【渾身】経営法務 会社法にかかる会社設立・組織再編について

こんにちは。ハーンです。

 

先週の土曜日、15日コースの実務補習の1回目でお世話になった先生と、実務補習時のチームのメンバーと夜の懇親をしてきました。

6名のうち3名は都合がつかず出られなかったこともあり、参加者の中で中小企業診断協会に未加入なのは私だけ、という状況でした。

 

話題は、5年後の更新や今の活動状況など、いろいろ出ましたが試験監督の話もあがりました。協会が試験の委託を受けている関係もあり、協会加入の診断士が試験監督をするようなのですが、残念ながら現時点で私は協会に加入していません。(入会金と年会費が高い)

 

もし、加入していれば、みなさまと知らないうちにお会いできていたのかもしれませんね。

 

さて、今日の記事は、渾身シリーズのうち、「経営法務」です。

 

この経営法務。私にとっては、高得点は狙えないものの比較的安定していた科目で、苦手意識はありませんでした。実は、私は商学部出身ですが、約20年前の大学の商法のテストで10点しか取れなかったこともあり、法律アレルギーがありました。

 

それが解消できたのは、①会社法になって、あの読みづらいカタカナの文章が現代調になったこと②関係会社の設立、事業撤退などを通して、会社法にかかる業務を否応なくやることになったことがあげられます。

 

ということで、会社法は重要な論点であるものの、体系的に勉強したわけではありません。また、経営法務を体系的に整理した内容については、過去記事にあると思いますので、どこまで参考になるか分かりませんが、私の経験をリメイクしたものを物語風につらつら書きたいと思います。(ここにあるお話はフィクションということでご承知ください)

 

◆会社の設立◆

 

私が会社で新規事業部門に所属してた頃。新たな事業領域に参入するため新会社を設立することになった。えっ、アライアンス先や銀行等の出資が10数社もあるんですか?募集設立?めんどくさー。 

(⇔発起設立

 

・発起設立と募集設立は、いずれも発起人が定款を作成し、公証人役場において定款を認証してもらうまでは同じ。

・その後の相違点は、発起人が設立時の株式全部を引き受けるか(発起設立)、一部を引き受けて株主の募集をするか(募集設立)の違い。

・これに伴い、募集設立は株主の募集、申込、割当といった手続きが必要。(まあ、一般公募するわけではないので、株主は事実上決まっているものの、書類作成等が面倒。あ~あ)

・実務上は、発起人を複数立てればよく、発起設立が大半を占めています。

 

◆会社の合併、分割、譲渡◆

 

ある日のこと、担当している関係会社の業績が悪い。本体のコア領域外。差別化要素の構築には相当な経営資源が必要。うーん、こりゃ単独での事業継続は難しい

 

ということで、(ここに至る多くのプロセスは割愛して)同業他社との合併を模索もともとアライアンスを持った関係。

「うちが撤退すると、このエリアについては、空白地帯。ライバル会社のシェアが向上し、御社の全体戦略にも影響があるのでは?」

 

ってな話もあって、相手方との合併を模索することに。(いろんな交渉については割愛して)

しかし、土壇場にきて改めて相手方からの返答。合併だと権利義務をそのまま引き継ぎますよね?一部事業(A事業)についてですが、過去にやった仕事に瑕疵があった場合の責任まで取れませんなぁ・・・(包括承継)

 

えっ、うまく行きそうだったのに。偶発債務のリスク大ということですか。

 

ってなことで、合併は頓挫。他に合併を模索する先もなく清算して事業撤退する方向へ。しかし、A事業は偶発債務のリスク大でも、他の事業(B事業)は承継してもらえることに。既存のお客さまにご迷惑をかけないことも重要な話。ただ、B事業のお客さま1件1件に契約移転の同意を取り付けるのはすごく大変。何せ件数がかなりある・・・

 

ということで、B事業は「吸収分割」。A事業も仕掛中のものは、件数も少なく引き受けた後に相手方が内容を吟味できることから「事業譲渡」で受け入れてもらえることに。

 

吸収分割 権利義務は包括承継、債権者への個別同意は不要。 (手間が省けます)

事業譲渡 権利義務は個別承継、債権者への個別同意が必要。 (手間がかかるがリスクの遮断は可能)

 

といった違いがあげられます。

 

◆組織再編に関する手続き◆

 

吸収側(相手方)の会社との会話。

こちら側から吸収してもらう事業は資産、負債はイーブン。よって対価は基本的に無。

吸収分割にかかる対価が、吸収側の企業の純資産の20%以下なら、簡易組織再編が適用できるのでは?

