【財務会計】不正から学ぶ財務3表~在庫が増えると利益が増える?~ by せーでんき

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会計士×診断士『せーでんき』です。
欧米ではLED電球があまり浸透していないことはご存知でしょうか。
LEDの青色光は青い目の人にとって・・・
まずは大変残念なお知らせなのですが、昨日たいしんが予想してくれたドウデュースが出走取り消しになってしまいました・・・
非常に残念ではありますが、足の調子がよくないようで、やむを得ませんね・・・
気を取り直して今回もよろしくお願いします!
このブログで伝えたいこと

在庫が増えると利益が増えるってどういうことか分かりますか?
問題を解く際も実務においても、財務3表の繋がりを意識しておくといろいろなことが分かります!
一発合格道場15代目 せーでんき
今回はどちらかといえば初学者向けの簡単な内容かなと思っています。
はじめに

今期は予算の利益が達成できそうにないけど、いい方法ないかな・・・
まずはバナナを食べてみて・・・

みなさまは在庫の水増しをするとどうなるかご存知でしょうか。
タイトルにもしている、「在庫が増えると利益が増える」とはどういうことか簡単に財務3表の繋がりを踏まえて見ていきたいと思います。
在庫の水増し自体は古典的な不正の手口であるため、上場企業における監査においてはそのような状況にないかどうかを重視することが多いです。また、棚卸も必要となるためしっかり管理している会社が多いです。
一方で、中小企業になると管理体制には大きく差があり、棚卸がきちんとできていない会社もざらにあることが想定されます。
そのため、今回お伝えするような古典的な不正が起こる可能性があります。もし、診断先がこのようなことをしているような疑いがあれば注意した方がいいと思います。

不正ダメ・ゼッタイ
それではさっそくみていきましょう!
なお、財務3表は以下のとおりであり、以降の表記も表のとおりに記載します。
財務3表 | 表記 |
---|---|
貸借対照表 | BS |
損益計算書 | PL |
キャッシュ・フロー計算書 | CS |
今回使用する財務諸表
まずは今回使用する財務諸表は以下の建材卸売や不動産分譲を行っている会社のものを使用します。
BS




サッと見ていただくだけでOKです。
PL




原価が大きめですね。
CS



BSとPLの情報しかなかったので、当期の簡易なものを作りました。
売上原価の分解
まずは、在庫が増えると利益が増えるメカニズムについて、売上原価を分解してあげる必要があります。
具体には、売上原価は「期首の在庫」に「当期の仕入」を足して、「期末の在庫」を引いたら出てきます。
今回使用する財務諸表から数字を拾ってみましょう。
区分 | 金額(百万円) |
---|---|
期首の在庫(前期BS) | 966 |
当期の仕入(差引計算) | 4,787 |
期末の在庫(当期BS) | 1,596 |
売上原価(当期PL) | 4,157 |

はい、こんな感じですね。
財務諸表の数値が与えられて当期仕入を求める問題とか、いかにも1次試験の財務会計で出そうな問題ですね。
そしてここで押さえておいていただきたいのが、この売上原価4,157百万円は、差引で計算しているという点です。
今回であれば、966+4,787-1,596=4,157という計算の結果、当期の原価が算出されています。
(細かい話をすれば、あくまで三分法に限った話であり、売上原価対立法等の方法であれば今回の話はあんまり関係なくなります。)
追加で、当期の売上高と営業利益くらいまで把握しておきましょう。
区分 | 金額(百万円) |
---|---|
売上高 | 4,994 |
売上原価 | 4,157 |
販管費 | 788 |
営業利益 | 49 |
在庫が増えるとどうなるか
では今回の「在庫が増えると利益が増える」という構造をみていきましょう。
先ほどの表から期末在庫を100百万円水増ししてみることにします。
区分 | 金額(百万円) |
---|---|
期首の在庫(前期BS) | 966 |
当期の仕入(差引計算) | 4,787 |
期末の在庫(当期BS) | 1,696 |
売上原価(当期PL) | 4,057 |
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察しのいい方は、もう気付いておられますでしょうか。
当期の売上や利益と突き合わせてみましょう。
区分 | 在庫調整前の金額(百万円) | 在庫調整後の金額(百万円) |
---|---|---|
売上高 | 4,994 | 4,994 |
売上原価 | 4,157 | 4,057 |
販管費 | 788 | 788 |
営業利益 | 49 | 149 |
はい。見事に在庫を増やした100百万円分、営業利益が増加しています。
ということで案外シンプルだと思われるかもしれませんが、無事に在庫を増やすことにより、PLの利益は増加しました。
では、この影響が財務3表にどう表れてくるかもみてみましょう。

