【初学者向け】「考える」を考える

皆さん、こんにちは。

今日から9月となりました。今週末から毎週のように大手資格学校の模試が始まります。私も初めて2次試験向け模試を受験した際は、正直まだまだ実力不足を自覚していたので、どちらかと言えばあまり受けたくない気分が強かった気がします。しかし、初学者の方にとっては、集中した環境かつ適度な緊張感の中で、4事例を一気にこなす良い機会です。ぜひ、収穫のある模試になることを期待しております。

さて、前回の記事では、「読む」ということに対して、私なりの解釈を説明させて頂きました。「読む」に引き続きとなりますので、本日は「考える」ということ自体について考えてみたいと思います。中身はやや二次試験からは離れていますが、基本的な考え方を確認するためにちょっと立ち止まって読んでもらえればと思います。

■「考える」のは難しい?

上の図は、診断士試験で求められる「読む」「考える」「書く」の各ステップをイメージ化したものです。ここで、考えるステップの面積が違うのはお気づきでしょうか。面積については、私が試験でイメージしていた時間配分が反映されています。その中でも、一番時間を掛けたのは「考える」パートでした。下記の図は、それぞれのステップにおける情報の入出力状態をまとめたものです。



「読む」ステップでは、与件文・設問文という具現化されているものから情報を引き出します。「書く」ステップでは解答という形で具現化させています。具現化したものを媒介することで、他者との話し合いやスキルの応用が実行しやすいステップだと言えるでしょう。一方、「考える」作業は入力も出力も頭の中で行います。抽象度が極めて高い作業のため、人それぞれの個性が反映されやすい部分と言えるでしょう。このバラつきを無くし、出題者の意向に沿った一般的なアイディアに辿り着くことが、二次試験において最大の関門となっているわけです。

■「考える」って何?
改めて「考える」とは、 頭の中のどのような行為を指しているのでしょうか。日々、私達は、様々な対象から何らかのメッセージを発見し、判断を行っています。例えば、横断歩道の信号が青である。左右を確認すると車は停止していた。そこで目の前の横断歩道を渡っても安全であると判断しますよね。この時、頭の中では、外部から得られた情報と個人が蓄積した知識を足し合わせ加工することで、意味を見出しているという構造になっています。

「考える」とは、この加工作業の部分を指していると考えられます。余談ですが、情報収集は何も外部からのものだけには限りません。知識も情報ですので、知識を収集・蓄積させることも情報収集の一つだと考えられます。

■どんな加工をしているの?
では、情報と知識を使ってどのような作業をしているのか?やっていることは至極単純です。情報と知識の比較です。もう少し細かく表現すると、対象から与えられた情報(外部情報)と頭の中にある情報(知識)を比較し、同じ部分違う部分を認識しグループを作ります。そして、そのグループ自体、もしくはグループ同士の関係性から何らかのメッセージを見つけ出すことを行っているのです。

ですので、試験で「答え(メッセージ)が分からない」状態とは「情報が正しく分けられない」状態となるわけですね。

■正しく分けるポイント
正しいメッセージを読み取るために、正しく分ける。情報を分けるために注意しなければならないポイントは3つ。レベル感の統一、切り口の設定、MECEです。

  1. レベル感の統一
    比較をする際は分類水準が同一のレベルでなければなりません。スポーツを分類するのに「野球」と「サッカー」はOKですが、「ピッチャー」と「水泳」だとおかしいのは一目瞭然でしょう。でも、普通の会話の中で「夜ご飯は、自宅で食べるか、それとも近所の中華レストランのどっちに行きたい?」と言われれば成立しちゃいます。これは頭の中で補正されているからでしょう。正確に比較するのであれば「自炊」と「外食」、もしくは「中華」・「和食」・「洋食」のようなレベル感で統一しなければなりません。まぁ、日常生活でここまでやったら、ただの揚げ足取りだと言われてしまいますのでご注意下さい
  2. 切り口の設定
    物事を分類するとき、いくつもの切り口を持っていることはとても大切です。例えば、従業員を分類したとした場合、役職で分ける切り口もあれば、年齢・社歴で分ける切り口、地元出身か否かで分ける切り口などが考えられます。ですので、同じ従業員に対する問題でも、正しい切り口を適用出来るかどうかで見え方が全く変わってしまうのです。
  3. MECE
    これは皆さんもどこかでお聞きしたことがあるのではないでしょうか。「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」、日本語で「モレなくダブリなく」と表現されています。例えば売上高を分解した場合、「客単価」と「客数」ならMECEですが、「商品単価」と「客数」、「購入点数」と「客単価」だとMECEにはなりません。

これらのポイントは重要なポイントですが、実際の試験の中で、一から十まで吟味している時間はありません。そこで、3Cや4Pなどのフレームワークを使用することで、ポイントを押さえつつ、時間短縮も図ることが可能となります。

