【合格体験記】完全独学!模試受験無し!ECRSの原則による勉強時間捻出で歩んだ合格への道~クチバシさん~
こんにちは、noriです。2016年度試験に合格した皆様、合格おめでとうございます新年が明けてから、中小企業診断士・受験生交流会に参加したり、実務補習セミナーで合格者の皆様にお会いする機会がありました。合格者の皆様は実務補習やこれから待つ新しい世界に向けて、とても晴れやかな顔をされていました。2017年度試験に挑戦する皆様は来年の今頃は同じような気持ちで新年を迎えています。楽しみにしていてくださいね。
さて、本日は、1次1回、2次2回、模試にも勉強会にも参加せずに完全独学で合格を勝ち取ったクチバシさんの合格体験記です。クチバシさんの試験への姿勢、勉強方法には合格へのヒントがたくさん詰まっています。それではどうぞ!
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(0)受験生情報
クチバシ(30歳)
関西の某有名進学校(学年の1/2は東大か京大か医学部に行くようなレベル)に通いながら第一志望には現役・浪人ともに不合格。関関同立の経営学部に入学。就職活動も、第一希望の会社の最終面接で落ち、第二希望の会社に勤務。新卒採用1年、経営企画2年経験し、転職。現在は人事制度運用の仕事を3年・並行して300人規模の会社の人事を2年。
(1)診断士に挑戦した理由・きっかけ
・経営企画や人事制度の運用などをして、全社的な視点を持ったような気になっていたが、具体的な法律や工場の生産管理といったこと、システムのことなどについてよくわかっておらず、知識の抜け・漏れが多いことが気になっていた。
・若さも相まって、提案が伝わらないことも多々あり、何か知識のお墨付きがほしいと感じていた。
・中学受験・大学受験・就職活動・・・と、第一志望に落ち続けてきたため、何か「やりきった」という実感が欲しかった。
(2)学習開始時の知識・保有資格、得意科目・不得意科目
①知識
大学が経営学部だったため、企業経営理論は全体的に勉強したことはあった。管理会計・人事制度(人材配置や人事考課)・労働関係法務は得意。定量的な分析が好き。(逆に定性的な分析は得意ではない)
②保有資格
建設業経理事務士(1級)
BATIC(英文簿記) Accountant Level
③得意科目
財務・会計
企業経営理論(人的資源管理の部分)
経済学
④不得意
中小企業経営
経営法務
経営情報システム
(3)学習スタイルとそのメリット・デメリット
独学。
単科受講や模試などの受験も無し。勉強会への参加も無し。
①メリット
とにかくお金がかからなかった。
②デメリット
ペースや気持ち面では特に感じなかったが、ところどころ、「これってどういうことなの?」と思うことの質問が出来ず、自分で納得できる情報を探しに行くのが少し苦労しました。
(4)合格までの受験回数、学習時間とその作り方
①学習開始時期と受験回数
2014年12月から勉強開始。
1年目は1次合格・2次不合格
2年目で2次合格(2016/12/23時点では論述のみ)
②一次学習時間
トータル時間はカウントしていません。
平日は朝5時〜6時半まで・昼食後30分・帰宅後12時まで。
休日は予定が無ければ14時間ぐらい。あれば8時間程度。
12月〜5月は1科目を2週間で総ざらい×2周。
6月〜7月中旬は1週間/教科×1周
7月中〜8月は、教科問わず問題集を繰り返す+わからないところを繰り返し+中小企業経営
7月末に夏休みがあり、1週間で100時間以上したと思います。
③ニ次学習時間
これもトータル時間はカウントしていません。
1年目はTACの過去問集1冊分5年×4事例×2回ずつ
2年目は過去問を模範解答の見つかった7年分、各5回ずつぐらいやりました(7年分×4事例×5回ずつ≒140回)
学習時間の作り方
一番工夫したところだと思います。勉強開始前までは、だらだらと働くこともありましたが、「今残業を1時間して小銭を稼ぐか、効率的に働いて将来に役立つ勉強をするか?」と考え、とにかく、業務を効率化することを考えました。
ECRSの原則に従った業務効率化
