【財務・会計】橋げたの構築・財務編(上)

こんにちは。こぐまです。

雛祭りの日に無粋ですが、前回の会計編に引き続き、今回は財務編(上)です。

今のところ当道場では禁断の二次試験対策ですが、気にされている方も多いですよね。先日のセミナーでもいろんなご質問をいただきました。

H20、21、22年度の事例Ⅳは難易度が高く、一次の財務・会計のレベルから相当ジャンプアップした出題が多かったです。簿記1級保持者であれば、それほど難しくはない内容だと思いますが、診断士試験の平均レベルから見ればハードルの高い問題が多々含まれていました。特にH21年度は無茶もいいところ。

その3年間はファイナンス論点が中心でしたが、試験委員の交代が影響したのか、一転、H23年度の事例Ⅳは会計的な論点が増え、実務に近い出題がされたように思います。
一次試験とのギャップがそれほど大きくなく、簡単だったという人が多かったです。一方でやっぱりできなかったという人もそれなりにいて、そういう人は知る限り合格していません。

ということは、やはり財務・会計も一次試験を徹底して攻略しておくこと、そしてできるだけなぜそうなるのか?という各論点の理屈を理解しておくことが、現時点でできる最大の二次試験対策ではないかと思います。企業経営理論と通じるところがありますね。

診断士は、中小企業の経営者に対して、いろんな観点(切り口)から会社を分析・診断し、助言することが求められます。つまり、経営者がより正しい「意思決定」を行うために、専門家としてあらゆる観点から根拠を示しながら助言することが任務であると言っても過言ではありません。

財務・会計(事例Ⅳ)は、会社の資源のうち、「カネ」の観点・切り口から、経営者の意思決定を助けるための道具
であり、公的機関や金融機関から資金調達するために説明を求められる将来の数値計画等の根拠を理論的に明らかにし、説得力のあるものに仕上げる道具でもあります。

何度も申し上げますが、それだけ重要な科目であり、また追い込みが利かない内容であるからこそ、現時点で基本論点をガッツリつぶしておきましょうという提案をさせていただいているわけです。一次本試験では、基本論点を理解していないと悩み込んでしまう変化球が飛んでくることも多いので、そういう時にぶれずに冷静に対応できるよう、各論点を理解しておきましょう。

今回はどの論点もひとつの記事になるほどの内容がありますので、二次試験の事例Ⅳも意識しつつも、現時点で最低限、押さえておきたい点に集中します。

また、現時点での弱みを発見できる一助になればと思い、各論点に関係する過去問を記載しておきますので、解いてみてください。

◆キャッシュフロー計算書◆(H18-6、H19-13、H22-6)
実務の現場ではB/SやP/Lほど利用する機会は少ないように思いますが、中小企業診断士試験では超重要視されています。
P/Lはお化粧しようと思えばできないことはないので、会社の問題点や本当の実力を分析する上ではCF計算書が優れており、診断士にとって必須のテーマです。

H23年度の事例Ⅳでは、計算過程まで書かせる問題が出題されました。実務補習でも、必ず報告書への添付が求められる書類です。
二次試験では、計算書全体を自分で作成できるようになっておくことが必要ですが、現段階では次のような点を確実に押さえるようにしておいてください。

①直接法と間接法の違い
営業CF小計欄の上が異なりますね。どう違うかおおよそでも思い出せるでしょうか? できない場合はテキストへ。
H20年度の第6問(1)では、間接法で秒殺できる問題が出てました。+か-かを間違いなくパッと思い浮かべられるようにしましょう。

②間接法での小計欄上の営業資産・負債増減
資産が増えたら、負債が増えたら・・・キャッシュ増減はどうなるか、すぐわかるかどうかがポイント。会計編で、勘定科目の本籍地が曖昧になったら、現金が増えるか減るかを考えるとわかりやすいと書きましたが、この部分でも応用できます。

③直接法での営業収入・仕入による支出の計算方法
営業収入は、P/Lの売上高にB/Sの売上債権増減を調整して算出すること、当期貸倒があれば減算することなど、計算式を覚えてますでしょうか?

④小計欄下の営業CF
ここで何をどのように調整するか、正確に計算できるでしょうか? 未払利息や未収利息がある場合、小計欄の上で加減したP/Lベースの利息をキャッシュベースに直して調整する部分です。

案外、忘れやすいのは、ここに法人税等支払額が含まれることで、未払法人税等がある場合は同様にキャッシュベースでの支払額を算出しなければなりません。老婆心ながら、配当金の「支払」は財務CFであることにご注意!

⑤投資CFの有形固定資産取得・売却
H22年度の第6問で問われました。期中取得、期中売却、除却、減価償却累計額を考慮した、やや複雑な計算をマスターしておいてください。

◆直接原価計算◆
全部原価計算と対になる計算方法で、二次試験でもこの考え方は重要です。H23年度の事例Ⅳ第2問が典型例。
財務諸表作成で使われる全部原価計算で十分じゃないか? なぜ財務諸表には使えない直接原価計算が大切なのか? 全部じゃないということは部分だけを計算するということ? それはどの部分?
このような疑問を持たれた方は、鋭いです。

製造原価の分類法で、直接費と間接費に分ける方法の他に、「変動費」と「固定費」に分ける方法がありますが、その変動費のみで原価計算するのが直接原価計算です。固定費は製造原価に含めません。
では、なぜ変動製造原価のみで計算するのでしょうか?

