【いざ攻略!事例Ⅱ】ラーメンA

こんにちは、マイスターです。

さて、前回の事例Ⅰに引き続いて今回は事例Ⅱに話を移していきましょう。

 

さてまずは以下の文章を読んでみてください。

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サラリーマン時代、外回りの合間にラーメンを探しては食べ歩くのが趣味だったAさんは、多くの人が訪問するラーメンブログを開設しており、ラーメンマニアと言われるラーメン好きの仲間の中でも有名な存在でした。サラリーマンとしての出世競争の行き詰まりもあり、好きなラーメンを仕事にすることが夢だったAさんは、35歳の時に12年務めた会社を辞めての脱サラを決意しました。ラーメン屋経営は儲かると仲の良かった店主に聞いており、沢山のラーメン屋を見てきて良く知っているという自信もあって、ラーメン屋での独立開業を考えたのです。

知り合いの店長Yさんお店で3か月ほどのラーメン修行をさせてもらうことになったAさん。そのお店はピーク時には行列もできるいわゆる「人気店」でした。醤油・豚骨・塩等のそれぞれのラーメンだけでなく、チャーハンの作り方や、美味しい冷麺作りのコツなども学びました。その他、仕入やキッチンオペレーション方法など、一通りラーメン屋経営をする上で必要なことを学ぶことができましたのです。Yさんから「開店したら行くから!」という嬉しい言葉も貰って、Aさんの充実した修行期間は終了しました。

さて本格的に開業準備に入る上で、まずAさんが考えたのが立地です。やはり人気店になるには「立地が一番」と考え、通行量の多い駅前一等地の確保を優先して店舗候補地を探すことにしました。そんな中、幸運にも知り合いの店長のお店の閉店するとの流れを受け、後を引き継ぐ形でターミナル駅から徒歩3分の大通り沿いの居抜き物件を借りることができることになりました。考えうる最高の立地を確保できて上機嫌なAさん。さっそく食材や備品の仕入業者を選定した上で、本格的な店づくりに突入していきました。ラーメン・餃子といった定番に加え、定食などのセットメニューなど品揃えの豊富さを意識したメニュー構成を考え、調理に必要なレシピも整えました。また調理補助として採用したアルバイトスタッフのへの教育を進めてきました。

近隣へのポスティングと、例年に比べて気温が高い夏の炎天下の中でのティッシュ配りも終え、ホッと一息ついたAさん。自分の名前を冠した店名「ラーメンA」もついに明日が開店です。新しいスタートへの希望は膨らみます。

いよいよ迎えた開店日、お店は大盛況でした。ひっきりなしにお客様が来店し次々と注文が入ります。不慣れな店舗オペレーションの中で注文をこなし、お客様にも精一杯の声で「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と言っていたら気付いた時には夜22時。あと30分で閉店時間でした。開店から1~2か月経っても客足は順調で、お客様に書いてもらっている簡易アンケートからもラーメンの味への評価もなかなか好評でした。

しかし好調な時間は長くは続きません。3ヵ月目に入ると売上が目に見えて悪化してきました。Aさんは「たまたまだろう」と考えていましたが、翌月になるさらに売上は悪化。開業資金に多くの手元資金を投資してしまっているAさんはだんだんと資金繰りの不安に悩まされることになりました。手元に何枚か残っているアンケートを元にベースに味を変えた新ラーメンの開発等に取り組んだり、クーポンの配布などを初めてみましたが、なかなかうまく売上は回復していきません。

そんな中、Aさんは知り合いの店長経由で紹介された中小企業診断士であるあなたに相談を持ちかけてきました。

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さて、上記を”パッと読んでみて”どんな感想をお持ちでしょうか??

 

 恐らく既に2次試験の勉強をされていらっしゃる皆様はお気づきと思います。「あれれ、この店のマーケティング戦略はどうなっているんだっけ??」と。

 

そう思った皆様は既に「事例Ⅱ思考」ができていると言えるでしょう

 

・・・とそれだけでは終わってしまいますので説明ををさせて頂きます。

 

 

<ラーメンAはなぜ上手くいかなくなってしまったのか?>

 

 ターゲットとストアコンセプト

まずAさんはターゲット顧客をしっかりと言語化していませんでした。立地優先で店舗開発を行い、広いカスタマー層を意識してメニューも品揃えを重視した構成にしています。そのため、まずラーメンAは「誰に」「何を」「どのように」提供するのか、ストアコンセプトがはっきりしていません。また3C分析が不足していため、近隣にどんな競合が存在しているのか、どんなポイントで競合差別化するのかがハッキリしていない状態になっていました。ラーメンマニアとして多数の店舗を見てきたにも関わらず、自分のお店のこだわりを打ち出すことができていなかったのです。

新規顧客開拓

せっかくAさんは開業前に培った経験やネットワークがあるにも関わらず、顧客獲得にそれを活かせていませんでした。自身が持つ情報編集力を活用した情報発信だったり、ラーメンマニアなどの仲間のネットワークを活用したクチコミの誘発など、「ラーメンA」というお店のコアコンピタンスを活用することができていなかったのです。

既存顧客の囲い込み

既存顧客の固定化を図るための取り組みも不足していました。新たなメニューの開拓、接客やサービス、プロモーション等、どれも中途半端な状態でした。顧客の注文データを活用した単品別分析、アンケート等から満足度などの情報収集などをベースにした商品開発や、接客品質向上のためのインターナルマーケティングの実施なども検討の余地があったと思われます。またターゲットを意識したリピート施策なども考えられました。

 

 

<ラーメンAには事例Ⅱが詰まっている>

上記のような点が過去10年の事例Ⅱで問われてきた主要論点です。
基本的には他事例と一緒ですが、SWOT分析→問題の真因把握→企業の方向性を”マーケティングの視点”から考えていくのが事例Ⅱです。

「脅威を回避するため弱みを克服する」

「市場機会を獲得するため強みを活用する」

をベースにすれば、例えばラーメンAは「例年よりも暑い夏」という市場機会に対して「独自冷麺の開発」といった自社の強みを活用した商品開発を行うといったことができていたかもしれません。

 

事例Ⅱは「マーケティング・流通」の事例なのでもちろん流通論点も押さえておく必要がありますが、基本的には過去問の中に、今年の事例を解く鍵もあるはずです。きちんと各年度の過去問をやることで、事例Ⅱに対応できる”思考”を作ることができます。

問われる知識は決して多くないので、新たな知識は必要ありませので、「どう知識を引き出すか」をイメージして事例演習に取り組みましょう。

 

 

P.S.

ところで「ラーメンA」はその後、上手く売上を安定させ経営危機を脱出することができました。A社長は今も毎日笑顔でこだわりのラーメンを作っているそうです。その陰には、ある1人の中小企業診断士の活躍があったとのこと。それは今ご覧になっている「将来のあなた」かもしれませんね。 

※この事例はもちろんフィクションです。

 

 

それでは今日も一日、コツコツと。

自分も「ラーメンA」の力になれるような診断士になりたいと願っているマイスターでした。

 

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