2次試験に必要な「国語力」とは、いったい何か。

こんにちは、うみのです。

今日は過去問の活用方法を出発点に、タイトルのテーマについて考えてみます。

 

以前、あるセミナーで受験生の方から、

 

「過去問を何度も解いていると答えを覚えてしまいます。それって意味はあるのでしょうか?」

 

という質問をいただいたことがあります。

 

皆さんはどう思われますか?

 

私自身の考えでは、「あまり意味はない」です。

以下、その理由について述べます。

 

試験というものはそもそも、「一定の能力があるかどうかという篩(ふるい)にかける」ためにつくられるものです。

では、2次試験ではどのような能力を問われているのでしょうか?

 

中小企業の診断及び助言に関する能力」ですよね。

 

では、「診断できる力」「助言できる力」とはどのような力でしょうか?

 

私はこう考えています。

 

診断できる力とは、

 

・企業の現状を正しく分析する力

・その企業の向かうべき方向性(社長の想い)を汲み取れる力

 

その企業の強みと弱みは何なのか。

機会と脅威はどこにあるのか。

向かうべき方向に進むために、どんな課題を解決する必要があるのか。

これらをきちんと整理して説明できる力が「診断力」だと思います。

 

助言できる力とは、

 

・目指す方向に従って課題を解決すべく、社長を論理的に説得できる力

 

どんなコンサル業でも、「社長を説得することが一番難しい」と言われます。

説得するためには、論理的に因果や根拠を示す必要があります。

社長を納得させ、課題解決に向けて決断させる力が「助言力」だと思います。

 

診断士を志すあなたにそのような力が備わっているか?を量るための試験が2次試験です。

 

そのような視点から過去問を読み解いてみると、

 

与件文は【とりとめのないヒアリングシートであり、

設問文は【①ヒアリングシートの内容から企業を正しく診断できるか ②理解した上で、その企業の課題解決に向けて適切な助言ができるか】である、

 

と見ることができます。

 

この「とりとめのなさ」がポイントです。

診断する力を量るためには、「企業の置かれた現状を正しく整理できるか」で篩にかける必要があるため、わざととりとめもなく書かれているのです。

これが、2次試験における第一の篩です。

 

整理した上で、診断士として求められる専門基礎知識(1次知識)をその現状に当てはめることで、「適切な助言」ができるかどうかが問われます。

これが、2次試験における第二の篩です。

ここでは、「診断士として基礎的な知識の対応付けができるかどうか」がポイントです。

素晴らしいアイデア(思い付き)や専門的な業界知識ではなく、1次試験で学んだ知識のフレーム(SWOT分析や3C、4P、QCDなど)に沿って、診断士としてより妥当性の高い(=共通認識として納得できる)知識を対応付ける必要があります。

これが「人並みベタな解答」ということです

 

ここで冒頭の質問に戻ると、「答えを暗記してしまう」の「答え」を、「ふぞろい」などに載っているA評価(=人並みベタ)な答案がどのような知識の対応付けを行っているかを知ることだとするならば、それなりの意味があると思います。

しかしそれよりも、「与件文と設問文のクセやパターンを知ること」にこそ過去問を解く意義がある、と私は思っています。

なぜか。

答えを覚えてしまったものは、似たようなパターンの設問が出てきた場合には対応しやすいかもしれません。

しかしそれ以上に、2次試験における「篩」がどのようにかけられているかを理解してなければ「単なる暗記問題の解法」になってしまい、事故を起こしてしまうリスクが高まるからです。

 

以下、「2次試験は暗記問題ではない」ということをもう少し掘り下げてみましょう。

 

よく、「2次試験は国語の試験」だと言われます。

「国語の試験」という解釈は、「とりとめなく書かれた文章を正しく整理する」という意味では正しいと思います。

しかし。

2次試験では出題者の意図を汲め、とよく言われますが、「この時の筆者の心情を述べよ」といったような「高度な国語力」だと考えてしまうと、少し趣が違ってきます。

 

そのような「間違い」を生んでしまうのは、予備校の模範解答の弊害のひとつではないかと私は思っています。

(模範解答だけにその原因を求めるものではありませんが)

 

皆さんの中に、予備校の模範解答を見て

こんなハイレベルな文章、どうやったら書けるようになるの?解説を読んでもさっぱり分からないんだけど…

と感じたことのある人はいませんか?

 

模範解答が作成される工程がブラックボックスに感じられるほど、「高度な国語力が必要なんだ!」「想像力を働かせないといけないんだ!」と考えるようになります。

その結果、解答には、このような事故パターンが並ぶことになります。

 

◆「自分もこの事例企業と同じ業界にいるからわかる!現場ではこうだ!」という【経験自慢】

◆「専門書で読んだけど最新の学説ではこうだ!」という【知識自慢】

◆「すっごく良いアイディアを閃いた!」という【思いつき自慢】

◆「絞り込めないから思いついた知識を全部入れておこう!」という【詰め込み自慢】

 

先に述べた、2次試験の篩は「現状を整理する力」であり、「ごく基礎的な知識の対応付けができる力」であるという前提に立つと、「高度な国語力」という解釈がいかに誤ったベクトルを生み出しかねないかがイメージできるのではないかと思います。

(この【自慢事故】は、「人並みベタ解答ではなく、他の受験生と差をつける素晴らしい解答を書こう!」と考える 時にも陥りがちです)

 

しかし2次試験においては、このような事故パターンは決して珍しいものではありません。

 

とりとめのない与件文、本試験でのプレッシャー、80分という時間制限。

これらがかけあわされた現場でいかに、「筆者の心情を答えよ的な、高度な国語力」という勘違いが生まれやすいか。

合格率約20%という数字がそれを示しています。

 

 

繰り返しになりますが、とりとめのないヒアリングシートである与件文を、診断士としての基礎的な知識(=人並みベタ)に照らして整理する。

「読む力」において求められているのは、その程度のことです。

 

整理することで導き出された現状分析や課題解決の具体的な内容を、設問文では問うているわけです。

問われていることに、誰が読んでも分かりやすく納得できる(=社長を説得できる)ように、論理的かつ平易な文章で答えることが、「篩にかけて残った解答」たりうるのです。

そこには高度な文章力は必要ありません。論述試験と言っても、たかだか200文字程度。

Nicoが「書くことに苦手意識を持っているアナタに」で書いているように、ビジネスライティング程度の文章力で十分対応できるレベルだと思います。

 

このような読み書きの力を「高度な国語力」と考えすぎると、【自慢事故】につながってしまう危険が高まるわけです。

 

そうならないためにも、過去問を通して「与件文と設問文のクセやパターンを知っておく」ことがとても重要になります。

(予備校の模試や演習の問題は、良くできているとは言っても作者が違います。本試験のレプリカのようなものに過ぎません)

先述の、2次試験で何が問われているのか?という視点から過去問を読んでみると、非常に練られて作文されていることに気付かれるのではないかと思います。

 

 

最後に。

2次試験に求められていることの一つとして「整理する力」と述べましたが、これは実際の診断活動でも非常に重要なスキルとして役立ちます。

実際に社長に会ってお話してみると実感されると思いますが、現実に与えられる情報も「とりとめのないヒアリングシート」そのものだからです。

現状を正しく整理し、社長を説得できる診断士になるために、2次試験から学べることは非常に多く、実によくできた試験だと私は思っています。

 

 

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