【財務・会計】橋げたの構築・会計編

こんにちは。こぐまです。

2/15の「このままじゃやばいよセミナー」では、「いま何をすればいいのか?」のパートを担当させていただきました。遅くなりましたが、お忙しい中、大勢の方にお越しいただき誠にありがとうございました。

その中で、主要3科目の橋げた構築を急ぐこととそのレベル感についてお話ししましたが、今回はまず、苦手としている方が多いと思われる「財務・会計」の取り組み方について、会計分野を中心に触れておきたいと思います。

「財務・会計」は診断士にとって、会社の分析、診断、助言を行うための共通言語です。できるだけ自分のものにしておく必要があります。何より、苦手なままでは、二次試験の事例Ⅳの学習に多大な時間を取られ、合格が遠のいてしまいます。

苦手意識を持っている方は今のうちに克服し、得意科目(貯金科目)に変えていきましょう。得意とされている方は、読み飛ばしてください。

◆まずは◆

ある程度、細切れでも構いませんので、できるだけ短期間(1~2週間)に、25時間程度、この科目に充当する時間を捻り出してみてください。他科目との並行学習できつくなるとは思いますが、3月半ばくらいまでがめどです。

暗記科目は後で取り返すことが可能ですが、反復練習が欠かせない「財務・会計」の後回しは致命的です。極端なことを言えば、試験対策的には「企業経営理論」も「財務・会計」に比べれば追い込みが利きます。

その際の学習の条件として、
・ ちょっとまとまった時間を作る。
・机に向かう。
・できれば不使用が望ましいが、時間短縮のため電卓使用も可。
とします。

自分が適当と思う、論点別に整理された基本問題集(あまり厚くないもの、例:「スピード問題集」や受験校の教材)を1冊決めてください。すでに一度、解いているものであればなお良しです。

その類の問題集であれば、重要論点は全てカバーされているはず。解いていく論点の順番としては問題集通りでいいですが、会計分野→財務分野の順で取り組むほうが、理解の仕方として自然ではないかと考えます。

◆左か右か◆

会計分野は、B/S・P/Lの構造、仕訳、勘定記入、棚卸資産等の各種資産評価方法、決算整理の各事項、実際原価計算、標準原価計算、税効果会計などが主要論点です。簿記の勉強で言われるように、理屈でなく、まず各科目の「本籍地」(増える方)が借方、貸方のどちらか、を覚えること。

あやふやになったら、その科目が増えれば現金が増えるのか減るのか、常識的にどちらなのかを想定してみてください。現金が増えるのであればその科目の本籍地は貸方(右側)、減るのであれば借方(左側)です。
「何を今さら当たり前のことを・・・」と思っていただければ一番いいですが、会計全般の問題においてよくわからなくなった時に頼れる方法ですので、念のため。

特に財務の重要論点であるキャッシュフロー計算書作成の際、+と-を勘違いしやすいので、現金増減との対で理解しておくと、あとあと楽ですよ。

◆期間損益の概念◆

会社の損益は、1ヶ月とか四半期、1年といったある一定期間で区切って計算されます。企業活動で得た収益から、それを得るために使った費用を差し引いた結果が損益です。

これを期間損益といい、その間に生じた収益や費用が対応していることが原則で、それぞれ一定の基準で算定する必要があります。
売上高(収益)が計上されているのに、それに対応する売上原価(費用)が未計上では正しい期間損益が計算できないということです。

その基準を「計上基準」または「認識基準」といいます。

収益の計上基準は、原則として「実現主義」に立ち、商品の引き渡しやサービスの提供が実際に行われた時点で売上高等の収益を認識します。同時に(現金取引でなければ)売掛金、受取手形等の債権を得ることになります。

一方、費用の計上基準は、原則として「発生主義」であり、その事実が発生した時点で認識します。時間の経過とともに資産の価値が減ると考える減価償却費が典型例です。

つまり、収益の計上基準の方が費用より厳しいということが言えます。保守的に損益を算定するということですね。何かモノを作ったという事実だけでは収益とはみなさず、顧客に完成品を引き渡して初めて売上という収益を計上しなさいということです。

