【経済】GWで苦手つぶし~暗記より理屈

こんにちは。こぐまです。

この記事でも書いたように、間もなく基本講義が終了し、ゴールデン・ウィークも含め比較的時間がとれる時期がやってきます。
TACの2次チェック模試LECの1次ステップアップ模試を受験される方もいらっしゃると思いますが、苦手科目をまとめてつぶすのに絶好の(というかほぼ最後の)機会。

受験生の方とお話ししていると、ここ2年の難化(22年度は異常)もあってか、「経済学・経済政策」を心配されている方が多いと感じています。
かくいう昨年の私もそうでした。

しかしながら、単純化したモデルを仮定しているため、基本を理屈で理解していれば、多少、難易度が上がってもそこそこ得点できる科目でもあります。

今回は、GWに「経済」を復習しておこうと思っている方向けに、簡単にマクロ経済の一部だけ、まとめておきたいと思います。

◆マクロ経済の体系◆
まず、診断士試験で押さえておきたいマクロ経済のアウトラインを、ざっくりとまとめてみます。

1.国民経済計算: 三面等価の原則
2.総需要=総供給分析(ケインズ経済学)⇔ 古典派経済学、マネタリスト
3.国際マクロ経済学: 国際収支説、マンデル=フレミング・モデル、経常収支
4.消費関数: 相対所得仮説、ライフサイクル仮説、恒常所得仮説など

 

特に重要な2のケインズ経済学の体系は次のように表されます。

マクロ経済では、一国の経済を分析対象としますが、モデル化・単純化するために、財市場、貨幣市場、債券市場、労働市場の4つの市場に分けて考えます。

なお、マクロ経済学では、様々な金融資産を、利息を生まない貨幣収益を生むそれ以外の金融資産の2つに大別し、貨幣以外の金融資産をすべて「債券」と仮定するため、貨幣市場を分析することで同時に債券市場も分析可能(ウラオモテの関係)とし、分析対象としているのは債券を除く3つの市場です。

これら3つの市場はお互いに関連しています。例えば、

財市場で需要増加→貨幣市場で取引のための貨幣需要増加(=債券需要減少)→労働市場で生産のための労働需要増加

という相互関係が仮定できます。

また、貨幣需要が変化すれば利子率rも変化し、それがまた財市場の投資等に影響を与えるだろうことも想定できます。

これら3つの市場の相互関係を把握するための分析手法は、対象とする市場の範囲によって次のように分かれています。

45度線分析→貨幣市場(⇔債券市場)分析→IS-LM分析→AD-AS分析

という分析の流れと骨格、それぞれの分析目的をしっかりと押さえておきましょう。

◆45度線分析~財市場◆
投資Iを定数とすること(独立投資Io)により貨幣市場からの影響(利子率rの変化)を排除し、生産物やサービスなどの「財市場」のみを分析対象とする手法です。

これにより、財の需給が一致する点である「均衡国民所得Y*」が求められます。
この「均衡」という概念は経済学でよく出てきますので、意味するところを再確認しておいてください。

詳細はテキストを見ていただくとして、輸出入がないと仮定した閉鎖経済モデルでの総需要は、次のような関係式で表されることになります。

Yd = cY + Co + Io + Go
Y: 国民所得、c: 限界消費性向、Co: 基礎消費、Io: 独立投資、Go: 政府支出

右辺は、三面等価の原則のうち、国民所得を支出面からみた場合の需要項目です。
45度線である「総供給Ys = Y」と併せてグラフ化したのが下記です。

 

 

なお余談ですが、経済や財務・会計では、複雑に見える関係式を
y = ax + b
の形に単純化するのがコツです(財務レバレッジなど)。

ケインズは、国民所得を決定するのは供給ではなく需要であると主張しました。いわゆる、需要が供給を生み出すという「有効需要の原理」ですね。
ケインズの有効需要とは、実際の支出を伴う需要のことを指しており、総需要と同義です。

