【シリーズ化】白書の事例から2次試験を予想する(各事例から考える2次試験の超重要論点)~ byべし

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おはようございます、べしです。前回は中小企業白書の事例を模擬試験にすることを提案しましたが、今回からは、シリーズ化するにあたり白書の事例を模擬試験化および本試験の論点を予想する方向性にします。2次試験初学者向けではありませんが、読んた人にはきっと役に立つだろう、本番パニックに陥ったときに思い出したらクリティカルな内容になるだろう、たぶん役に立つだろうという思いました。

私は道場メンバーで唯一の2次試験超多年度生なので、多年度生に寄り添えるよう、過去問をやりつくした多年度生を対象にしようとの思いで、あえて需要がなさそうでも執筆したいと思います。1次試験は私の過去事例(データ)をメインにしましたが、2次試験は私の過去事例(データ)よりも、白書の事例をメインにしたいと思います。

本試験までには、全25事例をできるだけ紹介できるようがんばります。よろしくお願いします。

2次試験対策リアルセミナー

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直近の9/13東京開催・9/27名古屋開催のお申込みを受け付けておりますので、以下よりお申込みください!
【東京開催】
日 時:2026/9/13(日)10:00~12:00
場 所:神田駅周辺の会議室
定 員:15名(定員に達し次第、締切)
参加費:1,000円 ※会場費のご負担をお願いしております。

【名古屋会場】
日 時:2026/9/27(日)10:00~12:00
場 所:則武コミュニティセンター(JR名古屋駅太閤通口から徒歩8分)
定 員:10名
参加費:1000円 ※会場費のご負担をお願いしております。
締 切:定員に達し次第、締め切ります。お早めに申し込みください
詳細は参加申し込み後にメールにてご連絡いたします

申込みはこちら
※こちらは名古屋会場の申込みフォームです。

なお、以下の別日程のお申込みは、順次ブログでご案内いたしますので、少々お待ちください!
・東京②:2026年10月4日(日) 10:00-12:00
・大 阪:2026年10月4日(日) 10:00-12:00

改めて、中小企業白書の事例とは?

中小企業白書の「事例企業」とは、経済産業省(中小企業庁)が毎年発行している『中小企業白書』『小規模企業白書』の中で、テーマに応じた先進的・特徴的な取り組みを行っている企業として紹介される具体的な企業のことです。

白書全体の「論より証拠」や「現場の生の声」としての役割を担っており、経営者や支援機関などの読者が自社の経営に応用・再現するための実践ケーススタディとなっています。

なぜ白書の事例を知っておくべきなのか?

理由は、
1.「出題者の頭の中(=経済産業省の施策方針)」が丸わかりになるからです。

2次試験の作問者や採点基準の背景には、経済産業省が目指す「中小企業の支援方針」が存在します。

  • 経済産業省が「今、中小企業にどう変わってほしいのか(DX、事業再構築、GX、兼業・副業活用など)」の模範解答が白書の事例です。
  • 白書の事例を読むことで、試験で求められる「国(経済産業省)が推奨するストーリー・キーワード」を自然と身につけることができます。

2.さらに2次試験の「与件文作成者」視点を追体験できるからです。

試験問題を作る側(作問委員)も、白書に載るような実在の先進事例や調査データをヒントにして与件文を作成することが多々あるそうです。

事例企業をケーススタディとして読み解くことで、「こういう強みを持つ企業は、こういう外部環境の変化に対して、こうやって多角化していくんだな」という企業変革のパターンが頭に叩き込まれます。

3.白書の方向性をつかめる

中小企業診断士2次試験において「中小企業白書」の方向性が極めて重要とされるのは、採点基準(出題者の意図)が白書の理念や分析に基づいていると考えられるからです


結果、白書の方向性をしっかり学べる1つの方法となります。本試験で記載する内容に困ったら、白書の方向性で書いていけば大事故は防げるはずです。なぜならば、中小企業白書をベースに試験問題は作られているのでしょうから。政府が国会に提出した白書の内容には逆らえないはずです。

2次試験には絶対的な模範解答が公表されませんが、高得点者に共通するのは「診断士としてふさわしい適切な用語と論理展開」で書かれている点です。 白書で使われている文脈やキーワード(「付加価値の向上」「強みの再構築」「外部資源の活用」など)を答案に取り入れることで、採点者に対して「診断士としての視点・素養を備えている」とアピールしていきましょう。

今回は6事例紹介します

①2026年版「中小企業白書」全文 | 中小企業庁 から白書をダウンロードしましょう。
②今回は6事例とりあげます。

事例企業名等事例掲載ページ
1-3-2シグマ株式会社カーボンニュートラルで利益改善や新たな可能性を開拓する企業Ⅰ-83
1-3-3株式会社小島衣料海外工場における人権尊重を通して、現地法人の成長を実現している企業Ⅰ-84
1-3-4 株式会社小坂研究所輸出事業拡大に向けて、経済安全保障対策としての輸出管理に取り組む企業Ⅰ-85
2-2-1有限会社いろは堂大型設備投資によって付加価値を生み、郷土料理の市場を拡大する老舗企業Ⅱ-32
2-2-2株式会社蒼天多様な資金調達により設備投資を実現し、経営を安定化させ成長を遂げる企業Ⅱ-33
2-2-3株式会社オプトサイエンスAIを活用することでパフォーマンスを向上させ生産性を向上させている企業Ⅱ-34

出展:2026年版「中小企業白書」全文 より抜粋
③各事例文を与件文として用意します(紙でもタブレットでもOK)
④各設問を解答してみましょう!

※事例数が多いので、本事例から考える2次試験の重要論点のマーカー部分だけでも見ておくといいと思います!

以下与件文

出展:2026年版「中小企業白書」全文 より抜粋

問題(いずれも字数制限なし)
第1問 取組前および体制構築前における、A社の現状をSWOT分析せよ。
第2問 A社の課題及びその対応策を述べよ。
第3問 第2問で解答した対応策の効果を述べよ。
第4問 A社の今後に向けての展望を述べよ。

【強み】
大手自動車メーカー等の自動車業界を顧客とし、金属・樹脂製の小物精密部品製造における高い技術力。
主力製品のワイパーシャフトにおいて、高い市場シェアを獲得。
経営陣(会長・副社長)の先見性と強力なリーダーシップ、および高い投資対効果の分析力。


【弱み】
CN(カーボンニュートラル)への取組やCO2排出量の算出方法に関する初期知識・ノウハウが不足。


【機会】
欧州の自動車メーカーがサプライヤーに対してCNの取組を取引条件とするなど、業界全体でCN要請の高まり。
自治体(広島県)によるCN支援事業や、スタートアップ企業、外部ITベンダー等との共同開発連携の機会。