会計の大原則であり、今後、会計基準等の理論問題を理解するうえで根本となる考え方ですので、その相違点を押さえておいてください。

◆ボックス図◆

期末棚卸資産の評価や売上原価の算定の際に使う、あの縦型長方形です。貸借さえ覚えていれば機械的に計算できる便利ツールです。面倒がらずに必ずボックス図で考える習慣をつけておきましょう。
原価計算では不可欠ですし、「運営管理」の予算計算でも使えます。頭の中ではなく手を動かして、ささっと作って貸借を合わせられるよう、練習を繰り返してください。

◆決算整理事項◆

一言でいえば「期末の各勘定残高に修正や追加記入を行い勘定を締め切るための諸手続き」であり、重要論点は次の通りです。

①期中の仕入勘定を売上原価に修正する手続き
②受取手形・売掛金残高に対する貸倒引当金の設定
③有形固定資産の減価償却
④費用・収益の見越しと繰り延べ

これらの手続きそのものが出題されるほか、決算整理前手続きとしての試算表作成、残高試算表から決算整理を経てB/S・P/Lを作成する精算表が頻出問題です。精算表の問題は、上記①~④の作業の組み合わせで難しくはないのですが、時間に追われるこの科目では後回しにした方がいいケースが多いようです。

その点は直前期にまた触れるとして、今はとにかく、一通りの論点と精算表作成方法は繰り返し練習しておきましょう。

上記①のコツは、
「仕入繰商、繰商仕入(しいれくりしょう、くりしょうしいれ)」
と呪文のように唱えて覚えておくこと。同じ「繰越商品」勘定が、期首から期末へ変化する仕訳です。その意味は問題集の解説で理解してください。

④は、いわゆる経過勘定といわれる4つのB/S科目に対するP/L科目(損益)について、
「未(未収収益・未払費用)足す、前(前払費用・前受収益)引く」
と覚えておくのはいかがでしょう?
未収収益に対する収益科目は+(収益の増加=貸方)側、前払費用に対する費用項目は-(費用の減少=貸方)側に計上されるということです。
上述した科目の「本籍地」をきちんと覚えていれば、落ち着いて考えられるはず。

◆実際原価計算◆

個別原価計算と総合原価計算に大別されます。診断士試験では難しい計算は問われず、簿記2級の最も基本的な計算問題がほとんど。
基本問題集でそれぞれの典型的問題を数問、こなしておけば今はOKです。
押さえておくべきポイントをざっくり簡単にまとめると次の通りとなります。

①個別原価計算
「運営管理」で習う「個別受注生産」で使用される原価計算方法です。
売上原価や当月製品製造原価を計算させることが多く、つまるところ、「製造間接費」の配賦をどのような基準で行うのか、がポイントです。

②総合原価計算
「見込生産」で使用される原価計算方法です。
期末完成品原価や 仕掛品原価を計算させることが多く、「月末仕掛品の評価」の算出がポイントとなります。

加工費について進捗度を勘案することにより原価のかかり具合を調整すること、月初に仕掛品がある場合は、前月と当月の製造原価が異なるため、製造単価を「平均法」「先入先出法」のどちらかで算定することが必要で、少しややこしいですね。

◆税効果会計◆

会計上の利益と税法上の利益は、通常、一致しません。税法では、会計の収益にあたるものを益金、費用にあたるものを損金といいますが、これが一致しないためです。企業会計と税法の目的は異なります
前者は企業活動の結果としての損益や財政状態を正確に算定すること、後者は企業に対して公平に課税することを目的としています。

例えば、減価償却費や貸倒引当金繰入額、棚卸資産の評価損、退職給付引当金などは、企業会計上は資産の実際の使用価値や期間、リスクの保守的な見積もりなどによって、(監査で認められることが条件ですが)企業が自己判断で費用計上することができますが、税法は公平に税を課すために画一的な基準を設定しており、会計上は費用として計上しても、税法上は損金として認められない、等の食い違いが生じることとなります。

