【2014年度事例Ⅰ】今年の試験合格の基準はどの程度なのか

ご無沙汰しております

butaoです

今回記事では前回記事と同様に、予備校の模範解答の回答をベースとし、
2014年度試験の事例Ⅰについて私なりの分析結果をお送りします

本記事の受験生にとっての価値は、
受験生の今の関心ごとである “俺の回答って合格レベルにあるのか?早く結果が知りたい”
ということにヒントを与えられることです

今回の記事は前回の記事同様、次の図の流れ(イメージ)で進めます。

なお、著作権の問題などリスクは避けたいので、本記事内での予備校模範解答の転用転載はいたしかねますので、お手元に各社予備校の模範解答をご用意頂けますと幸いです
ちなみにリンク先は以下の通りです
ネット上で公開されている模範解答のみ分析対象とすることをご了承頂けますと幸いです。

●TAC
http://www.tac-school.co.jp/file/tac/sokuhou/chusho/pdf/jirei3_1410a.pdf

●大原
http://www.o-hara.ac.jp/best/chusho/sokuhou2/pdf/kaito_03.pdf

●TBC
http://www.tbcg.co.jp/images/pdf/h26_2ji_sokuhou_3_20141030.pdf

■第1問(配点20点)

A 社は、小規模ながら大学や企業の研究機関と共同開発した独創的な技術を武器に事業を展開しようとする研究開発型中小企業である。
わが国でも、近年、そうしたタイプの企業が増えつつあるが、その背景には、どのような経営環境の変化があると考えられるか。
120 字以内で答えよ。

1.予備校の回答の比較

こちらの問題は整理すると以下の図となります。

TACとTBCの共通点は、公的支援の充実を挙げている点です。また、大原とTBCの共通点は差別化・高付加価値化の必要性を挙げている点です。
この表には現れませんがTACが他の予備校と異なる点として、公的支援の充実と、研究開発型企業が増えることの因果の説明にセルを消費している点が挙げられます。
また、同様にこの表には現れませんが、差別化・高付加価値化が必要となる背景について具体的な記述があるという点で大原とTBCは共通です。
しかし、記述内容が異なっています。
具体的には大原では、 差別化・高付加価値化が必要となる背景を、技術革新スピードの高まり、製品ライフサイクルの短縮化、製品の陳腐化としています。一方で、TBCでは、 差別化・高付加価値化が必要となる背景を、海外への生産拠点の移転としています。

以上の話をまとめると、以下の基準を満たすことがおおよその合格基準である答案ではないでしょうか。

・公的支援の充実、差別化・高付加価値化のどちらかの方向性(もしくは両方)で回答すること
・差別化・高付加価値化を選んだ場合
‐その背景として、技術革新スピードの高まり、製品ライフサイクルの短縮化、製品の陳腐化、コモディティ製品の生産拠点の海外移転のうち2つを記述

2.butaoの回答

私の解答内容を上記の予備校の模範解答と比較してみましょう。

市場面では、製品のコモデティ化による価格競争が激化し、それを避けるためには製品の高付加価値化・差別化が求められる点。法制度面では、助成金制度の整備が進んだことで研究開発資金を獲得しやすくなった点。

この解答は概ね予備校解答とズレはないものと思われます。
意識した点は、”そうした企業”なので与件分にこだわりすぎない点です。少々一般論で答えることで時間のロスを抑えました。

■第2問(配点20点)

A 社は、創業期、大学や企業の研究機関の依頼に応じて製品を提供してきた。
しかし、当時の製品の多くが A 社の主力製品に育たなかったのは、精密加工技術を用いた取引先の製品自体のライフサイクルが短かったこと以外に、どのような理由が考えられるか。100 字以内で答えよ。

1.予備校の回答の比較

こちらの問題は整理すると以下の図となります。

3社に共通して挙げられている点は顧客の要望に答えるだけで、技術を活かした差別化ができていなかった点です。
その理由は顧客の要望に答えるだけであった、という点は3社共通ですが、大原は異なります。
大原は研究開発体制に着目し、そこが6名であり未成熟であったと指摘しています。

TBCは他の予備校と異なり、継続的な製品開発・改良の不足を理由の1つに挙げています。

以上の話をまとめると、以下の基準を満たすことがおおよその合格基準である答案ではないでしょうか。

・技術を活かした製品開発・差別化ができていなかった点を挙げている。
・” 研究開発体制の不備”、”継続的な製品開発・改良の不足”のどちらかについて挙げている

2.butaoの回答

①企画面では、顧客要望に応じるのみで高付加価値製品の企画・開発を計画的に行わなかった点②開発面では、新製品・新技術が継続的に開発できる体制が不十分であった点。

この解答は概ね予備校解答とズレはないものと思われます。
意識した点は、人事の事例ということで、②に開発体制の視点を含めたことです。

■第3問(配点20点)

2 度のターニング・ポイントを経て、A 社は安定的成長を確保することができるようになった。
新しい事業の柱ができた結果、A 社にとって組織管理上の新たな課題が生じた。
それは、どのような課題であると考えられるか。100 字以内で答えよ。

1.予備校の回答の比較

こちらの問題は整理すると以下の図となります。

人材育成についてはTACと大原で共通に取り挙げています。しかし両社で育てたい人材は異なるようです。
大原は営業強化の観点で”企画開発力”を重視している一方で、TACは”資金調達”を重要視し、公的な研究開発資金を調達管理できる人を重視しています。

