合格体験記その3-岡崎教行

みなさんこんにちは。牛嶋・寺前・和田法律事務所の弁護士岡崎教行です。

今回は、合格体験記その3、最終回となります。今回は、自分が合格を手繰り寄せることができた要因に自分なりに分析し、切り込みます。

1回目はこちら 2回目はこちら

【目 次】
第1 はじめに
第2 合格までの軌跡
1 受験のきっかけ
2 一次試験まで
(1) 一発合格道場との出会い
(2) 試験申込み
(3) 答練開始
(4) 公開模試

・・・・以上、2月16日掲載・・・・
3 一次試験実況中継
(1) 初日
(2) 二日目
4 一次試験の結果
5 二次筆記試験まで
(1) 答練開始
(2) 公開模試
6 二次筆記試験実況中継
7 二次筆記試験の結果
8 二次口述試験実況中継

・・・・以上、3月3日掲載・・・・
第3 合格の要因
1 合格への気持ち
2 試験の特性を見極めた
3 採点官の気持ちに思いを至らせた
4 勉強テクニック・試験テクニック
(1) 情報の一元化の重要性
(2) 最後の最後まで粘る-直前に見るものを決めておく
(3) 一次試験では説ける問題から解いていく
(4) 肢を1つでも切って確率を高める
5 手を広げすぎない
6 群れない
7 事例の分析方法を確立していた
8 モチベーションの維持
第4 二次試験が不合格だった場合にやろうと思っていたこと
第5 最後に

・・・・以上、今回掲載・・・・

【本文】

第3 合格の要因
私が中小企業診断士に合格した軌跡は以上のとおりですが、以下では、私が比較的短い期間で合格を手繰り寄せた要因について、自分なりに考えたことを記します。
1 合格への気持ち
まず、合格の一番の要因は、合格への気持ちの強さです。受験生であれば誰しもが合格したいという気持ちを持っていると思いますが、私の場合は、「合格したい」というよりも、「合格しなければならない」というものでした。
異論があることを承知で言いますが、資格試験は受からなければ意味がないと思っています。勝てば官軍負ければ賊軍ではありませんが、国家試験というものは合格した人にしかライセンスは与えられません。いくら実力者であったとしても不合格であれば、合格した初心者のほうが勝ちなのです。ふうじんさん風にいえば、Winner takes allなのです。私は司法試験受験のときにこのことを身をもって体験していましたので、他の受験生に比べて、強い気持ちを持てたような気がします。
それに加えて、私の場合、「弁護士なんだから受かるでしょ」という見えないプレッシャーがありました。皆、声を出してはいいませんが、弁護士なんだから受かって当たり前と思っている節があり、試験に落ちたらどうなるんだろう、絶対に落ちることはできないなという気持ちになり、それが自分のモチベーションアップにつながったと思います。そのために、受験番号もFacebookで公開にさらして自分にプレッシャーをかけました。
2 試験の特性を見極めた
当たり前のことですが、一次試験の合格は、7科目合計で420点以上、かつ40点未満の科目が1科目もないことであり、いわゆる絶対評価の試験です。他方で、二次筆記試験は、基本的には上位1000名程度が合格するという相対評価の試験です。絶対評価の試験と相対評価の試験では、対策も異なります。絶対評価である一次試験については、他の受験生は関係なく、あくまで自分が事前に決められた合格点を取れるかどうかであり、自分の勉強の進み具合如何が合否を決めます。他方で相対評価である二次筆記試験については、他の受験生との比較、競争という側面が出てきます。
司法試験のときもそうでしたが、科目が複数ある論文式の試験に合格する確率を高めるために必要なことは、①ケアレスミスを絶対しない、②他の大多数の人と同じ答案を全て並べるというシンプルなものです。
受験生の2、3割は必ず本試験でケアレスミスをします。例えば、二次筆記試験の合格率を20%と仮定した場合、5人に1人が合格となるわけですが、5人のうち1人あるいは2人はケアレスミスで脱落するのです。嘘だと思うかもしれませんが、これホントなんです。あの雰囲気に呑まれてしまう人が多数でるんです。ケアレスミスをしないだけで、ライバルの1人あるいは2人がいなくなるのです。そしたら、あと1人あるいは2人を蹴落とせば合格です(笑)
もう1つは、決して、難しいことを書くのではなく、他の多くの受験生が書くであろう答案を全て並べることができればそれで良いということです。人並みの答案を全て書くことができれば、OK。翻っていえば、受験生の大部分が解けない問題は解けなくても合格ということです。これを認識した上で自分の精神を整える必要があると思います。私は司法試験のとき、大学4年生時で論文試験があと100番程度順位が上だったら合格していたのですが、そのときは一番得意の科目であった民事訴訟法で、試験中に閃いてしまい、他の受験生がどう書くかは想定できていたものの、自分の閃きを書いてしまったがために思わぬ方向に答案がいってしまい、不合格になったという経験を持っていたので、特に強く、この点は意識しました。
3 採点官の気持ちに思いを至らせた
TACの遠藤先生がいうには、二次試験は1人の試験委員が約1か月の間に5000枚程度の採点を行っているとのことでした。それを前提として、1問あたりにかけられる採点時間を考えてみてください。1問あたり数秒が限界です。数秒の間に試験委員に自分の言いたいことを伝えなければならないのです。そうだとすると、回答で求められているのは、読み返さずに流れるように読める、いいたいことが伝わるということです。中小企業診断士の場合は、1問あたり100字あるいは200字程度ですから、はっきりいって、中身の濃い、そして深い回答などできるはずがありません。
そうすると、回答はいたってシンプル、わかりやすい、誰でもわかるような論理的なものである必要があります(字も丁寧である必要があります)。
司法試験のときは1通あたり数千字の論文でしたので、中身が重要でしたが、中小企業診断士の場合は、極論を言えば、深い回答など書けっこないのです。