【脅威】
取引先からのCN要請への対応が遅れた場合、大手メーカーとの取引停止や事業存続の危機に直結するリスク。

【課題】
「経済性を犠牲にしないCN推進体制の構築」:投資回収を厳格に管理し、コスト削減とCO2排出削減を両立する投資判断プロセスの確立。
「CO2排出量およびエネルギー消費効率の可視化」:客観的なデータに基づき、自社の排出量を定量的に把握・管理する仕組みの構築。
「全社を巻き込むCN意識の醸成と組織活性化」:一部の経営層だけでなく、現場の全社員が「自分事」として主体的に改善提案を行える体制の整備。


【対応策】
外部支援の活用とノウハウ獲得:広島県の支援事業に参画し、副社長自らがCO2排出量算出方法等のCNに関する基礎知識を迅速に習得。
IT・アプリの共同開発および自社開発による可視化:スタートアップ企業と連携し、製造業特化の「CO2排出量管理・削減支援アプリ」を共同開発。
自社で「電力消費量や設備の稼働状況に関する可視化ツール」を内製開発。
投資基準の厳格化と施策の選別:投資を「回収期間3年未満」に限定し、費用対効果を可視化した上で、LED照明への切替えやヒートポンプの導入などコスト削減に直結する設備投資を選別実施。
部門横断プロジェクトの組成と提案制度の導入:全社に成果を定量的に示すことで社員のモチベーションを向上させ、各部門から施策を提案させる部門横断プロジェクトを推進。

【定量的効果】
受注拡大により生産量が20%近く増加する中でも、3か年で302トンのCO2削減を達成(目標360トン)。
一生産量当たりの電力消費効率が15.9%改善し、コスト削減効果により営業利益率が0.4%押し上げられた。

【定性的効果】
CNに関する国際的な認証を取得し、取引先から削減対応やデータ開示を要請された際に即座に対応できる体制を構築して対外的な社会的信頼を獲得。
社員が定量的な成果を把握できるようになったことで、CN活動を「自分事」として捉えるようになり、モチベーションが向上。
部門間のコミュニケーションが活発化し、全社的な業務改善やデータ連携を推進しやすい組織風土へと変革。

環境対応と経済性の両立による事業持続性の確立:環境への配慮を単なるコスト負担とせず、事業存続と経済性向上の両輪で捉え、社内の削減ポテンシャルを継続的に掘り下げる。
データドリブン経営の深耕と国際競争力の強化:CN活動で培ったデータ可視化のノウハウ・知見を全社経営管理(生産、販売、原価など)へ横展開し、データに基づく迅速かつ高精度な経営意思決定(データドリブン経営)を実践して国際競争力を高める。
ものづくりの変革と社会的価値の創出:最先端のデジタル技術と現場力を融合させ、日本のものづくりをアップデートするとともに、持続可能なサプライチェーンの構築に貢献し続ける。

  1. 環境対応(GX)をコストではなく「コスト削減(利益改善)」の手段とする経済性の追求(事例III・IV)
    2次試験において、環境対応(CN/GX)は「コスト増」という脅威として与件文に現れがちです。しかし本事例では、「環境対応を単なるコスト負担とせず、経済性を犠牲にしない(利益改善につなげる)」という方針が貫かれています。具体的には、費用対効果を徹底的に可視化・分析した上で、LED照明への切替えやヒートポンプの導入など、確実にコスト削減(省エネ)に寄与する投資を選別して実施しています。
    2次試験での活用(事例III/IV): 外部環境の変化(エネルギー価格高騰や取引先からの環境要請)に対し、生産効率の向上や省エネ設備の導入を組み合わせることで、「環境負荷の低減(CO2削減)」と「原価低減(営業利益率の向上)」を同時に達成するという高付加価値化・コスト削減の両立シナリオとして極めて有効な論点です。
  2. デジタル技術・アプリの「共同開発・内製化」による現場の可視化(事例III)
    A社は、スタートアップ企業と連携したCO2排出量管理支援アプリの共同開発や、電力消費量・設備稼働状況に関する可視化ツールの自社開発を行いました。これにより、それまで見えなかったエネルギー消費や生産効率のボトルネックを定量的に把握できるようになりました。
    2次試験での活用(事例III): 「生産現場の改善は、現状の可視化(データの収集・整備)から始まる」というIE(経営工学)の基本原則に直結します。「勘と経験」に頼る現場に対し、「ITツールやセンサーを用いて設備稼働率やロスをリアルタイムでデータ化(可視化)し、客観的な数値に基づいて現場のカイゼン(動線の見直しやレイアウト変更)を進める」という王道の改善プロセスを裏付ける論点です。
  3. 「回収期間法」に基づく厳格な成長投資の意思決定(事例IV)
    キャッシュフローや資金力に制約のある中小企業において、リスクの高い大規模投資をいかにコントロールするかは財務の最重要課題です。A社は、投資判断の基準を「投資回収期間3年未満」に厳格に限定し、費用対効果を可視化した上で設備投資を行いました。
    2次試験での活用(事例IV): 事例IVで頻出する「設備投資の意思決定」における、現実的かつ手堅い経営判断の論点です。回収期間法の特徴である「計算が平易で、初期の流動性(キャッシュ)を重視し、不確実性の高い中長期リスクを回避する」という考え方を、経営意思決定の妥当性として理論武装する際に強力な根拠となります。
  4. 定量的な成果共有による「社員の自分事化(非金銭的インセンティブ)」と組織活性化(事例I)
    A社は、開発したツール等を用いて「社員全員がCNの成果を定量的に把握できる体制」を構築しました。これにより、普段は見えにくい省エネ活動の成果が「見える化」され、社員が活動を自分事として捉えられるようになり、モチベーションが向上しました。さらに、生産部門を含む社内全体で意識が醸成され、各部門から自主的に改善施策を提案させる「部門横断的プロジェクト」へと発展しています。
    2次試験での活用(事例I): 「組織風土の改革や、全社的プロジェクトをいかに定着させるか」という組織論点です。「情報の開示・共有(可視化) ➔ 従業員の自発的な目標意識の向上(自分事化) ➔ 部門横断プロジェクトによる部門間連携の活性化と組織のフラット化(活性化)」という、インセンティブ設計と組織設計を高度に融合させた記述プロセスにそのまま活用できます。
  5. 「先行的対応(外部認証獲得)」による社会的信頼と強固な取引維持(事例I・II・III共通)
    A社は、主要顧客である日本の自動車メーカーからのCN要請がまだ強くなかった段階から、将来的な法規制や取引条件化を見据え、先んじてCN対応を決断し国際的な認証を取得しました。結果として、取引先から急なデータ開示や削減要請があった際にも即座に対応できる体制を構築し、社会的信頼を揺るぎないものにしています。
    2次試験での活用(共通論点): BtoB企業における「主要顧客(大企業)との関係維持・競合優位性の確立」という戦略論点です。取引先からの「受け身の対応(要求されてから動く)」ではなく、「能動的・先行的対応によって取引停止リスク(脅威)を排除し、他社が追随できない参入障壁(社会的信頼・技術的強み)を構築する」という、持続的な差別化戦略を記述する際のベストプラクティスです。

