【合格体験談】言い訳をつくらず、追い込むことが合格への分かれ道 ~ 一次試験直前に海外転勤になったKTさんの合格体験談
こんにちは。ハカセ@海外駐在中です。
海外駐在中の小職に、突然見知らぬアドレスから一通のメール がありました。
それは、「僕もハカセと同じところに駐在している者ですが、今年の診断士試験に合格しました!診断士仲間になってください!」という嬉しいもの。
海外駐在中にもかかわらず診断士試験に合格してしまったKTさん。なんということでしょう。(ビフォーアフター風)
診断士仲間になることはもちろん快諾しましたが、「そんな状況でどうやって合格したの?」と、合格体験談もちゃっかり頼んでしまいました。
診断士の学習期間のまっただ中、一次試験直前に海外転勤になってしまった KT さんの合格までの軌跡、まずはご一読ください。
寄稿ここから
1.はじめに
はじめまして、KTと申します。今回、合格体験記を書かせて頂くことになりました。試験に臨むに当たりこれといって特別なことはしておりませんが、自分なりに上手く準備できた点や精神的に支えになった考え方などを紹介させて頂くことで、今回の寄稿が受験者の皆様の一助となれば幸いです。
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2.プロフィール
30歳(男)。商社勤務、新卒入社6年目。経済学部卒。一次試験直前の2012年6月に海外転勤。現在も海外駐在中。日商簿記2級を入社前に取得。
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3.診断士を目指すきっかけ
私の入社後の初期配属は人事部で新卒採用を担当。会社説明会や選考会の運営等の業務に日々追われながらも会社の顔として働くことにやりがいを感じていましたが、入社4年目に営業部署への異動希望が叶い、食料分野の事業投資を行うチームへ配属となりました。
そこに居たのは事業について毎日のように激論を交わす経験豊富な上司たち。ほぼ学生相手に仕事をこなしビジネスマンとしての基礎知識・スキルが蓄積されていなかった私は無力感で新人に戻った気分でした。
「このままではいかん・・・」
・・・と悩んでいた頃、診断士試験に合格した同期入社の友人から資格内容について話を聞き、事業経営に関する知識や経営者の視点で物事を見る能力が身に付き、更に担当業務に直結する診断士資格の取得へチャレンジすることにしました。
4.1.5ヶ年計画で合格する
診断士試験は出来れば最短の1年間でストレート合格したいものですよね。
しかし
私は1年半での合格を目指す計画も良いのではと考えます。理由は、一次試験二日目の3科目(法務・情報・中小)は二次試験との関連が薄く、予め科目合格しておけば翌年の一次試験対策において時間的余裕が生まれるからです。
私の場合、2011年4月下旬にその友人が通学していたTACに訪れ、講義や試験の要領を聞いたところ、タイミング的にH23年度のストレート合格は難しいので、先に2~3科目を学習して科目合格をし、翌年のH24年度試験で一次二次合格を目指してはというアドバイスを受けました。1年での試験対策カリキュラムはかなり詰め込まれている印象を受けたので、やや期間が長くなるものの寧ろ余裕を持って取り組めるのではと考え、そのアドバイスに従い、即座に3科目(法務・情報・中小)の受講を開始しました。
実際、初年度であるH23年度の試験では、一日目は割り切って受験せず、二日目のみの受験としました(結果は法務・情報が合格、中小は再受験)。
1.5ヶ年計画の効果が表れたのは翌年。周りの受験生が法務・情報の暗記科目と格闘される中、私は既に講義を終えている科目の復習にじっくりと取り組むことができました。この期間で経営・財務・運営・経済学の知識不足・理解不足をかなり埋められたと思います。
因みに恥ずかしながら答練では60点を超えたことは一度もなかったため、私にとっては法務・情報の期間は、追い上げのためのボーナス期間のようなものでした。
法務・情報・中小の暗記系3科目は3~4ヶ月集中して勉強すれば合格できるレベルに達すると思いますし、一次試験後から翌年度の講義開始までの1か月半は充電期間に充てられ心身共に小休止できます。
このように、1年半の学習計画は、試験対策をじっくり取り組みたいという方には向いている計画だと思います。