ちょうど、最初に運営管理を勉強し始めたこともあり、「ECRSの原則」を業務に適用することを考えてみた。やってもやらなくてもいいような業務はないか?業務を並べ替えて効率化出来ないか?シンプルにならないか?・・・ 考えると、業務はムダだらけだったことに気づけました。残業時間は月平均40時間から10時間以下に減らせました。
(5)合格までの学習法
①1次
総じて
TACのスピードテキストのみで十分
教科書として使ったのはTACのスピードテキストのみです。電車の中でもちょっとした空き時間の喫茶店でも勉強できるように、購入後、自炊してタブレットに入れていました。
TACの問題集を繰り返しやる
問題演習は、TACの問題集のみを何度も繰り返しました。その際、「○○だから正解」だけでなく、何故他の3つの選択肢は×なのか?の説明をしながら演習。(この説明は××の説明で、××はこういう特徴がある・・・なども合わせて復讐すると尚OK)上記全て答えられて正解とした。できなかったもののみを繰り返して、全て出来るまでがワンセット。
直前2週間は、一度正解したものも、もう一度やり直し、間違えたところには付箋を貼って、2周目は合っていたら剥がしていき、付箋が出ていない状態にできればOKとしました。
過去問はABランクを必中出来るようにした
簡単な問題を絶対落とさなければ、1科目で40点を下回るようなことも、合計して60点を下回ることも無いと判断しました。そのため、過去問集を解く際も、ABランクのみを徹底して復習し、絶対に落とさないようにした。CDは復習して、納得できればOK。 Eランクは二度と出ないと判断し、解説さえ読みませんでした。
勉強したことを社内で展開することで、合法的に(?)知識の定着
勝手に業務時間内に勉強するのはNGだと思いますが、知識の展開なら許されるだろう、という発想から、勉強した内容を社内で展開するようにしました。人事なので人件費のシミュレーションをする際、財務会計で習う高低点法やスキャッターグラフ法の使い方を伝えたり、ミスを減らそうという話になった時にQC道具の話をしたり、後輩に、役員と執行役員の違いを伝えたり・・・
折角得た知識を、ことあるごとに社内に展開することで、知識の定着をはかりました。復習になったことに加えて、だんだん、「今勉強している内容は、日常業務で知っていると有利になる知識なんだ!」と感じはじめ、勉強が楽しくなっていきました。
やってみたものの、意味が無いと思ったこと
手書きでまとめ直すこと。 手がシンドイだけで、結局知識の定着にならないとおもいました。
その代わりに、どうしても覚えられないものはPCで入力しておき、直前期は毎日読み返していました。
科目ごとの勉強法について
経済学・経済政策
元々経営学部だったこともあり、数学が好きなので苦手意識はとくにありませんでした。
需要供給曲線の推移などについては、何度も何度もグラフを描き、アニメーションのようにして理解して覚えるようにしました。
財務会計
建設業経理事務士1級を持っていたので、ほぼ復習レベル。とくに苦労はありませんでした。デリバティブや為替予約は定着までに少し時間がかかりました。
企業経営理論
マーケティング関係の経験が無かったので、最後まで苦労しました。また、人事法規については、人事担当でも難しいものが多々。完璧は無理だと割り切るのも必要だと思います。
運営管理
工場での勤務経験がなかったこともあり、最初は面食らいましたが、前述したように、工場管理の方法論をホワイトカラーにも転用できないか?などを工夫し、実体験で覚えるようにしました。店舗管理は、街を歩きながら、勉強した内容の確認をした。(あれはファサード、この店はゴールデンゾーンに○○を陳列している・・・ など)
経営法務
特許法や、会社法の細かな違いなどは、表にして違いを理解するようにしていました。英語の問題はコスパが悪いと判断し、無視することにしました。
経営情報システム
いつまでも覚えられず、苦労しました。(特にRAID◯とかLANの方式とか・・・)統計は費用対効果が低いと判断し、無視することにしました。
中小企業経営・政策
