2次試験対策の「正解」はどこにあるのか~本質対ノウハウ論に決着を~

他者の思考プロセスはコピーできない。

 

こんにちは。うみのです。

初代・ふうじん氏がとても的確な視点からの分析をされていたので、この後輩へかけられた期待に応えなければ女がすたると思いまして(笑)、

「なぜ合格者のノウハウ活用が大事か?」「そもそも、なぜ合格者はノウハウ面から語りがちなのか?」という視点から自分なりの見解と、

「結局2次試験対策って予備校や合格者によっていろんなやり方があるっぽいけど結局何が正解なのよ?何からやればいいのよ?」

皆さんがモヤモヤしているであろう問いについて書いてみたいと思います。

 

最初にお断りしておきますが、長いです。

が、2次試験の対策方法に迷いや悩みがある人にはできれば読んでいただきたいです。

 

混乱を防ぐため先に書いておきますが、前回の記事で書いたように「全てが相対的な価値観のもとにある2次試験対策」においては、誰の意見が間違い、誰の意見が正しい、ということではなく、合格者がそれぞれに言っていることは視座が異なるだけで、見ている本質は同じだと思っています。(明文化できるかどうかの程度の違いがあるにせよ)

なのでこれから書くことは、「ノウハウだけが大事」という話ではありませんし、他の意見を否定したいがための話でもありません。

 

受験生だったとき、とある勉強会で

「〇〇先生のメソッドではこう考える!」いや、それはおかしい。この予備校の考え方では…」

という宗教戦争が目の前で繰り広げられていたのも今となっては笑い話ですが、ひとつの考え方に固執することはときに思考停止や本来の目的を見失ってしまうリスクを含みます。

 

(蛇足ですが、そういえば大学時代、人文科学や社会科学系の論文を書く時、最初に厳しく指導されたのは「断言するな」ということでした。自然科学のように絶対解がない世界において断言することほど知を閉ざすものはない、という考え方にひどく納得したのを今でも覚えています。)

 

以上のことから、できるだけ多角的な考え方やノウハウを収集して実践していくなかで、2次試験の本質へと向かうあなたなりの道筋を見つけていただきたい、ということが私の2次試験対策全体を通してのメインメッセージです。

 

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ここからは具体的に。

ふうじん氏が紹介されていた「TAC動画チャンネル」の「2次試験合格を確実にするためのポイントを伝授」動画を皆様がご覧になったという前提で、以下話を進めたいと思います。

この動画で述べられているのは「試験を設計する側の視点に立ち、その裏をかく思考」です。

 

さてその上で。

動画を視聴した後、皆さんはどのようなステータスになりましたか?

 

①    言わんとすることは分かった

 

…し、その考え方で演習や過去問に取り組んだらスラスラ書けるようになった!

地頭のいい天才型(ニュータイプ)か、2次試験対策をかなり積んできた熟練者。

合格可能性やや高いが、一方で独りよがりな解答を書いてしまう危険性も潜んでいる。(その危険性についてはまた改めて別の機会に)

 

…けど、じゃあ目の前の問題に具体的にどう取り組めばいいのかサッパリわからない。

飲み込みのよい秀才タイプか、2次試験対策をある程度進めてきたミドル層。

おそらく大半の人はここではないかと思います。

 

②    高度すぎて、何を言わんとしてるのかよく分からなかった

 

2次試験対策を始めたばかりの人の中には、こういう感想を持つ人も少なくないと思います。

その結果、「自分は2次試験に向いてない!」「センスがないから受からない!」という誤った認識に陥りがちです。

 

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以下、「ニュータイプ」以外のおそらく受験生の多数に属する方に向けて書きます。

 

分かっても解けない(あるいはよく分からない)のは、あなたにセンスがないから、2次試験に向いていないから、ではありません。

 

私は、試験対策は「山登り」のようなものだと思っています。

 

診断士試験という山を設計しているのは、試験委員。空の高みから山を見ています。

毎年頂上へのルートが変わり、5合目までで80%が脱落、頂上までさらに80%が脱落する恐ろしい山です。

頂上にいるのが、合格者。

予備校の講師は、登山そのものの基本的な考え方を教えるガイド。山の設計思想を知り尽くした個性豊かなガイドによる、多様な考え方があります。なかには、王道と言われるような素晴らしいフレームワークを開発した名ガイドも。

