【事例Ⅲ】過去問から学ぶ
みなさん、こんにちは!うちあーのです。
今回は「過去問から学ぶシリーズ」第3弾です。
第1弾で書いていますが、本シリーズの目的は事例Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの特徴や着眼点を掴むこと。なので事例Ⅳの過去問分析はなく今回の事例Ⅲが最終回となります。
3回の記事を通して、それぞれの違いを理解しながら、本試験までにどのような準備を行い、また本試験でどのような対応をすればよいか、そのヒントとなればと思います。
では、早速事例Ⅲに迫ってみましょう!
◆設問文の特徴◆
1.設問数と配点
これまで見てきた事例Ⅰが20点x5設問「均等型」、事例Ⅱが「ばらつき型」とすると、事例Ⅲは年によりどちらも見受けられます。
H23、H22、H19と近年は均等型が主流ですが、H21、H20はばらつき型でした。今年どちらになるかは分かりませんが、いずれにせよ配点に配慮したタイムマネジメントが肝要になります。
2.字数制限
事例Ⅰは100~150字の論述中心、事例Ⅱは15~200字、更には字数制限なしの何でもアリでした。
この点では事例Ⅲは事例Ⅱと同じ傾向です。全てではありませんが、C社の強み・弱み・特徴みたいなものが少数字数制限で複数問われ、課題や対応策などを多数字数制限で論述するケースが多いようです。
字数制限と配点との関連において、H21第1問で120字10点の出題があった一方、H22第3問では40字20点(20字10点)の出題があり、設問間でばらつきが大きい傾向があるので事例Ⅲでは字数制限に応じたタイムマネジメントにも注意する必要があります。
3.時系列
事例Ⅲでは、第1問で「現状」、つまり現時点での強み・弱み・特徴・経営資源や安定業績の理由などを問い、第2問以降は「未来」、つまり現在起こっている問題点・課題を解決するための対応策・助言を問うのが一つのパターンとなっています。
これまで事例Ⅰ・Ⅱと見てきていずれも「過去若しくは現在」から「未来」の順で問われる流れは共通していますね。
とすると考え方も同じで、前半は抜き出しで対応できる問題 = 低難易度の問題が多い、つまりみんな獲りやすいところなのでしっかりと獲る必要あり、ということになります。
更に事例Ⅲで特徴的なのは、現在の強み・特徴・経営資源を課題解決に活用するストーリーが典型的です。その意味では、第1問は解きっぱなしではなく「第2問以降に連動するかも」と想定するとよいでしょう。
そう考えると第1問は配点以上のウエイトを占めるという考え方もできますね。だからと言って慎重になり過ぎる必要はありません。
例えばH22第1問。「強みと弱みを2つずつ述べよ」ですが、強みは多くの候補から絞り込まなければならないし、弱みはそれらしきものはあるけど「これだ!」とはっきり判断できるものが少ない。
このような場合、限られた時間の中では強みの選択に注力して優先順位の高いものから入れ、弱みはどちらか一つ獲れれば御の字、という対応で十分です。現実的に当時の本試験で弱みについてはかなり解答はバラバラ、つまり勝負どころではなかったようです。
4.問題要求
上記の通り、第1問は「現状」を問いますが、第2問以降について事例Ⅲでは大きく分けて「現場系」の問題と「戦略系」の問題に分かれます。
現場系の場合、生産や営業の現場で何らかの問題が発生している、という設定で、それを解決若しくは回避するにはどうしたらよいか、といった問題要求が典型的です。
当然、まず今起きている問題について与件文で探しに行くスイッチを入れますよね。
戦略系の場合、グローバル化への対応や技術継承、設備投資判断など経営上の何らかの課題があり、それらに対する具体的施策は何か、といった問題要求になります。
この場合は設問文にかなり具体的なキーワードがあるので、そこからリンクで対応付けしていくプロセスが有効でしょう。
そしてここが味噌。戦略系問題の課題解決は自社の強みや経営資源をぶつけるのがセオリー。よって第1問でそれらを問われているのであれば素直に使う。逆に課題解決に充てる強みや経営資源が第1問の解答と違う場合、第1問の解答を疑ってみるという視点も必要。
最後に情報系の問題はH23では出題されませんでした。(事例Ⅱにそれらしき問題が出たけど)
H22以前は続けて出ていたので、きちんと対応できるようにしておいた方がよいと思います。
◆与件文の特徴◆
1.ボリューム
H23は64行(2ページ半弱)と標準的な長さ。ただ形式的にはこれまであった小見出し付きのブロックがなくなったという変化がありました。
「小見出しチェック」などをプロセスに組み込んでいた受験生にとっては相当面食らったでしょうし、気にしてなかった受験生にとっては「そういえばなかったね」って終わってから気付く。そんな出来事でした。
ここから学ぶことは「未来永劫変わらないものはない」。かと言って、いきなり700字一本、配点100点の論述問題なんて極端な変化もないでしょうけど。
どんな変化であればあり得るのか?
