【企業経営理論】 労働法規

 

こんにちは、牛嶋・寺前・和田法律事務所の弁護士岡崎教行です。

昨日をもって【渾身】シリーズは一応終了となりました(なごさんがまだ渾身書いてないので、書くかもしれませんが)。

いかがでしたでしょうか。道場担当者それぞれが得意分野について大いに語ったものですので、きっと参考になったのではないかと思っています。

だんだんと一次試験が近づいてますね。今日は、企業経営理論の中でもいわゆる捨て問といわれている労働法規について書いてみます。
まぁ、みんなが取れない問題ということなので、皆さんも特に取れなくても問題なのですが、取れればラッキーなのではないかと思います。
そこで、当職が、過去6年間の出題傾向を分析し、また、当職の専門分野ですので、最近のトレンドをも踏まえて、今年何が出ると思われるのか、ヤマ当てをしてみます。
まずは、最近6年間に何が出たかを纏めてみました。

平成26年
D 23問 就業規則の記載事項
E 24問 労災保険
B 25問 合同労組

平成25年
E 20問 労働時間(裁量労働、フレックス、事業場外みなし)
C 21問 育児介護休業法
E 22問 労働契約(就業規則、有期雇用、高年齢者雇用)
D 23問 賃金

平成24年
B 20問 最低賃金法
B 21問 海外出張・赴任
B 22問 人事異動(配転、転籍、出向)
D 23問 募集・採用と雇用
C 24問 試用期間と解雇

平成23年
E 21問 時間外・休日労働
E 22問 退職金・退職年金
C 23問 労働安全衛生法
D 24問 解雇・雇止め
D 25問 割増賃金(算定基礎)

平成22年
C 18問 外国人の労働・社会保険
C 19問 割増賃金
B 20問 雇用調整
B 21問 団体交渉
C 22問 就業規則

平成21年
C 18問 解雇
D 19問 健康診断
A 20問 人事考課
D 21問 労働者派遣法

こうみてみると、万遍なく出てますね。。。ちょっと的を絞りずらい。
ただ、企業秩序を守るために極めて重要な懲戒が出てませんね。ということでまずは、懲戒を取り上げます。

【懲戒】

懲戒ってなんだろう。なんかの罰なんだろうなというのは察しがつくと思いますが、正確には、懲戒とは「従業員の企業秩序違反行為に対する制裁罰であることが明確な、労働関係上の不利益措置」といわれています。

例えば、従業員が会社の金を横領したとかで懲戒解雇されたとか、そういった報道に接することもあると思いますが、それがこの懲戒です。

多くの場合、就業規則に懲戒についての定めがあり、懲戒の種別としては、軽いものから、

譴責(又は戒告):口頭又は文書で反省を求め、将来を戒めるもの
減給:賃金を一方的に減額するもの
出勤停止:就労を一定期間禁止するもので、通常はその間の賃金も支払わない
降格:職位又は資格制度上の等級、格付けを下げるもの
諭旨解雇:退職願を出すよう勧告し、提出がなければ懲戒解雇とするもの
懲戒解雇:解雇とするもの。退職金が支払われないケースが多い。