そうそう、一読して趣旨がわからない答案の顛末ってわかりますか?

読み飛ばされるんですよ。

私は、司法試験のときも合格後に答練の採点をかなり多数やりましたし、仕事柄、文章を書く、読むことをしているので、良くわかるのですが、意味が良く分からない文章は無意識的に読み飛ばしてしまいます。言っている意味がわからないなぁというだけで終わってしまうのです。そうなると試験官がその回答に点数を付けるとは考えられません。ましてや時間がない中での採点ですので、再び読み返してもらえる可能性など極めて低いと認識しておく必要があると思います。
また、ビジネスの世界でもそうですが、できる限り、結論を先に持ってきて、そのあとに理由と補足を行うというのも有効だと思います。私もそれを意識して勉強、回答を作成する練習をしていましたが、どうしてもその場合には最後の補足のところで結論をリピートしないと文章のつながりが悪くなることが多く、中小企業診断士の場合は、上述のとおり100字、200字程度と制限文字数があるので、必ずというわけではなく、できる限り結論を先に書くということにしていました。
4 勉強テクニック・試験テクニック
(1) 情報の一元化の重要性
中小企業診断士の試験範囲が極めて広いことはご承知のとおりですが、そのような試験の場合には試験直前に効率的に復習できるようにするために情報を一元化しておくことが有用です。私の場合は、主として、インプットについては、TACのスピードテキスト(経済学・経済政策、中小企業経営・政策は除く)のみにしました。答練や過去問で気になったこと、覚えなければならないことは全てスピードテキスト等に手書きで記載をするなどして、一元化に努めました。
(2) 最後の最後まで粘る-直前に見るものを決めておく
試験開始の直前まで(試験官から教科書等をしまうようにと言われるまで)勉強をできる状態にしておくのがとても大事だと考えています。試験直前に見たものは記憶に残っていることが多いからです。私の場合も、一次試験の開始直前に見ていたことで救われた問題がいくつかあります。1つは経営情報システムでしたので、それだけで4点、侮れません。
とすると、試験開始直前まで何を見ればいいのか?という疑問がわいてくると思います。
1つは、自分自身でなかなか覚えられないものをまとめておいて直前にそれをみるという方法もあります(診断士試験ではファイナルペーパーと呼ぶのが通説のようです)。ただ、私の場合は、特に一次試験については全く勉強できていない範囲も多く、それをできる限り減らさなければならないという状況でしたので、ファイナルペーパーを作成するだけの時間がありませんでした。そのため、スピードテキスト等で直前に見る部分には付箋を貼るようにしていました。これは司法試験のときもしていたのですが、試験直前に何分程度見る時間があるのかを確認し(例えば、一次試験の場合には試験と試験との間の約15分程度)、15分間で見返せるだけの量に絞って、直前に見るべきものに付箋を貼るということをしていました。15分ですと30個程度を2回はみることができます。
(3) 一次試験では説ける問題から解いていく
経済学・経済政策、企業経営理論、運営管理、それから財務・会計(たぶん)については、試験時間内で全ての問題を解き切るのは難しいと思います。
これは当たり前のことですが、点数を稼ぐという観点からは、全ての問題を1回は見て、考える必要があります。難しい問題に時間を費やし、全く見ることができなかった問題を勘で回答し、間違ったところ、全く見ることができなかった問題が簡単な問題だったというのが一番最悪です。
したがって、難しい問題だなと感じたら、それは後回しにして、とりあえず、どんどん進んでいく必要があります。これは口で言うのは簡単ですが、実際やってみるとなかなか難しいと思いますので、模試や答練等を利用して、感覚を養う必要があると思います。私の場合は、旧司法試験のときの択一試験が憲法20問、民法20問、刑法20問を3時間半で解く試験だったことから、その点は昔取った杵柄ではありませんが、強く認識し、感覚は分かっていたので、アドバンテージだったかと思います。
注意しなければならないのは、知識系の問題で、択を2つまで絞ったものの、どちらかわからないで迷い、時間を費やしてしまうことです。論理問題であれば、時間を掛ければ回答が見えてくることがあるものの、知識系の問題は知っているか知らないかだけなので、いくら悩んでも答えはでてきませんので、時間の無駄です。
(4) 肢を1つでも切って確率を高める
