【いざ攻略!事例Ⅰ】本当の原因は何だ?

従業員の専門性が高まらない
同族経営で風通しが悪い組織風土
評価制度が不透明
組織構造と事業構造がアンマッチ
社長の役割や不明確でリーダーシップが働いていない
人件費管理ができてない
アルバイトスタッフの士気が低い
特定顧客依存型経営体質
経営悪化への危機感が薄い
変化に対応できない組織
賃金体系の硬直化
自由闊達な風土が失われてきている
個人の成果と賃金の連動がとりづらい
親会社依存型のビジネスモデル
地域別組織と製品別組織が混在
自社独立した経営が行いにくい
チャレンジ精神が低い組織
個人の能力が評価や処遇に反映されづらい
意思決定が迅速に行えない
マネージャーに従業員の管理ノウハウがない
高コスト体質
企業文化の融合ができていない
従業員のモラールが低下している
新陳代謝が図られていない
ゆでガエル的な組織風土
労働者の意識が醸成されていない

 

こんにちは、マイスターです。

さて、冒頭からネガティブな言葉ばっかり並べてしまいましたが、これはなんだかわかりますでしょうか?

そうです。これは、

H13年~H24年までの事例Ⅰで登場した企業が抱えている(と読み取れる)問題点を抽出したものです。

 

 

そもそも2次試験とは何か?

 こちらは「1次試験の範囲」と「2次試験の範囲」を1枚の図で表してみたイメージ図です。

言うまでもなく、2次試験は「コンサルティングのケース問題」です。そして、中小企業診断士の仕事は経営コンサルティングです。つまり、事例Ⅰ~Ⅳの題材企業の“経営の方向性と戦略を考え、その戦略を実現するために課題に対する具体的な対策を提案する”ことです。

さて、そんな経営コンサルティングを行うためには何が必要でしょうか?

・SWOTの視点から事例企業の内部・外部環境を分析する
・問題が発生している場合や、何が原因なのか掴む
・企業の強みを機会にぶつけながら、弱みを克服するための方策を考える
・企業が進むべき方向性、または戦略を明確に提示する

という、コンサルティングをしていく上で必要なプロセスをきちんと踏める人かどうかが見られています。

 

それを各機能の観点から出題しているのが事例Ⅰ~Ⅳという風に捉えることができます。

「組織・人事の観点から企業が抱える内部・外部環境を明確にして、組織・人事の観点から具体的な方策を考えるのが事例Ⅰ」

「マーケ・流通の観点から企業が抱える内部・外部環境を明確にして、マーケ・流通の観点から具体的な方策を考えるのが事例Ⅱ」

「生産・技術の観点から企業が抱える内部・外部環境を明確にして、生産・技術の観点から具体的な方策を考えるのが事例Ⅱ」

「財務・会計の観点から企業が抱える内部・外部環境を明確にして、財務会計の観点からも交えて方策を考えるのが事例Ⅳ」

(※事例Ⅳだけ少し違う)

 

 

事例Ⅰとは何か?

さて、その中での事例Ⅰ。

シンプルに言うなら 「組織」「人事」の観点から事例企業へコンサルティングを行うのが事例Ⅰです。
といっては終わってしますので、少し掘り下げて解説をしたいと思います。

 

事例Ⅰもベースは一緒

通常、全ての企業の運営に組織・人事は関わってきます。ですので、上述の図においても事例Ⅰは他事例の土台に据えてあります。

中小企業診断士の試験ではわざわざ「事例Ⅰとして、論点を絞って出題している」と言えますが、経営コンサルティングの基本となる「現状分析」→「課題設定」→「具体的解決策の提示」というプロセスをベースとして考えるということには変わりありません。

そのため「事例企業が今後どうしていくべきか」というストーリーをきちんと自分の中で作った上で、事例Ⅰとして、個別に問われている設問を解くことが重要ということです。

年によっても出題方法が異なり、会社全体の方向性を考える必要がなく、個別設問に単純に答えるだけで得点ができてしまう出題形式もあります。しかし、「経営の方向性」が決まらないのに「組織・人事の対策」が考えられるでしょうか?きちんとどの事例においても、事例企業の方向性を考えながら、問われている設問に対して記述をしていくべきと思います。

 

 

事例Ⅰを理解するためのポイント

さて、ようやく本題。

事例Ⅰというのは、

「組織・人事の観点から企業が抱える内部・外部環境を明確にして、組織・人事の観点から具体的な方策を考える」

とお伝えしましたが、この事例Ⅰの本質をきちんと理解するには多少時間がかかるかも知れません。
しかし、一番根底で押さえておきたいのは下記の3つのポイントです。

 

こちらのイメージ図は1枚目のスライドの右下部分だけ切り取り、分解したものです。

事例Ⅰというのは大きく分けて3つ押さえなければいけないポイントがあります。

「人事システム」 ※←うちあーのの語呂合わせ「茶化」は覚えておきましょう。

「組織構造」 

、そして

「組織文化・風土」

です。基本的にはこの3つの大論点を押さえることです。

「人事システム(採用・配置・育成・評価・報酬)」や「組織構造(機能別、事業別、マトリクス)」などは基本論点ですが、何よりも「組織文化・風土」についてきちんと意識が出来ているかどうかが、事例Ⅰを攻略できるかどうかの大きなポイントの1つになります。

 

 

事例企業の企業文化・組織風土をイメージできますか?

