【ゆるわだ】とある診断士の企業紹介~west coast brewing編~

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こんにちは、しんです。
2次試験を受けた方は再現答案の作成や各機関への提出が終わり、一区切りつく頃合いでしょうか。
急に時間ができて焦りを感じるかもしれませんが、合格したら実務補習を受けたり、やりたいことを詰め込んだりして忙しくなると思いますので、今の時期はのんびりすることもお勧めです。

お知らせ

事例Ⅴ、事例Ⅵに参加いただいたみなさん、ありがとうございました!
オンラインの事例Ⅴもとても盛り上がり、私は参加していないですが、大阪で開催された事例Ⅵも2次会まで話題が尽きなかったようです。
そして明後日の11/16(土)に、おそらく?2024年最後のイベントとして、事例Ⅶ(お疲れ様会@東京)を開催予定です。
※申し込みは締め切りとさせていただきました。
参加されるみなさんとお話できるのを楽しみにしています!

本日の要約

本日の要約

  • 概要:中小企業診断士試験を受験された方を主なターゲットに、学べる息抜きとしてローカル企業を紹介します。
  • お伝えしたいこと:クラフトビールは中小企業にマッチした商品です。
  • キーワード:多品種少ロット、リードタイム、地域活性、モラール、権限委譲、4P、カニバリズム、等

上記の内容で気になる部分やフレーズがありましたら、引き続き本編もご覧ください!

はじめに

前回、第一弾として静岡ローカル飲食店の中でトップクラスの知名度を誇る炭焼きレストランさわやか」を運営するさわやか株式会社について紹介しました。
今回は、知名度こそさわやかに劣ると思うものの、より尖った(ユニークな)会社である、west coast brewingを紹介します。お好きな方は、「brewing」という単語で分かったかもしれませんが、近年流行しているクラフトビール醸造・販売会社(以降「ブルワリー」と書きます。)です。

写真のような濁りのある苦味や甘みが強い種類のビールが主力商品です。
(公式HPビール紹介より引用)

クラフトビールは①多品種少ロットが強みとなる②小規模で事業を開始でき製造リードタイムも短く(2~8週間程度)資金面の負担が少ない③地域の特性を活かしやすい、といった特徴があり中小企業に合った商品だと思います。
(その分、参入障壁が低いとも言えそうですが…。)
静岡県においても、水に恵まれており以前から酒蔵は多かったのですが、最近次々とブルワリーが設立されています。

呼んだ?

酒蔵(さけぞう)
酒蔵(さけぞう)

そんなブルワリーの中でも、一際尖っていて、さけ一蔵も喜ぶようなユニークな事業を行っているのが、west coast brewingです。そんなユニークな事業も本編で紹介しますので、ビールが苦手という方も読んでもらえればと思います。

前回と同じ内容となりますが、本編に入る前に前置きを。

前置き

・紹介する企業は、私が食べた/体験したことがある製品/サービスの製造/提供元

・内容は、紹介先企業HPから得られる情報と自身の体験から

・財務は、非公開なため割愛

企業概要

west coast brewingは、シアトル出身のデレック氏が率いるブルワリーです。後ほど改めて触れますが、現在までに静岡県外に複数のビアバーをオープンしたり、醸造所にホテルを構える等、多角的な事業を行っています。
売上や資本金、従業員数などの企業情報については、残念ながら公式HPには見当たりませんでした。

看板商品は言うまでもなくビールで、IPA(India Pale Ale)を中心としたラインナップです。
(IPAとはなんぞや?と思った方もいるかもしれませんが、ここらへんを書き始めると長くなるので割愛させてください・・・。)
ビール醸造を始めたのは2019年と歴史は浅いですが、様々な工夫により日本全国に熱狂的なファンがいる?ようです。

