【財務・会計】アカウンティングの論点整理-2

こんにちは。こぐまです。

一昨日の1に続き、今回は最近、出題が増えている会計基準等に関する内容です。
毎年、「知らなきゃできない」と言われる、得点調整のためのような会計理論の問題が出題されています。

特に平成23年は、25マーク中、7マーク(28点分)が、それに該当すると言われていますが、本当に知らないと解けない問題だったのかどうか、検証してみようと思います。

 

◆出題内容◆

平成23年の第2問から第8問の7マークが会計基準ほかに関連する問題です。

第2問: 引当金の計上
第3問: 減損会計
第4問: 退職給付会計
第5問: 企業結合会計(のれん)
第6問: 連結会計
第7問: 定時株主総会の招集通知
第8問: 税効果会計

こうやって名前だけ並べてみると、確かにビビりますね。
本試験の時、次から次に会計基準の知識問題が続いてかなり焦ったのを覚えています。

 

◆取りたい問題◆

では問題をひとつずつ見ていきましょう。
上記の中で、純粋な知識問題(知らなければ正解を選べない)は、第3問、第4問、第7問、第8問の4つではないかと思います。

第2問(引当金の繰入れ)
診断士1次テキストで習う内容からも推測は可能な問題ですし、平成20年第5問がほぼ同じ内容

まず、引当金を計上できる条件のうち2つは、発生可能性が高いこと金額を合理的に見積もれることですね。
ですから、まずアの偶発事象発生可能性の点で除外と判断できないといけません。
選択肢アについては、偶発事象であっても発生可能性が高く、合理的に金額を見積もることができれば引当金を計上できます(注:2013年7月8日 下記コメント欄のあっきー様のご指摘により修正しました)。

選択肢のイ、ウ、エとも文章の作りは同じで、引当対象として、特定の「損失」か「費用」か「費用または損失」か、の違いだけです。
例えば、「貸倒引当金」は売掛金等の貸倒損失の見積り、「賞与引当金」は人件費である賞与の見積り等、引当金の基本的な種類を思い浮かべれば、正解を選ぶのは比較的容易です。

第5問(企業結合)
平成20年第7問を理解していれば、のれんの算出は難しくないと思います。
これはゲットすべき問題

第6問(親会社の定義)
問題文、設問とも長くてわかりにくく、パッと見、飛ばしたくなりますね。
まずはスルーして、他の解ける問題を解いてから最後に取り掛かるのが常道と思います。

親会社とならないものを選ぶ必要がありますが、これは正確な知識がなくても、イの支配力が一番小さいと推測可能です。

エは直接議決権の過半数を所有しているので、支配関係は明らか。

アは、結果としての議決権所有割合がイ・ウと同等のため迷うかもしれませんが、他の企業の意思決定を支配していることが推測される事実があるとの記述から、イ・ウより支配力が高いと判断可能。

そして、イとウを比較すると、支配力が弱いのは所有議決権40%未満のイの方だと絞り込めるのではないでしょうか。

 

◆純粋知識問題◆

第3問(固定資産の減損損失)
減損処理まで教えている受験校はあるんでしょうか?
株式の時価評価や棚卸資産の期末評価とは別物で、簿価を直接減額する会計処理です。

まず、アは最初に除外できないといけませんね。
損失額は、簿価との差額として計上されることは基本中の基本。

では、簿価と何との差額か?
イ「回収可能価額」、ウ「時価」、エ「割引前将来キャッシュフロー」の3つが残っています。

会計は保守主義で、数値の合理性や客観性を重視することを理解していれば、まずウの「時価」は除外できないといけませんね。
時価で売れるかどうかはわからないからです(「土地」を思い浮かべてください)。

そして残るはイかエ。
エの「割引前将来キャッシュフロー」は、減損損失を認識する際の判定指標であり、ある意味では引っ掛け選択肢
でも、診断士試験で問われるレベルではないですね。

素直に考えれば、イの「回収可能価額」の方が広い概念であり、新しい簿価になるだろうことは推測できますが、時間に追われている本試験で判断できるかどうか?
やはり2択の鉛筆転がしになりそう。