というのが一般的です。

そして、懲戒事由として、以下のようなものが就業規則に書かれているのが一般的です。

第●条 次の各号の一に該当する場合は、第●条に定める懲戒処分を行う。
① 重要な経歴をいつわり、その他不正の手段を用いて雇用されたとき
② 正当な理由なく無断欠勤したとき
③ 正当な理由なく遅刻、早退、欠勤し、あるいは職場離脱したとき
④ 職務に不熱心で誠実に勤務しないとき
⑤ 会社の諸規程、通達等により遵守すべき事項に違反したとき
⑥ 本規定に違反し、または社命もしくは上長の指揮命令に従わないとき
⑦ 素行不良で会社の秩序・規律を乱し、または、そのおそれのあったとき
⑧ 故意または過失により、業務または就業に関して、会社に虚偽の事項を述べたとき
⑨ 第●条に定める服務規律に違反したとき
⑩ 会社の業務を妨害し、または妨害しようとしたとき
⑪ 火気を粗略に扱い、または所定の場所以外で焚火もしくは喫煙したとき
⑫ 性的な言動により、他の従業員に不快な思いをさせ、職場環境を悪化させたとき
⑬ 性的な言動に起因する問題により、会社の秩序・規律を乱し、または、そのおそれのあったとき
⑭ 職務中の他の従業員の業務に支障を与えるような性的関心を示したり、交際や性的関係を要求したとき
⑮ 職務上の地位を利用して、他の従業員に性的な不快感を与え、または性的な強要を行ったとき
⑯ 会社内で暴行、脅迫、傷害、暴言またはこれに類する行為をなしたとき
⑰ 故意または過失により、会社の秘密をもらし、またはもらそうとしたとき
⑱ 故意または過失により、会社に損害を与え、または会社の信用を失墜させたとき
⑲ 会社の金品を盗み、または横領するなど不正行為に及んだとき
⑳ 正当な手段によらず私品を修理または作成したとき
㉑ 故意または過失により、会社の施設もしくは金品を毀損滅失し、生産の低下もしくは業務の渋滞を惹起し、または労働災害その他の人身事故を発生させたとき
㉒ 職務を利用して私利を図ったとき
㉓ 取引先に対し、金品等の利益を要求し、または受領するなど職務上の不正行為をなしたとき
㉔ 承認を得ないで在籍のまま他に雇用されたとき
㉕ 正当な理由なく、異動を拒否したとき
㉖ 会社の敷地内で、許可なく集会を行い、または文書の配布、掲示、演説、放送を行ったとき
㉗ 飲酒運転(酒気帯び運転を含む)、ひき逃げ、その他刑罰法規に違反したとき
㉘ 会社外において、会社または役員、従業員の名誉・信用を毀損したとき
㉙ 部下の管理監督、業務上の指導、または必要な指示注意を怠ったとき
㉚ 前各号に準ずる行為があったとき

じゃ、ここから、試験に出そうなところを少しピックアップ。

問題です。

就業規則に懲戒の定めがなくても懲戒をすることができる。○か✕か。

答えは✕。懲戒って、いわば刑罰なんですね。いわゆる刑法と同じ。どういったことをやったら刑罰に処しますよと予め書いてないといけないんですね。

フジ興産事件(最高裁二小 平成15年10月10日判決・労判861号5頁以下)というのがあるのですが、この最高裁判決は、

使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する

としています。

では次の問題です。

月給20万円の社員に対して、減給処分をしたいが、その金額を5万円とすることができるか。○か✕か。

答えは✕。減給って実は制限があるの知ってますか?労基法91条で「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定められているんです。1回あたりの懲戒対象行為については、1日の平均賃金の半分が上限ってことなんです。そうすると、殆どの場合、数千円なんですね。それくらいしか減額できないので、あまり大きなインパクトはないんです。

じゃ、もう一丁参りましょう。

懲戒解雇された場合には退職金は支払われないが、諭旨解雇の場合には退職金は支払われる。○か✕か。

答えは✕。退職金を支払うかどうかは就業規則(あるいは退職金規程)に企業が自由に定めることができるものであり、一般的に懲戒解雇の場合に退職金を支払わないケースが多いのですが、当然、支払うこともできます。

【ハラスメント】

過去問を見ていくと、ハラスメント、いわゆるセクハラ、パワハラについては出ていないようですね。労働局の調査によると、一番多い相談が、いじめ、パワハラだそうなので、これは今年出るかもしれない。併せて、最近タイムリーなのが、いわゆるマタハラですね。
これも、出るかもしれない。

セクハラってなんだかわかりますか?そんなのわかるよって声が聞こえてきそうですね。忘年会の後に上司がタクシーの中で部下の手を握ったとか、抱きついたとか、そういったことがすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。