 

頂上に登った人たちは口々に言います。

「おススメの登頂ルートはこれだよ!」「私はこのガイドの手引きで登頂できた!」「この登山グッズが役に立った!」

 

一方、ガイド達は研究を重ねて、山の仕組みからルートの描き方まで指南する素晴らしい手引書を創り上げ、5合目の入り口で配布しています。

 

それでもやっぱり、毎年80%が遭難します。

頂上に行けるはずの素晴らしい手引書があるのにも関わらず、です。

 

それが、「他者の思考プロセスはコピーできない」ということです。

いくら素晴らしいロジックであっても、それが簡単に実践できるものならば、20%しか頂上に辿り着けない過酷な山であるわけがありません。

また、いくら頭でルートの描き方が分かっていても、その通り実践すれば何の苦も無く頂上に行けるというものでもありません。

80%を篩い落とすために設計された山ですから、大雨が降ったり吹雪いたり雪崩が起きたり足場が崩れたり、色々な想定外のことが起こります。

その時にどう行動するか?

ガイドは山の仕組みとルートの作り方を教えてはくれますが、一緒に山に登ってくれるわけでも、「そんな時はこうすればいいよ」とトランシーバで指示してくれるわけでも、ましてや遭難した時に責任を取ってくれるわけでもありません。

常に変化し予測不能性に満ちている現場でどう対処するかについての思考プロセスは、結局、自分自身で磨き上げるしかないのです。

 

登山者の中には、遭難もせず傍目にはあっさり頂上に行けてしまう人がいます。先述の「ニュータイプ」の人たちです。この人たちは、ガイドからもらえる手引きなりを読んで、登頂のコツをすぐ身に付けてしまえるタイプですね。

 

一方、登頂のコツなどすぐに分かるわけもない大多数の登山者は、時に血反吐を吐くような想いで何度もビバークしながら試行錯誤や仮説検証を繰り返し、「2次試験の本質とはこれかもしれない」「問われていることに素直に答えるということは多分こういうことだろう」という本質の断片をなんとか見出し、それによって頂上に行く道筋が少しずつ見えてくるという登山ルートを描きます。

 

なんだか不公平なようにも思えますが、これは演繹的学習と、帰納的学習の違いです。

 

前者は、ひとつの「本質とはこうである」という結論から、「つまりそれってこういうことだよね」と自分の言葉で理解・咀嚼した上で、演繹的に対策方法や解答プロセスを導き出す。

これは抽象を具体化する作業なので、思考の抽象化に慣れている人であれば実践しやすいのではないかと思います。

前述の、「すぐに登頂のコツをつかめてしまうニュータイプ」はまさにこれですね。

 

後者は、さまざまな具体的ノウハウを実践して解答プロセスを磨いていく中で、帰納的に2次試験の本質に辿り着く。

合格体験記を読むとお分かりになると思いますが、受験生の大半はこちらに該当します。

1人ひとりの合格体験記を読んでみると、皆さんそれぞれに、様々な情報をもとに思考錯誤を重ねて、「自分なりの対策方法・解答プロセス・2次試験の本質とは何か」に至っていることが伝わります。

そう、ノウハウがなぜ大事なのかと言うと、帰納的学習においては有効な面が大きいからです。

実際に、セミナーで受験生からいただく質問で「具体的に何からやればいいのですか?」という類の多いこと多いこと(その気持ち、とてもよく分かります)。

こういうニーズが常にあるからこそ、また演繹的学習で合格する人が大半だからこそ、「自分の場合はこのノウハウがきっかけになった」と語りがちになるという構造があるのだと私は思っています。

 

 

