【法務】法務をホームにしよう

1 はじめに

みなさん,こんにちは。はんたです。

 前回の記事では,アウェイの情報について,主に語呂合わせを書きました。情報がアウェイなのに対して, 私は法務関連の業界,業種なので,法務はホームになります

 そこで,本日は,法律学習の基本的なことをお話ししたいと思います。語呂合わせのような即効性はありませんが,しかし,漢方薬みたいに後でじわじわと効いてくるはずです。また,他の法律系資格試験の学習にも役立つはずだと自負しています。

 

2 どうして条文の他に法律書があるのか?

  資格試験の問題集などの近くに置かれていることが多いと思いますが,みなさんは,書店の法律のコーナーに置かれている法律書を見たことがありますか。「○○法講義」「○○法解説」などのタイトルがつけられた大学教授が書いた書籍のことです。六法全書という法律の条文を集めた厚い書籍もあって,六法全書を見れば条文が書いてあるのに,どうして法律書が出版されているのでしょうか。

もちろん,法律を学習する際の基本は条文です。しかし,法律を深く理解するためには,条文を見ただけでは足りないからです。

 

3 法律書にはどんなことが書かれているのか?

  それでは,法律書にはどんなことが書かれているのでしょうか。極論すれば,次の5点しかありません。

 
意義 2制度趣旨 3要件 4効果 5特殊な論点   です。

法律書では,この5点の理解のために,具体例を挙げたり,過去からの法律改正を説明したり,外国法との比較をしたりなどの説明が詳しくされています。(特殊な論点とは,ある法制度,法律概念が,一見すると,他の法制度,法律概念と矛盾・抵触するかのように見える場合に,その調整を図る観点から,解釈上問題となることが多いものです。しかし,解釈に争いがある論点については,診断士試験では出題されないはずなので,ひとまずこんなものもあるのかと思うだけで十分です。それなので,特殊な論点については,以下の説明から省略します。)

 

4 意義・趣旨・要件・効果

 意義とは,ある法制度や法律概念の意味,定義のことです。
例えば,「売買」とは,当事者の一方(売主)がある財産権を相手方(買主)に移転することを約し,相手方(買主)がこれに対してその代金を支払うことを約することによって効力が生じる契約のことである,という説明のことです。

 

制度趣旨とは,立法趣旨,あるいは単に,趣旨とも言いますが,ある法制度がどうしてつくられたのか,その制度は,誰のどのような利益を法的に保護しようとしているか(これを「保護法益」と呼びます),関係者の 利害をどのように調整しているのか,というその法制度をつくった目的,ねらいのことです。

例えば,このイラサムの記事で言えば,イラサムが,会社の機関設計における理屈と言っていることが該当します
  wackyの記事で言えば,誰を救済すべきかということです。

 

要件とは,「必要条件」の略だと思えば良いでしょう。何のための必要条件かというと,効果,つまり,「法的効果」が生ずるための必要条件です。
なお,「法的○○」とあったら,「権利・義務に関係する」,つまり,「権利・義務が発生したり,消滅したり,内容が変化したりする」と読み替えれば,まず間違いありません。
したがって,「法的効果」とは,権利義務が発生したり,消滅したり,内容が変化したりする効果,と読み替えれば良いでしょう。
そして,法律の条文は,基本的に,「○○という条件を満たしたときは,○○という効果が生じる」というよう に,この要件と効果を定めています。
要件と効果をドラゴンボールという漫画で例えると,「ドラゴンボールを7つ集める」ことが要件で,「シェンロンが現れて願い事を聞いてくれる」というのが効果になります。

 

もちろん,効果の中には,良いこと(例えば,権利を得る)ことだけではなくて,悪いこと(例えば,義務を負う)もあります。
さきほどの「売買」の例でいうと,要件は,売主が買主にある財産権を移転させようとする意思と買主が売主にその代金を支払うとする意思が合致することであり,効果は,買主は売主に対してその財産権を自分に移転するように要求する権利が発生し,逆に,売主は,買主に対して代金を支払うように要求する権利が発生します。
 こ
れは,権利が発生するという側面からの説明ですが,義務の発生の側面から言えば,売主は,買主に対してその財産権を移転させる義務が発生し,買主は,売主に対して代金を支払わなければならない義務が発生する,ということになります。

法律の条文には,要件と効果は必ず書かれています(例外として,解釈によって付け加えれられる「書かれざる 要件」というものがありますが,診断士試験では深入りする必要はありません。),意義も書かれていることが多いです。しかし,制度趣旨については書かれていないことの方が多く,特に,古い,しかし基本的な法律ほど書かれていないと思って間違いありません。
しかし,法律を深く理解するためには,制度趣旨を理解する必要があります。なぜなら,目的があるからこそ,その法律,法制度が作られたのであり,その目的を達成するために,要件と効果も定められているはずだからです

ですから,同じ文言でも,法律によって意味が異なるということがあり得ます。制度趣旨が異なっていれば,目的が異なることになりますが,法律はその目的を達成する方向で条文を定めているはずですから,法律の目指す目的が異なれば条文の文言の意味も異なるということが生じてくるのです。

 中小企業の定義が法律によって異なるのも,法律の目的が異なっているからです。会社法では,会社が大きくなると利害関係者が増えてきて,その利害の調整が複雑になってくるという観点から,中小企業の範囲を決めているのに対し,法人税法では,中小企業は,大企業に比べて資源が乏しいので,税率を軽減したり納税手続きを簡略化して保護すべきであるという観点から中小企業の範囲を決めています。

 

 

5 テキストを読むとき・講義を聴くときの注意点

 受験用テキストには,試験で出題されるポイントが要領よくまとめて記載されています 
 
診断士試験で出題されるのは,圧倒的に要件と効果に分類されるものが多いので,必然的に,テキストに書かれていることも,要件と効果に関するものが多くを占めることになります。趣旨については,おそらく,講義で補充することが予定されているのだろうと思います。
 そこで,法務に関しては,
趣旨をうまく説明してくれる講師が優れた講師ということになります。
 受験機関を利用されている方は,講師の説明の中でも,趣旨に関
する説明を最も集中して聞くべきです。仮に要件・効果についての説明を聞き逃したとしても,後でテキストを見ることでカバー可能です。
 独学の方はテキストを読むときに,必ずしも趣旨については十分な説明がされて
いないことを念頭に置きながら,自分で趣旨を考えながら読むことが,法務の攻略につながります。この点は,受験機関を利用している方も同じですね。


 なお,念のため述べますが,診断士試験に合格するためには,受験機関のテキストで十分であり,法律書を読む
必要はありません


 本日の話は,知ったからといって,法務の問題がすらすら解けるようになるというような即効性は全然ありません。

 試験の直前には,どうしても,細かい要件・効果を暗記する必要があります。
 
しかし,今後の法律学の学習における基本となるような話をしたつもりです。特に初学者のみなさんにとっては,これから法務の学習をするに当たり,知っていると,理解を深めるのにお役に立つのではないかと期待しています。

  
みなさん,法務をホームにしましょう

by はんた

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