【ゆるわだ】専門職になるための試験

一次試験直前のこの時期。スト生の方はもちろん一次模試に向けてガリガリ暗記中かと思います。

一方、多年度生の方はスト生の二次試験戦線参戦まであと1ヶ月程度となりましたね。

 

二次試験の勉強をしているとスランプに陥ることがあると思います。私の場合も自分が何を書いているのか見失い、暴走(問われていないことを書く、思いつきの解答を書く等)することが多々ありました。

 

こういったことを引き起こす要因は、突き詰めれば「二次試験の採点がブラックボックスで行われており、模範回答の発表がないことに起因する」と私は考えておりますので、やはり点数の開示というのは、診断士試験の攻略という意味においては大きな一歩なのだと思います。

 

でも、実務補習を終えてみて改めて振り返ると、自分が「暴走」してしまったのは、なぜ診断士試験・資格が存在するのかをイマイチ理解していなかったからじゃないか、それが理解できていれば暴走を幾分か抑えることができるのではないか、と思うようになりました。そこで、もちろん私見ではありますが、私なりにこの試験について考えてみたいと思います。

 

今スランプで暴走してしまっているなぁという方には解決の一助に、一次試験を目指して頑張っている方にはゆるわだとしてとしてお読み頂ければ幸いです。

 

専門職と試験

情報の非対称性をウリにする職業は専門職とよばれることが多くあります。

専門職には、長期の訓練・教育を通し高度に体系化・理論化された知識・技術を身につけることが必要とされ、その職業集団の成員には、国家または団体による資格認定が必要とされるというのが共有しやすい認識ではないでしょうか。

この専門職、産業期以前の欧米においては聖職者(牧師等)・医師・法律家が体系的に確立された専門職として考えられていました。

それは、この三者が、正常であるもの、適切であるもの、望ましいものを定義する立場にあるから、とされていたからだそうです。

 

ただ、私が最も適切に「専門職」というものを表していると思うのは、池上直己・J.C.キャンベル共著の「日本の医療 ―統制とバランス感覚―」の中の一節で、

「プロフェッション(専門職)は高度な専門知識を必要としているので、その職につくための教育面も、あるいは日常業務の遂行面においても、専門職者同士だけで決めることができるが、その代わり質を維持、向上させていく責任を、個人として、また専門職集団として持っている」

というものです。

診断士に置き換えてみると

「中小企業診断士は高度な専門知識を必要としているので、その職につくための教育面も、あるいは日常業務の遂行面においても、中小企業診断士及び経営関連学識者(試験委員)で決めることができるが、その代わり質を維持、向上させていく責任(試験の難易度の維持、実務従事・理論更新研修による更新制度)を、個人として、また専門職集団として持っている」

と置き換えられるように思います。

まさに診断士制度も専門職であると言えそうですよね!

 

診断士試験をなぜ受けるのか

我々が診断士試験を受けるのは、自分がこのような専門職である中小企業診断士として登録され、ライセンスを獲得するにふさわしい、体系化された教育やトレーニングを受けた人間である、ということを、資格を付与する経済産業大臣(もっと端的に言えば、採点する人)に向けて示すためです。

 

具体的には、体系化された教育により獲得した知識は一次試験によって試され、体系化されたトレーニングにより獲得したノウハウは二次試験(+実務補習)によって試されます。

 

そのため、試験で不合格となった際に「俺の(私の)書いた答えの方が正しいのに!」ということは少し議論の焦点がズレているのかもしれません。

 

なぜならそれは受験生の方から「中小企業診断士という国が定めた資格を持つ人たちの仲間になりたい」といって門を叩いているのに、「中小企業診断士の考え方には合わない(≒自分の答えの方が正しい)」と言っていることと同義だからです。
確かに受験生の書いた回答の方が、事例企業の売上が伸び、生産性が改善し、社内のコンフリクトを解消する有効な提案であることもあると思います。

ただしこれはあくまで「中小企業診断士」になるための試験なのであって、一発逆転ギャンブラーコンサルタントになるための試験ではありません。

 

私はまさにそのような具合に試験をはき違えていました。

 

「一次試験はクリアさえすればそれ以降は使う機会はないから」とか、「二次試験は本番でたまたま良い答えが書けたらOK」とか、かなり独りよがりな考えを持って試験に挑んでいました。それでは「診断士試験において正しいとされる答え」に近づけるはずもありません。

 

私の場合、幸運にもまさに「たまたま合格」で二次試験を通過させていただき、実務補習に進むことになるのですが、そこで指導員の先生に叱っていただくことができ、やっとこの壮大な試験の仕組みがハラオチしたという次第です。
(ちなみに叱られた内容の一例は、「一次試験のテキストは持ってきてないのか?」や「一次試験の知識の使い方を覚えるのが実務補習だ」といったところです。本当に初歩的なことですよね。)

 

経営診断・助言には正解はないと思います。

何が売れるかなんて分からないし、人と人との関係なんて目に見えるものではないし、陳列を見てどう思うかなんてそれこそ人それぞれです。

でも、そんな正解のない中でも、過去の偉人たちが積み上げてきた「正解らしいと考えられているもの」を利用して、今、精一杯正解に近そうなものを提供する能力を持つ人こそ、この診断士試験で求められている診断士と言えるのではないでしょうか。

以前の私のような思いつき根拠の薄い考えで診断・助言をするような人ではなく、根拠が明確に示され、今、最も正解に近いと考えられている考え方に基づいて診断・助言ができる人にこそ、中小企業診断士という専門職のライセンスが与えられるのだと思います。

 

皆様が私と同じような考え方にはまらず、一直線で診断士試験合格に向かって邁進していただけることの一助となれば幸いです。

 

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です