この差異を調整し、上述した適正な「期間損益」を計算するのが税効果会計です。減算一時差異(税金の前払い=繰延税金資産)と加算一時差異(税金の繰り延べ=繰延税金負債)がありますが、現実には前者が多く、後者は一部の処理に限定されます。

「一時」と言っているのは、会計上と税法上で収益と益金、費用と損金の認識するタイミングが異なり、一時的にズレるが、将来のいずれかの時点でその差異は解消されるという意味です。

試験ではどちらも出題されており、「法人税等調整額」を正しく計算できるように理解しておくことが重要です。

 

とりあえず、基本論点だけをざっとまとめてみました。
「スピード問題集」では25問程度が会計分野に該当する問題です。
テキストを読むことも重要ですが、基本講義が終わった現段階では、基本問題集を解いてみて練習しながら解法を習得していくほうが早道です。

最近、出題が増えている理論問題については奥が深く、簡単には対応ができません。各受験校もこの点について何らかの対策をしていることと思いますので、まずはそれを優先して取り組んでみてください。

直前期までには何らかの形で記事にしておきたいと考えていますが、宿題とさせてください

次回は財務編の予定です。

by こぐま

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【財務・会計】橋げたの構築・会計編”へ7件のコメント

  1. こぐま より:

    リベンジ様

    遅くなり申し訳ありません。
    2011年度分は見れませんでしたが、今年度版の当該部分を読みました。CF計算書の問題1~4で、3が人件費の支出の問題なので、同じものと思います(ただし解説にボックス図の記載はなく、計算式だけでした)。

    給料に関して前期末と当期末に未払費用がある場合に、小計欄の下でキャッシュベースに調整する問題ですね。

    未払費用の残高が期首、期末ともゼロであれば、当然ながらP/Lの給料勘定がそのままキャッシュ支出額となりますが、未払額があるのでP/L金額(小計欄の上でプラスした額)を小計欄の下でキャッシュベースに調整する必要があります。

    リベンジ様がご覧の解説では「給料」ボックスと書かれているのでしょうか?
    この場合は、未払費用の増減でキャッシュを計算することになるため、「給料」ではなく「未払費用」のボックス図を書く必要があります。

    従い、期首の未払費用残高(前期末残高20)は本籍地である右上、期末残高(30)は左下となります。期首の未払費用20は当期にキャッシュで支払うことになりますね。

    P/Lの給料500ですが、未払費用の期末残高との差額計算でキャッシュ支出額を算出するのがこのボックス図の目的ですので、未払費用の増加として右側に記入し、左側の期末残高を差し引けば、当期支出額(キャッシュベース)となります。

    「当期支出額490=期首未払費用20+当期給料500-期末未払費用30」
    という計算です。

        給料500/未払費用500

    という仕訳がベースにあると考えていただければわかりやすいかと存じます。

    未収、未払がある場合は、「資産の増加=キャッシュの減少(キャッシュ流出増加)」、「負債の増加=キャッシュの増加(キャッシュ流出減少)」ですので、慣れてくれば、ボックス図より上記の算出式のほうが早いと思います。

    先の私の回答内容が不十分で、リベンジ様を混乱させてしまい申し訳ございませんでした。

    ご不明の点がある場合は、いつでもお気軽に当ブログへお立ち寄りください。
    応援しております!!