・需要>供給 ⇒ 品不足 ⇒ 生産量増加 ⇒ 国民所得増加
・需要<供給 ⇒ 売れ残り ⇒ 生産量減少 ⇒ 国民所得減少

という調整が働き、均衡国民所得に収斂していくと考えたわけです。

ケインズは、失業の原因は需要不足にあり、非自発的失業を解消するためには、政府支出等で有効需要を創出し、経済全体の需要不足を補うべきであるとしました。

ケインズ学派に対しては批判もありますが(例:マネタリスト)、現実にはしばしばケインズ的な総需要管理政策(財政、金融)が採用されています。

診断士試験でもケインズ学派の理論がベースであり、それに対するものとして古典派、新古典派、マネタリスト、サプライサイド経済学などが問われますので、まずはこのケインズのマクロ経済理論の基礎を理解しておくことが必須であると思います。

◆インフレギャップとデフレギャップ~完全雇用国民所得◆
労働、生産設備、土地などの生産要素が完全に利用され、実現しうる最大の国民所得のことを「完全雇用国民所得Yf」といいます。
つまり非自発的失業者がゼロの理想的な状態のことです。

上述の有効需要の原理のもとでは、必ずしも「Y* = Yf」とはならず、常識的に考えて何らかのギャップが生じるのが普通です。

Y*>Yf ⇒ Yd>Ys(総需要超過)=インフレギャップ発生 ⇒ インフレーション
・Y*<Yf ⇒ Yd<Ys(総需要不足)=デフレギャップ発生 ⇒ 失業者等が存在

政府としては、このギャップを克服し、Y*とYfを一致させることを目標として何らかの政策手段をとる必要があります。
さて、実現可能な政策手段にはどのようなものがあるでしょうか?

ケインズ的な立場では有効需要を調整することでギャップ解消を図ることになります。
そこで、先ほどの総需要の関係式「Yd = cY + Co + Io + Go」から考えるとどうなるでしょうか?

総需要Ydの傾き(限界消費性向c)を政策的に変化させるのは、生活習慣的な要素なので短期的には無理。
それでは切片を上下させることとしましょう。

しかしながら切片の中で、食費や住居費といった基礎消費Coは、限界消費性向cと同じく政策で増減させるのは困難ですから、短期的に政策的なコントロールができるのは、独立投資Ioと政府支出Goだけですね。

そこでとりうる政策手段は、
政府支出の増減
増減税
金融政策(緩和、引き締め)
が挙げられます。

◆乗数理論◆
政府支出や投資などの増減が、その増減額以上の変化を国民所得に及ぼすことを「乗数効果」といいます。
支出が次の支出を呼び、所得が増加し消費も増えるという「風が吹いたら桶屋が儲かる」(?)的なてんやわんや状態が、国中のあちこちで起きるようなものと思ってください。
当然ながら、必ず「乗数>1」です。

乗数理論は、均衡国民所得を実現するにあたっての市場メカニズムそのものといえます。

計算式の羅列になってしまうので、ここは足早に過ぎますが、テキストで下記の乗数の算出方法と結果を確認しておいてください。
なお、閉鎖経済だけでなく、開放経済の場合は限界輸入性向の概念が入りますので、そちらも併せて確認お忘れなく。

・投資乗数
・政府支出乗数
・租税乗数(定額税)
・均衡予算乗数

最後の「均衡予算乗数」は間違いやすいので気をつけてください。

政府支出の増加1兆円を、均衡財政を維持するために同額の定額増税でまかなう場合、国民所得はどう変化するか?

頻出論点ですので、ご自分で考えてみてくださいね。理解している方は秒殺のはず。

◆IS曲線の導出◆
やっとこさ、ここに辿り着きました。
45度線分析による財市場のみでの均衡に加え貨幣市場も対象とし、財市場と貨幣市場の同時均衡を分析するのがIS-LM分析です。
ここでは、IS曲線をどう導き出すかの理屈を整理しておきます。

IS曲線
テキスト等では、
財市場を均衡させる国民所得Yと、利子率rの組み合わせを表す曲線
と定義されています。

初めに読んだ時は何のことやらさっぱりわからなかった部分のひとつがこれでした。
国民所得と利子率? 財市場と貨幣市場を結び付けるロジックは何なのか?