診断士2次試験では、「環境問題やIT導入は手段であり、最終目的は『売上拡大・利益改善(稼ぐ力の強化)』および『取引先との強固な関係構築による事業継続性の確保』である」というストーリーを一貫させることが合格への近道です。

以下与件文

出展:2026年版「中小企業白書」全文 より抜粋

問題(いずれも字数制限なし)
第1問 A社の現状をSWOT分析せよ。
第2問 A社の課題及びその対応策を述べよ。
第3問 第2問で解答した対応策の効果を述べよ。
第4問 A社の今後に向けての展望を述べよ。

【強み】
高い縫製技術を要する婦人向け重衣料のOEMを手掛ける、優れた製造ノウハウおよび縫製技術力。
バングラデシュ工場に約1,800名の従業員を抱え、全社生産の過半を占める大規模な主要生産拠点を確立。

【弱み】
技術・品質面の要求水準の高さに伴う現地従業員の離職率の高さ。
高品質製品を生産できる技術の定着が不十分であり、日本人駐在員(17名)への依存度が高い。

【機会】
欧米のアパレル業界を中心に、サプライチェーン全体で人権配慮や人権尊重を強く求める潮流が世界的に高まり。
開発途上国の産業人材育成を支援する外部の公的支援機関(AOTS等)の研修制度を活用できる。

【脅威】
人権尊重や労働環境の改善への対応が遅れた場合、グローバル顧客(大手アパレル企業等)からの受注継続や取引自体が困難になるリスク。
人材定着率の低迷により技術が流出し、現地での円滑な工場運営や長期的な事業継続が損なわれるリスク。

【課題】
「労働環境の是正と従業員の定着率向上」:従業員の不満や意見を適時適切に吸い上げ、労働条件を最適化することで高い離職率を低下させる。
「生産性向上と適切な労務管理の両立」:高付加価値製品を効率よく製造するための現地生産技術の向上と、不要な残業の是正。
「現地幹部人材の育成による駐在員依存からの脱却」:現地従業員主体の自立的な工場運営体制を早期に構築する。
「取引先の要求水準(人権尊重)のクリア」:顧客企業が安心して製造を委託できる、社会的信頼性の高い管理体制を確立する。

【対応策】
労使間コミュニケーションの制度化:従業員の投票で選出された代表者と経営陣が月次で話し合う体制を構築し、現場意見を幅広くかつ効率的に吸い上げる。
給与設計・評価制度の刷新:他社待遇情報を分析し、現地水準を上回る給与設計や、目標達成度に応じた客観的な評価制度を整備してモチベーションを向上させる。
生産技術向上による業務負荷の軽減:生産性の改善を同時に進めることで、過度な残業の抑制と是正を達成する。
外部公的研修制度の戦略的活用:AOTSの制度を導入し、選抜された優秀な現地従業員(これまで19名)を日本へ派遣し、日本語習得と実務研修を通じて幹部人材に育成する。

【定量的効果】
離職率の劇的な改善:バングラデシュ工場における従業員の離職率が、2012年の6.8%から2021年には2.9%へと大幅に低下した。
駐在員削減による運営コストの適正化:現地従業員の能力向上により、日本人駐在員数が2012年の17名から2025年には5名にまで減少し、現地での効率的かつ低コストな自立運営が可能となった。

【定性的効果】
現地工場の技術力・品質の向上:熟練した生産スキルを持つ人材が定着したことで、ジャケット等の付加価値の高い製品を製造できる水準まで技術基盤が格段に向上した。
幹部人材の活躍による意思疎通の円滑化:日本で研修を受けた現地幹部が、顧客や本社からの製品情報を現場へ正確・迅速に落とし込むことで、現場の自発的な改善活動が活発化した。
社会的評価の獲得による受注維持:人権に配慮した確かな取組が、顧客である大手アパレル企業から「安心して製造を委託できる企業」との評価を受け、取引継続および経営の持続可能性向上に繋がった。

「完全自律型(日本人駐在員ゼロ)の工場運営体制の確立」: 育成した現地幹部従業員に権限を完全に移譲し、日本人駐在員を必要としない「現地メンバーのみによる現地適応型マネジメント体制」の構築を目指す。
「人権配慮を強みとした、グローバルOEMとしての競合優位性の強化」: 世界的に厳しい目が向けられる「人権尊重」の取組を、単なるコストではなくA社のコア・コンピタンス(競合優位性)として磨き上げ、高品質な製品供給体制と適合させてグローバルな取引基盤をさらに拡大する。
「対等な関係構築による持続可能なサプライチェーンのモデル構築」: 海外現地法人を日本の本社と同格の企業と位置づけ、人権尊重と生産技術向上の好循環を回し、グローバル社会において高い付加価値を提供し続ける持続可能なものづくりモデルを牽引する。

  1. グローバル・サプライチェーンにおける「人権尊重(ESG/CSR)」と「取引関係の維持」
    近年、大企業(発注側)がサプライチェーン全体に対して人権尊重や労働環境の是正を強く求めるケースが増加しています。A社の事例では、人権に配慮した確実な取組(労働環境改善、残業の是正など)を先手で実践したことが、顧客企業から「安心して製造を委託できるサプライヤー」として高く評価され、受注の継続・獲得に繋がりました。
    2次試験での切り口(事例I・III): 外部環境の「脅威(取引先の審査基準の厳格化)」に対し、単に法令遵守をするだけでなく、人権配慮や労働環境の改善を「競合優位性(強み)」に高めることで、顧客との「取引関係の維持・強化」を図るという戦略的展開の論点として頻出です。
  2. コミュニケーションの制度化とインセンティブ設計による「優秀な人材の確保・定着」
    高い縫製技術などの製造ノウハウが必要とされる現場において、技術が定着しない原因は「現地従業員の離職率の高さ」にありました。これに対しA社は、従業員代表と経営陣が月次で対話する仕組みを「制度化」して不満を吸い上げ、さらに、現地水準を上回る給与設計や、目標達成度に応じた評価制度などの「インセンティブ設計」を整備することで、離職率を大幅に低下(6.8%から2.9%へ改善)させました。
    2次試験での切り口(事例I): 「現場意見の吸い上げ・双方向コミュニケーションの仕組みづくり」+「モチベーションを高める公平な評価・処遇制度」をセットで提案させる問題。「従業員の定着 ➔ 熟練スキルの獲得(技術力の向上) ➔ 品質向上・高付加価値化」という一貫した因果のストーリーの構築が加点ポイントとなります。
  3. 次世代リーダー(幹部)の育成と権限委譲による「自律型組織の構築(依存からの脱却)」
    日本から多くの駐在員(A社では当初17名)を派遣し、すべてのマネジメントを日本人頼みで行う体制は、駐在コストが嵩むだけでなく、現地でのスピーディな適応や自立した工場運営を阻害します。A社は、日本語と縫製技術を習得させた現地従業員を幹部に登用し、意思疎通や指示の落とし込みを委譲したことで、駐在員数を削減(17名から5名へ)し、現地での低コスト・自律的な運営を可能にしました。
    2次試験での切り口(事例I): 特定の経営層や外部人材に依存した「属人的経営」から、「能力開発(教育) ➔ 幹部としての登用・権限委譲 ➔ 自発的・自律的な部門運営」による強固な組織体制(後継組織)の整備へと移行させる、組織構造上の課題解決プロセスです。
  4. 不足する経営資源を補う「公的・外部支援機関の戦略的活用」
    中小企業・小規模事業者にとって、自社単独で「体系的な従業員の教育訓練ノウハウ」や「現地での人権監査への対策ノウハウ」をすべて保有することは、リソースの制約上、非常に困難です。A社は、AOTS(海外産業人材育成協会)の公的研修制度を戦略的に活用し、優秀な現地従業員の教育手段・成長機会としてレバレッジを効かせました。
    2次試験での切り口(事例I・III・IV): 自社の経営資源の「弱み」をただ嘆くのではなく、商工会、引継ぎ支援センター、または各種公的支援機関・外部専門家を活用して「技術・ノウハウ・資金の不足」を補い、迅速なアクションに繋げる施策。解答の最後の1マスに「外部専門機関との連携を強化し~」とねじ込むだけで、手堅く加点(事例の活用余地)を拾える実戦的キーワードです。