おっ、これはラッキー。相手方も譲渡制限会社ではあるものの、新株を発行するという話でもないため、株主総会の特別決議は不要

 

ただ、メリットは相手先の方なんですよね。

 

ちなみに、簡易組織再編に似たもので、略式組織再編なるものもありますので、押さえておくとよいと思います。

 

簡易組織再編 吸収合併等の対価が吸収側企業の純資産の20%以下

       →吸収会社の株主総会特別決議不要(譲渡制限会社の株式発行時除く)

略式組織再編 合併等において、吸収会社が被吸収会社の90%以上の議決権所有

       →被吸収会社の株主総会特別決議不要

 

簡易組織再編の主旨は、吸収(合併)しても吸収する側の業況に影響を与えない程度のリスクであれば手続きは緩和してもよいということでしょうね。

 

一方、略式組織再編は、株主総会の特別決議を経なくても結論は変わらないなら手続きは緩和してもよいということかと思います。

 

◆最後に◆

 

結局、簡易吸収分割+簡易事業譲渡の上で清算(任意整理)となりました。

 

脈絡のない文書でゴメンナサイ。つらつら書きましたが、会社法って実務の上でも意外と役立ちます。

また、実務に照らした形で覚えることができれば、つらい暗記に比べて覚えやすいと思います。新たな勉強法のきっかけにでもなれば本当に幸いです。

 

最後までお読みいただいてありがとうございました。ハーンでした。

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【渾身】経営法務 会社法にかかる会社設立・組織再編について”へ8件のコメント

  1. まっちゃん より:

    かわともさま、
    なおさんさま

    ご丁寧な解説と経営法務の学習姿勢へのご助言有難うございます。特に、理解しにくい細部にこだわらず学習時間を有効に使ってと言うご指摘はごもっともで多くの方々のご意見でもあります。
    ただ最近の出題傾向は、深く考えさせる、しかも短時間での読解力と判断力が要求されるようになってしまいました。なので、頻出でヒネリの少ない同分野は理解し、即正解にしたい一心です。

    本音を言えば、問題表現にあるように「詳しくは専門家を紹介しますよ!」と言って実際のシーンで交わせるのかな?と思ってしまいます。ともかくも、有難うございました、精進いたします。

  2. なおさん より:

    まっちゃんさん、あくまで私の理解ですが少し補足しますね。
    1の簡易組織再編については、観点は株主保護だと思っています。存続会社がいくら出せるかではなく、あくまで株主に及ぼす影響が少ない範囲で簡易手続きを認めますよ、ということです。
    2の略式組織再編は、実質的に支配されている会社の総会は、どうせ支配会社の意のままになるんだからいちいち正式な手続きを踏まなくても略式でいいですよ、ということですね。
    これなら腹落ちしませんか。
    何れにせよ1次試験は7科目もあり勉強範囲が広範囲にわたりますので、細部にとらわれることなく合格のために一番合理的な勉強をされるのが近道かと思います。
    勉強法については先代だいまつのABC理論の記事も参考になると思います。
    頑張ってくださいね。応援しています。(^-^)/

  3. まっちゃん より:

    ハーン様へ
    アドバイザーの皆様へ

    簡易組織再編と略式組織再編について復習していて、基本的な疑問が沸きあがったきました。
    同分野はH30 第2問にも深く掘り下げて出題され、受験時は誤答してしまいました。

    お聞きしたいことは
    1.「簡易組織再編」は「存続会社」が対価として、いくらまで出せるかの論点で、「純資産額の1/5以下」としてあると理解してますが、ここでなぜ「分割会社」の場合も考慮するのかをご教示願います。
    2.「略式組織再編」は「特別支配会社」が「非支配会社の総株主の議決権の9/10以上」を有している場合に非支配会社で適用と理解しますが、ここでなぜ「譲受渡会社、存続会社、完全親会社、承継会社」の一見して”支配する会社”のような印象を持つ会社にも適用されるのかをご教示願います。