PL
普段見る順番としてはBS→PLの順番が多いとは思いますが、今回の事例ではまずはPLの動きから見た方がイメージしやすいかと思いますので、PL→BSの順番にみていきます。
なお、前提として法人税等の税率は30%と仮定しています。
また、各財務諸表においては段階損益を除いて水増し前後で変化があるものを黄色塗りしています。
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PLは先ほど見たとおりであり分かりやすいですね。
在庫が増えたことによって「売上原価」が減少し、結果的に「親会社株主に帰属する当期純利益」の増加に繋がっています。
一方で、税金30%を考慮する必要があることから、一部が「法人税等」として計上されています。
参考までに仕訳だと以下のようなイメージでしょうか。
親会社株主に帰属する当期純利益 70 / 売上原価 100
法人税等 30

BS
では続けてBSもみてみましょう。
棚卸資産が増加しているのはもちろんですが、その相手科目はその他流動負債(未払法人税)と利益剰余金になっています。
仕訳だと以下のようなイメージでしょうか。
棚卸資産 100 / 未払法人税 30
利益剰余金70
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CS
最後にCSです。
個人的にはCSの動きが一番面白いなと思うのですが、みなさまはどんな動きをすると思われますか?

ということで正解の発表です。
正解は、営業CFの内訳項目の金額が動くのみで、各営業・投資・財務CFのトータルに及ぼす影響はゼロです。
じつは考えてみれば当たり前の話でして、今回の在庫の水増し(架空計上)は、現預金に何ら影響を及ぼさないため、CS上も特段の大きな修正は求められていないということです。
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まとめ
以上ですが、簡単に以下の表にまとめています。
区分 | 計数の変動 |
---|---|
PL | 架空計上した金額×(1-税率)分の利益になる。 |
BS | 棚卸資産の増加、および未払法人税、利益剰余金の増加となる。 |
CS | 営業CFの内訳が若干変わるものの、基本的には影響なし。 |