    これらの4つの論点は、まさに2次試験でそのまま出題される「組織改善の処方箋」そのものです。A社のストーリーのように、「労働環境を改善したから(因)、従業員の士気が高まり技術が定着して 、最終的に取引先からの受注維持と営業利益の改善に繋がった(果) 」という論理の繋がりを意識した答案が、合格点を安定して超える「強い再現答案」になります。

以下与件文

出展:2026年版「中小企業白書」全文 より抜粋

問題(いずれも字数制限なし)
第1問 A社の現状をSWOT分析せよ。
第2問 A社の課題及びその対応策を述べよ。
第3問 第2問で解答した対応策の効果を述べよ。
第4問 A社の今後に向けての展望を述べよ。

【強み】
精密測定機器や流体機器の分野において、軍事転用可能とされるほど高度かつ独自の技術力。
1990年代の韓国取引本格化を皮切りに、中国・台湾を含めたアジア主要国での豊富な直接輸出実績と取引ノウハウ。
現場担当者が「これまでの勘と経験」により、価格交渉をせず購入を急ぐ顧客や第三国への迂回販売など、不正事案に繋がる兆候を現場で察知できる。

【弱み】
輸出規制対策やリスク管理業務が、長年にわたり海外営業部門という特定部署に限定された属人的な管理体制。
「勘と経験」に頼る高度なリスク兆候察知ノウハウが、組織内でルールとして言語化・明文化されておらず、共有化が不十分。

【機会】
経済安全保障関連の要請や法的規制が強化される中、取引先企業から技術情報管理やサイバーセキュリティの強化、サプライチェーン強靭化への対応要請が高まり。
日本貿易振興機構(ジェトロ)や安全保障貿易情報センター(CISTEC)といった、専門的判断や法的実務支援を提供する公的・専門的外部機関が整備。
米国やインドをはじめとする、従来のアジア圏(中国・韓国・台湾等)以外の巨大なグローバル市場への進出余地が存在。

【脅威】
自社製品に軍事転用可能な精密機器が含まれるため、安全保障貿易に係る複雑な輸出管理や法的規制リスクを常時受ける。
同業他社における不正輸出事案の発生などにより、今後の輸出取引の継続性に対する社会的な審査基準や取引先からの監視が格段に厳格化。

【課題】
「属人的・特定部門限定の管理からの脱却」:輸出管理を海外営業部門の「部分最適」に留めず、全社的なガバナンスを効かせる組織体制を整備すること。
「客観的リスク判断基準と外部専門機関を交えた連携フローの構築」:個人の主観に依存しない厳格な調査・選別ルールを確立し、必要に応じて迅速に外部の知見を得られる仕組みを作ること。
「形骸化の防止と全部門の当事者意識の醸成」:輸出管理体制の形骸化を防ぎ、営業だけでなく製造現場(工場)まで含めた全部門に経済安全保障対策の重要性を浸透させること。

【対応策】
「輸出管理委員会」の設置と定期的なメンバー交代:2020年に全部門から選抜された8名による全社横断的な委員会を設立。形骸化を防ぐため多数の会議で定期的な実績報告の場を設けるとともに、メンバーを部門横断的に毎年ローテーション(入れ替え)させることで、営業以外の部門(工場等)へも当事者意識と輸出管理の取組を広げる。
独自スクリーニング制度の構築と外部連携の強化:輸出先の企業調査において、株主から製品の最終ユーザーに至るまで徹底的に明らかにする仕組みを構築。独自のフローチャートを策定し、自社で判断しきれないリスク取引は、ジェトロや安全保障貿易情報センターなどの外部機関に客観的判断を仰ぐ工程を組み込む。
教育訓練を通じた専門能力開発:委員会のメンバーに対して外部研修等を受講させることで、輸出管理や経済安全保障に関する知識と見識を継続的に深めさせる。

【定量的効果】
全社横断的な委員会の設置以降、重大な輸出管理違反や法的トラブルを一切発生させず、貴重な事業基盤である輸出取引の維持と安定的な直接輸出売上を継続確保することに成功した。

【定性的効果】
「グレーな案件の未然回避と抑止力の形成」:徹底した輸出管理と徹底追及の姿勢が社内外に周知されたことが強力な抑止力(フィルター)となり、不適切な迂回取引などのグレーな案件自体が自社に持ち込まれにくくなった。
「リスク選別ノウハウの組織的蓄積・共有」:フローチャートや独自の調査工程を運用することで、グレー事案の兆候(価格交渉をせず急ぎ購入しようとする等)を早期に察知・回避するノウハウが組織的に共有化された。
「社内活性化と全部門の管理意識の統合」:部門横断の委員会を「ハブ」としたことで、営業部門と工場の事業部間に活発な技術・情報交流が生まれ、製造現場(工場)側でも輸出管理を意識した強い現場づくりが始まり、組織が活性化した。

「暗黙知の形式知化による経済安全保障体制の永続化」:これまで従業員の「勘と経験」に頼っていた不正取引の兆候察知ノウハウを、輸出管理委員会を通じてマニュアル等に明文化・ルール化し、法規制リスクに極めて強い「盤白な経営基盤と事業継続力」を確立する。
「強固な管理体制を強みとした新市場の開拓」:厳しい経済安全保障要請を確実にクリアできる輸出体制そのものを「他社が追随できない差別化された社会的信頼(強み)」へ昇華させ、既存のアジア近隣市場(中国・台湾・韓国等)から、米国やインドといった成長著しい新市場への海外取引を加速させ、更なる成長を遂げる。