さて、もう一度このエントリーの冒頭で羅列させて頂いた事例Ⅰで登場した企業が抱えている問題点を見てください。

こういった問題点の「原因」はなんでしょうか。

本当の原因である「真因」は何でしょうか?

 

組織や人事において「組織設計が悪い」「人事制度が悪い」「コミュニケーションが悪い」といった課題もありそうですが、上述のほとんどのケースにおいて「企業の風土・文化に何らか問題があるのでは?」という点に帰結するかと思います。企業が組織・人事面で課題を抱えている際、かならず「風土・文化」に何等か問題があると言っても過言ではありません

社長は気づいてなくとも、知らず知らずのうちに減点主義で社員を評価していたり、知らず知らずのうちに部門と部門との間でコンフリクトが起こっていたり、組織慣性が働いて組織が硬直化し、変化ができなくなっていったりします。

しかし出題においては、組織構造や人事システムといった論点と違い、事例Ⅰの与件文や設問文において”直接的に”組織風土や文化の特徴について触れられていたり、「組織風土に課題がある」と明記されることはありません。

 

つまり与件文や設問文の文言の中から、その事例企業の見えない所に隠されている「組織風土・文化」の課題を掴みとった上で、

・組織文化・風土を変えていくための具体的打ち手を提案する

・組織文化・風土を加味した上で導入可能な人事施策を決定していく

といった提案をコンサルタントとして行っていくことが必要になります

 

 

 

事例Ⅰは他事例に比べて「捉えどころのない試験」と言われます。その理由の多くは、この一見見えづらく、言語化がされていない「組織風土・文化」という点を把握するのが難しいからです。企業の歴史、外部環境変化、従業員、取引先、取扱製品など、このほかにも様々な要因から組織文化・風土というものは脈々と形成されていきます。こういった事例企業の特徴を与件文や設問文から掴み取り、事例企業抱える本当の問題点を掴み取っていくことが必要です。

これから数多くの事例に触れていかれると思いますが、ぜひこのポイントを頭に入れた上で、事例企業と向き合ってみてください。このポイントを押さえていると、”社長が本当に抱えている悩み”をきちんと掴むことが出来てくるのでは、と思います。

 

それでは今日も一日コツコツと。

マイスターでした。

 

 

 

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【いざ攻略!事例Ⅰ】本当の原因は何だ?”へ5件のコメント

  1. ヤマフリ より:

    を~様

     貴重なご意見をありがとうございます。
     
     少子化の例を持ち出すまでもなく、同じ環境が機会になったり、脅威になったりしますね。それは各々の企業が持つ資源をどのように環境に当て込むか、はたまた資源が全く一緒であっても企業トップの考え方や方針で変わってきたりもしますよね。

     大事なのは事例企業の社長を多面的な視点と愛情をもって作問者が考える必然性の高い方向に導くことかと思います。(←これが先コメントにおいての腑に落ちポイントです)

     受験予備校の教えはハード重視のように感じます。それは仕方がないことで、正解が発表されない試験に対し合格者再現答案などから分析に分析を重ねていく中、成果を他人に伝えようとすれば技巧的ノウハウでなければなりませんし、そうでなければ誰も予備校講義にお金を払う気にはなれないでしょう。

     「行間を読めるようになりなさい」「俯瞰で状況判断しなさい」など大切なことでありながら概念的すぎますから。

     ただ、そうはいっても心がけだけで2次合格の力が付くなどあり得ません(笑)

     道場のみなさんの「私を含めたこれから2次試験を迎える受験生」に対しての合格に必要なスキルを何としても伝えたい!というお気持ち、十分感じているつもりでおります。

     を~さんおっしゃるようにSWOTに関しては私も事後的に判断するほうがしっくり来そうです。

     一日でも早く得点に結びつく解法の定着を目指したいと思います。

  2. を~ より:

    ヤマフリさま

    横から失礼します。
    すでに腑に落ちていて必要ないかもしれませんが・・・

    ぼくも、SWOTを一切作らなかった一人です。
    なぜかというと、SWOTって難しいんですよ。
    強みだと思っていたものが、環境が変わると弱みになったり、その逆も当然あり。
    強みを支える環境(つまり機会)が、ある前提で脅威になったり。当然こちらも逆のケースもあり。

    なので、事例企業の特徴と市場環境を把握して、題意を理解して、取るべき戦略がなんとなく見えた、という段階でようやくSWOTを整理することになるでしょうね。
    でもこの段階では、きっと頭の中で解答下書きを作れるレベルになっていると思います。

    もっと前段階でメモ書きレベルで作るのであれば、
    「内部環境」と「外部環境」をポジティブネガティブ取り混ぜて箇条書きしていく、というやり方もあります。

    ヤマフリさまご自身が考えを整理しやすい方法・手順を見つけてくださいね。

  3. ヤマフリ より:

    マイスター様

     わかりやすいご回答、ありがとうございます。

     確かにおっしゃるとおり、私は1つ目の考え方を強く意識しています。

     講師の言う「設問解釈の重要性」を重視し、各設問を「こねくり回し」、解答に必要な要素を与件文に拾いに行くプロセスで、事例企業の強み・弱みなどは押さえはするものの、自分の想定要素を重視し、完成予想図にデコレートしていくイメージで解答づくりをしているように思います。(その結果、想定に引っ張られたり、コメントでも申し上げたような根底部分を落とした解答になりがちで点数もまちまち…)

     真に事例企業に入り込むというよりは、優れた試験対応を追求していたように思います。

     しかし、必要なのは実際に身の前に社長がいるかのような臨場感を持った対応であり、その意識があればもっと解答=回答に責任を感じ、技巧に走ることなくきめ細かい分析になってくるのでしょうね。

     なんだか、コメント書きながら腑に落ちてきたような気がします(笑)

    頑張ります!

  4. ヤマフリ より:

     いつも楽しく拝読させていただいています。

     演習において事例Ⅰの点数がなかなか伸びてこないのは、根底にあるポイントを押さえることなく知識やフレームなどを追求していたことにより、与件文の行間が読めていなかったからなのかなぁ…などと反省しているところです。

     冒頭の過去問問題点の原因はどれをとっても一つの要因から起因するものではなく、人事・構造・文化などの視点から多面的に見ることで漏れのない対策を提案できるようにしたいものです。

     ところで、私の通う予備校教師は事例の解法プロセスにおいてSWOT分析する必要はないといった趣旨のことを話していましたが、その真意がどこにあるのかいまだによくわかりません。

     正しいプロセスを踏んでいれば、おのずと強みや機会など無意識のうちに解答に織り込まれる(意識的にする必要はない)というようなことなのでしょうか。マイスターさんはどのように考えますか?

     

    1. マイスター より:

      ヤマフリ様

      コメントありがとうございます。事例Ⅰはおっしゃる通り1つの原因から起因するものではなく、各要素がつながっていると思います。
      事例Ⅰはフレームワークでは切れない「社長の悩み」「社員の本音」「組織の実情」といったような文章には表れない組織・人事面の課題をきちんと感じ取れるかが、事例を読み取る上で重要だと思います。

      さてご質問の件ですがヤマフリさんのおっしゃる通り、事例対応に慣れてくれば強みや機会などは自然と頭の中で整理できてくる側面も多分にあると思います。
      一方で、解法に対する考え方が、SWOTの必要性の有無の判断を分けていると考えられます。
      各予備校ごとや、先生ごとにでも答案作成にそれぞれの考え方がありますので。

      わかりにくい説明かと思いますが少し例を挙げて説明させて頂きます。
      例えば、1つ目の考え方は
      「個々の設問において問われている事に対して、必要な要素を過不足なく盛り込むことで点数が取れる」というものです。
      一方、2つ目は
      「設問間の関連性を意識して、設問間の繋がりを考慮して解答することで点数が取れる」というものです。
      ・事例のどこかの設問で事例企業の弱みを指摘したら、他の設問で弱みを克服するための解決策を提示する
      ・事例のどこかの設問で事例企業の強みを指摘したら、どこかの設問で強みを伸ばし、活かす方策を提示する
      といった解法の考え方です。

      1つ目、2つ目のどちらにも解法のメリデメを指摘することはできます。
      1つ目のやり方を前提とする上ではSWOTの重要度は高くないかもしれません。SWOTに時間をかけない分”設問に対する解答”を熟慮する時間は増えます。しかし、設問に対して一問一答で解答してしまう傾向が強くなり、例えば第一問で「人件費の増大が過大である」と答えたのに、第四問で「新しい人材を積極採用し、組織活性を図る」といった
      解答をするような、各設問で方向性が一貫していない答案になりやすくなります。。

      一方、2つ目の解法のようにストーリーを重視して解答する場合、どうしても「強みを機会にぶつける」「弱みを克服して脅威を回避する」というプロセスを踏むことになります。
      そのため事例企業の”方向性”を考慮し、設問間の繋がりを持たせた一貫性のある解答を作りやすくなります。
      一方、SWOT整理に時間を取られたり、要素を盛り込みきれない解答になるかも知れません。

      私は受験校で教わったのが2つ目の方法でした。また自分の中にすんなり入ってきたので
      それを信じてやってきて結果が出ました。しかし、本当にこの辺は人それぞれです。

      基本的には受験校に通っていらっしゃるのであれば、受験校で教わった通りにまずは徹底してやるのが近道だと思います。もしそれに違和感があるようであれば、別の解法も考えてみる、
      という形でいいのではないでしょうか。上記2つの例は、あくまでアプローチの違いです。どんなやり方をしていても作問者の出題意図をきちんと掴むことができていれば
      自然にSWOTが盛り込まれ、ストーリー性があり、解答に必要な要素が盛り込まれている答案になると思います。

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