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5.一次試験対策
一次試験はご存じの通り7科目と科目数が多い上に1科目にあたり学習すべき内容も広範囲に亘ります。従い、あまり手を広げ過ぎると理解を深めるための反復練習の時間が不足し、結果的に合格レベルに達しないまま本番を迎えることになりかねません。そこで私が気を付けていたのは以下。
① 限定された教材しか使わない
TAC講義にて手渡される基本テキスト・過去問題集・答練・補足テキストの他、スピード問題集で学習を進めました。私の場合、これらのみを 徹底的にやる ことで十分合格圏内に入る力をつけることができたと思います。
② サブノートは作らない
上記①のテキストや問題集が既に多数ある中、更に自分でサブノートを作成する気にはなれませんでした。メモは全てテキストに書き込み、どうしても自分で纏めたいサマリーはテキスト最後尾にある空ページに纏め、学習において触るモノの数をできる限り減らしました。
③ 難問はスルー
過去問や答練の中には難問が散見されますが、解けなくともEランクだからと完璧な理解を諦める一方で、A~Dランクは解ける問題と解けなかった問題に分け、3~4回転させて全て解ける問題に移していくような勉強法をしました。A~Dランクが解ける力がつけば60点突破は難しくありません。
④ 余計な情報収集はしない
私はTACの教室講義に通っていたものの特に勉強仲間は作らず、インターネットでの情報収集も行いませんでした。あえてそうしなかったというよりは、上記1の教材と講義内容で情報は十分手元にありこれ以上手を広げると混乱しそうだと不安に思ったからです。そんなことをしている暇があったら帰宅して机に向かおうという考え方で復習に取り組んでいました。
勉強で不安になった時は合格者の同期友人に相談していました。ちょっとひねくれ者に映るかもしれませんが、周囲に惑わされることなく自分のペースで勉強を進めるためには有効だったと振り返ります。
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6.二次試験対策
一次は問題集や答練等のアウトプットを繰り返すことを通じて、自分の実力が徐々に伸びていくのを感じながらその力が合格圏内にあるかどうか都度測ることができますが、二次はそうではありません。私の場合正直申し上げて、試験の2週間前までは全く手応えがなく、TACの演習の採点は最後まで20~30点台でした。周囲にも「落ちるかも」と漏らして不合格した際の伏線を張っていた自分がいた程です。そんな私でも合格できた訳ですが、二次対策に取り組む中で気が付いた点を下記します。
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① ストレート生は一気に伸びる
私は一次試験を終えるまで二次対策はほとんどしませんでした(正確に言うとそんな余裕はなく一次対策で精一杯でした)。講義を受けても分かったような分からないような…、そして演習では全く点が取れず悶々とした日々。しかし試験まで残り2週間を迎えた頃、突如、模範解答にあるポイントを押さえた解答が書けるようになりました。
解き方が分かったというのでしょうか、バラバラだったものが頭の中で繋がった感覚を覚えました。一次対策で培った知識(マーケティング論や生産方式etc)は十分備えていたものの、与件文と設問要求に対する適用方法が分からないという状態が続いていたところから脱したのだと分析します。次年度に試験に臨まれるストレート生で私と同じ状態に陥る方は多いと思いますが、直前で大きく伸びる可能性が十分あります。
② 試験の知識を身に付ける
上記①の適用方法を身に付けるには、「二次試験の知識」が必要です。これは二次対策用テキストにも多少書かれていますが、実際に問題を何度も解いて自分の頭で気づかないと身にならないと思います。
例えば、「考えなさい」という要求があった場合、単に考えるのではなく比較すること、設問文にある「情報項目」と「データ項目」の違い、問題点・原因・解決策のセットで考える、等々。
これらはこの一発合格道場の記事に多数掲載されており、私の場合は二次対策でどうしようもなくなった頃、初めて道場の記事を読み、参考になった記事を自分の知識として実践で活用し身に付けていきました。
