【財務×調剤薬局】薬局のキャッシュフローを圧迫する理由とは? byりょう

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2次筆記試験 | 令和7年 10月26日(日) | 9月2日(火)~9月22日(月) | 1月14日(水) |
2次口述試験 | 令和8年 1月25日(日) | ー | 2月4日(水) |
はじめに

こんにちは!りょうです!
今回は、「調剤薬局の財務」について解説していきたいと思います。
テーマはズバリ、
「薬局のキャッシュフローを圧迫する理由とは?」
そのカギとなるのが、
① キャッシュフローの仕組み
② レセプト請求のタイムラグ
③ 高額な薬の在庫
です。
日本の保険制度と「保険調剤」の基本
日本では、全ての国民が公的医療保険に加入しており、医療機関や薬局でかかった費用のうち、通常3割は自己負担、残り7割は保険で賄われます。
調剤薬局では、医師の処方箋に基づいて薬を調剤し、費用のうち保険分を「レセプト請求」という形で支払機関に請求します。
簿記の仕分けで言えば、
現金300 / 売上1000
売掛金700
と処理するわけですが、この残り7割分がレセプト請求でのちに請求する部分になります。
実際のところ、薬局利用者というのは高齢者が多く占めているので1~2割負担、こども医療による免除などにより実質現金で受け取る割合は3割を下回っています。
そうなると薬局は小売業の中では掛けの割合が大きいね

キャッシュフローとは?
試験対策においても重要論点ですのでキャッシュフローについておさらいしましょう。
財務会計では、「利益」と「現金」は別物です。
企業の資金の流れを把握するために使われるのが、キャッシュフロー計算書です。
キャッシュフローには主に3つの種類があります:
- 営業キャッシュフロー(本業での現金の出入り)
- 投資キャッシュフロー(設備投資など)
- 財務キャッシュフロー(借入や返済、配当など)
調剤薬局の運営においても大事なのが営業キャッシュフロー
これがマイナスになると、日々の支払い(家賃、人件費、仕入れ代金など)に困ることになります。
我らが15代目せーでんきさんによる記事もあわせてご覧ください!
以前まさきからも紹介ありましたが、3つCFからこんなふうに経営戦略が読み取れるんだととても感心しました。
レセプト請求とは?
毎月の保険調剤の明細を「調剤レセプト(調剤報酬明細書)」としてまとめ、翌月に支払基金や国民健康保険団体連合会に提出します。
月 | イベント |
---|---|
4月 | 調剤(売上発生) |
5月初旬 | レセプト請求 |
6月中旬 | 保険分(7割)の入金 |
つまり、実際に薬を渡してから現金が入るまでに約2ヶ月かかるのです。
支払サイトは短く、薬は高い!
薬局は医薬品卸から薬を仕入れますが、以下のような現実があります:
- 高額薬価の薬品が多い(例:1錠数万円以上も珍しくない)
- 一定量の在庫が必要である
- 支払いは翌月末が一般的(支払サイト:30~60日)
このため、在庫を持つこと自体が大きなキャッシュアウトにつながります。
薬価とは?
「薬価」とは、医療用医薬品に公的に定められた価格のことを指します。薬局が医薬品を仕入れ、保険調剤で患者さんに提供する際、この薬価に基づいて保険請求が行われます。つまり、薬局の収入のベースとなる非常に重要な指標です。薬局が実際に医薬品を仕入れる価格は薬価よりも低いことが多く、その差が薬局の粗利を構成します。
薬局の判断で値下げも値上げもできないよ

薬価の算定方法
薬価は厚生労働省によって決められ、主に「原価計算方式」や「類似薬効比較方式」により算出されます。
- 原価計算方式では、製造原価や研究開発費、販売管理費、利益などを積み上げて算定します。
- 類似薬効比較方式は、既存の類似薬の薬価を参考にして決められる方法です。
そして、薬価制度の大きな特徴の一つに薬価改定があります。これは、医薬品の実勢価格と薬価との乖離を是正するために行われる制度で、以前は2年に1度の頻度でしたが、2021年度からは毎年改定されるようになりました。多くの医薬品がこの改定によって減額される傾向にあり、薬局の収益構造にも大きな影響を及ぼしています。
高額薬価
薬局における棚卸在庫で金額的に大部分を占めるのが高額薬価の医薬品です。特に抗がん剤や、治療対象となる患者数が非常に限られた希少疾患の薬では、1錠あたり数万というケースも珍しくありません。
これは、対象が少ないにもかかわらず膨大な研究開発費がかかっているためで、薬価の大部分がその回収目的で設定されているとも言われます。もちろん、こうした薬も例外ではなく薬価改定の対象であり、初期には高額でも数年で減額されることもあります。
中にはこんなに高い薬が
超高額薬価「ゾルゲンスマ」
2020年に薬価が設定された乳幼児向けの難病治療薬「ゾルゲンスマ」は、1回の投与で1億6707万円という、日本で過去最高額の薬価がつけられました。スイスの製薬大手ノバルティスが開発したこの遺伝子治療薬は、脊髄性筋萎縮症という筋力低下を引き起こす難病に対して、1度の投与で高い治療効果を発揮するとされ、その革新性から高額になったものです。既存薬の11倍の基準に、さらに治療効果の高さに応じて60%の加算が認められたことで、この価格に至りました。とはいえ、国内には高額医療費制度があるため、患者側の自己負担は抑えられています。
今期の役員報酬といい勝負か・・・?