早めに着手しても、どうせ忘れると割り切って直前に詰め込みにしました。暗記はあまり得意ではなく、いつまでも覚えられないので、知った知識について、驚くことを重視して、覚えるようにしました。
本番では
とにかく見直し重視で、判る問題を確実に当てる
試験時間は基本的に余るので、何度も何度も確認。勘で答えざるをえない問題には印を付けておいて、考えれば判るはずの問題を特に注力しました。
適当に解答しない。頭を使って運で当たる確率を上げる
わからない問題でも、根拠を付けて可能な限り選択肢を絞り、1/4から 1/3,1/2まで、運で当たる確率を上げるようにしました。(そのため、中小企業白書のような、知識がすべての問題であっても、鉛筆を振るとか、適当な解答は一問もない)
【結果】2015年度
1.経済学・経済政策(80)
2.財務・会計(76)
3.企業経営理論(73)
4.運営管理(74)
5.経営法務(52)
6.経営情報システム(64)
7.中小企業経営・中小企業政策(60)
②2次筆記
1年目 なんとなくは解けるようになったものの、抜き出しの粋を出ず
本屋で何冊か2次対策の本を立ち読みし、「中小企業診断士2次試験 世界一やさしい答案作成術 (DO BOOKS)」が一番参考になりそうだと思い、購入。非常にわかりやすく、問題文を色分けする方法は自分に向いていると思え、1次試験合格後に勉強を始めた割には、2次試験では総合B評価が取れるほどまでには引き上げてくれたと思いますが、1年目は、自分の中で「こう解答できたら正解」というものが見つけられなかった。
そのため、勉強していてもどこか上の空というか、答えに自信が持てない状態だった。
本番の手応えはまあまああったと感じたが、今思い返せば、すべての問に対して抜き出しにとどまってしまっていたように思います。
結果:事例ⅠB / 事例ⅡB / 事例ⅢA / 事例ⅣB / 総合B
事例Ⅳで固定費削減による損益分岐点の変化に関する計算方法が飛んでしまい(練習では出来ていたのに)かなり悔いが残る結果となりました。小学生時代から続く決定力の無さがまた出たのかと思い、30前の男が泣くほど後悔。2次の「雲をつかむような感覚」が嫌になり、やめようかとも思いましたが、そもそも挑戦を始めた理由の一つに「やりきった」実感が欲しかったからだ、と思い返し、翌年も挑戦することにしました。気持ちが萎えるのを避けるため、一年間携帯の待ち受け画面を不合格通知にして悔しさを忘れないようにしました。
2年目 グロービスのクリティカル・シンキング受講が転機に
2年目に入るにあたり、1次の知識の再定着のために教科書を再度読み直したり、1~2事例/日を解いたり、MBAのケーススタディの本を読んでみたりしたが、イマイチピンとくるものがなく、悶々としていました。
たまたま会社の補助でグロービスのクリティカル・シンキングを受講できたのが一番の転機になったように思います。
習うことはざっくりいうと以下の通りです。(他にもありますが)
・イシュー(≒問われていること)をずらさないようにすること
・枠組みで論理を支えること
・検証する前に仮説を立てて答えを探すこと
シンプルなことだが、これが「わかる」のではなく、「出来る」ようになるために、2週間毎日1つ、自分でイシューを設定し、枠組みを発表するトレーニングが課せられ、大変有効でした。(その後、枠組み後、仮説を考えるトレーニング・伝えるためのトレーニング・・・と続くのもよかったと思います。)
具体的に活かした方法は以下の通りでした。
最初に与件文ではなく、問題文を読み、語尾と枠組み案をチェック。
語尾が「述べよ」「あげよ」「思われる(考えられる)か?」によって、
・「あげよ」であれば列挙だろう。
・「述べよ」であれば原因や効果についても記載するのだろう。
・「思われるか?」なら、答えは本文に書いていないので、過度に探しすぎず、かつ抜き出しだけにならないように注意するべきだ。
・・・などをまず意識するようにしました。
枠組みの検討
QCD、SWOT・5forces などの教科書的な枠組みの他に、時系列も意識。
・「優秀な人材の確保」→採用・教育・退職管理かな?
・「売上を増やす」→購買者数増 × 単価増かな?