まず必要な概念は「資本の限界効率ρ(ロー)」ですね。
財務・会計で学習した現在価値や割引率の考え方と同じなのですが、テキストには長々と計算式や説明が書かれていてわかりにくい。

乱暴ですが、私は「経営者は、資金調達コストである利子率より高いリターンが得られるならば投資を実行する」と単純化して理解していました。
ρは投資の予想収益率と同義です。「ρ>r」であれば投資するということですね。

よって、「利子率が低いほど投資は増加する」という利子率と投資の関係(減少関数)を捉えて、総需要の関係式を思い出せば、上記の定義が腑に落ちます。

「I = I(r)」という極めて単純な減少関数です。
利子率が下がれば、需要項目の投資が増加し、その結果、国民所得も増加するというロジックですね。
なぜすぐに理解できなかったのか、今となっては不思議ですが・・・。

ということで、上記定義を縦軸r、横軸Yのグラフで表すと、IS曲線は次のように描かれます。減少関数ですから、右下がりのグラフになります。

r (r0→r1) ⇒ I (I(r0)→I(r1)) ⇒Y (Y0*→Y1*)

というロジックが上下のグラフを比較することで理解できると思います。


 LMがないので片手落ちですが、このようにして、財市場と貨幣市場が繋がるわけですね。
財市場で国民所得が決まり、それが貨幣市場の貨幣需要に影響し、利子率が変動して財市場での投資判断にまた影響する・・・という相互関係にあるわけです。

なお重要なことは、この段階では物価水準の変動は無視していることです。
物価は、労働市場を加えた3市場の同時均衡を考えるAD-AS分析で検討することとなります。

どのような場合にIS曲線が左右どちらにシフトするか、上記の導出の過程を押さえておけばすぐにわかるはずです。

本試験までまだ時間がある現段階では、暗記より理屈で考えることを優先しておいた方が、対応力が高まります。この科目では、暗記は最後の手段です。

結局、目論んでいた貨幣市場とLM曲線導出までには至りませんでした、すみません。

ほんのわずかな部分だけの記事になりましたが、この科目を復習していくうえで、理屈で考えることの重要性を再確認していただければ幸いです。

必ず自分でグラフを書きながら問題を解いてください!

◆過去問◆
すでに過去問に取り組んでおられる方も多いとは思いますが、経済について「なんか嫌だなあ」という感覚を持っておられる方は、まず平成21年度と20年度の問題を全部解いてみてください。

ここ数年では比較的易しい問題なので取り組みやすく、出題論点がほぼこの50問で把握できます。

22年度のようなとんでもない問題はほとんどありませんので、まずはこの2年分を徹底的に理解しておくと、経済への苦手意識が少しは払拭でき、完成答練や模試に向け弾みがつくのではないかと思います。

この2年分を制覇したら、次は平成19年度と23年度を模試までにはやっておきたいところ。手ごわいです。
入手できれば18年度も。

繰り返し同じ論点が、似たような形式で出題されていることがわかります

最後に、古い過去問をひとつ挙げておきますので、正解を考えてみてください。

平成14年度第11問
IS-LM分析において、IS曲線は財・サービス市場の需給均衡から生じる利子率と所得との関係を表したものである。そのIS曲線をシフトさせる要因として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 減税
b 公共投資の増加
c マネーサプライの増加
d 利子率の上昇

[解答群]
ア aとb    イ aとc    ウ aとd    エ bとd

 

by こぐま

Follow me!

【経済】GWで苦手つぶし~暗記より理屈”へ2件のコメント

  1. こぐま より:

    平平様

    こちらこそ初めまして。
    コメントいただきまして誠にありがとうございます。

    経済は7科目の中でやや独特な地位にある科目で気にされている方が多いので、早いうちに何らかの形で記事にしておきたいと思っておりました。

    取っつきにくく、どうしても後回しにしがちな科目でもありますし・・・。

    IS曲線までという、尻切れトンボ的な記事で申し訳ないですが、今後の復習に向けてのひとつのドライブになれば嬉しいです。

    本ブログと新たにリンク貼っていただいたんですね。
    今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

  2. 平平 より:

    こぐま様、はじめまして。

    コンパクトに論点をまとめてくださってありがとうございます!

    例に漏れず(?)、私も経済学は最初は全くちんぷんかんぷんでした。

    経済学の入門書からじっくりと取り組むことで、ある程度過去問も解けるようになっていたはずなのですが・・・

    恐ろしいことに、今、その知識がほとんど忘却されていることに気が付きました。

    もう一度、しっかり復習をしなくては・・・

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です