【事例Ⅰ】過去問から学ぶ

みなさん、こんにちはうちあーのです。

2次対策の進捗状況は如何でしょうか?
講義や演習などの学習を積み上げている中で、2次試験とはどんなものかが何となく分かってきたぞ~、という方もいらっしゃるかと思います。
演習に臨む際には、演習開始前の3分間それぞれの事例の特徴や注意点を頭の中で唱えることで事例脳を作る習慣を今から付けておくといいですよ。

ここで質問。みなさんは事例Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの特徴、着眼点を説明できますか?
自信のある方もない方も、くれよんこちらの記事を是非一度参照アレ。各事例の着眼点がきれいに整理されていて秀逸

さて、各事例の本質を横串にした上で、ここからは事例Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのそれぞれの本質についてググッ!と掘り下げてみたいと思います。
どんな試験でも本質に迫ろうと思ったら過去問分析が王道。というわけで、今回からのうちあーのの記事は3回に分けて本試験の過去問分析を行います。
事例ごとの特徴を理解することでH24の本試験までに何をすればよいか、また本試験会場で困った時にどうすればよいか、を掴んで頂ければと考えます。

では、今回はその1回目、事例Ⅰ編です。

 

◆設問文の特徴◆
1.設問数と配点
昨年度H23は5設問x20点、これはH21、H20と同じで近年の定番パターンと言えます。このような均等配点の場合、1設問にかける時間も基本的に均等割りで考えてよいでしょう。例えば、設問文および与件文の読解と対応付けに30分、設問ごとの解答方針決定から記述に50分かける受験生であれば、差し当たりの時間配分は各設問10分と想定できます。(字数や難易度に応じて後で修正は当然ありですが)
ただしH15は8設問、しかもそのうち2設問で「2つ述べよ」なので解答箇所としては10という事例でした。まるで事例Ⅱみたいですよね。
H23では事例Ⅱ、Ⅲでの200字問題や事例Ⅳでの経営分析で「昔の過去問への回帰」が見られました。
H24本試験に向けては、近年パターンの5×20を基本線に置きつつ、そうならないことも想定内としておく必要があります。

2.字数制限
H18~H22までは全て100字もしくは150字でした。これって、考えてみればアバウトな字数制限で、事例Ⅱ・Ⅲには見られない特徴ですが、いったい何を意味するのでしょうね。
一つの仮説としては「出題委員が用意した模範解答は字数制限に対してかなり緩いものではないか」ということが考えられます。
それに対してH23では120字の設問が5設問中4つを占めました。裏を返せば「出題委員が用意した模範解答は100字以上120字以下できっちりとしたものではないか」ということが言えます。
だとすると、H23においては「何を書くか」と同時に「何を書かないか」という発想も得点を積み上げるためには有効だったのではないかと考えます。
因みに、H17では「30字で3つ」、H15では50字や80字の設問もありました。ここでも上記の「昔の過去問への回帰」は想定されます。

3.時系列
事例Ⅰは、与件文の性質(後で触れます)に合わせる形で設問の順番も時系列で問われます。第1問でいきなり未来のことを聞かれて、続く問題で過去のことを問われる、みたいな意地悪なパターンはこれまでありません。
また、過去から現在にかけての問いに対しては与件文に書かれていることも多く抜き出しでの対応が可能ですが、未来のことは普通はあまり書いていないので与件文をもとに類推することになります。
これら2つの特徴を知っていると、事例Ⅰの設問は第1問から最終問までの間のどこかで「過去から現在」問題と「現在から未来」問題に大別される構造であり、かつ抜き出し対応可能な前半部分が得点の固めどころということになります。
H23では第4問までが「過去から現在」問題で、第5問が「3年以内に売上目標を達成するためのアドバイス」、つまり「現在から未来」問題です。このケースだと結構点数は取りやすいですよね。
一方、現行の診断士2次試験史上最高難易度とも言われるH18の事例では、第2問以降が全て「今後」、つまり「現在から未来」問題であり、その評価を見事に証明しています。
試験開始後、設問を読み終えるまでの早い時間帯に大凡の難易度を把握することでその後の対応を変化させられれば、戦術的にも精神的にも相当有利になるはずです。

4.問題要求
過去問を大局的に見ると、事例Ⅰの問題要求には一定のパターンが認められます。
そのパターンとは、

①第1問で現状分析、最終問でアドバイスを行う。
②その間にはその年のメインテーマを挟んでいる。

第1問は、H18~H22で主にSWOT分析、特に「強み」について問われるのが主流でした。H23ではSWOT分析ではありませんが「A社が扱う2つの異なる商品・市場に関する分析」なので現状分析であることには違いがありません。また、最終問題は必ずアドバイス問題です。
②のメインテーマについて、詳細は割愛しますが、H22とH21なら「買収」、H20なら「コスト削減」、H19なら「従業員満足度」、H18なら「子会社」がそれにあたります。
H23は第2問「特許」、第3問「所有と経営の分離」と特定のテーマは認められませんでしたが、「1次試験の知識からの展開」といった切り口において出題者の意図が見られるような気もします。
②についてはH24にどちらのパターンで来るか分かりせんが、①のような基本形は念頭に置いておくとよいでしょう。

 

◆与件文の特徴◆
1.ボリューム
H23は2ページ弱、51行と例年で最短でした。H20は76行、H19は74行だったことを鑑みると、H23の短さは群を抜いてます。実は記述量のボリュームでも、H19の750字、H18の700字と比べH23は580字とかなり少なくなっています。
2次試験80分の主要作業は「読む」「考える」「書く」ですが、この中で「考える」作業に着目したい、という出題者の意図が表れているのかもしれませんね。