そんなwest coast brewingがどのような成長戦略をとってきたかを次のパートで解説します。

成長戦略

west coast brewingの歴史は、設立者であるデレック氏の経歴に深いつながりがあります。そのため、まずは要点のみに絞って、その経歴を紹介します。

どんな方か気になりましたら、こちらに写真が掲載されています。

日本に興味があり、静岡県に本社を構える企業のシアトル支社に就職した後に来日

STEP
1

2003年より静岡県の設計事務所で働く

STEP
2

2013年に設計事務所を設立する

2016年より稼働している静岡のウィスキー蒸留所の設計を担当し、酒造プロセスのノウハウを蓄積

STEP
3

2017年にビアバー「12-twelve」を静岡市にオープン

日本でビール醸造を開始する前に、まずはアメリカのクラフトビールを輸入・提供し、テストマーケティングを実施
(店舗はもちろんデレック氏が設計)
また、2018年にオープンした温泉の設計を担当

STEP
4

2019年にデレック氏自身が設計した温泉内にて、満を持してクラフトビール醸造所「West Coast Brewing」を創業

STEP
5

こうしてまとめてみて、改めて経営者としての運を引き寄せる力や緻密な戦略を実感しました。建築士のスキルや経験を活かし、綿密なマーケティングを経て、創業に至っています。

創業後は、個性豊かなビールにより着実にファンを獲得し規模を拡大してきました。現在までにビール醸造所も拡大移転し、醸造所の隣にはホテルを構えています。
(ホテルの開業は2022年とコロナ真っ只中であり、事業再構築の一貫な気もしますね。)

また、飲食店事業においては、静岡県内のみならず、大阪に2店舗、沖縄に1店舗ビアバーを展開しています。
加えて、東京に期間限定でPOPUPストアを出店していたりと、もちろん内側では多くの苦労があったと思うのですが、外側から見るとイケイケ感満載です。

そんなWest Coast Brewingがどのような戦略で成長してきたかを、人事マーケティング運営の面で分析してみます。
(といいつつ、人事、運営はあまり情報がなく、マーケティングが大部分となること、ご容赦ください。)

人事

まずは人事についてです。

west coast brewingの直営店を訪れてみて、強く感じるのは、スタッフさんが自社製品(クラフトビール)の知識豊富でモラールがものすごく高いことです。
店内飲食の他に缶の販売も行っており、たまに買いに行くのですが、とにかく種類が多く、冷蔵庫の前でよく悩みます。そうしていると、スタッフさんが近づいてきてアドバイスしてくれるのですが、どのスタッフさんも知識豊富でぼんやりとした質問をしてもちゃんと答えてくれます。
店内利用は、属性盛りすぎな14代目のあるお方と晩酌した1回のみですが、店内のスタッフさんを見てみると楽しそうに働かれたいたのが印象に残っています。
(なんなら、他のお客さんと一緒に飲んでるスタッフさんもいた気もします。信頼関係を構築しているからこそできる振る舞いですね。)

その秘訣として、ここからは推測となりますが、多品種少量生産を活かして、製品のレシピ決めを多くのスタッフに任せている(権限委譲している)ことが大きな要因ではないかと思います。
加えて、その製品がリリースされた後に、直営店やSNS、イベント等で実際に飲んだ顧客からの感想を聞くことで、よりモチベーションが高まり、スキルアップにも繋がるという好循環を生み出している・・・かもしれません。

マーケティング

続いて、マーケティングについてです。
4Pのフレームワークを用いて、まとめてみます。

Product

west coast brewingの一番の特徴はproductだと考えます。
醸造所の地下から汲み上げる井戸水を始め、原材料に徹底的にこだわっています。そして、そんなこだわりのビールを、驚くことに毎週2~4種類リリースしています。製造リードタイムが短いビールの特性を生かした戦略ですね。

大手ビールメーカーは、製造ロット数の関係や、承認プロセスが長く複雑で真似できないように思います。大手が毎週同カテゴリーの新製品を出したら、販売店舗の棚の確保などなどとんでもないことになる上に、カニバリズムを起こしそうですし…。