    本年では出題されないであろう論点ですが、気になって前に進まないのでお伺いいたします。

    1. かわとも より:

      まっちゃんさん、コメント有難うございます!
      道場は既に10代目のメンバーにかわっていますので、10代目の私からお返事させていただきます。
      (ハーン氏は5代目メンバーです。)
      1については、ご指摘のとおり、会社法では、分割会社から承継会社や新設会社に移転する資産が総資産額の5分の1以下のときにも簡易組織再編が認められていますね。なぜ吸収合併消滅会社や株式交換完全子会社等に簡易組織再編手続が認められないのか?というのは、おそらく色々と法の趣旨があると思うのですが、診断士試験でそこまで深く踏み込むと泥沼になってしまいそうですので、「そういうもの」と割り切ってしまった方がいいと思います。
      2についても、おそらく、「一見して支配する会社のような印象をもつ会社」も、場合によっては、消滅会社等から90%以上議決権を持たれているケースがあるのでしょうね。これについても、専門家からすれば色々な法の趣旨があるのもかもしれませんが、「事務手続きを簡便化するため」など、ご自分なりに覚えやすい理由で腹落ちさせ、割り切ってしまった方がいいと思います。
      経営法務については、本来ならとても難しい内容であるにもかかわらず、診断士試験の性質上、どうしても各テキスト等の解説が「浅く広く」になりがちです。それを一つ一つ趣旨から読み解いていくのは本当に大変で、時間がかかりすぎてしまいますので、「試験合格」という大目標のために、多少腑に落ちない点があっても、機械的に暗記していくことをお勧めします。
      申し訳ありませんが、道場メンバーは各科目の専門家というわけではありませんので、これ以上の回答等はご容赦いただければと存じます。
      勉強法、試験に関する情報等については、何なりとご相談・ご質問ください!
      まっちゃんさんの合格を、心より応援しております!

  4. ハーン より:

    野に咲くスミレさま

    ハーンです。レス、ありがとうございました。

    書き込みさせていただいたご回答、お役に立てたようで何よりです。
    こうしていただくレスが我々執筆者の大きな励みになります。

    またお気軽に書き込みなどいただければと思います。

    これから暑くなると思いますが、体調に気を付けて頑張ってください。

  5. 野に咲くスミレ より:

    ハーン 様へ

    早速の回答ありがとございました。
    丁寧でわかりやすい文章でしたので理解できました。感謝いたします。
    では。

  6. ハーン より:

    野に咲くスミレさま
    ご質問ありがとうございます。ハーンです。

    ご質問と過去記事にある「債権者保護」と、今回記させていただいた「債権者への個別同意」というのは異なります。(ゴメンナサイ、言葉足らずだったかもしれません)

    ご質問の「債権者保護」のためには以下のような手続きを行う必要があります。
    ・異議のある債権者は一定の期間(1か月以上)内に異議を述べることができる旨を官報に公告
    ・かつ、知れたる債権者には個別に催告が必要。(ただし、官報での公告に加えて定款所定の日刊新聞による公告又は電子公告をも行った場合には、個別の催告は不要)
    詳細は会社法789条を参照いただければと思います。

    ポイントとしては、催告して一定期間、異議を述べる期間を設けている(「債権者保護」の手続きを踏んでいる)ので、「債権者に同意なく承継が可能」ということだと思います。

    一方、事業譲渡はご指摘のとおり、上記のような債権者保護手続きを必要としていません。なので、権利義務を承継するときには、「債権者に個別に同意」を取り付ける必要があります。

    私の経験した実務においては、個別同意を取り付ける=書面に残すことを前提としていました。(知れたる債権者)個々に催告するのと比較して、個々に契約内容を記した書面を作成して、相手方の同意(押印)をもらうというのは非常に煩雑になります。

    なお、ヤフーやニフティから「債権者同意 事業譲渡」で検索いただくと、参考となる情報が得られると思います。

    まとめますと、
    吸収分割 債権者保護手続きが必要
     →承継には債権者個別同意は不要

    事業譲渡 債権者保護手続きは不要
     →承継には債権者個別同意が必要

    よろしくお願いいたします。

  7. 野に咲くスミレ より:

    https://rmc-oden.com/blog/archives/2482
    の記事では、吸収分割の場合は、債権者保護は○となっていますが。。。

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