これからの一歩を踏み出すあなたへ

 

なごです。

皆さん、二次試験お疲れ様でした。やり切った方、悔いの残る方、勉強時間が取れなかった方も見えれば、試験会場に向かうことができず悔しい思いをした方も見えるでしょう。いろいろな想い、喜怒哀楽こそが次へつながる力となります。まずはその想いを大切にしてほしい、私はそう考えています。

 

また、この時期だと診断士を目指そうと勉強をスタートされた方もお見えかもしれませんね。どんな資格かよく分からないけれども様々なことを学べそうだ、とか、自分の社会人生活の中で箔をつけたい、そんな方も見えるかもしれません。

 

そんな皆さんに共通するのは、これからの先、一年間の歩み方についてどうすべきかという疑問。初めて学ぶ方は自分自身の目標を見定めるために、そしてこれまで学んできた方は、どうしても試験勉強としての学びに偏りがちな二次試験を終えて、改めて自分の立ち位置を確認するために、今日は診断士のアンカー的なことについて触れていきたいと考えています。

 

中小企業診断士。士業と呼ばれる資格は様々ありますが、他の資格と比較するとちょっとした特徴が浮き出てきます。
まず他の士業と比べて同じ点。国家資格であること。当たり前ですがステータスはそれなりにあります。また表裏一体の関係でもありますが、試験の難易度もそれなりにあります。そのため、個人差は当然ありますが、だいたい1,000時間が合格するために必要な勉強時間の目安と言われることが多いです。

 

逆に他の士業と比べて違うこと。これは特定業務が無いことです。例えば宅建士だと重要事項説明という法定業務があり、これは無資格では実施することができません。特定業務があるために、資格取得者の業務が必ず発生するため、そこにビジネスが成立します。だから独立して生計を立てている方(法人)も多数あるというわけです。
対して中小企業診断士には特定業務がありません。企業にとって必ず必要である、という資格ではないわけです。そのため資格取得後も企業内で活躍する診断士(企業内診断士)が多い資格なのです。

 

では皆さん、なぜ特定業務の無い診断士を目指すのでしょうか

 

ここからは私見を挟みますが、多くの方が「自分自身のスキルアップ」「自分自身に自信をつけたい」など更なる高みを目指して受験されるケースが多いと考えています。また次へのキャリアアップを目的とされている方もお見えです。
そのため「仕事が暇になったから勉強しよう」という人よりも圧倒的に「忙しいけどなんとか時間を捻出して勉強しよう」という前向きな意識の方が多い気がします。会社でそれなりに活躍している人はすでに仕事を多く抱えており、業務が楽なはずがありません。でもさらに高みを目指すために受験する人が多いこの資格は、誰しもが時間を捻出する能力に長けており、おのずと周りの受験生からやる気という刺激を受けることも多数ある資格であると言えます。

 

また特定業務が無いため、特定の業界に縛られず、幅広い分野の方が受験しようと試みる資格でもあります。私の周りの合格者を見渡しても、独立している方のほか、弁護士、検事、税理士として活躍する人がいますし、メーカー、商社、金融、広告代理店などの企業で働く人もいます。また営業、企画はもとより、管理畑の方やSEも数多く見えますね。

 

そんないろいろな人たちが集まる診断士。逆に共通点と言ったらなんでしょう。

 

これは「ヒトが好き」ってことなんじゃないかと最近思っています。
診断士として活躍したいと考える人は、中小企業の社長さんたちと会話する中で経営指南をするわけなのですが、他人の会社を全力で支援するってことは、ヒトが好き、っていう大前提が無いと成り立たないと思うのです。
また自分自身で上を目指したい人にしても、学んだ知識を使って論理的に考え、知識をベースにした説明ができるようになりたい、誰かに対して影響力のある行動ができるようにという考えが根底にあると思うのです。

 