これは、制度会計である全部原価計算に不備があるためです(不備は言い過ぎ? 場合によっては問題があるという意味です)。
製造業の売上原価の算出方法を覚えておられますでしょうか?

「売上原価=期首製品棚卸額(在庫)+当期製品製造原価-期末製品棚卸額(在庫)」

この期首と期末、当期の完成品製造原価には、全部の原価(変動費と固定費)が含まれていますね。
つまり、生産量の多寡に関係なく一定に発生する固定製造原価が、製造間接費として製品在庫に配賦されているということです。

ということは、期末の製品在庫にも当期に発生した固定製造原価が含まれ、上記算出式をみればわかるように、その分だけ費用が少なくなって、結果として総費用を引いた後の営業利益がかさ上げされることになります。作れば作るほどその金額は大きくなります。
当期だけを見れば、「在庫が利益を生む」という皮肉な結果になるわけです。

当期に山ほど製品を作っておけば、売上原価に配賦される固定費が薄まるため、販売できずに過大な製品在庫が残っても、とりあえず当期の営業利益を大きく見せかけることができてしまうという問題点が全部原価計算には本質的に含まれているのですね。
私も過去、取引先の現場がそのような手段で利益水増しをしているのに何度か遭遇したことがあります。

このことは言い換えると、全部原価計算では売上高の変化と営業利益の変化が連動しないということです。
会社の利益構造を把握し、利益計画を立てる上において、全部原価計算のみでは間違った意思決定をしかねず、その欠点を補うために直接原価計算という手法が存在するわけです。

会社として経営計画を立てるためには、モノをいくつ作って販売すればいくらの原価が発生し、利益がいくらになるのか、という利益構造を知っておく必要がありますね。

変動製造原価だけで原価計算を行い、固定製造原価は全て当期の費用として計上すれば(製品に配賦しなければ)、製造による原価(Cost)の発生、販売量(Volume)、利益額(Profit)が比例的に動くことになり、利益構造を捉えやすくなるという効果が出てきます。
その結果、どういう施策を打てばよいかの経営の意思決定が可能になるわけです。

この直接原価計算は、次に述べる「損益分岐点分析(CVP分析)」に繋がっていく重要論点です。二次試験でよく問われる「意思決定会計」の最も基本となる考え方ですので、是非とも今のうちに本質を理解して問題を解いてみてください。
変動費、限界利益、固定費、営業利益の関係を押さえておくことがポイントです。

◆損益分岐点分析◆(H19-10、H20-12、H22-9)
一次でも二次でも頻出の最重要論点のひとつです。
診断実務でも必須のテーマです。

損益分岐点(BEP:Break Even Point)とは何か?ということについては説明不要と思います。
BEP売上高の計算方法もすぐ出てきますよね? 一次試験では固変分解された上で出題されることが多いのですが、余裕があれば高低点法でも解けるようにしておいてください。高低点法は特に二次試験で出題されます。
安全余裕率も説明可能な状態でしょうか? BEP比率との関係なども、図を書いてパッと計算式が思い浮かぶ状態になるよう、何度も練習を繰り返してください。

ポイントは、変動費率が変化したら、または固定費額が変化したら、BEPはどう動くかを図表で理解し、計算できるようにしておくことです。
それから、目標利益を達成するための目標売上高がいくらか算出できるようにしておくことも必要です。
通常は営業利益ベースでのBEPが問われますが、経常利益ベースでのBEP分析が出た場合の営業外損益の取扱い(固定費)には要注意です。

また、二次試験では、BEPを改善するための方法について問われることがあります。

◆セグメント別の損益計算◆(H18-10、H21-10)
直接原価計算に関連する論点として、近年、特に頻出論点ではないかと思います。
二次試験では、H23年度の事例Ⅳ第3問で出題されました。

製品別、事業部別の利益分析で使われますが、限界利益と貢献利益の概念を把握して計算できることが必要です。
なお、この二つは、一般的に会計で用いられる概念と診断士試験とでは相違がありますので、ご注意ください。

また、固定費が、特定セグメント特有か複数セグメントに共通するものかの性格の違いにより、個別固定費と共通固定費に分けられて貢献利益が算出されますが、案外これも曖昧になりがちです。

当該セグメントを存続するか廃止するかは営業利益で決めるのではないということを、しっかりと認識しておくことがここでは重要です。

 

財務については、基本論点だけでも長くなってしまうので、上下2回に分けてお伝えすることに予定を変更させていただきます

すでに3月です。財務・会計をガッツリやって貯め込む最後のチャンスです。スピ問でも何でもお気に入りの基本問題集解きをどんどん進めてください。
ここでおおよその論点を制覇しておけば無借金の状態になり、完成答練までは日々の練習を続けるだけです。

苦手意識がある方は、とにかく、とにかく、財務・会計だけは、只今、現在、集中して理解度を上げておくことを強くお勧めします。

論点を理解して得意とされている方も、腕が鈍らないよう、定期的に練習することを心がけてくださいね。

by こぐま

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