一次対策と異なりサブノートを作って事例毎にポイントを書き出し、過去問や演習実施前に読み返して実践で用いるようにしていました。
一方、時間配分についても細かく指示する方(作法など)もいるようですが、何度も過去問や演習を制限時間内で解いていれば、自分にあった時間の使い方が勝手に身に付きますので、私は特に気にしませんでした。
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③ 文章力が大きな支えに
私の仕事柄、社内で申請書を書く機会が多くあります。内容は主に設備投資や与信ですので、決裁者を納得させる文章を書かねばならず、おのずと因果関係で繋がった文章を書く訓練になっており、二次試験においてはその成果が発揮できたのではと自己分析しています。
新聞の社説等を短く纏めたりするエクササイズが効果的と聞いたことがありますが、二次試験では類推を文章化することも求められるため、元々ある文章を纏めるよりも、バラバラの情報を纏めて因果関係で繋ぎ、自分が主張したいことが読み手に分かるような文章を書く訓練を積んだ方が、より実践的で効果があるのではないかと思います。
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④ 事例Ⅳの頻出計算をマスターする
事例Ⅳは計算ミスが命取りです。「正味現在価値」や「損益分岐点売上高」等の頻出論点の計算は完璧にマスターしなければなりません。頭では分かっていてもいざ模範解答を見ると間違えているということが演習では頻発しました。私が取り組んだのはTACの「事例Ⅳ特訓」というオプション講義で、頻出論点の計算を何パターンもやりまくるという内容なのですが、この問題集を3回繰り返したことで直前期の正答率が急激に上がりました。
今年度は特に計算問題が多い年でしたので、本番で計算ミスをせず且つスピーディーに取り組めたことが良い結果に繋がった要因の一つだと思います。地味な訓練なのですが、合格されている方の大半は同じようなことをされて事例Ⅳに臨まれたのではと想像します。
7.本番への臨み方
本番で実力を発揮できるのか不安になりますよね。年に一度の試験ですから尚更です。ただ、自分で言うのも変なのですが、私は実力を発揮できたと振り返ります。なぜ良い精神状態にできたのか、私なりの臨み方を2点下記します。
① 解ける喜びを楽しむ
勉強を始めた当初は答練も過去問もまともに解けない状態です。しかし、徐々に力がつき直前期には昔解けなかった問題が今は解けるという状態になっています。「解けた!」という感覚がどんどん増えていくわけですね。私はこの感覚を楽しんでいました。直前期になると過去問・スピ問・答練の同じ問題を繰り返し解いていますので、ちょっと飽きを感じたりもします。
しかし、本番では当然初見の問題です。「しっかり準備してきた自分だから大丈夫、あの感覚を楽しもう」という気持ちで臨み、実際に解く度に「よっしゃ」と心の中で叫んで解ける喜びを楽しんでいました。当然、緊張はあり汗はびっしょりでしたが、実力を出せない不安はありませんでした。
② 本番で自己ベストを出す
これは二次試験での私の臨み方です。前述したように、試験まで残り2週間という時期から実力が付き始めたことを感じており、もっと時間があればもっと伸びるのではという感覚でした。よって、本番で自己ベストを出せるのではという考え方に落ち着き、本番を楽しみにして迎えることができました。私はポジティブな性格では決してないのですが、ストレート生で私と同じ考え方で臨まれた人も多いのでは思います。
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8.積み重ねが結果に繋がることを意識する
私が通っていた講義の講師がよく話していた「ヘッドスライディングで小指だけベースに触って滑り込みセーフでいいんです!」という言葉を受験勉強中によく思い出しました。平均60点さえ超えれば合格な訳ですから余裕であろうがギリギリであろうが同じ合格です。私は受験勉強を「今日じゃなくて明日でいいかな」or「今夜はこのくらいにしとこうかな」と思った時に、この言葉を思い出し「今日or今夜頑張ればギリギリ小指がホームベースに届くかもしれない」という気持ちにさせ、奮起させていました。
