『町工場の娘』と診断士試験 〜その1〜
一発道場の読者の皆さま、こんにちは。TOMです。
関東近郊でもすっかりコートが欲しくなる寒さとなっていますが、皆さま、体調管理は大丈夫でしょうか?2次筆記試験から一ヶ月が経ち、今年度受験者の方は多少リラックスされたと思いますが、筆記試験の合格発表が来週金曜日(12月8日)が近づいてきた為、再び緊張感が高まってきているかもしれませんね。おそらく試験後、様々な情報が飛び交ったと思いますが、「まな板の鯉」ですので、合格発表までは試験のことは忘れて、試験以外のことに時間を使ってください。
さて、私は一向に変化のない出張生活ですが、試験合格後は出張先への移動時間を読書に充てています。前回も一冊紹介しましたが、今回は事例問題を思い出すような一冊をご紹介します。一次試験学習中の方も勉強に疲れたら手に取ってみてください。(診断士の勉強をしている方ならスッと入ってくることばかりなので、簡単に読めると思います。)
以下の一冊です。
3章で構成されており、各章を纏めると凡そ以下の内容が紹介されています。時代はリーマンショックが起きた2008年を挟んだ2004年から2013年ごろです。
- 1章 社長就任の経緯
- 2章 会社を守り、発展させるため取り組んだ社内改革
- 3章 社長の仕事への考え方
1章では実家が町工場ではあったものの、主婦として生活していた著者がなぜ「社長」に就任することになったのかが紹介されています。主な内容は社長就任の経緯ですが、その経緯に絡めて、会社の創業経緯、創業者である父とその娘である著者の関係が語られます。二次筆記試験の事例で言えば冒頭の数段落に当たる箇所です。(ちなみに私はこの章を読んだ際、不覚にも涙が出そうになりました。)
2章では著者が社長に就任して取り組んだ社内改革の悪戦苦闘の様子が語られます。この著作のメインの章です。診断士受験生的にも「なるほど」と理論と実践が結びつくシーンも数多く紹介されます。例えば以下のような著者の取り組みです。
- 5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底
社長は特に整理(必要なものと不必要なものを区別し、不必要なものを捨てること)・整頓(必要なものをすぐ利用できるように決められた場所に準備すること)を重視します。それまで社長への取り組みに意欲がなかった従業員も作業効率が改善した職場を見ることで前向きになったようです。
- QCサークルの導入
社長は職場の人材育成・職場活性化を図るため、QCサークル活動を導入します。この活動により、積極的に社員(特に若手の)が提案できる(社長からするとコミュニケーションの場が得られる)ようになり、提案が会社に採用されることによって社員のモチベーションが向上し、同時に提案により会社自体も改善されるという好循環が生まれました。
- 経営方針の策定
2代目として事業を承継した著者が社員とのベクトルを合わせるため、経営方針の策定を行います。事業を承継した著者にとっては会社を牽引するため、従業員にとっては、創業者の娘とはいえ、突如社長に就任した人が何を考えているのかを理解するために必要な手続きだったのだと思います。著者は自社の経営データ(40年!)を調べ上げ、SWOT分析を行い、この企業の強みを「技術力」としますが、この強みを維持するための方針として「多能工集団」というキーワードを用います。この「多能工」、中小製造業では重要なキーワードだと思います。職場に多能工が増えた場合、「多工程持ち作業」が可能になるので、以下のようなメリットが得られます。
- 工程間負荷のバランスがとれるので仕掛品を減少できる。また、リードタイムも短縮できる。
- 品種や生産量の変動に対応できるので、柔軟な生産体制が敷ける。
また、この章の冒頭では「事業承継」時のキビシイやりとりが紹介されています。このやり取りを一つのきっかけとして社長は社内改革に取り組み、結果的には成功を納めますが、一方で「幹部従業員や取引先(取引銀行)からの理解」が得られない中での事業承継の厳しさが垣間見えます。
まだまだ、診断士的には見逃せない取り組み事例がありますが、字数も増えてきましたので、3章と併せ、次回紹介します。
ちなみに、この一冊に出会ったきっかけは4月に参加した研究会で名刺交換させて頂いた先輩診断士の方のFACEBOOK投稿です。診断士になると情報発信・情報交換等でFACEBOOKを活用する機会が増えます。診断士に合格しなかったら、こうして手に取ることが出来なかっただろうなと感じる次第です。
なお、本日ご紹介した一冊、現在、NHKでドラマ化されています。診断士的には「陸王」も見逃せないですが、お時間あれば併せて息抜きに如何でしょうか。
以上、TOMでした。