今年の2次試験に向けて、本事例は特に「事例I(組織・人事)」および「事例III(生産・技術)」における極めて重要な以下の論点を網羅しています。

「部分最適から全体最適への組織再編(部門横断組織の設計)」(事例I)
特定部門(海外営業部門)のみに法的リスクや業務負荷を任せる「縦割りの弊害」に対し、全部門を巻き込んだ「部門横断委員会」を設置して情報・意思決定を一元化するアプローチ。2次試験において、「部分最適による情報伝達の遅れやリスクの潜在化」を横断プロジェクト(PT等)で解決する定番の記述パターンです。
「メンバーの定期交代(ローテーション)による意識変革の波及」(事例I)

委員会の構成メンバーを毎年交代させ、形骸化を防ぐとともに、専門知識と「当事者意識」を全部門(特に製造現場である工場)へ自然と伝搬させる人事施策。2次試験で頻出の「全社的な理念・方針の浸透」における最も効果的な処方箋です。

「暗黙知の形式知化(マニュアル化による技術・ノウハウの承継)」(事例I・事例III)
一部のベテランや現場担当者の頭の中にあった「勘や経験」に基づく優れた判断力(今回はリスク察知力)を、独自のルールや手順書に「明文化」して組織的な強みへ転換するアプローチ。診断士試験では「属人的な技術を組織の共有資源としてマニュアル化・標準化して若手へ継承する」ための王道解答フレームです。

「経済安全保障(法規制対応・CSR)を強みとした差別化戦略」(事例II・事例III共通)
コンプライアンス(法規制や人権・環境配慮)を単なる「コスト」や制限と捉えるのではなく、他社との強固な差別化要素、あるいは「大手顧客から選ばれ続けるための経営資源」と位置づけて投資する戦略的思考。白書全体を貫く最重要テーマであり、取引停止リスク(脅威)を社会的信頼(強み)に昇華させて売上・利益に繋げるストーリーは、2次試験で最も求められる「強い診断士」の答案構成になります。

「外部専門機関を巻き込んだ客観的なリスク管理体制」(事例I/III共通)
自社にノウハウや技術が不足している場合、ジェトロ等の公的外部機関との連携(フローチャートへの組み込み等)をあらかじめ制度化し、意思決定のスピードと安全性を両立させる施策。

以下与件文

出展:2026年版「中小企業白書」全文 より抜粋


問題(いずれも字数制限なし)
第1問 A社の現状をSWOT分析せよ。
第2問 A社の課題及びその対応策を述べよ。
第3問 第2問で解答した対応策の効果を述べよ。
第4問 A社の今後に向けての展望を述べよ。

【強み】
創業100年を超える老舗としての高い知名度とブランド力(「本物志向」のおやき)。
年間500万個を誇る高い販売実績と、近隣の契約農家等から新鮮な野菜を仕入れる強固な調達ネットワーク。


【弱み】
本店工場が中山間地域に所在するため、若年層を中心とする人材確保が困難な点。
本店工場の生産能力が上限に達しており、手狭なため新規の設備増設が物理的に困難な点。


【機会】
コンビニやスーパー等での取り扱い拡大、お土産やギフト需要の創出に伴うおやき市場の拡大。
金融機関との対話・計画策定を通じた、事業性評価に基づく円滑な資金調達環境の存在。


【脅威】
地域における深刻な人口減少と、それに伴う採用競争の激化。
昨今の急激な原材料・資源価格の高騰による利益圧迫リスク。

【課題】
「ボトルネックの解消と生産能力の拡大」:上限に達した生産能力を引き上げ、拡大する市場需要や商機を確実に取り込む。
「労働環境の改善と省力化の推進」:中山間地域での採用難に対応するため、従業員の作業負担を軽減し、生産効率を向上させる。
「新規ターゲット層へのアプローチと差別化」:既存の伝統食としてのイメージを覆し、幅広い世代に訴求するブランド発信力を強化する。


【対応策】
大規模な成長投資と新工場建設:金融機関と事業計画のブラッシュアップを重ねて資金調達を行い、10億円の投資により新工場「OYAKI FARM」を開業し、生産能力を1.5倍に増強。
省力化設備の導入と業務フロー見直し:自動包餡機等の最新設備を導入して「重い・熱い」といった重労働・危険作業を削減するとともに、製造担当者と協働で動線や業務フローを見直して効率化を図る。
コト消費を取り入れた多機能拠点の構築:新工場にカフェ、ショップ、工場見学、おやき作り体験等のコンテンツを併設し、幅広い世代へ向けて「おやき文化の発信拠点」としての付加価値を創出。

【定量的効果】
売上高の大幅増加:新工場建設前の2022年3月期と比較し、2025年3月期の売上高は175%に増加(計画を上回る実績)。
雇用創出と付加価値向上:従業員数は倍増。原材料高騰の影響を受けながらも付加価値率を向上させ、従業員の賃上げを実現。
高い集客力の発揮:新拠点の開業後1年で、来場者数は28万人を突破。


【定性的効果】
インセンティブ向上と属人化解消:「見せる工場」として製造工程を可視化したことで、作り手が来場者の反応を直接確認でき、モチベーションが向上。
コラボレーションによる新規需要創出:知名度向上に伴い他社からの引き合いが急増。大手セレクトショップとのコラボ商品の開発や、廃棄おやきを再利用したクラフトビールの開発など、新たな事業の可能性を獲得。

「顧客接点のデジタル化とEC・海外販路開拓による市場拡大」: 実店舗での高い集客実績をフックに、今後はECサイトの強化や海外への輸出展開を本格化させ、伝統食の域を超えた市場開拓を推進する。
「地域と世代を跨ぐ日常消費ブランドへの昇華」: 「おやき文化の発信拠点」で培った若い世代向けの親しみやすさと、伝統的な「本物志向」の本店工場を両立させ、地域や世代を超えて「日常的に消費されるライフスタイル商品」としての確立を目指す。