セクハラって、概念としては2つあると言われています。

1つが、対価型セクシャルハラスメントと言われるもので、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることとされています。これ、上司が部下の女性にご飯行こうよ、いかなかったら出世はないよ、みたいな感じですね。

もう1つが、環境型セクシャルハラスメントと言われるもので、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることとされています。これ、ヌードポスターを職場の机に貼るようなものですね。

ここで問題です。

男性から女性のセクハラって、イメージしやすいんですが、女性から男性へのセクハラも認めれる。○か✕か。

答えは○。実はそうなんですね。女性上司の男性部下に対するセクハラもありうるんです。ちょっとイメージつかないですけど(笑)

じゃ、次の問題です。

男性から男性へのセクハラも認められる。女性から女性へのセクハラも認められる。○か✕か。

答えは○。これも以外ですね。男性間でのいわゆる下ネタ話もやばいのかもしれません(笑)

次に、パワハラに行きますが、実は、パワハラって、定まった定義がありません。これ知ってました?

現段階で有力なのは、厚生労働省が設置した「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議 ワーキング・グループ」が、パワーハラスメントについて、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義づけているもので、

① 暴行・傷害(身体的な攻撃)
② 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤ 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
⑥ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

の類型があると言っております。

ここで問題です。

上司が仕事中、指示に反発した部下を殴って怪我させてしまった。上司は損害賠償しなければならないが、企業は損害賠償しなくて良い。○か✕か。

答えは、✕。上司は、民法709条に基づき損害賠償義務を負担するが、同時に企業も民法715条(使用者責任)に基づき損害賠償義務を負うことになります。

さて、最後は、マタハラです。これは、昨年、最高裁判決が出まして、その後、行政当局が通達等を出しており、実務的には注目されています。厚生労働省のまとめたもの(こちらです)を見ていただくのが一番わかりやすいかと思います。

私も、主として企業の人事担当者や社会保険労務士の先生向けの雑誌であるビジネスガイドに、最高裁判決の解説通達の解説Q&Aの解説を寄稿させていただいておりますので、もし興味があればお時間のあるときにでも一読いただければと思います。

ではでは~。

つべこべ言わずに、本試験まで突っ走ろうぜ!勉強はやったもん勝ち!

 

道場初夏大阪セミナーinなんば 開催!

~1次&2次試験突破 の巻~

1次試験、直前期対策のキモはここだ!

◆暗記科目が辛いあなたへ。丸暗記を理解に変える発想法

◆合格へグッと近づく、模試活用法

2次試験に向けて今やるべきことは?

◆財務強化が1次・2次突破の鍵! 「CF計算書」を味方につける

ストレート生の方、多年度生の方、いずれにも有益なお話ができるよう、とっておきの秘訣をお伝えさせていただきます。

 

●日時:66日(土) 14:00~16:30

●定員:15人
●参加費:500円
●会 場:地下鉄なんば駅近辺の会場にて開催。詳細な場所については、個別にメールにてお知らせいたします。

 

<セミナー終了後の懇親会は、2本立て!>

皆様にご参加いただきやすいよう、懇親会を2部構成にいたしました。

参加は任意です。どちらかでも、両方への参加でも大歓迎です。

 

●16:30~ 第1部 ティータイム懇親会

会場近くの喫茶店にて、皆さんの質問に道場メンバが答えます。

質問や相談を個別にしたい方、他の受験生との交流を深めたい方、ぜひご参加ください。

※参加費無料。ご自身の注文いただいたお茶代だけお支払いいただきます。

 

●18:00~ 第2部 居酒屋懇親会

腰を据えてじっくりとお話したい方はぜひ。

お酒を囲む場だからこそ、なかなか表の場では聞けないとっておきの話が飛び出すことも多くあります。

前回の東京セミナーでも、有益な情報を収集している受験生の姿が印象的でした。

※参加費は3500円程度を予定しています。

 

お申込みはこちらから

 

ご参加、お待ちしております!

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です