【経済学】 スルツキー分解と異時点間の消費

 

こんにちは、 Xレイ です。

今日は、2016年度一次試験に向けて経済学。

ストレート生は、「まだ経済学なんて学習していない」という方が多いのでしょうか。そのような方には、今後学習した際の参考になればと。

 

ミクロ経済学からスルツキー分解、そして、その応用として出題の可能性がある異時点間の消費
スルツキー分解については、以前にもこちらで扱いました。内容は重複しますが今一度それを確認した後、そこでは説明しなかった異時点間の消費(二期間消費モデル)に移っていきます。

前半のスルツキー分解のポイントは、以下の二つ。
 3つの変数を扱っている
② 補助線の引き方やその意図
ここに着目をします。

後半の異時点間の消費は少々難しいところでしょうが、来年こそは絶対に60点以上をという方は、知っておいた方がよろしいのではないでしょうか。

 

スルツキー分解

“スルツキー分解のグラフがイマイチ解りづらい”
それは『3次元を2次元で表しているから』です(たぶん)。

無差別曲線とは、

図1

例えば、図1の左のような縦・横・高さ軸を持つ3次元の効用関数を、あたかも上から見て投影したかのように2次元化したもの、と捉えることができるでしょう。

その2次元化したグラフに、予算制約線を書き加えてみると

図2

例えば、このように。
よく目にするスルツキー分解のグラフです。

そこで仮に、このグラフは最適消費点が点Lから点Nに移ったところを表しているとすると、このとき何の値が変化するのか分かりますか?

答えは、X財の消費量Y財の消費量効用の大きさ
3つの値が変化します。

つまり、スルツキー分解のグラフは2次元でありながら、3つの変数を扱っているということです。まずは、ここをしっかりとおさえておくことが重要です。

 

それでは、スルツキー分解です。

図3

いまX財の価格が低下して、最適消費点が点Lから点Nへ変化したところです。

もう少し詳しく言うと
「X財の価格低下によって、X財の最大消費量がBからCへと増加した。
それに伴って、予算制約線がから水色へ、また、最適消費点は点Lから点Nへと変化をし、効用がからピンクへ向上した。」
とこんな感じでしょうか。

このようにX財の『価格が変わったことによる消費量の変化』のことを
価格効果(全効果・全部効果)』といいます。

この価格効果、すなわち、点Lから点Nへの消費量の変化は、以下の2つの効果が合わさったものです。

まず、X財の価格が低下すると、2つの変化が起こります。
① Y財と比べて相対的にX財が安くなる(2財の価格比が変化する)
② 実質的な予算(所得)が増加する

すると、その各々の変化は、2つの効果を生み出します。
① X財とY財の消費の比率を変える
② X財とY財の消費の全体量を変える

そして
①の効果を『代替効果
②の効果を『所得効果
と呼ぶのです。

すなわち、価格効果代替効果所得効果分解され
価格効果』=『代替効果』+『所得効果
と表せます。
これが、スルツキー分解です。

そこで試験では、
代替効果による消費量の変化はどの程度?」
所得効果によってX財の消費量は増えたの、減ったの?」
などなどグラフを通して聞かれるのです。

それでは、図3の代替効果所得効果がどれ程か調べてみましょう。

いま価格効果は分かっているので、あとどちらかが分かれば引き算です。
そこで、代替効果を求めてみます。

代替効果』とは何なのか。先ほどよりも詳しく言うと、
『財の価格比が変化したとき、いまと同じ効用を得る
ための消費量の変化です。

それではもう一度図3を見てみます。

図3

X財の価格が低下したことによって、
確かに、2財の価格比は変化しています(予算制約線が水色へ)。
しかし、効用も変化してしまっています(無差別曲線ピンクへ)。

代替効果
は価格比が変化したときに同じ効用を得るための変化なので、
価格比(=予算制約線の傾き)は変化後のままにして、
効用(=無差別曲線)は変化前と同じ状態に戻してみましょう。
すると、代替効果が分かるはずです。

それをグラフで行うと、図4。

図4

変化後の予算制約線(水色)と平行な補助線
変化前の無差別曲線()と接するように引く
ということになり、そこで新たな消費点Mを得ます。

そして、最初の点Lからその新たな点Mへの変化こそが『代替効果』。
あとは 『価格効果』=『代替効果 』+『所得効果』なので、
残りの変化、すなわち、点Mから点Nへの変化が『所得効果』となるわけです。

グラフにまとめて、図5。

図5

 

以上は、X財の価格低下という局面でみてきました。
他にも、①X財の価格上昇 ②Y財の価格低下 ③Y財の価格上昇
のパターンがありますので、各々おさえておきましょう。

図6

 

以上がスルツキー分解です。

 

異時点間の消費

中小企業診断士試験では、平成19年度第16問のようにスルツキー分解の応用として出題される可能性があるほか、平成25年度第13問では単にグラフの傾きや切片が問われました。これらは正答率が低かったはずです。もちろん出題者はそのこと想定済みで、半分以上の受験生が間違えると踏んで出題しています。7、8割の受験生が正解できるような問題に、このような問題も織り交ぜながら全体の難易度を調整しているので、この辺りをしとめられれば自ずと得点上位となるはずです。

それでは。

図7

これは、ある消費者の生涯を2期間に分けて
各々の期間における所得と消費の関係を考えています。

横軸の第1期は若年期、縦軸の第2期は老年期を表していて、
第1期の所得をY1、第2期の所得をY2 とし、それを所与としています。
(定年前と定年後、Y2は年金といったイメージでしょうか)