高額薬価につけこんだこんな事件も
高額薬価ゆえのリスク「ハーボニー偽造事件」
高額薬価の医薬品は、治療の希望である一方、不正の対象になりうるリスクも孕んでいます。実際に、C型肝炎の治療薬「ハーボニー配合錠」(当時の薬価:1錠あたり約8万円)では、2017年に偽造品の流通事件が発覚しました。
奈良県の薬局で患者に調剤された薬剤に異常があり、患者が気づいて薬剤師に相談したことで発覚。偽造品にはビタミン剤や他の薬剤が混入されており、幸い服用前に気づかれたため健康被害は防がれました。調査の結果、偽造品は正規の箱から取り出された状態で、「現金問屋」と呼ばれるルートを経由して流通していたことが判明しています。
この事件は、高額な医薬品が経済的価値を狙った犯罪の対象となる可能性を示すものであり、薬局や流通業者にとって仕入れや保管のリスク管理の重要性を改めて浮き彫りにしたケースと言えるでしょう。

高い薬は必要最低限の在庫にして、不動在庫化すれば優先的に処理することで在庫の適正化をしているよ
在庫がキャッシュを圧迫する構図
調剤薬局は“商品を仕入れてすぐに売る”ビジネスに見えますが、現実はこうです
- 患者が来ないと在庫はそのまま→キャッシュが倉庫に眠る
- 処方に合わせて少量多品目の薬を常備→回転率が低く、資金が滞留
- 使い切れずに期限切れ→廃棄ロスも発生
つまり、薬局業界においても在庫は「見えない資金繰りリスク」なのです。
治療方針変更により処方変更はよくあることです。またいつも来ている患者さんが別の薬局を利用するケースも考えられます。そのため、不動在庫はかならず一定数以上発生するため、期限切れを起こさないよう常に管理することが求められます。対応としては、使用実績のあるグループ店舗に店間振替を行い使用してもらうこと、現金問屋へ売却することなどがあげられます。
キャッシュフローの実例
簡易シミュレーションをしてみましょう。
月 | 内容 | 現金の動き |
---|---|---|
4月 | 薬の仕入れ(30万円) | ▲30万円 |
4月 | 調剤(売上50万円) | ▲15万円(3割自己負担)+未収売掛金35万円 |
5月 | 保険請求(35万円)提出 | ー |
6月 | 保険分(35万円)入金 | +35万円 |
このように、一時的にキャッシュが足りなくなることがあるのです。
小規模薬局ほど深刻な問題に
大手薬局チェーンは、資金余力もあり、複数店舗間で在庫調整が可能ですが、個人経営や中小薬局では資金繰りの厳しさは直撃します。
特に以下のような局面は経営危機に陥りやすいと考えられます
- インフルエンザ・コロナ流行などによる急な処方変動
- 新薬導入に伴う高額在庫の追加
- 患者数減少で在庫回転が鈍る
まとめ:薬局経営も「現金」が大事
調剤薬局は、「医療」という安定した領域でありながら、キャッシュフローの管理が甘いと黒字倒産もあり得る業界です。
- 売上はあるが入金が遅い
- 高額な薬剤の在庫が多い
- 日々の支払いは待ってくれない
医療とは言え、経営が成り立たなくては生活に必要な医薬品供給もできないということなのです。

明後日はかえるが春セミナーのレポートをお送りします
ご参加ありがとうございました

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>>にっくさん
コメントありがとうございます!
医療インフラを担うものとして責任をもって調剤させていただきます!
>>しまんと1号さん
コメントありがとうございます!
そのステムは確かに高額薬価で間違いないですね笑
門前様にこれ使うからっていわれたら在庫しないわけにはいかないですからね~・・・
こんにちは!
にっくです。
薬局業界の厳しさについての記事、ありがとうございました!
記事を通して、キャッシュフローについて新鮮な視点から学べた気がします。
薬局は病院と併せて「命の砦」、何とか存続して頂きたいです(誠に勝手ですが)
影ながら応援してます!
ありがとうございました!
にっく
記事ありがとうございます。正にその高額薬剤を扱う某外資系製薬会社に勤めていました。「〇・・・マブ」「〇・・・・・ニブ」ですね汗
無駄や休薬や脱落が無いようにDR教育をしていましたが、仰る通り特に僻地や地方の小規模薬局で在庫を抱えさせてしまった事を思い出しました・・・。