5月の最後は経済学・経済政策~補:経済成長

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カワサンです。

前回、渾身シリーズとして経済成長理論を触れましたが、リクエストの中身に不足があるとのご指摘がありましたので、補論します。
その前段に、1次試験まで40日少々という時期ですから、経済学・経済政策の試験対策について少し話します。
(今日取り上げる過去問は中小企業診断協会HPから引用しています)

 

1.経済学・経済政策との向き合い方

あらためて過去問を見て思う、3つの要点。

(1)用語に惑わされるな

問題文を見ると、参考書に載ってない(もしくは注釈に書いてあるレベルの)用語を出したり、惑わそうとするリード文(「最近、○○が話題になっている」等)が出てきたり、出題者の陽動作戦が展開される場面があります。
それらは大概、衣をまとっただけの、きわめて教科書的な問いだったりします。

参考書を見ると人名がしょっちゅう出てきますが「ノーベル賞狙いで名付けたんでしょ!」と上から目線で深く追わず、何の頻出論点に絡んでいるのかを、解説から理解すべきです。
基本は頻出論点から抑えましょう(オススメ記事のpick upを後述)。

 

(2)グラフは数式系とビジュアル系

グラフ問題もさまざま。

・リード文で条件を読ませまくった後「これどうなるの?」と問うてくる数式系。リード文が長いせいで選択肢が次のページに記載。ページめくる手間&周囲のペラペラ音にイライラ。

・関数の式も与えられず「画像はイメージです」的なことしか書かれていないビジュアル系

例えばビジュアル系はこちら。

【経済学・経済政策】平成24年・第18問
下図は、2つの生産要素のみを用いて、2つの最終生産財を生産する場合を想定したものである。この図の説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 生産関数1の限界生産物は逓減している。
b 生産関数1は、規模に関する収穫逓増を示している。
c 生産関数2の限界生産物は逓増している。
d 他の条件が等しく、同じ生産量を実現しているとき、生産関数1を有する企業が生産に要する費用は、生産関数2を有する企業のそれよりも小さい。
〔解答群〕
ア aとd
イ bとc
ウ bとd
エ cとd

正解は「ア」です。

「逓増」「逓減」は普段使わない言葉ですが「逓=だんだん」と押さえておきましょう。
「だんだん増」「だんだん減」です。これで選択肢a,b,cは倒せます。

dはどうでしょう。ここは「同じ生産量」で補助線ですね。

「要素投入量」を「費用」と言い換えている点に出題者の陽動作戦を感じますが、言っていることは同じです。こういう風に、しれっと言い換えられている表現を見抜くことも大切です。

※数式系は「3.」で取り上げます

 

(3)残り日数注意!「分からない」といって深追いしない

凛々しい事いえば、理論が腹落ちした状態で解けるのが望ましい姿です。
が、試験は待ってくれません。どこまでやるべきか絞りながら、確実な得点力を伸ばし60点に届くことを目指すしかありません。
先日3chが、今時期から経営情報システムを深追いしすぎないでと言ってましたが、経済学も同じような事が言えます。

診断士試験における経営情報では、皆が解ける基本論点を確実に押さえることが重要で、広げすぎない深追いしないことが得策です。もし深追いできる余裕があるのであれば、その時間は財務会計、経営法務または中小企業経営・政策に使い、その中でも特に中小企業政策の細かな施策(過去問の後半部分)の暗記に投入する方がトータルでの点数は伸びると思います。

経済学・経済政策も全く同じです。
「幸先よく高得点取ってやる」と思うとハマりますので、1日目の他の3科目(財務・会計、企業経営理論、運営管理)の論点を抑え、平均60点越えを狙うほうが戦略として手堅いと思います。

 

2.押さえておきたい頻出論点

リクエストの解説前に、ほぼ毎年のように出る論点、直接問われなくても理解しておきたい論点を並べておきます。まずこちらを「しっかり」押さえて下さい。そうでなければ、3.を読んでも得点力には直結しません。

■マクロ経済

【渾身】経済学・経済政策のツボ ~IS・LM曲線~
・AS曲線:【経済学】 労働市場(雇用の理論)
経済:AD-AS分析のときの経済政策の効果
きちんと理解するマンデル=フレミングその1(経済学・経済政策)
・マクロ論点総合:【経済学】 4.グラフ対策part3
・とりあえずグラフ!【渾身】グラフを一気見して理解する経済学

■ミクロ経済・需要と供給(市場メカニズム)

【独学者向け】経済学解説①「費用関数」
【独学者向け】経済学解説②「消費者行動の分析」
【独学者向け】経済学解説③「余剰分析、貿易、ゲーム理論」
【経済学】 5.ミクロ経済学知識問題

■その他の論点

【独学者向け】経済解説④「時事問題」
【経済】最初の1マーク

 

ちなみに、過去の記事これだけストックありますので、皆さんが悩んでいる所のヒントがあるかもしれません。ぜひキーワード検索等も使って探してみて下さい。

 


 

3.リクエスト論点の解説

経済成長に関する理論(45度線、IS-LM、AD-AS分析は除く)の出題傾向を。

手を変え品を変え出てくる傾向ですかね。頻出論点の解法が確立出来たら、手は付けておいても損はないと思います。
反対に、ミクロ経済やマクロ経済の頻出論点の理解に苦戦してる方は、この時期にココを深追いするのは危険な香りがします。まずはグラフ見てしっかり解けるようにしましょう。