第1期(横軸)はY1の所得に対して、C1の消費
第2期(縦軸)はY2の所得に対して、C2の消費
を行います。
(変数は実数値、要するに物価の変動は考えない。また、生涯所得はすべて消費に充てる、要するに子孫に財産を残さない。)←よく分からない場合、あまり気にしなくても大丈夫でしょう

そこで例えば、第1期に貯蓄も借入もできないとすると、この消費者は予算制約線上の点Aで消費をすることになります。つまり
第1期(横軸)の所得Y1を、すべて第1期の消費C1に充てる
第2期(縦軸)の所得Y2も、すべて第2期の消費C2に充てる
ということです。

まずここまでは、仮定と言いますか決め事です。グラフの意味(見方)をしっかりとおさえましょう。

 

それでは、第1期に利子率rで貯蓄・借入が自由にできるとき
どうなるか。

図8

予算制約線上のすべての点での消費スタイルが可能となります。

点Aより右側の消費点は、第1期に借入を行ってまで消費をする場合です。
このとき、第2期の消費C2は、所得Y2より少なくなります
それは、第1期での借入を第2期で返済しなければいけないからです。

また、点Aより左側の消費点は、第1期に貯蓄を行う場合です。
このときは逆に、第2期の消費C2は、所得Y2より多くなります
もちろん、第1期の貯蓄を第2期で使えるからです。

そして極端なケース、つまり第1期、第2期のいずれかの消費をゼロとした場合の消費点が、それぞれY切片X切片になります。

第1期の消費C1=0 の場合がY切片
このとき、第2期でできる消費C2は (1+r)Y1+Y2 となります。
第2期の全所得Y2に加え、貯蓄した第1期の全所得Y1に利息も付いてくる、ということです。

第2期の消費C2=0 の場合がX切片
このとき、第1期でできる消費C1は Y1+Y2/(1+r) となります。
第1期の全所得Y1に加え、借入れた第2期の全所得Y2から支払わなければいけない利息を除いた額、ということになります

ここで、“第1期の所得Y1の方が第2期の所得Y2よりも価値がある”
ということが分かりますか?
これが、財務会計でも出てくる現在価値の概念です。

グラフに戻りもう一つ。
予算制約線の傾きは -(1+r) となっていて、利子率rに依存しています。

 

そして、例えば

図9

のような無差別曲線を持つ消費者の場合。
最適消費点である点B(第1期の消費がC1’、第2期の消費がC2’)
で消費をします。この例では
“第1期に(Y1-C1’)の分だけ、第2期へ向けて貯蓄をした”
ということです。ちなみに、
(Y1-C1’)(1+r)=(C2’-Y2)
となるのですが大丈夫でしょうか。

 

さてここで、利子率rが上がるとどうなるでしょう。

図10

先ほどいったように、予算制約線の傾きは -(1+r) なので、
新たな予算制約線は、X軸に対して傾きが急になります。
また、その新たな予算制約線も必ず点Aを通ります
それは、利子率rが変わっても、所得Y1、Y2は変化しないからです。
よって図10のように、予算制約線は点Aを軸に回転したような変化となります。

すると図9の消費者は、例えばこのように消費を変化させます。

図11

これは、利子率rが大きくなったことによって、
『第1期の所得の価値(≒価格)が第2期と比べて相対的により高くなった。また、実質的な生涯所得も増加した。』
そのため、最適消費点が点Bから点Cへ変化したということです。
つまり、この変化を『価格効果』として捉えることができるのです。
すると、『代替効果』と『所得効果』にスルツキー分解が可能となり

図12

このように考えることができるので、スルツキー分解の応用として扱われ可能性があるのです。

しかし、このモデルの本当に重要なところはおそらくそこではなく、
合理的に将来のことを考える消費者”が将来のことを考慮して現在の消費を決める、と仮定しているところにあるのでしょう。
ここが、マクロ経済学のケインズの消費関数にはない考え方で、ライフサイクル仮説恒常所得仮説といった消費の理論の基礎になったということなので。

 

話を戻して、上では貯蓄・借入が自由にできる場合をみてきました。しかし現実には、貯蓄は無理をすれば誰でもできますが、借入はそうはいきません。
そこで、貯蓄はできるが借入が全くできない場合はどうなるか。

図13

このような予算制約となります。
つまり、点Aよりも右側の消費点を選択できなくなります。
すると、“第1期に借入してまで消費することが最適な消費者”は、やむなく効用を下げて点Aで消費をすることになり、図14。

図14

本当は借入をして、の無差別曲線との接点で消費をしたいのですが、無理なのでやむなくピンクで、ということになるのです。グラフから効用が下がっていることが確認できます。
この借入ができない制約のことを、流動性制約といいます。

以上が、異時点間の消費です。

 

余談ですが、前段で触れたように平成25年問13で、途中説明したY切片と傾きを問われましたが、問題はその設問のグラフ。
線分OB>線分OA
に見えますよね。
これ本来、利子率rは正でしょうから、縦軸と横軸の単位、縮尺といったものが等しければ必ず
線分OB<線分OA
となるんですね。
そのようにきちんと描く必要はないのですが、少々意地悪だなと。グラフの形状を信用して、傾きを間違った方もいらっしゃたのではないでしょうか。

 

さて今回は、スルツキー分解と異時点間の消費をみてきました。
前半のスルツキー分解は、本試験では頻出で、解ってしまえばそれほど難しくもないので、確実に得点したいところです。

それでは、また。  Xレイ

 

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