本事例は特に「事例III(生産・技術)」および「事例II(マーケティング・流通)」の架け橋となる以下の論点を網羅しています。
「ハード(投資)とソフト(現場カイゼン)のシナジー」(事例III)
単に高額な機械を導入するだけでなく、「製造担当者と一丸となって業務フローや動線を見直す」プロセスが必須である点。現場を巻き込んだボトムアップのIE(経営工学)的カイゼンは、事例IIIにおける定番の加点キーワードです。
「インセンティブ設計と従業員の巻き込み」(事例I/III)
「見せる工場」の設計により、普段は裏方にいる現場作業員が顧客の笑顔を直接見られるようにする仕組み。これは、非金銭的インセンティブ(働きがい・プライドの醸成)として事例Iでも応用できる組織開発論点です。
「モノからコト(体験価値・文化)への提供ドメインのシフト」(事例II)
成熟した伝統食市場において、単なる「食品(おやき)」の販売から、カフェやおやき作り体験といった「コト消費」へと提供価値(ドメイン)を再定義する差別化戦略。強みを活かしてライフサイクルを延ばす、事例IIの王道の処方箋です。
「生み出した付加価値の賃上げ還元と採用力強化(好循環モデル)」(事例I)
投資で得た利益(付加価値)を賃上げに回すことで、従業員のモチベーションをさらに高め、リクルーティング時のイメージアップ(採用力強化)に繋げる「持続可能な成長サイクル」。人手不足が深刻化する2次試験の世界で、最も望まれる中小企業のストーリーラインです。

以下与件文

出展:2026年版「中小企業白書」全文 より抜粋


問題(いずれも字数制限なし)
第1問 A社の現状をSWOT分析せよ。
第2問 A社の課題及びその対応策を述べよ。
第3問 第2問で解答した対応策の効果を述べよ。
第4問 A社の今後に向けての展望を述べよ。

【強み】
原料レジンの溶解からボトルの成形、飲料水の製造・販売までを自社で一元的に担う「ボトル製造一貫体制」による高いコスト・供給競争力。
創業以来、右肩上がりで売上高を増加させてきた「安定的な収益力」。
山中湖村・忍野村のふるさと納税返礼品に登録されている、「地元の水資源を活かした高い製品ブランド力」。


【弱み】
黒字経営であるもののキャッシュフロー(手元流動性)が潤沢でなく、財務的な投資余力が乏しい点。
金融機関との取引がほとんどなく、社会的信用力や外部資金調達力に限界があった点。
設備(射出成形機)の故障に伴い中間基材(プリフォーム)を外部調達せざるを得ず、「調達コストが約15%増加」し利益率が低下していた点。
中期経営計画の策定ノウハウがなく、経営管理が経営者の「大まかな事業方針」に依存した属人的なものである点。

【機会】
東京中小企業投資育成(SBIC)などの、中堅・中小企業の自己資本充実や成長発展を支援する公的・政策的投資育成スキームが存在する点。
取引金融機関を通じたビジネスマッチングや、ふるさと納税による地域経済活性化といった外部リソースの活用機会がある点。

【脅威】
主要製造設備(射出成形機)の故障放置による、一貫体制の強みの崩壊と競合優位性の喪失。
原材料高騰等により外部調達コストがさらに膨らみ、収益力(営業利益)が中長期的に毀損するリスク。

【課題】
「最適な資金調達スキームによる投資原資の確保」:キャッシュフローの制約を克服し、最新鋭設備を導入するためのリスクマネーをいかに調達するか。
「製造一貫体制の再構築による生産性向上とコスト削減」:中間基材の外部調達を解消し、自社生産能力を早期に回復・強化する。
「属人経営からの脱却と経営管理体制(PDCA)の高度化」:中長期的な視点で意思決定を迅速化・精緻化するための計画経営とモニタリング体制の確立。

【対応策】
「メザニンファイナンス」による資金調達: 税理士を通じてSBICの支援を仰ぎ、新株予約権付社債の発行により長期安定的な設備資金を確保。
社会的信用の補完と「協調融資(デット)」の獲得: SBICの出資獲得による社会的信用の向上を呼び水として、スルガ銀行や日本政策金融公庫からの融資(協調調達)を引き出す。
「最新鋭射出成形機」の導入と内製化への回帰: 調達した資金で新型機を導入し、ボトル中間基材の生産効率向上と内製化を推進。
「中期経営計画」の共同策定と経営会議の制度化: SBIC・金融機関の伴走支援のもと中期経営計画を策定。毎月の経営会議に彼らを同席させ、第三者目線での助言・監視を受ける「モニタリング体制」を定着させる。

【定量的効果】
新型機の導入により、ボトル中間基材の生産能力が「従来機比で約3割増加」し、かつ不良率も大幅に低減。
外部調達コストの解消と生産性向上により、「営業利益を約4,000万円押し上げる」収益改善を達成。
【定性的効果】
「競争優位性の再確立」:強みである「ボトル製造からの一貫体制」を最新鋭の形で再構築し、利益率を高める基盤を確立。
「社会的信用の向上と販路拡大」:SBICの支援実績による信用力向上から、金融機関のビジネスマッチング機能を最大限に活用でき、新たな販路開拓が進展。
「ガバナンスと経営管理の高度化」:客観的なデータと中期計画に紐づいた月次PDCAが定着したことで、場当たり的な意思決定を排除し、中長期的な大規模投資(工場新設等)を合理的に検討・実践できる組織体質へと変革した。

「商品群の拡充と成長投資の加速」: 強化された財務基盤と確実な経営計画をベースに、ペットボトル飲料のラインアップ拡充に向けた新機械設備導入や、更なる需要拡大を見据えた「工場の新設」といった大規模な成長投資を実行する。
「地域経済への貢献と持続的なブランド価値向上」: 増産や商品群の拡充を神埼市や忍野村のふるさと納税返礼品事業と深く連動させることで、雇用の創出や地域調達を拡大し、「地域と共に右肩上がりで成長するサステナブルな中核企業」としてのブランド地位を確立する。

本事例は、特に「事例IV(財務・管理会計・投資判断)」を中核としつつ、「事例III(生産・内製化意思決定)」や「事例I(組織構造・経営管理)」と深く結びついた、2次試験にとって極めて価値の高い重要論点が詰まっています。

  1. 「内製か外製か」の意思決定(事例III・IV)
    機械が故障した際、「自社で巨額の投資をして新型機を入れるべきか(内製=Make)」「コストが15%高くても外部調達を続けるべきか(外製=Buy)」の判断。
    2次試験では「差額原価収益分析(差額キャッシュフロー)」の論点として頻出です。「投資によるコスト削減効果 ➔ 利益押し上げ額(本事例では年4,000万円) ➔ 回収期間やNPV(正味現在価値)による投資評価」という王道ストーリーを想起させる構造です。
  2. 「メザニンファイナンス(投資・融資の中間)による信用補完と呼び水効果」(事例IV)
    手元資金が潤沢でない中小企業が、「SBICによる出資・社債」を獲得することで、民間金融機関(スルガ銀・日本公庫)による「融資」を引き出すというシナジー(信用補完・呼び水効果)。
    事例IVの記述問題において、「資本コストを抑制しつつ、レバレッジを効かせ、いかに財務健全性と資金調達力を両立させるか」という問いに対する最高の模範解答パターンです。
  3. 「生み出した付加価値を、地域貢献(ふるさと納税)や雇用の創出へ還元する好循環」(事例I・II・III共通)
    財務基盤を固め(事例IV)、生産効率を高めて利益を創出し(事例III)、それを地域雇用やふるさと納税に還元することで信頼を強め、さらなる設備投資や工場新設(成長投資)へとつなげるサイクル。
    2次試験の合格答案を貫くべき、「一時的な損益に一喜一憂せず、長期的な強み(差別化)をさらに強固なものにし、競合優位性を永続させる」という一貫した戦略構築力を示すための、最高のケーススタディです。

