10分で分かる「キャッシュフロー」
さて、10分で分かるシリーズもこれで2回目、第1回目はこちらをご覧ください。
2回目は、頻出論点であるキャッシュフロー(CF)です。
キャッシュフローってなに?
一言でいうとお小遣い帳です。
「現金(キャッシュ)が増えたらプラス、現金(キャッシュ)が減ったら減ったらマイナス。」これだけです。でも、これだけなのに、なんで難しいんでしょう。それは、会計上の利益と現金(キャッシュ)の流れ(フロー)が違うことが原因です。
これから現金の流れの事をキャッシュフローといいます。
では、なんで会計上の利益とキャッシュフローが違うんでしょうか?諸悪の根源は「減価償却」の存在です。
「減価償却」がわかれば、キャッシュフローも同時に理解できます。
じゃぁ、減価償却ってなに?
減価償却について、詳しく説明するとお約束である10分を超えてしまうので、ここでは減価償却=「つもり貯金」と覚えてください。
つもり貯金って、「タバコをすったつもり」とか、「美味しいものを食べたつもり」で、その金額を貯金するアレです。
これから減価償却の事をすべて「つもり貯金」と書きます。
説明するより、実際の問題で説明したほうが理解しやすいので、例題で説明します。
例題
例題①
◆問題
100円の売上がありました。50円の仕入があって、税引前利益が50円でした。 利益から40%の税金を引かれました。 手元にいくらのこっているでしょうか? |
◆答え
税引前利益である50円に対して40%の税金がかかるので、 50×40%=20円が税金となる。 利益の50円から税金の20円を引くと 50-20=30円(税引後利益)なので、手元に残るお金は30円となります。 答え 30円 |
これは大丈夫でしょうか?
単純な計算ですね。まずは、ここを理解してください。また、このような減価償却を含む問題を理解するには、BOX図が最適です。
この図は、右の売上がキャッシュインフロー(CIF)、左側の経費と利益がキャッシュアウトフロー(COF)を表しています。これからこのBOX図をつかってすべての問題を説明していきます。
この青色の部分が、手元に残るお金(キャッシュフロー)となります。
★Point★
税引後利益が30円で、手元に残るお金も30円で同じ金額になります。これは、つもり貯金がないからです。
例題②
◆問題
100円の売上がありました。 50円の仕入と20円のつもり貯金をしました。税引前利益が30円でした。 利益から40%の税金を引かれました。 手元にいくらのこっているでしょうか? |
◆答え
税引前利益である30円に対して税金がかかるので、 30円×40%=12円が税金となる。 税引前利益の30円から税金の12円を引くと18円(=税引後利益)残ります。 さらに、これ以外に20円のつもり貯金もあるので、 18円+20円=38円が手元に残る金額となります。 答え 38円 |
今度は、つもり貯金がはいりました。税引後利益の18円と、つもり貯金の20円が青色になっています。この合計が、手元に残るお金(キャッシュフロー)となります。
★Point★
税引後利益が18円で、手元に残るお金が38円です。これは、つもり貯金が20円あるからです。
例題③
◆問題
100円の売上がありました。50円の仕入と40円のつもり貯金をしました。税引前利益が10円でした。利益から40%の税金を引かれました。 手元にいくらのこっているでしょうか? |
◆答え
利益である10円に対して税金がかかるので、 10円×40%=4円が税金となる。 税引前利益の10円から税金の4円を引くと6円(=税引後利益)残ります。 さらに、これ以外に40円のつもり貯金もあるので、 6円+40円=46円が手元に残る金額となります。 答え 46円 |
今度はつもり貯金の額が増えています。税引後利益は6円に減りますが、つもり貯金が40円あるので、手元に残るお金は先ほどの38円より増加して、46円となります。
★Point★
税引後利益が6円で、手元に残るお金が46円です。これは、つもり貯金が40円あるからです。
BOX図で秒殺
このように、難しい計算でもBOX図を書くと、問題を秒殺することができます。
財務の問題は、60分で約25題の問題を解くことが必要です。見直し時間を考慮すると、実際に問題を解く時間は1問あたり2分位しかありません。そのため、「公式ってなんだっけなぁ?」と考えている暇はありません。
問題を読んだら、反射的にBOX図を書けるようになる必要があります。
また、念のため、営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローの公式も書いています。原則としてBOX図で解いていますが、公式をサブとして覚えておくことで、問題に変化が出たときに対応することができます。
営業キャッシュフローの公式
営業CF=営業利益(1-税率)+減価償却費-運転資金差額
フリーキャッシュフローの公式
FCF=営業CF - 投資CF
過去問
実際に試験で使えるようになるためには、過去問が大切です。3問の過去問を出しますので、これまで覚えた「つもり貯金」を使って解いてください。
◆過去問 H24 13
次のデータに基づいて、営業キャッシュフローを求めた場合、最も適切な金額を下記の解答群から選べ。 売上高: 100百万円 現金支出を伴う費用: 50百万円 減価償却費: 15百万円 実効税率: 40% [解答群] |
◆答え
ウ [難易度B] 【解説】 |
◆過去問 H22 12
A社の損益に関するデータは以下のとおりである。A社の減価償却費は1,000千円であり、これは全額更新投資にあてられる。また、実効税率は40%であり、運転資本の増減はない。このとき、A社のフリー・キャッシュ・フローの金額として最も適切なものを下記の解答群から選べ。 (単位:千円) 営業利益 10,000 支払利息 4,000 税引前利益 6,000 法人税等 2,400 当期純利益 3,600 [解答群] ア 4,600 イ 6,000 ウ 7,000 エ 7,400 |
◆答え