ヒトが好きっていう人物って、同じ匂いのする人を集めます。だから診断士の集まりって、「ほかの士業の集まりに比べて明るいね」ってよく言われるのですが、たぶん私以外の診断士の方もそう感じているのでは、と思っています。
一発道場でも過去に何度か勉強会などを実施しているので、初めての方はそういう場に参加されると私たちのような診断士の方たちの素顔が見えると思いますよ。

 

 

さて、では診断士に必要なこととはなんでしょうか。
私は「社長の想いに寄り添ってあげること」だと考えています。
社長は孤独な業務です。会社のことを考え、社員のことを考え、未来のことを考える。そんな社長と共に前を向く仕事、それが診断士にとってもっとも大切な生業だと考えています。でも決して迎合するわけでないのです。社長が考える想いを具現化するのです。

 

簡単な例をあげましょう。
先日の二次試験で出題された事例Ⅱのケースです。
組合の代表理事は、「セミナーをきっかけに」「商店街全体の活性化が必要である」と考えています。「志を同じくする若手」も賛同し、「協力的」な機運が高まっています。「低価格食品販売を主とする」「総合スーパーとのすみわけが重要である」ことにも気が付いており、「短期的」な「イベント」で「商店街と接点を持ってもらう」ような人を呼び込む施策が必要なことも分かっている。
でもやり方が分からないため、「非食品小売店の店主からは売上増加効果が現れていない」と言われてしまうわけです。

また商店街の皆さんも、近隣の工場が移転し、顧客層が変化したことには気が付いているため、店の雰囲気を「大人が落ち着いて食事ができる」場所へ趣を変えていっています。
でも商店街の人たちは大人だけでしか見えていませんので、高級マンションを購入した世代の子供に商機を見いだせないかと助言をします。
さらに店主たちは自分たちの物件しか見えていませんので、空き店舗を利用することでターゲットを呼び込むことができないかと助言をします。そんな社長の意に沿った想いを具現化するのが診断士の仕事であると考えています。

 

 

また事例Ⅲを見てみましょう。
社長は少しでも利益をあげようと必死に努力をしています。季節変動が激しい商材は会社の収益に影響を与えますから、余力のあるうちに見込み生産で規格品を作ろうとする。でもその想いが裏目に出て、仕掛品が邪魔になり機械加工工程に不具合が生じています。
収益は上げたいけれども、どうしていいのか分からない社長に対して、ボトルネックの元凶となる問題点を明確に指示し、改善方法を示すことで課題を解決する。寄り添いつつ、問題点の本質を見つけ、具体的な解決策を提示する。それが診断士であるのです。

 

そういう意味でいくと、診断士と対極にあるのは「アナリスト」「ジャーナリスト」かもしれません。(アナリスト、ジャーナリストの方、ごめんなさい)
「どうして出来ないのか」「なぜやらないのか」と詰問するのではなく
「一緒にすすめていきましょう」
みたいなスタンスが診断士には必要であると考えています。

 

ある本にこんなことが書かれていました。
「コンサルタント(診断士)はクライアントのことを「彼ら」という呼び名を使ってはいけない」
「「彼ら」という言い方には「自分のパートナーや仲間でない」というニュアンスがある」

 

私たちは診断士として、社長の想いを達成するため、寄り添い、ともに考え、そして行先を指南する役目がある。指南するためには多くのことを知り、様々な社長からの申し出に対して、的確に対応する必要があるのです。

「こんな会社にしたい」
「部下の有給をどうしたら良い?」
「社内のモチベーションが下がってきているが」
「大型機械を導入するか迷っている」
「仕掛品が多い」
「景表法にひっかかると聞いたが」
「クラウドってなんだ」
「助成金を使って事業拡大できないか」

多くの問いに対して、それなりの勘所を持って応える。そんなことを求められるのが診断士であると考えています。

 