巷間よく聞くことがあります。「自分の場合は、時間が足りなくなった場合やわからない場合には択のうち3にするようにしている」というものです。私は、この意見には反対です。そもそも、全く見ることができなかった問題を作り出すこと自体、タイムマネジメントが出来ていないという点で論外ですが、分からない場合に初めから、どの択にするというのでは点数を稼ぐことができません。択一試験は何かしらにマークすれば当たる可能性のある試験です。したがって、分からない問題であっても、考えなければならないのは当たる確率を高めるためにどうするか?ということです。私の場合は、分からない問題であっても、択を全て見て、できる限り択を絞って、正解の確率を高める作業をしていました。今回の本試験でも、それで助けられた面があります。
5 手を広げすぎない
これも試験合格の王道ですが、時間がない中で多くのことに手を広げないということも重要です。心配になると、あれもこれもってなるんですよね。私の場合、財務・会計が全く分からなかったので、一次試験合格を知った後、財務・会計はどうするかと悩みました。TACの遠藤先生からのアドバイスで、二次事例Ⅳ特訓という単発講座を受けるのが良いということでしたので、二次試験の事例Ⅳ対策として、私がやったのは、二次事例Ⅳ特訓の問題をひたすら解きまくり、それと合わせて答練も復習するということだけでした。あとは、経営分析についてはのみ過去問を5年分やっただけです。
6 群れない
私が中小企業診断士の勉強を始めてびっくりしたというか、違和感を感じたのは、みんなで勉強しましょうという雰囲気が強いことでした。資格試験は、最後は自分ひとりの力によるところが多いものです。合格するかどうかは自分次第です。講師が合格させてくれわけではないし、友達が合格させてくれるわけでもない。もちろん、道場が合格させてくれるわけでもない。二次試験では友達も競争相手の1人です。合格させてくれるのは自分自身です。
確かに、二次試験の勉強のためには、皆で意見を言い合って自分に欠けていた視点を補うという方法も有用であると思いますし、勉強のペースメーカーにもなりうるという点も有用だと思います。ただ、それについても過去問であれば、各予備校の回答、ふぞろいな合格答案等の書籍を読むことで代替できると思います。
なお、勉強会を行う場合に注意が必要なのは、人数を多くしすぎないという点です。人が多くなればなるほど、意見を言う人が一定の人に限定されてしまい、広く意見を募れないという可能性が高まりますし、人数が多くなればなるほど真面目にやってこない人も入ってきますので、なれ合いとなってしまい、モチベーションが逆に下がる可能性もありますので、私が思うには、勉強会をするにしても仲の良い2、3人程度で行うのが良いかと思います。なぜなら、この程度であれば、忌憚のない意見を言い合えるし、話をしなければ勉強会自体が成立しないので、真面目に取り組んでくる可能性が高くなるからです。
7 事例の分析方法を確立していた
中小企業診断士の試験では、事例を分析する際に、よくSWOT分析を用いるのが有用だと言われます。私も、それに異存はありませんが、これまで弁護士として10年以上仕事をしてきた中で、分析方法として一番有用なのは、時系列で整理することであると確信しています。全ての出来事は時系列で起きていきます。物事の真実を発見するには、時系列で何が起きたのかを整理し、そうだとすると、こういうことがあったのではないかと推認、想像するのが有用です。
また、与件文では組織、組織の役割分担、組織に属する社員数などが出てくることが多いと思いますが、その際は、組織図を書いて、整理をして、視覚化するのも有用です。
8 モチベーションの維持
私は、司法試験のときもそうですが、いわゆる合格体験記を読み漁りました。中小企業診断士の受験にしても同じで、合格体験記を買って読みました。また、一番のモチベーションは、勉強を開始するきっかけを与えてくれた社会保険労務士の先生と一緒に、お互い甘えることなく、張り合いながら勉強ができたということでしょうか。毎回の答練では、「勝った!」「負けた!」を繰り返していました(当然、私が負けることが多かったです)。二人とも負けず嫌いなので、一触即発みたいな感じではありましたが(笑)
それから、毎日の日課として、モチベーションを保つために、中小企業診断士一発合格道場、タキプロのブログを読むことにしていました。これらは毎日のように記事が更新されること、また、過去の記事もかなり多く、合格体験記を読んでは、自分を奮い立たせていました。
加えて、試験に落ちれないというプレッシャー、負荷を自分に強くかけるために、答練の成績、本試験の受験番号、二次筆記試験の再現答案、口述の再現等を全て、Facebookに投稿して、知り合いの目に触れるようにしていました。ここまで開けっぴろげにしていたら、落ちることはできません(笑)