イ [難易度D] 【解説】 ここではちょっとだけ、公式をつかいます。フリーキャッシュフローは、原則として営業利益から求めます。そのため、与えられたデーターの、支払利息、税引前利益、法人税等、当期純利益はひっかけの情報です。ここで使う情報は、 営業利益 10,000 減価償却費 1,000 税率 40% の3つだけです。売上や費用は分かりませんが、営業利益と税率が分かれば、税引後営業利益は計算できます。計算方法は下記の通りです。 税引後営業利益=営業利益×(1-税率) =10,000×(1-0.4) =10,000×0.6 =6,000 また、この問題の難易度がDなのは、ひっかけがあるからです。設問文に「A社の減価償却費は1,000千円であり、これは全額更新投資にあてられる。」とありますが、これは何の意味があるのでしょうか?ここはBOX図では説明できないので、公式が必要になります。フリーキャッシュフローの公式は、FCF=営業CF - 投資CF また、これに営業CFの公式を代入すると、
設問文から、この意味を読み取れるかどうかがポイントでした。
|
★Point★
減価償却費として1,000あるが、投資が同じ1,000だけあるので相殺されて、フリーキャッシュフローは、6,000となる。
◆過去問 H20 24
投資額500万円を必要とし、経済命数5年、各年度の減価償却費100万円の投資案の税引後キャッシュ・フローが220万円と予想されている。この投資案の税引後会計的投資利益率を算出するとき、最も適切な税引後利益額はどれか(単位:万円)。 ただし、実効税率40%とし、減価償却費以外の費用および収益はすべてキャッシュ・フローとする。 [解答群] ア 120 イ 132 ウ 280 エ 320 |
◆答え
ア [難易度D] 【解説】
|
まとめ
いかがだったでしょうか?
このBOX図を使えば、D難度の問題でも、秒殺することができます。
是非、これをマスターして頂き、キャッシュフローを得点源としてください。
次回のテーマにあげてほしいことがあれば、コメントしてください。
以上、おとでした。
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おとさん、丁寧な解説ありがとうございました。
スッキリしました。
たなち様
コメントありがとうございます。
この「FCF=営業CF-投資CF」について説明します。
意味としては、営業CFがプラスとなり、その営業CFをプラスにするために必要な投資を引いたときに残ったおカネをFCFとするということです。
この意味は、どのテキストも同じだとおもいます。
たとえば、100万円を投資した場合、
足し算の時は、「マイナス100万円を足す」
引き算の時は、「100万円を引く」
という意味になります。
ちょっとわかりずらいですが、公式より、意味を理解すれば、理解しやすくなります。
それじゃあ、どっちで表現しているほうが多いかというと、私は引き算のほうが多いと思っています。
たとえば、下記のサイトでは、引き算です。
グロービス
http://gms.globis.co.jp/dic/00250.php
FCF=営業利益×(1-税率)+減価償却費-投資-ワーキング・キャピタルの変化。
でも、下記のサイトでは、足し算と引き算の両方を書いています。
IT業界を読み解くための経営分析入門
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060530/239478/
フリー・キャッシュ・フロー = |営業C/F| − |投資C/F|
というように、やや表現の方法が分かれますが、意味合いをきちんと理解することで、間違えることがなくなるとおもいます。
また、今回説明したBOX図もそうですが、公式を単純に覚えると、変化球が出たときに間違えてしまうので、BOX図などの、図で理解することで、本試験当日に、ケアレスミスすることなく、秒殺することができますので、頑張ってください。
おと
おとさん、こんにちわ。
いつもよくまとめられた記事をありがとうございます。おさらいにとても重宝しております。
真ん中あたりのFCFの公式ですが、
FCF=営業CF+投資CF
の足し算の方が一般的ではないでしょうか?
「投資額」なら引き算でもいいと思いますが、投資(活動による)CFという意味では、固定資産売却による収入も含まれるのでプラスも生じます。
テキストも足し算がほとんどだと思います。(と、いっても手元には二種類しかありませんけど)
計算問題では、ズバッと引算しても正解にたどり着けそうに思いますが、一週間気になってまして、細かい話ですみません。
次回も楽しみにしてます。よろしくお願いします。
oharu71様
秒殺できてよかったですね。
この問題で秒殺できれば、そこで余った時間を他の問題にあてることができます。
BOX図は一度理解してしまえば、時間がたっても忘れることはありません。
まずは、自分のものにして、得点源にしてくれると嬉しいです。
おと さま
おはようございます。
昨日コメントさせていただいたoharu71です。
一通りCFの過去問を当たってみました。
結果は、ほとんどの問題が秒殺でした!
しかも、BOX図を何度か描くことによって、公式を図柄で理解することが出来ました!
あと何度か練習をして、きっちり自分のものにしておきたいと思います。
ありがとうございました。
oharu71さん
コメントありがとうございます。
私も公式とBOX図のどっちがいいかなぁって考えた時期がありますが、試験対策上は、ケアレスミスがすくなく、秒殺できるBOX図のほうがいいという結論になりました。
公式を忘れることはあっても、BOX図を忘れることはないですからね。
また、”目からウロコ”状態とのコメント頂き、感激しております。(T_T)
次回以降も、受験生に役立つ、”目からウロコ”の記事を書くようにがんばります。
おとさま
これまでBOX図を描くのをメンドーがって、一生懸命公式を暗記していましたが、仰るとおりBOX図を描いた方が秒殺出来ますね!しかも、「公式を忘れちゃったぁ~(・・;)」という時でも思い出すための材料になりそうで!
”目からウロコ”状態です。ありがとうございました!今のうちにスピ問と過去問のCF関連問題を解きまくりたいと思います。