もう一度書きますが、最後に言っていること(=試験の本質)は表現の枝葉末節こそ違えど、誰も同じです。

要は、登山ルートが違うだけ。

結局やっていることは「山登り」なのですから、手段やルートが何であれ、頂上に辿りつけるかどうかだけが常に答えであり目的です。

しかし、登山の途中でなぜか、「こっちの道具の方が優れている!」「こっちの登山ルートこそが正しい!」という思考に陥るパターンを私はいくつか見てきました。

その時点でその目が見ているのは自分の手段の正しさであり、本来のゴールである頂上は見えていません。

手段にこだわりすぎることに、いかに目的や本質を曇らせる罠が潜んでいるか。

先の勉強会の例もそうですが、これは嵌った経験のある人でないと分からないかもしれません。

であるからこそ、「様々な情報を収集して、常に相対的に評価しましょう」と繰り返しお伝えしているのです

 

そしてもう一つ。

登山ルートを描く上では、「最短」ではなく「最適」を常に考えましょう。

あらかじめ最短ルートなんて分かるはずがありません。誰にでも通れる最短ルートなんてものがある試験なら、合格率20%前後なわけがありません。

分かるのは、「色々試行錯誤した結果として、自分にはこれが合っていた」という結果論だけです。

合格者の誰に聞いても、ほとんどそういう答えが返ってくるでしょう。

予備校の講師であっても同じです。彼らは本試験の出題者でも神でもありません。当然、「合う・合わない」があります。「自分に合う・合わない」を自問自答しないまま講師に傾倒した結果、本来の合格基準がどこにあるのか自分の頭で考えることをやめてしまう、という本末転倒に陥ってしまい、本試験で太刀打ちできなかった…というパターンを私は見聞してきました。

 

なぜそうなってしまうのか?

 

それは結局、

「他者の思考プロセスはコピーできない」と同じで、

「本質というものは、誰かに与えてもらう言葉ではなく、自分の言葉で見つける以外にない」からです。

 

私は長年、教育業界を対象にした仕事をしていますが、これは診断士試験によらず、「教育」そのものの限界なのだと思っています。

 

「自らの頭で本質を求める」とは、いわゆる「批判的思考(クリティカル・シンキング)」のことです。

常に「それは本当にこの試験の合格を目的としたときに、自分にとって最適か?」という視点を持って情報を吸収してほしいと思います。

やってみる前から何かを否定する事も、他の可能性を検討せず何かに依存する事も、それなりのリスクを伴います。

常にそのリスクを客観視することが批判的思考のポイントのひとつです。

まぁ、実際にはやってみないと自分にとって最適かどうかなんて判断できないんですけどね。

だからこそ、「仮説検証」を何度も推奨しているのです。

 

「自分で見つけるしかない」ということに気づき、素直さ(多様な情報を受け入れる心)批判性(それが目的に照らして最適かどうかを判断する頭)を持って仮説検証できる人が、合格に近づける試験である、と思います。

 

前述したように、受験生のお悩みを伺っていると、「具体的に何をやったらいいですか?」というご質問が非常に多いのですが、それに私たち合格者がお答えできるのは、あくまでも「本質の道筋を見つけるきっかけとなったノウハウ」や「自分の言葉で語れる本質」だけです。

そのノウハウを使えば正解、とは誰も保証できませんし、その本質をそっくりそのままあなたの脳内にコピーできるわけではありません。

考えるきっかけ、ひとつの道具として考えていただくことが良いと思います。

本質について書こうとするとどうしても抽象的な書き方になってしまうので、どう具体化していくかは、結局自分の手を動かして自分の頭で考えるしかありません。

 

なので、「何をやっていいかわからない…」とお悩みの方には、「悩んでいる暇があったらとにかく得た情報をもとに手を動かせ! そして考えろ! そうしないかぎり、いつまでもわからないままだぞ!」と若干スパルタ気味に私はお答えします。(笑)

 

ノウハウも本質も、「人から与えられるもの」という前提においてはいずれもただの道具。

それらが雑多に提示された中から、「あなたにとっての本質」を見つける助けとなるのはどの道具か、という視点で仮説検証し、取捨選択するのです。

 

★演繹的学習であれ帰納的学習であれ、2次試験の本質も解答プロセスも、最後は自分で見つけるしかない。

★抽象的な思考(本質論)で遭難してしまいそうになったら、具体的な対策(ノウハウ)から手を動かして考え続ける。

★真に重要なのは、手段ではなく、目的(頂上)を見据え続ける事。

 

合格可能性の高さとは、これに気付いているかいないか、だと私は思っています。

 

 

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