・「購買者数を増やす」→店舗認知増 × 来店率増 × 購買率増かな?等
また、枠組みはMECEにするよう意識をし、必要に応じて枠組みを更に分解しつつ、文章中の制約要件から、レベル感を察するようにしました。
与件文を読み終わった後、再度問題を読み、「一言で答えるならどう答えるか?」を意識。
「売れないのは何が原因か?」→価格が高いからです。
「利益が出ないのは何が原因か?」→歩留まりが悪いからです。 など。
その後、枠組みで理由を肉付けしていく、という流れでした。
③2次(口述)
普段の仕事では、手元に資料を用意した状態で話をしているため、全く事例が頭に入ってこず焦った。とにかく笑顔で愛想よく堂々とすることだけを意識。また、はっきりと発声することを心がけました。
99%合格するとは言え、控室の静まり返った空気の中にいると案外緊張してきたので、ギリギリまでトイレや廊下に居ました。
(6)学習時・受験時のエピソード・アドバイス
独学で十分可能だと思いますが、以下の点は意識しておくことが大切だと感じます。
モチベーションの維持が大切
独学をする場合は、自分自身の中で気持ちが切れてしまわないようにモチベートし続ける必要があります。私の場合は、“中小企業診断士”の学習仲間は居ませんでしたが、中高時代の友人は元々物凄く頭がいい上に、私が普段勉強するより遥かに勉強熱心な人ばかりであり、このままだと差が開き続け、同窓会にも行けなくなる、という猛烈な恐怖心と、うだつの上がらない人生などは歩みたくないという思いが一番の原動力でした。
ペースを作るために、阻害要因をリストアップ
また、ペースを作り続ける必要もあります。最初に、合格できるレベルと、自分の今のレベルを分析するのも大切ですが、もう一点、「阻害要因」をクリアにしておくべきだとも思いました。自分が勉強し続けるにあたって、何が邪魔になるか?そのインパクトはどのぐらいか?私は、どうしても気が塞ぐ時期があり、合計すると1年に1ヶ月位は本調子じゃなくなるだろうというのがわかっていたので、勉強期間は1ヶ月短いつもりでスケジュールを立てていました。(7月本試験でも受かるつもり)
どうしても勉強したくないときは
どうしても勉強したくない時期もあると思います。私の中のルールで、「どうしても勉強したくないときは、勉強しなくても良い」が「他の何もしてはいけない」というものを定めました。読書も、ケータイを触るのも、ゲームも散歩もテレビも全てダメとしました。本当に「何もしない」ことだけを許す、そんな環境では2時間ともたないので、嫌でも勉強を再開することになります。
最後に
長文ですが、読んでいただき、ありがとうございました。決して楽ではなかったですが、勉強をするのは本当に楽しかったです。今から勉強を始められる皆さんも、皆さんに合ったやり方はあると思います。記載している今、2次の口述の結果待ちですが、挑戦してよかったなと思っています。
挑戦される皆様が、最後まで完走されることを期待しております。
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いかがでしたでしょうか。
クチバシさんの合格体験記で注目すべきは3点。
1.(1次・2次共通)「わかる」ではなく「できる」ようになるよう工夫して勉強していること。
1次試験の繰り返し学習での工夫、職場や日常生活でのアウトプット、「わかる」から「できる」ようになるクリティカル・シンキングのトレーニング
2.リスクを見越した勉強計画
7月本試験でも合格できる準備、どうしても勉強したくない時はどうするのか自分の中でのルール決め。
3.合格への執念
1年間携帯の待ち受けを不合格通知にして、自分を奮い立たせる合格への決意。
合格するべくして、つかんだ合格ですね。本当におめでとうございます
2017年度試験に挑戦される皆様もクチバシさんの合格体験記からエッセンスをパクってカスタマイズしてくださいね。
大丈夫。 あなたは、ぜっ~~~たいに合格しますから!
nori でした。
nori 様
長文にもかかわらず、掲載いただきありがとうございました。
これが、今後志望される方の一助になればと願う次第です。
くちばし様、合格体験記を寄稿いただき、ありがとうございました。わかりやすく、具体的にポイントを書いて頂いたので、多くの方が今後もご参考にされると思います。また、あらためて合格おめでとうございます!くちばし様の今後の益々のご活躍をお祈りいたします。