一次合格が判明した際、あの積み重ねがこの結果を生んだのだと確信しました。二次対策においても悶々とした日々が続いていましたがこのマインドで学習を積み重ねていった結果、最後に解答力が開花したのではと思っています。
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9.最後まで絶対にあきらめない
プロフィールにも書きましたが、2012年6月より社内異動で海外転勤となりました。6月以降は教室講座をWEB講座に切り替えて貰い、通信教育で学習を続け、受験の度に1日かけて飛行機で東京へ飛びました。合格したからこそ聞こえが良いですが、これで落ちていたら「一体自分は何をやってたんだ・・・」と虚しい気持ちになっていたはずです。
ただ、「そこまでやるからには最後まで絶対にあきらめない」という言葉で受験生の自分を常に戒めました。
この1年半近く、多くのことを犠牲にし家族にも迷惑を掛けながら取り組んできたわけですから、中途半端には終わらせられないと。試験直前期の時期には誰もが不安になり「合格できないかも…」と感じ始めるはずです。
私もそうでした。しかしそのタイミングで何か言い訳を作り力を緩めるのと、逆に追い込むのとでは、とてつもなく大きな差を生むことになると思います。合格される方のほとんどは直前期で後者の取組みをされたのではないでしょうか。
診断士試験に向けた学習は長期に亘りますが、直前期は自分の実力が現実的に合格レベルに到達しているかどうかが分かる時期ですので精神的に弱くなりがちです。そこで気を奮い立たせられるか否かが合格の分かれ道になると思います。
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以上です。
精神論的な内容がほとんど且つ長文となり申し訳ありません。しかしながらこの記事が少しでも皆様のお役に立てば幸甚です。最後まで読んで頂いた方、ありがとうございました。
寄稿ここまで
・・・あいやー。
この体験談を読んで、ぼくは感嘆してしまいました。
なぜならば、僕がやっていたこと、道場で話していたことのエッセンスを全て網羅しているからです。
たとえば、「限定した教材しか使用しない」という点について、僕は この記事 で、「定められた範囲をキッチリやることに神経を集中させました」と明言しています。
それから、「サブノートは作らず、テキストに書き込む」という点についても、この記事 にあるように、全く同じことをしていました。
「難問はスルー」に関しても、ZonEの この名作記事 でも紹介していますし、ふうじんも この記事 で力説しています。小職も この記事 で「難しい問題にひっかかることの愚」を説いています。
二次試験におけるストレート生の「急上昇」についても、道場では Sカーブとして何度も言及しています(例えば この記事)。
そして、最後の「ギリギリセーフ」、「最後まで諦めない」のお話。とっても分かりやすいですね。
「ギリギリセーフでいいんです」と講師に言われた時、多くの受験生は、「じゃあ、最後にラストスパートすればいいってことだな 」と都合よく解釈する受験生が多いのではないかと思います。
そうではなくて、「何十日も先の試験日にギリギリセーフで滑り込むために、今、やらなきゃいけないんだ」と思える受験生って多くないのではないかと思います。ここが、合否の分かれ道 なのかもしれませんね。この考え方は、道場基本理論で「ストイック学習法」として採用されています。
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合格体験談を集めてみて、思うこと。
「合格者は、みんな似たようなことをしているんだなぁ」 ということ。
海外転勤直後でも、合格出来ちゃうヒトがいるんですね。皆さんの中にも、資格試験勉強中に、転勤・転居・転職などのイベントに遭遇した人がいらっしゃるかもしれません。どんな時もそれを乗り越えようとする意思が、大事なんでしょうね。
もちろん「意思があればなんでも出来る」とか、「出来ない人が意思がないんだ」というわけではありませんが、意思がないと何も始まらない。そういうことなんだと思います。
KTさん、貴重な体験談、ありがとうございました。<(_ _)>。
by ハカセ