なお、減損損失の関連論点が大原の一次模試で出題されており、復習していれば正解できた可能性大(私もそうでした)。

第4問(退職給付会計)
これは退職給付会計の用語がわからないと正解を選ぶのは困難。

しかしながら、この論点の問題がTACの一次模試で出題されていました。
模試の復習をきちんとしていれば、恐らく正解に辿り着いたはずです(私もそうでした)。

第7問(株主総会の招集通知)
これは経営法務で習う開示書類ですが、作成義務のある計算書類等は覚えていても、招集通知に際して株主に提供しなければならない書類(直接開示書類)を選び出すのは非常に困難。

キャッシュフロー計算書の作成は義務付けられていないことは経営法務で学習しているので、ウとエは除外できます。

アとイを比較すると、株主に提供しなくてもよいのが附属明細書連結計算書類のどちらか。マニアック過ぎてわかりません
よって2択の鉛筆転がし問題。

第8問(税効果会計)
23年度は、計算問題ではなく知識問題でした。
税効果会計はもともと頻出論点ですので、まず、基本である「将来減算一時差異」と「将来加算一時差異」が理解できていれば、イとウは除外できます。

ウは連結手続上で生じた一時差異の問題で、設問文としては言葉足らずでわかりにくいですが、会計上、貸倒引当金の減額=利益の増加になるので、少なくとも「減算差異」ではないことだけはわかるかと。

アとエは迷います。というか知らないと鉛筆転がしですね。
でも2択まで絞れました。

あえて言えば、ある程度会計に馴染みがある人(簿記2級程度)は、アがいかにも会計原則っぽい香り(「重要性の原則」)がするので正解できたかもしれない、という程度でしょうか。

 

◆まとめ◆

こう見てくると、会計の理論・知識だからといってむやみに恐れる必要はないと思います。
基礎知識や常識、推測、選択肢の作りなどから正解を導き出したり、何とか2択までは絞ることができそうな気がしませんか。

対応しにくかったといわれる23年度でも、7マーク中、3~4マークは比較的高い確率で取れそうな問題です。

恐らく各受験校とも、会計理論問題の増加を受けて何らかの対策をしてくれていると思いますので、その範囲はきっちりと学習しておくのが先決。

本番では目利きは必要ですが、初めから捨てるのではなく、少し粘って自分の引き出しから関連しそうな論点を探してみる努力も大事になると思います。

それから繰り返しになりますが、上記の第3問や第4問のようなこともありえるので、答練や模試の復習は怠りなく、解説までじっくり読み込むことが重要であると思います(特に直前期)。

それから、当然、過去問の研究は必須

3に続くかどうかは未定です。

by こぐま

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【財務・会計】アカウンティングの論点整理-2”へ2件のコメント

  1. こぐま より:

    あっきーさま

    昨年の記事にもお目通しいただき光栄です。
    コメントありがとうございます。

    ご指摘のとおりです。私の理解不足でした。

    企業会計原則注解18「引当金について」
    http://www016.upp.so-net.ne.jp/mile/bookkeeping/data/kigyoukaikei.htm#注18
    の最後に、

    「発生の可能性の低い偶発事象に係る費用または損失については、引当金を計上することはできない」

    との文言がありますので、その逆は計上できるということであり、あっきーさまのおっしゃるとおりです。

    不正確な説明、大変申し訳ございませんでした。
    記事の当該部分、修正いたしました。

    ご指導いただきまして誠にありがとうございます。
    今後ともご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

  2. あっきー より:

    論点整理ありがとうございます。

    H23年第2問ですが、アは引当金を計上できない場合の説明、イ~エは計上できる場合の説明となっています。

    記事の中でのご説明ですとニュアンス的にアの偶発事象=発生可能性が低い=引当金計上不可と判断されているように読み取れますが、そうするとアも正解(本問の公式解答はエ)になってしまいます。

    正しくは偶発事象であっても発生可能性が高い場合は引当金計上可(よってアは不適切)と判断したうえで、イ~エの中から正解を検討することになるかと思います。

    古い記事へのコメント失礼いたしました。

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