【渾身】令和2年著作権法改正~その2~

どうも、TAKUROです!
今日は、お待ちかね(?)の著作権法改正第2弾です!


東京都内は、2年連続で緊急事態宣言下のGWとなりました。
昨年は、ホームセンターで苗を色々買ってきて、土いじりをすることで、ステイホームを乗り切りました。
(ホームセンター行ってるじゃねぇか、というツッコミが聞こえてきそうです。)
昨年はトマトを植えて息子のトマト嫌いを解消したので、今年はピーマンを植えようと画策中です!
(今年は既に苗を仕入れてあります!)

緊急事態宣言下か否かにかかわらず、外出が憚られる状況ですが、まとまった時間が確保しやすい状況であることは間違いありません!私は、GWで、子供と遊んだり、妻の誕生日に外出できない埋め合わせをすることはもちろんとして、せっかくなので、診断士活動の準備や日頃検討したかったのにできていない、労働分野や著作権法分野の文献を読み込んだりしようと思います。

GWがあれば、苦手科目の克服にも充てられます!
苦手の克服には、その科目に触れる機会を増やすことが一番有効です!
(そういえば、息子もトマトの水やり・収穫をしてトマトが食べられるようになりました!)
外出しづらいこの状況をうまく生かして皆さんの勉強がはかどるといいな、と思います!


さて、今回は、令和2年著作権法改正のうち、
・ダウンロード違法化の範囲拡大
・ライセンス当然対抗
・写り込みの例外の範囲拡大

を扱います。
(後付けで渾身にした、第1弾リーチサイト対策はこちら→【渾身】令和2年著作権法改正~その1~

ダウンロード違法化の範囲拡大


もともとは、平成21年改正で、録音・録画の違法コンテンツのダウンロードが違法になりましたが、今回の改正は、違法となる範囲を広げるものです。(立法趣旨は前回記事(漫画村の例)を確認して下さい。)

変更の概要は以下のとおりです。録音・録画の場合のスイッチ(=条件)は従前と変わらないのですが、録音・録画以外の侵害コンテンツの場合、ダウンロードが違法になるのためのスイッチ(=条件)が、録音・録画と比較して増えています。
(スイッチ(=条件)が増えると、ライト(=効果発生)へのハードルが高くなります。)

録音・録画と共通するスイッチ

① 著作権を侵害するネット上の配信(法令上は、自動公衆送信といいます。)

② 侵害コンテンツであると知ってダウンロードしたこと

②については、侵害コンテンツと一見して分からない場合もあり、その場合も違法としてはかわいそう、という前回の議論を思い出していただければよいと思います。

立法趣旨の確認


まず、立法趣旨から、拡大された対象行為を確認します。前回の記事で書いた立法趣旨を踏まえれば明らかですね。漫画村などでの静止画による著作権侵害に対応するため、対象コンテンツを「録音・録画のみ」から制限なしに改正しました。

その上で、録音・録画以外の侵害コンテンツをダウンロードしたことが違法になるために、追加されたスイッチ(=条件)は、以下のとおりです。

二次的著作物の除外

対象コンテンツが二次的著作物(翻訳を除く)である場合には、ダウンロード違法化の対象となりません。
前回解説したとおり、私がドラゴンボールのパロディ漫画をネットにアップしていて、これをダウンロードしたとしても、ドラゴンボールそのものをタダ読みしたことにはならないからですね。

軽微な複製の除外

1コマ~数コマの軽微な複製の場合には、著作権者の利益に大きな影響を及ぼさないと考えられたので、ダウンロード違法化の対象から除外されています。

著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合の除外

他のスイッチ(=条件)を全て満たしたとしても、上記の事情がある場合には、ダウンロードも違法にはなりません。



※この点以外に、刑事罰を科すためには、
・海賊版の元となったコンテンツが有償著作物(タダじゃない)であること

・ダウンロード行為の継続反復性が認められること


が条件になっているのですが、簡単な指摘に止めさせていただきます。

ライセンス当然対抗



「対抗できる」というのは法律用語で、平たく言うと、他の人に自分の権利を主張できる、ということをいいます。本改正は、以下の図の場合に生じる問題を解決するためのものです。


先日masumiが作ってくれた似顔絵とその著作権の話を使うと分かりやすいので、ここは、masumiとMa.satoの道場12代目アルファベットクラブに登場してもらって説明したいと思います。

ライセンス当然対抗の立法趣旨

masumiが描いてくれた各自の似顔絵は、masumiの著作物です。masumiは、この著作物について「各自が自由に使っていいよ」と言ってくれています。私の似顔絵の著作権の利用を許諾してくれているわけです(①ライセンス契約)。

masumiからライセンスを得た私は、似顔絵を事務所の名刺やHPに入れたり、一発合格道場TAKURO饅頭や行列のできるTAKURO相談所のイメージキャラクターとして事業展開しています。(あくまで事例上の設定です)

この時に、masumiが私の似顔絵の著作権をMa.satoに譲渡しました(②著作権譲渡契約
(Ma.satoは道場フルメンバーでのコンテンツ事業を展開しようとしていたのでしょう笑)
この場合、私は、M.satoに対して、ライセンス契約に基づく利用権を主張できるのでしょうか?