第4 二次試験が不合格だった場合にやろうと思っていたこと
中小企業診断士の二次試験の勉強をしていて常々思っていたのは試験制度についての矛盾でした。つまり、司法試験のときは、1科目当たり数千字の論文でしたが、資格予備校の回答は殆ど方向性は同じであったにも関わらず、中小企業診断士試験の場合は、資格予備校でも回答の方向性が違うことが多く、しかも、当局が公表する出題の趣旨は、問題文のリフレインであり、何らの方向性すら示してくれないもので、そもそも資格試験として成り立っているのかと疑問に思っていました。
しかし、実際の試験がそうである以上、文句ばかりをいっていても始まりません。事例Ⅰ~Ⅲは極論を言ってしまえば、試験当日の出たとこ勝負ですが、事例Ⅳだけは違います。事例Ⅳの財務・会計については回答の方向性が資格予備校でも方向性が一致しています。数値という性質上、答えが明確です。
ということは、合格する確率を高めるためには、事前準備で対応しやすい事例Ⅳを得意科目にする必要があると合格発表まで考えていました。そのため、二次筆記試験が終わったあとに、私は、もし不合格であった場合には、1年間、財務・会計を鍛えることをしようと考えていました。

また、TACの遠藤先生の言っていた試験委員の書籍を熟読しようと思っていました。これはどうしてかというと、出題意図を見抜くことが極めて大事な試験だと思うので、思考を、出題委員とシンクロすることが合格率を高めるのではないかと考えたからでした。

第5 最後に
長々と自分が思ったことを書き連ねました。受験生の皆さまにとって、1つでもヒントになることがあれば幸いです。

以  上

・・・・ここまで・・・・

いかがでしたでしょうか。合格体験記は以上となります。3回もの長きにわたりお付き合いいただきましてありがとうございました。次回からは趣を変えた、具体的な内容についての記事を書いていくことを予定しています。

 

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合格体験記その3-岡崎教行”へ2件のコメント

  1. 岡崎 教行 より:

    ドジ様
    コメントありがとうございます。今年は二次のみとのこと、そうするとあと半年間程度、二次の勉強に邁進できるのですね。時間があると思うと、手を広げたくなるのが人情ですよね(笑)
    どこまでお役に立てるか、どこまで使い勝手の良い記事をかけるか、まだ未知数ではありますが、今後とも、よりよい記事を書いて参りたいと思っております。
    ドジ様も、今年の合格勝ち取ってください!!
    圧倒的に期待してます!でも、試験中の圧倒的閃きは危険ですので極力回避を(笑)
    って、カイジネタ振っていただき、ありがとうございました(笑)

  2. ドジ より:

    岡崎先生の三部作拝見しました。お忙しい中、戦略的に、効率的に合格されたエピソードは大変参考になりました!私は昨年二次で落ちてしまって、今年は二次対策のみなので時間には比較的余裕があるのですが、ダラダラと過ごさず、手を広げすぎず、試験の本質を自分なりに考えて効率的に学習を進めたいと思います。 これからも岡崎先生の記事を楽しみにしてます! 圧倒的期待です!笑

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