のれんのゲンソンソンシツ
こんにちは、を~です。
3月に入って、ようやく「暖かい」と言える日がチラホラやってきました。三寒四温とは言いますが、三寒二温二中くらいな感じでしょうか。
ぼくはベランダでメダカを飼っているのですが、つい先日までは水槽の下のほうでじぃっと固まっていたのが、最近は朝でも元気に泳いでいる日があります
ちょっと前になりますが2月3日付で、パナソニックが三洋電機買収に係るのれんについて2500億円の減損損失を計上するという報道がありました。
金額のケタ違いな大きさにどんなものなのか想像がつきませんが、「のれん」と「減損損失」、説明するとしたらどのように説明しますか?
あ、ちなみに今回のエントリは、会計基準に触れていることもあって診断士試験にMUSTな内容ではないので自分の勉強を優先してください。
ただ、1次試験の財務・会計でも、H22年度第2問/工事進行基準や、H23年度/引当金(こちらは会計基準ではなく「企業会計原則」ですが)のように、基準の超定番フレーズの出題が続いています。
大きな配点ではないので捨てて問題ないのですが、余裕があれば理論を理解するためにも会計基準を知っておいて損はないですよ
■ のれん ■
のれんが何かを知らない人はまさかいないとは思いますが、会計基準でどのように定義されているかを見たことがある人は少ないかもしれません。
「企業結合に関する会計基準」という会計基準があります。
その中で、用語としては定義されていませんが、のれんについて下のように記述されています。
「取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、その超過額はのれんとして次項に従い会計処理し~~」 |
ちょっとというか、だいぶわかり難い文ですが、のれんは取得原価として扱われます。何を取得したのかというと買収企業なわけです。
A社がB社を買収する場合、Bが持つ資産はそのままA社が資産計上するので、「買収によって期待している価値増加分」をのれんとして取得し、それを資産計上すると考える方がわかりやすいかもしれません
のれんは、
将来のある期間にわたって、買収によってA社・B社が単独で得られるであろう利益の合計を上回る部分(各期の超過利益)を、
現在価値に割り引いた価額
として説明されることになります。
(もちろんこれは後付けの理屈で、実際にはA社は○○円以下で買いたい、B社は△△円以上で売りたい、という双方の思惑があって交渉で買収金額が決まります)
資産の取得は、収益を得るための行為にその資産を用いることを目的としています。そのため、資産を用いてその資産の価値が目減りした部分は、収益に対応する費用となります。このことを、費用の期間配分といいます。
有形固定資産であれば、減価償却という方法によって取得原価を期間配分します。
棚卸資産であれば、期末の在庫は当期の収益に寄与しないため、売上原価の計算において取得原価を次期(以降)に繰り越します。
のれんの場合、決算整理の中で償却し、販売費および一般管理費として期間配分していきます。
これがのれんに関する会計処理の流れですが、のれんの減損損失とはどんなものなのでしょうか。
■ 減損損失 ■
減損損失は、ご存知の通り、次のステップによって減損の有無について判定した結果、減損がある場合に認められる損失です。
細かい論点は端折りますが、これは「固定資産の減損に係る会計基準」に定められた減損の判定方法です。
減損が認められた場合、その資産(又は資産グループ)の帳簿価額を「回収可能価額」まで減らしますね。
この減額分が減損損失として会計処理されて、減額後の価額をもとにして翌期以降の償却が行われていきます。
ちなみに。
減損の判定の中に出てくる「割引前将来キャッシュ・フロー」はどうやって決められるか知ってますか?
会計基準では、「企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積る」とされているんです
乱暴に言うと、事情を説明さえできれば好きなように将来キャッシュ・フローを見積もることができるんですね。
さて、この会計基準ですが、「固定資産の」と書いてあるように、有形固定資産に限ったものではなく、のれんを含む無形固定資産にも適用されます。
ちゃんと、「のれんの取り扱い」という項がつくられているんですよ。
ついでに触れておくと、金融資産、繰延税金資産、および無形固定資産ですがソフトウエア(市場販売目的)はこの基準の適用対象外です。
先ののれんの項では、将来の超過利益の現在割引価値がのれんの価額になると説明しました。
のれんを減損処理するということは、
「今の割引前将来キャッシュ・フロー」が「(買収時の)割引現在価値」を下回っているということです。
割引前なのに下回るって、よっぽどの事がないと起こりませんよね
■ 最後に ■
冒頭で揚げたニュースですが、減損処理の理由は韓国メーカーとの競争が激化している民生用リチウムイオン電池の収益悪化を織り込んだ結果であるとされています。それにしても2500億円とは、とっっっっても激しい環境の変化があったんですね。
というわけで、ニュースをきっかけにしてのれんと減損損失に関する会計基準を見てみたわけですが、財務・会計には将来キャッシュ・フローが関与する論点がいっぱいあります。
貸倒引当金(キャッシュフロー見積法)、退職給付債務、資産除去債務、理論株価、企業価値、DCFなど。
それぞれの計算方法や理屈、ちゃんとアタマに入ってますか?
以上、を~でした。
deco様
コメントありがとうございます。
これからは7代目が記事を書いていきますが、
過去記事にも非常参考になるものもあります。
道場を活用して勉強の理解を深めて頂ければ幸いです。
を〜さん、
減損損失について、丁寧な解説をありがとうございます!
スピ問で減損損失について解説読みながら、こちらのフローチャートを見ることで、とてもわかりました。
実際のニュースと一緒に読むことで、イメージがふくらみ、ゲンソンソンシツが減損損失と漢字になっていく感じです。
ありがとうございます!