本改正前は、別途Ma.satoと契約を締結しない限り、私は、似顔絵の利用権を主張することができませんでした。

しかし、ライセンス契約に基づく権利を著作権の譲受人(=Ma.sato)に主張できないのであれば、私は、饅頭やイメージキャラクターに投資した費用が全て無駄になる可能性があり、怖くてライセンス契約に基づくビジネスを展開できません

これでは、ライセンス契約に基づく著作物の利用促進の妨げになるということで、図のような場合でも「当然に」権利を主張できる(=対抗できる)としたのが本改正です。

立法趣旨で書いたとおり、利用権を「当然に」対抗できるので、特にスイッチ(=条件)の検討はいりません。

写り込みの例外の対象範囲拡大



写真を撮る場合などに、本来撮影の対象にしようとした物以外の著作物が付随して写り込んでしまった場合、例えばその写真を現像することは、形式的には複製権の侵害に当たりますが、このような場合には、一定の条件を満たしていれば著作権侵害になりません。以下、写り込みの例外といいます。

本改正により、写り込みの例外が認められる範囲が広がりました。主な変更点は以下の表にまとめたとおりです。

細かいところまでは出題されないと思うので、写真撮影、録音・録画以外の方法も写り込みの例外の対象になった、と覚えておけば十分ではないかと思います(黄色の部分)。

※1この場合に従前の写り込みの例外を適用できないとするもの 中山信弘「著作権法〔第2版〕」有斐閣307頁

※2写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書7頁

終わりに

前回から2回に分けてお伝えしてきた、令和2年著作権法改正は、以上です。

この他にも、アクセスコントロールに関する改正や著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化といった改正もあるのですが、以上に解説した部分と比較して、出題可能性が低いのではないかと思います。

急速なデジタル化とこれに伴い、誰でも容易に情報を発信できるようになったことで、著作権法を取り巻く環境は大きく変化しています。
この状況を、著作権法の大家である中山信弘東京大学名誉教授は、「著作権法の憂鬱」と表現しています。


うっかり現住建造物放火をしてしまう人はいないと思いますが、うっかり著作権法違反は、誰でもやってしまう可能性があります。
これも「著作権法の憂鬱」の一つではないかと勝手に思っています。
今の内から勉強して、少しずつでも著作権法の憂鬱を解消しておきたいですね!

明日は、こんちゃんが競争戦略について投稿の予定です!

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【渾身】令和2年著作権法改正~その2~”へ2件のコメント

  1. ロム より:

    著作権法改正についての記事、ありがとうございます。
    読めば読むほど、そして深く理解しようとすればするほど、多くの時間を必要としそうになるので、今回記事になっている点をさらっと理解するだけに留めようと思います。

    ダウンロード違法化については、成立当初はクリエイターの方々の中でも多くの批判があったと記憶しておりますが、法律が(私の知っている範囲では)大きな問題もなく施行されているようで良かったです。

    しかし、弁護士さんはこういった法律を念頭に入れながらお仕事されているんだなぁと思うと、本当にすごいなと心から思います。
    色んな条件があって、私には到底無理だ……w

    話は変わりますが、毎日にほんブログ村のランキングに反映されるクリックぽちぽちしてますが、ランキングが2位に浮上してますね!
    このまま目指せ1位!

    1. TAKURO より:

      ロムさん

      ありがとうございます!コメントいただけて嬉しいです!
      仰るとおり、さらっとでよいと思います!突っ込んだところが出たらみんなできないD・E問題になると思いますし。

      ダウンロード違法化については、ネットを利用する方が委縮しないように、スイッチ(=条件)を調整したのかもしれませんね!

      最近は、法律が幅広い上に複雑なので、弁護士業界も専門分化が進んでいます。
      なので、私も専門外の法律については、本当にフワッとしか理解できておらず、その都度調べながら対応しています。
      診断士として働く際も、自分の専門を掘り下げつつ、周りはフワッと、というふうになるかもしれないなぁ、と思っています。

      ブログ村ランキングの件も、ロムさんはじめ読者の皆さまのご支援のおかげです!
      ありがとうございます!
      今後とも、よろしくお願いいたします。

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