【渾身】経営法務 基本論点以外にチェックしておきたいこと ーその1ー
一発道場の読者の皆さま、こんにちは。TOMです。
TOMは先月、勤務場所である東京と自宅のある千葉の両方の診断士協会に入り、少しずつではありますが、診断士の活動に触れつつあります。実際の活動はこれからですが、東京では企業内診断士向けのマスターコースと研究会に参加することにしました。マスターコースと研究会については初代JCの投稿がありますので、ご参考にしてください。合格した翌年にはマスターコースや研究会で新たな学びが始まります。
さて、6月度は道場恒例の「渾身シリーズ」にも関わらず、前回タイトルに渾身を付け忘れてしまいました。今月はもう一回投稿予定ですが、いずれも「渾身」でお届けします。
試験本番に近づくと理屈を理解していれば複数年対応可能な次の科目よりも、
- 企業経営理論
- 運営管理
- 財務会計
- 経済学・経済政策
時代のトレンドや環境の変化により毎年の出題内容に変化があり、これまでに学んだことがそのまま活かせない可能性のある次の科目に注力することになると思います。
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・政策
5月から自分自身の復習も兼ね「経営情報システム」をお届けしてきましたが、今月2回は暗記科目と言われる残り2つ、「中小企業経営・政策」と「経営法務」のうち、「経営法務」についてお話させて頂きます。
残り2ヶ月を切った状態で合格点に近づくには、ロックも3月に述べている通り、分野としてはいわゆる以下の2つに集中的に取り組むことです。
- 会社法
- 知的財産法
その上で、更なる高みを狙う場合、次の切り口を押さえておきたいです。
- 改正法
- 英語問題
改正法については先日、畠ちゃんが触れています。今年の5月30日に改正個人情報保護法の全面施行がありました。全ての事業者に影響するため(取り扱う個人情報の数が5000以下である事業者を規制の対象外とする制度を廃止)、従来、対象外であった中小企業にも影響があり、要チェックです。(ちなみに、個人情報保護法は平成19年度の第11問で選択肢として登場しています。それ以外は過去10年ではありません。)
一方で今年は改正個人情報保護法を除くと診断士試験という観点からはコレッと言ったものが見つけれらなかった(申し訳ないです)ので、昨年施行となった法2点について紹介します。
1点目は不正競争防止法です。
この法律、平成24年度以降、過去5年間の出題を確認すると、平成25年度を除き毎年出題されています。昨年も第11問と第12問で出題されていますが、昨年の問題はいずれも改正には触れていませんでした。
改正の背景は以下です。
- 営業秘密の価値の再認識(知財の秘匿化:あえて特許を取得せず)
- 営業秘密侵害の危険性の高まり(営業秘密漏洩事件の増加&ITの進化)
改正のポイントは以下です。
- 刑事上・民事上の保護範囲の拡大
- 営業秘密の転得者処罰範囲の拡大
- 従来は2次取得者まで。改正後は3次取得者以降も。
- 営業秘密侵害品の譲渡・輸出品等の規制
- 特許品の侵害品と同じように営業秘密の不正使用により生産した製品の譲渡・輸出入等禁止。
- 未遂行為の処罰
- 情報技術の高度化を踏まえ、営業秘密の不正取得や不正開示等の未遂を処罰。
- 国外犯処罰の範囲拡大
- 海外サーバー等に保管された営業秘密を海外において不正取得する行為も処罰。
- 営業秘密の転得者処罰範囲の拡大
- 罰則の強化等による抑止力の向上
- 罰金刑の上限引き上げ等
- 罰金が1000万円以下から2000万円以下へ(懲役は変わらず10年以下)
- 非親告罪となり、被害者等からの告訴がなくても裁判が可能に。
- 任意的没収規定の導入
- 犯罪収益を裁判所の判断で没収することが可能に。
- 罰金刑の上限引き上げ等
- 民事救済の実効性の向上
- 立証負担の軽減
- 民事訴訟上の立証責任を転換。侵害者(被告)が「違法に取得した技術を使っていないことを」立証。
- 除斥期間の延長
- 営業秘密の不正使用に対する差止請求の期間制限が20年に。
- 立証負担の軽減
いずれも企業の営業秘密漏洩事件の大型化、増加が影響していますね。
2点目は特許法です。
こちらは昨年第7問で出題されてしまいました。改正に合わせポイント4つがそのまま出てしまいましたので、今年は出題済みという観点で押さえておけば良いかと思います。
改正の背景は以下です。
- グローバル競争が進化する中、イノベーションを促進するには研究者の研究開発活動に対するインセンティブの確保と企業の競争力強化を共に実現するための環境整備が必要。
改正のポイントは以下です。
- 職務発明の活性化
- あらかじめ職務発明規程等で意思表示をした場合、発明に関する特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることが可能となる。(意思表示していない場合は従来通り従業員帰属。)
- 発明者に対して「相当の金銭その他の経済上の利益(インセンティブ)を受ける権利」を付与。(従業員の発明を従来通り奨励)
- 法人と発明者の間でのインセンティブの取り決めには指針(ガイドライン)を定める。
- 特許料等の改定
- 特許料及び特許出願料を10%程度引き下げ
- 商標登録量を25%程度、更新登録料を20%程度引き下げ
- 特許法条約(PLT:Patent Law Treaty)への加入
- 各国で異なる特許出願等に関する手続の統一化及び 簡素化を目的とし、出願人の利便性向上及び負担軽減を図る
- シンガポール条約(STLT:Singapore Treaty on the Law of Trademarks)への加入
- 各国で異なる商標登録出願等に 関する手続の統一化及び簡素化を目的とし、出願人の利便性向上及び負担軽減を図る
「職務発明の活性化」は「発明の対価」を巡る企業の訴訟リスク軽減ですね。
なお、今回の投稿にあたっては以下の資料等を参考にしております。
- 不正競争防止法
- 平成27年度不正競争防止法の改正概要(経済産業省)
- 特許法
次回は、英語問題(英文契約書等で登場する用語など)について触れたいと思います。
以上、TOMでした。