そのためこれから一次試験を学ぶ人は、7科目が待ち構えると思いますが、どっぷりと学びの世界に身を置いて、知識を積み重ねてください。得意不得意があるので、基本的には苦手強化を重点的にやっていただく必要がありますが、予備校などが最初に授業を行う企業経営理論は、得意だと思っても全力で取り組んでください。理由は二つ。一つ目は診断士を受験する人は皆、そもそもこの科目が好き(得意)なため、試験のハードルは他の科目に比べ相当高いということ。二つ目は将来、診断業務を行う上で、企業経営指南の根幹としてずっと必要な知識であるということです。

 

また二次試験を残している人、また今年残念な結果で来年を目指している方は、視野を広げる意味でも、単なる勉強に縛られず、自分自身の勉強がどんな場面で役に立つのか、どんな学びをこれからする必要があるのか、客観的に見つめてみるのも良いと思います。私が一年目試験に落ちた時は、2月まで本を読みました。試験勉強という型にはまる勉強スタイルは、ややもすると視野が狭くなるというデメリットがあります。意図的に枠を広げるような行動をすることで、脳のメモリーが増やす、そんな感覚も将来には必要です。

 

最後に。
診断士は、大変魅力的な資格であると思っています。これは試験に合格してから再認識したというより、想像以上に魅力的な資格でした。知識が増え、仲間が増え、様々な機会が増える。受験に対する負荷は大きいですが、多くの人に目指してほしい資格です。

今日はここまで。なごでした。

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これからの一歩を踏み出すあなたへ”へ4件のコメント

  1. なご より:

    すくすく様
    コメントありがとうございます。
    すくすくさんのコメント、一言一言に強い意志を感じます。経営者の皆さんは誰しも孤独であり、すくすくさんのような気持ちを持っている人を欲していると考えています。
    これからも一瞬、一瞬を大切に、頑張ってくださいね。一発道場のサイトがその一助となれれば幸いです。

  2. すくすく より:

    なご様
    コメントありがとうございます。
    独立診断士になりたい気持ちは強いですが、それは自分のためじゃなくて、この町で生きているだれかのためになにができるのかという「手段」としてです。今の仕事も課題との戦いで、決して簡単な仕事ではありませんが、診断士になったらさまざまな課題と向き合わなければなりません。
    それでも、あきらめることなく、診断士になるまで、そしてなってからも勉強して、考えて、工夫して、未来を変えたいです。企業だけじゃなく、NGOやチャリティー活動のコンサルティングも、いつかしてみたいです。「誰に対しても、どんな立場でも的確な言葉を発することができる、そんなことを目指したいと考えています。」というなごさんの言葉から、大きな気づきを得ることができました。ありがとうございます。

  3. なご より:

    すくすく様
    コメントありがとうございます。
    私は今後の人生の歩みに際し、本質的には診断士に合格してるか否かは関係ないと思っています。目の前にいる経営者や仕事仲間、また仕事を通じて関係する人たちなど、誰に対しても、どんな立場でも的確な言葉を発することができる、そんなことを目指したいと考えています。そしてこのサイトを見ている多くの方々は、なんとなくでもそれに共感してくれる方がおおいのでは、と。
    そのため診断士になっても学びを止めてはいけませんし、診断士でないからといって自らを卑下することも必要無い。ただ自分と関わる人に対し、全力をもって支援する、たぶん診断士を目指す人って、はたから見たら「なんで他人のためにそんなに全力になれるの?」と思われる事に対し、至福の喜びを見出している人が多いのかもしれません。
    そんな皆さんの一助となるよう、少しでも気づきを提案できたらと思ってます。
    だからこそすくすくさんのコメント、嬉しかったです。これからもコメントお待ちしていますね。

  4. すくすく より:

    ようやく岩崎先生の「引き算する勇気」を読んだすくすくです。今日も雨の地方の町で、中小企業の経営者の方と仕事をしてきました。家族や従業員、お客様とまちを、現場目線でながめる経営者の方に会うことで、自分がひとのためになにができるのかを意識させられます。なごさんの今回の記事、地に足をつけて考えることの大切さを改めて思い起こしました。ありがとうございます。

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