最後に

お疲れ様でした!
では毎度お約束の名言コーナーです。
未来という無限に広がる領域へ向けて、力いっぱいやりを投げること。
フランツ・リスト
(Hurl my lance into the boundless realm of the future.)
今回はリストです。
クラシック界では超有名ですね。
ハンガリー出身の音楽家で、その超絶技巧から”ピアノの魔術師”とも呼ばれていたそうです。
代表的な曲として「ラ・カンパネラ」や「愛の夢」があげられます。
リストは見た目も端正で、コンサートではダイナミックかつ情熱的な演奏をし、失神する女性客がいたとも言われています。
折角ですので名言と合わせて超絶技巧練習曲集の第4番「マゼッパ」という曲をご紹介しておきます。
↓辻井伸行さんの演奏です。
超有名な「ラ・カンパネラ」も難曲として有名ですが、超絶技巧練習曲集という曲集の中に入っている曲は、「ラ・カンパネラ」よりも断然難しく、今回ご紹介している、第4番「マゼッパ」や第5番「鬼火」などの曲は超絶技巧で知られるリストの曲の中でも最高難度と言われています。(ちなみに「マゼッパ」よりも「鬼火」の方が難しいと言われています。)
超難しいと言われる超絶技巧練習曲集ですが、現代において演奏されているのは第3版であり第2版は難しすぎて演奏不可能とされ、第3版は少し弾きやすくしてあるという話もあるくらい、いかに難しくできるかに振り切った作品たちと言えます。
この「マゼッパ」は、ヴィクトル・ユーゴーの叙事詩『マゼッパ』から着想を得たとも言われている曲で、ユーゴーの詩は実在する人物であるウクライナの英雄マゼッパがモチーフになっています。
また、詩に沿って進むため、曲の中で馬の足音や鐘の音色などがイメージされている箇所があると言われています。
曲は不安定な和音で始まり、カデンツァ(≒即興演奏)的な早いフレーズ(動画では0:16ごろ)の後、主題(≒サビ)がくる(動画では0:28ごろ)という構成になっています。
最初の始まりはdim7(ディミニッシュセブンスと読みます)というコードが使われています。リストは後のキーの自由度も高いことから、このコードを使うことが多く、それをあえていきなり持ってくるという結構チャレンジングな始まりとなっています。
ちなみにリストは、超絶技巧でかなり有名な一方で、好き嫌いは意外と分かれています。
コードや音としての響きよりも、いかに派手に見せるかや難しいフレーズにするかというところに主眼を置いていると思われる箇所も多いため、純粋なクラシックっぽくないコード進行も多く、悪く言えば上手く弾けるからお茶を濁しているともいえるところはあります。演奏の派手さ優先で不協和音も普通に出てきます。この辺りが純粋なクラシックが好きな方の中で、あまり好きでない方がいらっしゃる理由です。
分かりやすい超絶技巧的な面で言いますと例えば、「ラ・カンパネラ」でもあんなにレ♯がいるのかというくらい、離れた1音を入れてきますし、今回の「マゼッパ」も4オクターブ重ねが大量に出てきます(演奏する場合、両手を広げて親指と小指でずっとどこかの鍵盤を弾く必要があり相当疲れると思います。)。
ということで、私の個人的な意見ですが純粋な響きの美しさよりも超絶技巧を優先したリストは、クラシック界のメタラーだと思っています。
当時の常識に囚われないコード進行や低音コードの連打などの常識を打ち破る姿勢は、まさしくロックやメタルだと思いませんでしょうか。
それを超絶技巧でやってのけるのですから、とにかくヤバかったのだと思います。
あんた語彙力不足してるやん。


きっと私も当事の女性客であれば失神していた側です。
名言を紹介するはずが、曲の紹介でかなり尺を使ってしまい失礼しました。
先日の一蔵先生の記事に触発されて、曲の紹介を少しやってみたくなってしまいました・・・
(私はクラシックもピアノも完全に素人ですので、変な記載があったらすみません・・・)
改めて今回の名言に戻りますと、リストは、曲作りを今回の名言である「未来という無限に広がる領域へ向けて、力いっぱいやりを投げること。」と形容したそうです。
実際に彼の作った曲たちは現代でも愛され続けています。
みなさまにとって診断士試験の勉強はまさしく「未来に向けて、やりを投げること」ではないでしょうか。
それは合否だけに限られず、未来に向かってみなさまの糧となっていくはずです。
2次試験の結果待ちの方や1次試験の勉強中の方など、いろいろな方がいらっしゃると思いますが、みなさまの投げたやりが未来に届くことを信じています。
以上です。
ありがとうございました!

明日はAREです!
ここに立つ為に 鍛え抜いた日々よ

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こんばんは!
にっくです。
診断業務にも通じる興味深い記事、ありがとうございました!
経営がうまくいかなくて追い詰められたりすると、ついついやってしまいそうになる気持ちも少し分かる気がします。
でも、だからこそ、経営を軌道に乗せる診断士のような仕事は、ある意味「正義の砦」とも言えるかも知れません(マゼッパを聴きながら書いているので、ちょっとテンションおかしいかも知れません)
不正を許さない、「したくさせない」そんな仕事として、改めて診断士になりたくなりました!
ありがとうございます!
にっく
にっくさん
コメントありがとうございます!
知っておかないと案外ピンとこないかと思いますので、参考になっていれば嬉しいです。
おっしゃる通り軌道に乗っていれば不正をする必要性もないので、ぜひそういった不正の必要性がなくなるような助言をされてください!