■メッセージに辿り着くまで
このような行為を経て、グループの識別各グループの関係性が把握出来ます。識別に関しては、何を比較すべきか、どのような切り口で比較するのか、この2点が重要です。A社の問題は、コレである!と識別するためには、正常な組織の知識や様々な切り口のフレームワークが必要です。これらは知識が必要となるので、多くの方は事例を通して「何となく」学んでいくのですということであれば、事例を解く場合、「意識的に」事例組織に対する知識とフレームワークの切り口を集めることは、正しい解答に辿り着く可能性を高めると言えるでしょう

また、各グループの関係性に注目することでもメッセージが得られます。例えば、「夏になると、アイスがよく売れる」。この例は因果関係にあります。「因果」とは「原」と「結」の関係ですね。因果関係かどうかのポイントは2点あります。一つは、原因が揃うと結果が生じること。①気温が上昇する②お客さんがいる③アイスの在庫があること。この3つの原因が揃うとアイスはよく売れます。逆に言えば、①~③のどれか一つでも欠けると、アイスは売れません。もう一つは、時間軸において「原因」が先、「結果」が後であるということ。「アイスが売れる」から「夏になる」わけではありません。この2つのポイントはチェックしておきましょう。

グループの識別と各グループの関係性を横断歩道の例に当てはめると下記のような図になります。

これら一連の行為を通じて、私達は解答用紙に答えを書き込むに至るわけです。もう一度流れのおさらいをするとこんな感じです。

・外部情報と知識を使って加工作業を行う

・加工作業は情報と知識の突き合わせ

・突き合わせによってグループ仕分け

・ グループの識別と関係性からメッセージ発生

■で、みんな同じ考え方になるの?
ここまでは、頭の中でどのような作業が行われているのかについて確認をしてきました。 では、どうして解答にバラつきが出るのか考えてみましょう。要因の一つは知識です。与件文・設問文といった外部情報の見落とし・勘違い、また、そもそも用語やフレームワークといった内部の知識不足から、正しく仕分けが出来ない状況ですね。これは情報収集の意識を高めることで対応していきましょう。

さて、もう一つ。この「考える」行為は頭の中で行われます。仮に、同じ情報から同じようにグループの識別と関係性を把握出来たとしても、考える人の性格や価値観によって違うメッセージに行き着く可能性があります。給料日前日で財布に千円しか入っていない状況で、お金を引き出すか否か。これって一概に良い悪いは判断出来ません…。そこで、同じ情報に基づいて考えれば、同じ結論に辿り着くような考え方のプロセスとルール「論理」と呼ばれるものになります。

ごめんなさい…非常に長くなってしまったので、論理的思考については次回に続きます。「考える」プロセスで悩んでいる方は、ご自身がどのステップで苦しんでいるのかを把握してみてはいかがでしょうか。頭の中でどのような作業をしているのか意識するだけで、ポイントを絞った強化が進むと思います。もし、知識不足克服が最優先だと感じた方は、事例毎の特徴や過去に問われていた設問要求などの知識補充を優先的に行いましょう。

それでは本日はこの辺で失礼します。

Oz

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【初学者向け】「考える」を考える”へ2件のコメント

  1. Oz より:

    ヤマフリ様

    コメントありがとうございます。

    ご存知のこととは思いますが、論理展開には演繹法と帰納法の2種類が存在します。現実の世界では、帰納法により得た結論を演繹法における大前提として活用するという流れですので、各展開方法は密接な関係を持っていると言えます。

    ご指摘にあるように、記事の内容での方法論は演繹的アプローチに近いですが、その前提になる知識の部分は多くの過去問演習から帰納法的に導きだすことになります。この帰納的アプローチの部分がヤマフリ様が取り組んでおられる「トラップを避ける努力」にあたるのかと思われます。非常に大変な時期だと思いますが、ヤマフリ様の知識のベースが上手く築かれることを願っております。

    非常に堅苦しいないようではありますが、次回以降も少しでも柔らかく、かつ、受験生の皆様のお役に立てる記事を書けるように努めたいと思います。次回投稿まで今しばらくお待ち下さい。

  2. ヤマフリ より:

    こんにちは

    いつも非常にためになる情報をありがとうございます。
    ozさんがおっしゃっているのは、あえてその言葉を使わなかったのでしょうか。演繹法のことですね。

    与件から読み取れる外部情報を、知識というフィルターを通して導き出されるメッセージを解答の形でアウトプットするというごくシンプルで機械的な作業なのですが、これが悩ましいんですね。

    記事でも指摘されている知識の齟齬、外部情報の齟齬と加工時の齟齬…いたる所に作問者の意図から回答を遠ざけるトラップが仕掛けられているのが2次試験です。精度を向上させるには、一つ一つを分解したうえで精度向上を目指したほうがよさそうですね。

    次回以降の展開が楽しみです。

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