一方で、クラフトビールの場合は、同じ看板商品を長期間販売するブルワリーもありますが、west coast brewingは基本売り切りで同じ製品には2度と出会えません。
そのスタイルが一期一会感を出して毎回買いたくなる、加えて毎週新製品が出るので飲み飽きない、といった心理を顧客に与えてLTV(顧客生涯価値)を向上させているように感じます。
(実際、一人ではほとんど飲まないですが、たまに販売店の棚を覗いてみると、毎回中身が入れ替わっていてついつられそうになります。)

製品ラインナップは冒頭でも触れたIPAがメインではありますが、個人的には甘め濃い目なインペリアルスタウトという種類のビールも好きです。
冷蔵庫で出番を待っている以下写真のビールはアルコール度数が14%、賞味期限が5年とビールらしからぬスペックですが、原材料にバナナ🍌やココナッツ🥥を使っていることも特徴です。

ゲン担ぎといえばバナナ🍌🍌🍌

バナナといえばおーちゃん
バナナといえばおーちゃん
出番を待っているインペリアルスタウト

また、中小企業といえばのコラボに積極的で、地元産原材料や、地元の有名店、地元蒸留所、スポーツチーム、地元出身のミュージシャン等、様々なコラボ商品をリリースしています。一番印象的なのは、(自身あまり知らないものの)電気グルーヴとのコラボで、ビールそのものや関連商品として販売されたグラス等があっという間に完売していました。

加えて、冒頭でちらっと触れたホテル業がとてもユニークです。部屋に、タップというビールが出る蛇口が備え付けられており、宿泊者は飲み放題です。
※厳密には宿泊者数1人~4名の部屋でそれぞれ10ℓまでのようです。一蔵の場合は飲み放題とは言えないかもしれません…。

部屋に設置されているタップ(ホテル公式HPより引用)

醸造所に併設しているからこそできる、他に聞いたことがないサービスなこともあり人気があるようで、予約は数か月先まで埋まっています。
ちなみに、部屋には浴槽がなく、隣接するデレック氏が手掛けた温泉のチケットを配布する形を取っています。

一見するとイケイケ感満載な雰囲気の会社ですが、ビールそのものの様々なコラボや、隣接する温泉や他店舗に誘導する仕掛けがあるホテル等、根底に地域活性への強い想いを感じるため、個人的に好きなブルワリーです。

Price

west coast brewingのビールは、全般的に高単価です。
原材料にこだわっているのはもちろんですが、特徴的な理由として、BtoCの流通・販売を原則500ml缶で行っているためです。これには、後ほど触れるpromotionの理由が大きいようなのですが、結果として量が多い=高く売れることに繋がっています。

大企業の場合は話が変わりそうですが、少~中規模のブルワリーであれば、350mlよりも500mlの方が、缶や流通の費用を抑えることができるのではないかと思います。

結果として、物価高の影響もあるかとは思いますが、最近は安い製品でも1000円台前半、インペリアルスタウト等の一部のラインナップは1缶で2000円を超える驚きの価格です。ファンを獲得しており、もちろん材料にもこだわっているからこそのプライシングだと思います。

Place

流通は、直営店や酒販売店、オンライン通販等の様々な手段で行っています。地元スポーツチームとのコラボ商品については県内のコンビニでも販売しているようで、かなり手広い印象です。

Promotion

最後のpromotionについては、私自身がポイントと感じる3つの要素に触れます。

1つ目の要素は、缶のサイズです。
priceの部分でも触れましたが、west coast brewingの製品は一部の限定製品を除いて、すべて500ml缶です。これは、店舗陳列時に他のビールと差別化して目立たせる目的があるようで、自身で見ても確かに目立っています。

2つ目の要素は、缶のイラストです。
創業当初から、以下の画像のようなホップを擬人化したキャラクターを缶のラベルとしています。

公式HPビール紹介より引用

毎週発売される新作毎に異なるイラストを眺めているうちに、独特な世界観につい引き込まれます。1つ目の特徴で触れた500ml缶という特徴とあわせて、店舗に陳列されているとものすごく目立つので、もしかするとビールがお好きな方はどこかで見たことがあるかもしれません。
これは推測ですが、500ml缶だからこそイラストを印刷するスペースがあるようにも感じます。2つの特徴が折り重なりシナジーを発揮したことにより、他のブルワリーとの差別化に成功していると言えそうです。