専門部署の設置・強化を挙げている点は、全社共通な点です。
しかし、大原とTBCは新しい事業の売り込みを営業1名で行う点について部署強化を提言している一方で、TACは”資金調達”を重要視し、公的な研究開発資金を調達管理できる部署の設置・強化を重視しています。

権限移譲については、TBCのみ挙げています。

以上の話をまとめると、以下の基準を満たすことがおおよその合格基準である答案ではないでしょうか。

・人材育成もしくは、部署の設置・強化について挙げている
・営業機能の強化について、もしくは資金調達機能の強化について述べている

2.butaoの回答

部門の面では、①営業部門を設置し新たな人材を採用するなど営業機能を強化する②顧客ニーズに沿った製品企画が出来る人材の採用など。権限の面では、研究開発者、事業部長への権限移譲など。

この解答は概ね予備校解答とズレはないものと思われます。
意識した点は、企業の成長ステージを考えたことです。今後、安定成長に入ってくる組織に必要となる要素が何なのか考えました。
結局それは管理になると思ったのですが、この組織は専門性がコアの強みですので、管理は合わないと考えなおしました。
そうすると、部下に権限を分割して裁量を大きくするという流れになると思います。
そうした場合、次の課題はいかにしてその個人の業績をはかるかということになりますが、そこは踏み込み過ぎかなと思い記述しませんでした。

■第4問(配点20点)

A 社の主力製品である試験管の良品率は、製造設備を内製化した後、60 %まで改善したが、その後しばらく大幅な改善は見られず横ばいで推移した。
ところが近年、良品率が 60 %から 90 %へと大幅に改善している。その要因として、どのようなことが考えられるか。100 字以内で答えよ。

1.予備校の回答の比較

こちらの問題は整理すると以下の図となります。

工学博士を持つ人材については、大原のみ触れています。

生産部門における近年課長に昇進した中途採用者については全社共通で触れています。
しかし、”その中途採用者の何が改善の要因か?”については見解がわかれています。

生産部門の技術知識や技能が高度化・熟練化については、TBCのみ述べています。

以上の話をまとめると、以下の基準を満たすことが最低限の合格基準である答案ではないでしょうか。

・生産部門における近年課長に昇進した中途採用者については触れること

プラスポイントとして以下のどちらかが述べられていると合格基準である答案ではないでしょうか。

・工学博士を持つ人材による製造設備改良
・ 生産量の累積による熟練化・高度化を原因とする学習効果

2.butaoの回答

人材面では①工学博士号を保有する人材による製造設備の改善②課長に最近昇進した中途採用者による現場改善活動など。
組織の面では、生産量の増加によるスキルの蓄積を活かした生産活動など。

この解答は概ね予備校解答とズレはないものと思われます。
意識した点は、一般論になりそうな部分をおさえてなるべく事例の情報を活かすことです。

■第5問(配点20点)
A 社は、若干名の博士号取得者や博士号取得見込者を採用している。採用した高度な専門知識をもつ人材を長期的に勤務させていくためには、どのような管理施策をとるべきか。中小企業診断士として 100 字以内で助言せよ。

1.予備校の回答の比較

こちらの問題は整理すると以下の図となります。

モチベーションの向上を行うという点では、全社共通です。しかし、その手段は会社で異なります。
” 最新知識取得の機会提供”は大原とTBCで共通です。
”研究に関する自由裁量を高める”はTACとTBCで共通です。

大原、TBCが内発的動機づけなど組織のソフトの面に偏った解答を掲載している一方で、
TACは人事評価の面に着目するなど組織のハード面にも着目しており、より多面的と捉えることが出来ます。

以上の話をまとめると、以下の基準を満たすことが最低限の合格基準である答案ではないでしょうか。

・内発的動機づけについて触れている
‐その中で、知識習得の機会など育成面について触れている
‐ 自由裁量度を高めることについて触れている

2.butaoの回答

①育成の面で自己啓発などを充実させ自身の研究内容の高度化を支援する②評価の面で学会での発表数などを評価の指標に加える③権限の面で職務充実を行い、自由裁量の幅を広げる、などで内発的動機づけを向上させる。

この解答は概ね予備校解答とズレはないものと思われます。

若干気になる点は、研究者を長期的に働かせるという視点で書く際に組織の継続性について意識できなかったことです。
研究者にとって居心地のいい環境が必ずしも 業績向上につながるとは限りません。私の上記の施策は、研究者の興味をどのように全社戦略に結びつけるのか?という視点が弱すぎます。

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いかがでしたでしょうか。自身の回答を振り返る参考にしていただけますと幸いです。

本日のブログは以上です

butaoでした

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【2014年度事例Ⅰ】今年の試験合格の基準はどの程度なのか”へ1件のコメント

  1. あっきー より:

    butaoさま
    事例3に引き続き事例1についても詳細な分析ありがとうございました。
    第3問などはかなり解答が割れているので、3校の比較だけだと何とも言えない部分もありそうですね。他校のものも見比べてみたところ、TAC同様の内容は見当たらなさそうなので、やや高リスクと言えるのかもしれません。
    私見では、公的助成金の獲得という課題は、資金調達部署の設置ではなく、助成金の対象足り得る研究開発体制を維持すること(≒第5問の解答)を通じて解決されるのだと考えましたが・・・
    今年は解答が割れそうな問題が多くて、発表まで結果はまったく予想できないという気がしております。

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