2.ストーリー展開
これにも過去問を見ることで大体のパターンが読み取れます。

・(起)A社の概要(業種、規模、業績、組織など)
・(承)A社経営者に関する記述
・(承)A社の成長していく歴史的展開
・(転)競合出現や外部環境変化
・直面する課題

「起・承・承・転」と来て、「ではこれからどうしよう」みたいな流れは毎年ほぼ一緒です。何か出題委員の中でフォーマットでもあるんでしょうかね。
設問と与件文がともに時系列となっていることから、対応付けも素直に「上から順に」をベースにすればよいと思います。(当然そうならない場合も多くありますが)
事例はストーリーですから「転」で終わってはいけません。必ず「結」が必要です。その「結」が受験生に求められる課題解決であり、多くの場合は最終問題でアドバイスする内容になります。言い換えると、出題者が提示する「起・承・承・転」に対して、受験生が「結」、つまり課題解決することで、初めてそのストーリーが完結することになります。なので、課題を放ったらかしにしないようにしてくださいね。

3.文章の構成
事例Ⅰに限りませんが、国家試験らしく、至って常識的な日本語で書かれています。
上記2のストーリー展開の中で、細分化された事実やテーマごとに段落分けがされています。なので、与件文を読む際には「段落ごとに何が書いてあるか」を把握することで大きな流れを早く、正確に理解しやすくなります。
その際、各段落最後の文章には要注意。よく「取って付けたような文章」がありますが、それには出題者の何らかの意図、つまり解答の根拠となっていることが多いです。
例えば、H23で言えば、第2段落最後の文中の「わが国とは法や規制の異なる」なんかはその典型例。法や規制なんて前後の文章から何の脈絡もないですよね。
こういう記述を見つけたら必ずいずれかの設問に貼り付ける。特にはっきりとした根拠がない事例Ⅰにおいては、出題者の意図に近づける有効な術だと考えます。

 

◆「出題の趣旨」から垣間見えること◆
ご存知の通り、診断士2次試験は正解や模範解答が発表されませんが、診断協会は毎年度2次試験終了後「出題の趣旨」なるものを公表しており、診断協会HPではH16以降の「出題の趣旨」を見ることができます。
H18~H23についてまとめると「分析能力」が最多、次いで「助言能力」「基本的理解、知識」「課題発見能力」の順で4つに集約されています。

事例Ⅱ、Ⅲでは異なる特徴がありますので、次回以降で触れたいと思います。
組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する実際の診断業務において、出題者側(診断協会)が診断士の卵たちに求める能力がこれらの4つであることを理解しておくと、事例Ⅰの輪郭がなんとなく見えてくるのではないでしょうか?

H23の「出題の趣旨」はこちら
第1問設問1では「一般家庭用医療品の営業活動と医家向け医療品の営業活動の違いを問うことによって、顧客に対するA社の組織的対応の違いについて基本的理解力を問う問題である。」と趣旨を明示しています。
それぞれの商品の営業活動が「誰に対して」「どのような組織的対応」を書いて欲しかった、という解釈が成り立ちますね。

 

◆おまけ(語呂合わせ)◆
事例Ⅰは、「組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」であるため、分析においても助言においても人的資源管理は切り口として非常に効果的。
よって、私は事例Ⅰが始まると必ず問題用紙に「茶化」と書くようにしていましたという字は上から「サ」「ハ」「ホ」に、は左から「イ」「ヒ」に分解でき、それぞれが、

サ 採用
ハ 配置
ホ 報酬
イ 育成
ヒ 評価

を表しています。どう?結構覚えやすくないですか?
「なんだよ、また語呂合わせかよ」と茶化すことなかれ!

 

◆まとめ◆
よく事例Ⅰは難しいと言われます。
マーケティング、生産管理、財務には普遍的なソリューションがありイメージもしやすいのに対して、事例Ⅰは組織・人事の事例のため、A社社内の固有の問題や課題を分析・助言しなければならない。また解答となるべき記述が与件文に見当たらないことも多々ある。
こんなところに事例Ⅰの難しさがあると考えられます。
でも、この難しさって現実的にはどの受験生にも言えること。プラス思考で考えれば、難しいからこそ普通にやればA判定がもらえる、ということです。

誰にとっても与件文に書いていないことは当てにくい。なのでそこは勝負所ではないのです。
勝負所は多くの受験生が記述するであろう共通解の部分。ここで取りこぼしなく確実に獲っていけばOK。
だからこそ、事例Ⅰは奇を衒わずに。うまく切り分けができない場合にはあえて重複も辞さず。とにかく大ゴケしないよう慎重に対応する戦略で攻略しちゃいましょう!

 

Ciao!
By うちあーの

 

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【事例Ⅰ】過去問から学ぶ”へ2件のコメント

  1. うちあーのさん、こんにちは!
    「茶化」いただきました、
    ありがとうございます!

    1. うちあーの より:

      ガネーシャくん様、

      コメント連投ありがとうございます!
      去年、特に施策提案系の問題では「茶化」に本当に助けられました。さらに「茶化」を「士気向上」に繋げるパターンで軽く「お団子もう一つ」積み重ねるといい感じですよね。
      まだまだ暑いですが、がんばってください。ガネーシャさんのこれまでの努力は必ず報われると信じております。

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