以下与件文

出展:2026年版「中小企業白書」全文 より抜粋


問題(いずれも字数制限なし)
第1問 A社の現状をSWOT分析せよ。
第2問 A社の課題及びその対応策を述べよ。
第3問 第2問で解答した対応策の効果を述べよ。
第4問 A社の今後に向けての展望を述べよ。

【強み(Strengths)】
豊富な製品ラインアップ: 大学、研究所、メーカー開発部門などの専門顧客を対象とし、同業他社に比べて極めて豊富な製品群を展開。
高度な技術的サポート力: 営業担当者が高度な技術知識に精通し、最先端製品に対して手厚いアフターサポートを行える体制を構築。
強固な顧客基盤: 大学・研究所、大手メーカーの開発部門といった最先端技術を求める良質なBtoB顧客を保有。
先見性あるトップのリーダーシップ: 生成AIの将来性をいち早く確信し、全社的なデジタル化に向けて自ら率先垂範して推進する経営陣の変革志向。

【弱み】
暗黙知・専門知識習得の多大な負担: 最先端製品ゆえにマニュアルが整備されておらず、営業担当者が海外論文等の解読や解説書作成に多大な時間・工数を要する属人化体制。
広告宣伝の非効率性とスキル不足: 広告作成に不慣れな営業担当者が作成を担当していたため、毎号の特集に適した製品選定やコピー構築が難しく、費用対効果(レスポンス)が低迷。
リソース制約による属人化リスク: 従業員数33名の小規模商社であり、限られた人的リソースの中で個人の能力や自己学習に業務品質が依存。

【機会】
AI技術・生成AIの急速な進化: 論文要約、翻訳、プログラミング支援など、ホワイトカラーの能力やスキル不足を急速に補完するツール環境の整備。
ニッチ分野における研究開発投資の継続性: 最先端レーザー技術や光学機器市場における、大学やメーカー研究開発部門による安定的な需要。

【脅威】
技術変化の高速化と複雑化: 専門知識の習得難易度がさらに上昇し、従来の営業担当者の独力によるキャッチアップ能力が限界を迎えるリスク。
採用難と若手人材の早期離職: 専門性が極めて高いがゆえに、教育訓練期間が長期化し、属人化に起因する業務負担増から優秀な人材が定着しなくなるリスク。

【課題】
「専門知識習得・解説書作成に伴う業務負担の軽減と標準化」: マニュアルのない専門製品に対し、若手や未熟練者でも迅速に知識補完・立ち上げができる教育訓練プロセスの構築。
「不慣れな広告・販促業務のプロセス刷新による反響効果の最大化」: 営業担当者の業務負担を抑えつつ、顧客の目を引く製品選定や訴求ポイントの案出をシステム化する。
「全社的なAIリテラシーの獲得と活用風土の醸成」: デジタル変革に対する心理的抵抗を排除し、全部門が自発的にAIを活用できる体制の整備。
「AI情報の不確実性リスクに対する管理体制(ガバナンス)の確立」: AIが出力した誤情報による顧客信頼の失墜を防ぐ、正確性の担保ルールの定着。

【対応策】
「生成AIを活用した技術情報の収集・要約・翻訳プロセスの導入」: 海外の膨大な学術論文の収集・要約や、英語マニュアルの翻訳に生成AIを徹底活用させ、営業担当者のキャッチアップと若手の知識補完を進める。
「生成AIとの『共創型』広告・販促制作の仕組みづくり」: 製品選定、キャッチコピー、訴求ポイントのたたき台を生成AIに出力させ、営業担当者はその推敲・ブラッシュアップに専念する「人とAIの役割分担」プロセスを設計する。
「経営トップ率先による勉強会と活用体験の共有」: 社長自らが率先して実務で活用し、プロンプト(指示文)の勉強会を開催して従業員が気軽にAIに触れ、成功体験を共有できる時間と環境を提供する。
「ファクトチェック(事実確認)プロセスの義務化」: AIの出力結果をそのまま使用せず、必ず専門知識を持つ実務担当者が裏付け・検証を行う管理ルールを全社的に徹底する。

【定量的効果】
広告反響の激増と販売チャネル強化: 営業担当者の負担を劇的に減らしながら、広告からのレスポンス・問合せ件数が平均2倍以上に増加(月平均5件程度から多い月には45件へ急増)。
バックオフィス定型業務の工数削減: 営業資料のたたき台作成、翻訳、契約書チェック、請求書のファイル変換などにAI活用を広げたことで、間接業務の作業工数を大幅に節減。
トラブル対応のスピードアップ: アフターサービスにおいて、機器の不具合原因究明にAIによるコード解析を活用したことで、トラブルシューティングに伴う工数・残業時間が大幅に減少した。

【定性的効果】
強みである「技術サポート力」の更なる高度化: 営業担当者が「一人で悩む時間」が減り、マニュアルのない最先端の難解製品でも詳細な説明が可能となったことで、顧客への提供価値がさらに向上した。
教育の標準化と若手早期戦力化: 専門知識の習得プロセスがAI要約・翻訳によって効率化され、経験の浅い若手や非技術系従業員の技術知識の補完・教育がスムーズになった。
リスクを伴わない、安全なAI活用組織風土の定着: 実務担当者によるファクトチェックがルールとして習慣化されたため、信頼性を損なうことなく安全に先端デジタル技術を使いこなす体制が確立された。

「ニッチ光学商社としての圧倒的差別化とコア・コンピタンスの強化」: AI活用で武装した営業担当者と高度なトラブル対応力を最大の武器とし、単なる「輸入販売(卸売)」から脱却。競合他社が追随できない「超高付加価値型の技術コンサルティング商社」としての地位を不動のものとする。

「人的リソースの高付加価値シフトと新ドメイン展開」: AIで削減した業務工数を、新規顧客との対面コンサルティングやアフターフォロー、さらにAIを高度に組み込んだ「スマートサポート」や新規製品サービスの開発など、より利益率の高い事業活動へとシフトさせる。

「経営資源の制約を克服する『リープフロッグ型』成長経営の実装」: リソースの少ない小規模企業だからこそ、トップダウンの俊敏な意思決定とAI(デジタル部下)によるホワイトカラー業務の補完を融合させ、大企業に引けを取らない労働生産性を維持した「右肩上がりの計画経営」を実現する。

今年の2次試験において、本事例が投げかける重要テーマは「AI・デジタル時代における組織・マーケティングの再構築」であり、具体的には以下の4つの論点に分解されます。

