ち、とてもよくわかります。
    私も昨年の今頃、まさに同じでしたから。
    模範解答なんか絶対見ない、と思ってました。(笑)

    一方で、試験当日のショックの後遺症が大きすぎると、どこで断ち切って良いのかよくわからなくなってしまうのですよね。春先までずっと苦しんだ、という勉強仲間もいます。
    この辛さの先に何があるんだろう?と考えるとしたら、仕事の悩みは仕事でしか晴らせない、という言葉があるように、「診断士になる、という目的の先に、どんなゴールがあるんだろう?いつか老いて働くことから退く時に、何を達成したと思っていたいんだろう?」を押し続けるしかないのかな、と思っています。
    これこそ、人間の営みですよね。
    診断士も様々な知識も人脈も、よい人間として在りたい、というひとつの道に過ぎませんし、診断士という道は必ずしも最初の関門であるとは限らないのかもしれません。
    いろんな診断士の在り方を見て、そう感じています。

  2. zenzen より:

    試験直後は、精一杯やったという気持ちと開放感で若干テンションが上がっていましたが、いい加減落ち着いてきて、「あの解答は論理が拙いな」とか、「この計算間違ってるな」などと考えてしまい、恥ずかしながら怖くて各社の模範解答を見ることから逃げています。

    色々取り組んできたつもりが、ここが変わらない自分の本質なのだろうと思います。

    「人間を押すのです」
    このフレーズが響いてきます。
    重くもあり、救いのようでもあり。

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