その際にどう対応するのか?
例えば250字問題だったらあるかも?与件文が3ページ20段落くらいあったらどうする?事例Ⅲで知財絡みの出題がされたら?計算問題が出ることはないのか?
そんなことを日頃から考える癖をつけると、本番ですごい変化球が来た時でも「ふーん、そうきたのね」と流せる図太さが身に付きますよ。きっと。
2.ストーリー展開
H22以前の小見出しを纏めてみると以下の通り。
H22 【C社の概要】→【取引先からの協力要請による事業計画】
H21 【C社の概要】→【新製品開発と製品アイテム】→【生産の状況】
H20 【C社の概要】→【取引先からの大型金型の生産要請】→【短納期化と社内体制の整備】
H19 【C社の概要】→【受注から生産までの現状と課題】→【新規事業について】
H18 【概要】→【めっき加工と塗装加工の特徴と課題】→【受注から納品までの流れ】
概要については、業種、規模、業績、変遷、製造品、部門構成などが書かれています。
日本の製造業がどこも受注減で苦しんでいる状況から、事例Ⅲに出てくる企業も概ね、
・以前は業績好調だったのが受注減で昨今苦しんでいる
・ムリ、ムラ、ムダなど何らかの問題を抱えている
・下請けで特定の取引先に依存していることも多い
・新たな製品、新たな市場が登場している
そこでまたまた中小企業診断士のあなたが救世主のように現れ、一つ一つ問題を片づけていく!
といった展開が主流です。
3.文章の構成
部門構成や工程などが文字でズラズラと出てきます。OEMと自社ブランド比率、売上の客先別比率、生産ロットなど具体的な数字も多く出てきます。
その際には簡単で構わないので図式化しておくと分析が捗ります。図を書くのと書かないのとではスピードも正確性も全く異なるので必ず書くようにしてください。
◆「出題の趣旨」から垣間見えること◆
出題委員が問いたい能力をH18~H23で纏めると以下の通り。
「分析能力」が1番多いというのは、事例Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ共通でした。2番目は事例Ⅰ・Ⅱが共に「助言能力」であったのに対して事例Ⅲでは「問題解決能力」となっています。
逆に事例Ⅲで「助言能力」との記述が「出題の趣旨」には出てきません。ただ設問文を見ていくと「アドバイス」を求める問題も多々あるので、「助言能力」と「問題解決能力」の違いを突き詰める必要性はあまりないような気がします。
「設問に従って与件文の内容を分析し、そこにある問題を解決し助言する能力が問われる。」ある意味非常にシンプルでごくごく当たり前のことが問われていると考えればよいでしょう。
◆おまけ(語呂合わせ)◆
今回は情報系問題に関する語呂合わせを一つ。これはうちあーのオリジナルではなく既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、とても使い勝手が良いのでご紹介します。
事例Ⅲで情報(データ)のやり取りに何らかの問題が生じている場合、それを解決する具体策のキーワードが「DRINK」です。
D = データベースの活用 R = リアルタイム I = 一元管理 N = ネットワーク K = 共有化 |
H23では使いませんでしたが、情報系問題はいつ復活してもおかしくないのでよろしければファイナルペーパーの隅っこにでもこっそり載せてください。
◆まとめ◆
事例Ⅲは生産管理の事例であり、苦手意識を持つ受験生も結構いますが、その必要は全くありません。
なぜなら経営者が我々診断士に求めているのは、経営のプロとしての視点からマネジメント上・オペレーション上の問題(課題)解決能力であり、特定業界のスペシャリストとしての知識やノウハウではないからです。
診断士試験においても同様で、解答の根拠は与件文と一次試験の基本的な知識になります。事例Ⅲは、Ⅰ・Ⅱと比べても比較的定型的とも言え、コツを掴むと点数がググッと伸びて安定しやすい事例です。
4つの事例のうちの1つが苦手か得意か。これは非常に大きな違いですよね。みなさんも事例Ⅲの特徴をいち早く習得し、パターンをストックすることで、安定的にA判定が獲れるようにしちゃいましょう!
気がつけば事例Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、すべてA判定!本番での理想の状態はこれです。ここまで来ればほぼ「合格」は手中にしたも同然。事例Ⅳは経営分析だけがっちりやれば栄冠はあなたのものです。
3回にわたる過去問分析シリーズは今回で完結となります。長々と書きましたが要は各事例ごとの特徴を理解し、それに応じた対応ができれば事例Ⅳに依存しない受かり方が出来るようになるということ。
本番までやるべきことはたくさんありますが、そのための準備時間は十分あります。
焦らず、少しずつ合格への階段を踏み上がってください!
Ciao!
By うちあーの