  1. 「暗黙知・専門知識」の補完による若手人材の早期戦力化(事例I・事例III)
    従来、ベテランの「勘と経験」や「多大な学習時間」に頼っていた高度で複雑な技術知識(暗黙知)の獲得を、AIの要約・翻訳機能を用いて迅速に「形式知化」し補完するアプローチ。
    2次試験での活用: 「特定の優秀な担当者に業務が集中し、業務効率が低下している」「若手が育たず属人化している」という組織の弱みに対し、AI活用や標準化によるナレッジの共有・若手戦力化という処方箋としてそのまま機能します。
  2. 「AIと人間の最適な役割分担」によるプロセスカイゼン(事例I・事例II共通)
    広告のドラフト作成や請求書処理、翻訳などの「1次作業や定型業務(たたき台)」はAIが圧倒的スピードで実行し(労働投入量の最適化)、人間は「意思決定・高度な推敲・ファクトチェック・顧客対応」といった人間にしかできない感情労働・判断業務に時間を集中させる(付加価値の増加)アプローチ。
    2次試験での活用: 生産現場のカイゼンや営業効率化において、ただITを導入するだけでなく、人間の工数を「どこに再配分して付加価値を高めるか」まで言及する答案構成で大幅な加点を得られます。

まだまだ事例はたくさんある

あと18事例あります。まだまだ今年の2次試験の論点はこの中に隠れているでしょう・・・。
全25事例の共通点を探し出すと、予測の精度も上がるのではと思いつつ・・・。

最後に

白書を暗記する必要はありませんが、「国が今、中小企業にどう変わってほしいと考えているか」というバックボーン(白書の方向性)を理解しておくことが、事例企業の課題を正しく診断し、出題者の意図に沿った「合格答案」を書くための強力な軸となります。

マイノリティーなやり方ですが、白書の事例にも積極的に取り組んでいただけたら幸いです。

お次は、『じぇい』の登場です!  おたのしみに!!!

予想を諦めたべし
予想を諦めたべし

ずばり明日はお休みでしょう!

そやな、明日は火曜日だからな!!

告知してほしいじぇい
告知してほしいじぇい

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“【シリーズ化】白書の事例から2次試験を予想する(各事例から考える2次試験の超重要論点)~ byべし”へ4件のコメント

  1. しょー より:

    貴重な記事ありがとうございます。
    半信半疑で、中小企業白書2026の事例企業を全て読みました。
    過去問の事例で出てくるような企業がたくさん掲載されてますし、
    べしさんがおっしゃる通り、中小企業庁の考える模範となり、今後事例となりそうな企業がたくさん掲載されていました。

    たくさんの事例に触れて、本試験の事例を読む際の解像度も高まりそうです!べしさんが記事にしてくれなかったら中小企業白書の事例企業を読もうとは思っていなかったので、ありがたい助言でした。

    1. べし より:

      しょーさん
      コメントありがとうございます!正直アクセス数が少ないからシリーズ化は悩みましたが、
      しょーさんのコメントで報われました。こちらこそありがたいです。

      そうなんです。今後の事例で出題されてもおかしくはないです。
      たくさんの事例にふれるにはもってこいです(白書は無料だし! なお模擬試験は有料・・・。)。
      各事例企業をSWOT分析しながら、課題、取り組んだこと、今後の展望をとらえて読むと、
      事例Ⅰなら、
      第1問 SWOT分析せよ
      第2問 取り組んだ理由は何か、また狙いは何か
      第3問 組織改編をした理由は何か、また狙いは何か
      第4問 今後の発展のために何をすべきか

      事例Ⅱなら、
      第1問 SWOT分析(3C分析)せよ
      第2問 誰と協力して、新製品開発をするか
      第3問 誰と協力して、新規顧客を獲得するか
      第4問 誰と協力して、今後の事業を発展させるか

      事例Ⅲなら
      第1問 SWOT分析せよ
      第2問 何をして弱みを克服するか
      第3問 何をしてもう1つの弱みを克服するか
      第4問 誰と協力して強みを生かして新規事業に進出するか

      などの問題が想定できます。
      白書の施策(各事例の対応策)を事前に頭に入れておくことで、本番に何を書こうか困ったときに、きっと助けになります。
      昨年の私がまさにそうでした(困ったら協業、デジタル化、競合と戦わない・・・など)

      事例Ⅰ~Ⅲ共通するのは
      S×O他社の登場人物の強み(機会)は活用しましょう。自社の強みを掛け合わせて、進展させましょう!
      W×O自社の弱みを他社の登場人物の強み(機会)を活用し、困難を乗り切りましょう!
      S×T競合相手(脅威)を自社の強みで無力化しましょう(競合相手と競合しないような市場を狙いましょう)!
      これが試験で思いつくと、実務補習も乗り切れる実力がついていると思います!
      試験合格のみならず、実務補習も視野に頑張って下さい!応援しています。

      1. しょー より:

        確かに読むのに時間がかかります(私は全事例を目を通すのに4時間かかりました。)し、あまりメジャーな勉強方法ではないので、反響は少なかったかもしれませんが、私は中小企業庁が今の中小企業に求めるDX化や事業継承、地域活性化、海外展開などの模範事例が記載されているので、答案を書く際の引き出しの幅が広がってよかったと思いました。

        もう一つ感じたのは、今年の中小企業白書は労働生産性について、詳しく記載されているので、今年の事例Ⅳは労働生産性分析が出題されるのでは?と思いました。対応できるように重点的に勉強しておきたいと思います。

        1. べし より:

          しょーさん
          さらなるコメントありがとうございます!
          知る人ぞ知るでもいいかなーと思いはじめました。
          (相対評価の試験ですから、数少ない知っている人が有利になる。)
          (中小企業庁は白書の内容を、まずは素直に参考にする人を診断士にしたい。診断士のバイブルですから(予備校の先生のブログより))

          答案を書く際の引き出しの幅が広がると、どんな事例でも対応できる「初見問題に対する現場対応力」がアップすると思います。
          最近の傾向として、この「初見問題に対する現場対応力」が合否を左右していると思います(どこかの予備校の先生もブログ等に書いていたかも)。

          過去問演習とともに、「初見問題に対する現場対応力」を磨いていくと合格をぐっと引き寄せられると思います。

          労働生産性は4年ぶりに事例Ⅳで出題されてもおかしくはないですよね!
          労働生産性を求める式は過去に1次試験でも、中小で出題されています。
          たしか、3-4種類くらい分解できたと思います。
          事例Ⅲの視点でも、不良率を低下させる施策により、設備生産性を高めることで労働生産性の改善を図る などがありそうです(事例2-2-15)。

          掘り下げていくと過去に出ていた論点、まだ出題されていない論点が見つかると思います(それを少しでもブログで伝えようと思っています)。
          読む人ぞ知る、まさに診断士試験の差別化戦略!と言ってもいいと思います。

          応援しています!!

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