ではリクエストのあった問題です。
この問題、理屈まで腹落ちして解けた人は免除要件満たせるレベルかと。

【経済学・経済政策】平成27年・第11問
昨今、外国人労働者の受け入れの是非が議論されている。
2種類の生産要素、資本Kと労働Nを用いて、生産Yが行われる。資本と労働、そして生産との関係を、労働1単位あたりの資本と労働1単位あたりの生産との対応関係である、次の生産関数で表す。
 y=f(k)
ここでk=K/Nは資本・労働比率を、y は労働1単位あたりの生産量を表している。また、労働供給は一定率nで増加し、常に完全雇用が実現しているとする。
また人々は、所得の一定割合sを常に貯蓄するとする。
新古典派の経済成長モデルの下図を参照した上で、外国人労働者の継続的な受け入れによる労働成長率の上昇が、定常状態における資本・労働比率と労働1単位あたり生産量に与える影響に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。ただしk1は、定常状態の資本・労働比率を表している。
〔解答群〕
ア 資本・労働比率は上昇し、労働1単位あたり生産量は減少する。
イ 資本・労働比率は上昇し、労働1単位あたり生産量は増加する。
ウ 資本・労働比率は低下し、労働1単位あたり生産量は減少する。
エ 資本・労働比率は低下し、労働1単位あたり生産量は増加する。

(1)この問題(に限らず、経済学・経済政策の出題スタイル)が嫌らしいところ

①見慣れないグラフ
・生産関数だが捻りが入っている

②時事ネタを織り交ぜる長いリード文
・グラフと設問を見て陽動作戦と見抜きたい

③いろんな用語オンパレード
・「単位当たりの…」微積が分かる方、Δ(デルタ)で認識。分からない人「ちょっと増やす」で認識。
・「資本・労働比率」(←実は「要素投入量」でしかない)
・「完全雇用」45度線やAD-ASじゃないの!?(←と思ったら知識レベル◎)
・「新古典派の経済成長モデル」(←???でも安心してください)
・「定常状態」もはや化学?(←一呼吸おくべし)

これを前にして、冷静に解ける心を試験会場で持てるかどうか。
それが正答へ向けた最初のカギ。解法のアプローチが2個あります。

 

(2)学術的アプローチ

過去に解説がございますので、こちらを参照ください。
貯蓄率sが出てきていますので、投資I→IS曲線の定義から導出できます。

 

(3)見ながらかじりついてみるアプローチ

設問から、式に代入できるところに落書きしましょう。

生産関数」というワードで思い浮かべたいのが「収穫
私の頭には小麦畑が広がります。

今回は「一定」と「逓減」が登場していると見抜けますね。そして問いから「逓減」が論点と分かります。

さて、ここで問題を見ましょう。
「労働成長率」カッコよく書いていますが、要は労働供給率nの増加。つまりこのモデルで、Nの数値を増やしたらどうなんの?いうことですね。

ここまで来たら数学の関数の問題。
f=n(k)nが増→急な傾き→k1は左方シフト。
nが増⇒労働供給N増加→K/Nの分母(労働=N)が増加→k=K/Nより f=(k)傾きは緩やかになる→資本・労働比率(=K/ N )は低下
k=K/Nより f=(k)は減少する。⇒単位当たり生産量は減少する

正解は「ウ」

という事なんですが、深く考えてしまった方に1つの疑問。
N増えていくとき、Kの変化ってどうなるんですか?」

ここなんです。厄介なの。

だがしかし、
駄菓子菓子、

落ち着いて考えてみましょう。
N増えたらK増える条件って何だ?」

つまり「人口増えたら資本が増えるんか?」という話です。

「資本が増えるのは貯蓄率sが増加」じゃないですかァ~?

人口N増⇒貯蓄増⇒投資I増⇒資本Kが増加
(補足:投資Iが増加する要因は貯蓄の増加⇒IS曲線の導出過程より)

なんですが、でも「貯蓄」があがっても K/Nの比率って上がります???
絶対額が増えても、比率は一定ですね?
1/1だって100/100だって「1」じゃないですか。

貯蓄率が上がるから、労働Nに対して資本Kの比率が変化するのです。

この問題、新古典派経済学の「ソロー=スワン・モデル」に関係するのですが、式の理解をするとめちゃくちゃ難しいので深追い注意ですね。
この問題、やはり理屈で攻めると難しいです。

 

【参考サイト・文献】
経済学道場
マクロ経済学 第2版(伊藤元重)

 

では、また!


☆☆☆☆☆☆☆

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5月の最後は経済学・経済政策~補:経済成長”へ2件のコメント

  1. 匿名 より:

    リクエストした者です。再度ありがとうございます。最後のあたりでいろいろと考えまして感想といいますか

    ①>k=K/Nより f=(k)傾きは緩やかになる
    独立変数の変化なのでグラフの形状は変わらないような。

    ②>人口N増⇒貯蓄額増
    貯蓄が増えるのは生産量か貯蓄率が増えたときであって、労働人口の増加がそのいずれかを引き起こさなければそのようにならない気が。労働者一人当たりに対し一定の貯蓄を義務付ければ別とも思いますが。

    ③>貯蓄率が上がるから、労働Nに対して資本Kの比率が変化する
    なのでそうなると思うのですが、そもそもこのモデルは設問にもあるように貯蓄率を定数として議論するモデルのような気がしました。「N増えていくとき、Kの変化ってどうなるんですか?」というのは別の機会に考えた方がいいのかなとも思いました。

    これ以上の回答は大丈夫です。あとは自力で考えます。結構理解できました。本当にありがとうございました。

    1. カワサン より:

      匿名さま
      コメントありがとうございます。
      微力ながら理解のお役に立ったようで何よりです。
      1次試験も迫ってきました。お身体に気をつけて最善の成果が出せることを祈念申し上げます。

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