3つ目の要素は、こちらも中小企業といえばのSNSによる情報発信です。
west coast brewingは、instagramを中心に頻繁に情報を発信しています。毎週リリースしている新作を紹介しているので必然的に頻繫になる上に、イベントや新規出店に関する情報も発信しており、見ていて飽きないです。下戸な上に一人で突撃する度胸がなく行ったことはないですが、毎年開催しているイベントの楽しそうな風景を見ると、つい行ってみたい気持ちになります。

運営

最後に、運営面について触れます。

ビールは発酵タンクで作られるのですが、そのタンクを12基備えているとのことです。

発酵タンク(公式HPブルワリー紹介より引用)

ところで、ギラギラしたステンレスの設備ってなんだかワクワクしませんか?
ステンレスはその名(stainless)の通り、錆びづらく、飲食物の製造設備には必須なんですが、もう少し続けてもいいでしょうか・・・

だが断る

バァ~ン
バァ~ン

製造設備を見てついテンションが上がりましたが、最近切れ味マシマシなばんからNGが出たので話を戻します。。

タンクは小さいもので数百リットル、大きいもので数万リットルと幅があり、残念ながらブルワリー見学はしたことがないため、どのくらいのサイズかは分かりません。毎週2~4種類リリースしていることから、リードタイムを加味すると、およそ1種類1タンクである可能性が高いと思います。
市場規模等からタンクの大きさをフェルミ推定で出してみるのも楽しそうですが、脱線するとまた窘められそうなので割愛します。

終わりに

今回はクラフトビール好き以外ほとんど聞いたことがないだろうローカル企業を紹介してみました。
2次試験の事例企業とするには尖りすぎかもしれませんが、地域活性化に向けた取り組みは通じるところがあるように感じます。

明日は、サトシといえばのあの乗り物を活用した勉強方法を紹介してくれるようです。

アプト式を採用している鉄道は?

大井川鉄道!!!

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【ゆるわだ】とある診断士の企業紹介~west coast brewing編~”へ4件のコメント

  1. あーさー より:

    こんにちは!
    クラフトビール好きで、WCBファンではないですが個人的に気になって、先日静岡ひとり旅のときに12-twelveいきました(乗り鉄なので名古屋から東海道線3時間の旅も満喫笑)。
    おっしゃるとおり、店員さんの知識が豊富で常連さん多く、信頼関係構築されているのを感じました。
    私が入店したとき席がなく、常連さんがどうぞってカウンターの席を空けてくれました。
    その方は私の横で立って飲んでました笑
    しんさんの考察を読んでなるほどな~と納得しました。
    この先も注目してみます。
    ありがとうございました!

    1. しん より:

      あーさーさん、こんにちは!
      決して中の人ではないですが、遠方からtwelveまで足を運んでいただいてありがとうございます!
      気さくな常連さんがいらっしゃり着席できたようでよかったです笑
      名古屋近辺もブルワリー多いですよね!
      Y.MARKET BREWINGさんやTotopia Breweryさんのクラフトビールを飲んでことがあります。
      west coast brewingは今後も事業を拡大していくと思いますので、ぜひ注目ください!

  2. にっく より:

    こんばんは!
    にっくです。
    ワクワクする企業のお話、ありがとうございました!
    僕もあまり飲まないのですが、ファンになってしまいそうです!
    モラール=貢献意欲の向上、大事ですよね!
    ありがとうございました!
    にっく

    1. しん より:

      にっくさん、こんにちは。
      飲まない方にとっては、謎の用語満載な記事だったかと思いますが、ご覧いただいてありがとうございます!
      社員の貢献意欲の向上は企業にとって重要な課題だと、診断士としても一社員としても感じています。

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