  2. こぐま より:

    リベンジ様

    再コメント、誠にありがとうございます。

    本日、実務補習で外出中のため、問題や解説内容等を調べましてから回答申し上げます。
    恐れ入りますが、少々お時間をください。できるだけ本日中に返信するようにいたします。

    私事都合で勝手を言って申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

  3. リベンジ より:

    こぐま様

    ご教授ありがとうございました!
    ボックス図はお教えいただいた内容そのものがお聞きしたかったものです。

    私がつまずいた具体的な問題は、2011年のTAC計算問題集のキャッシュフロー計算書問題1~4です。
    簿記3級を持っているのでこぐま様の「本籍地」の考え方はすぐに理解することができました。

    合わせてご質問ですが、こぐま様がおっしゃる「ややこしい」バージョンはボックス図の期首・期末を左右反転されればいいという理解でいいでしょうか?
    上記問題3の解説の「給料ボックス」は右側に期首、左側に期末となっており、P/L給料を右側にひっぱってきています。給料は費用なので、本来は左側に期首、右側に期末ではないかと思い、混乱しました。

  4. こぐま より:

    ばんちょう様

    コメントありがとうございます。
    「しーくりくりしー」、道場メンバーからも言われました・・・これは知りませんでした。

    実務で「しいれくりしょう、くりしょうしいれ」と先輩からしつこく叩き込まれて頭に染み付いており、普段でも使うので、つい書いてしまいました。

    2次試験を視野に入れた1次の取組み、ご提案ありがとうございます! 財務・会計は、企業経営理論と並んで(ある意味、それ以上)2次直結なので、ご要望にお応えできるよう、トライしてみます。

    ただ、1次の財務・会計は怖いです。60分であれだけの質量をこなすのは、相当な練習量と反復が求められます。まずはスピ問などを隅から隅までしゃぶり尽くしてください!

    私はそれが事例Ⅳ対策への第一歩だと信じて、グリグリと何度も解き続けていました。

    記事の方、しばらくお待ちくださいね!

  5. こぐま より:

    リベンジ様

    コメントありがとうございます。返信が遅くなり申し訳ございません。

    ご質問内容ですが、キャッシュフロー計算書作成で、各勘定のキャッシュ増減額を算出するために作るボックス図のことと推測したのですが、正しいでしょうか?

    上記記事の「左か右か」でも触れましたが、試算表(T/B)で考えた場合、資産項目と費用項目は左(借方)に記入されていると増加、負債項目と収益項目は右(貸方)に記入されていると増加となりますね。つまり、資産と費用は左、負債と収益は右、が本籍地です。

    問題では、T/B上の各勘定残高は本籍地側で必ずプラスとなっています。
    ボックス図でまず書く期首残高は、その勘定の本籍地側に来ます。資産と費用項目の場合は左上、負債と収益項目は右上となります。期末残高はそれぞれ逆側の下です。

    ただCF計算書作成の際は、小計欄の上の収益と費用(営業外損益や特別損益)は、P/Lの数値の+-を逆にすればよいので、ボックス図は特に要りません。

    ややこしいのは、未払費用や未収収益がある場合の損益調整、有形固定資産や投資有価証券の取得と売却で、これは減価償却費や売却・除却損益が絡み、B/SとP/Lの両方から該当項目を引っ張る必要があるため、ボックス図を書くのが安全で早道だと思います。

    例えば支払利息であれば、未払利息のボックス図を書き、右側に未払利息期首残高とP/L上の支払利息額、左下に未払利息期末残高が来て、左右の差額が支払利息のCF(左側)となり、小計欄の下にマイナス記入して調整することになります。

    的外れなことを言っているかもしれませんので、もしよろしければ、ご覧になっている問題集が何か教えていただけますか? ご指摘の該当部分を読んで、より正確な回答をしたいと思います。

    市販の問題集以外のものであれば、当該問題内容を教えていただけると助かります。また、TAC独自の問題集をお使いであれば、調べることができるので当該ページを教えてください。

    また併せて、作り方で悩まれている点をもう少し具体的に教えていただければ、と思います。
    簿記はある程度までは丸暗記も必要ですが、ボックス図の作成は暗記だけではなく、理解することが必要と思っていますので・・・。

    T字勘定のことをおっしゃっておられるのかもしれないとは思いましたが、ご質問に書かれている勘定科目でボックス図を使うのはCF計算書くらいしか思いつかなかったもので、今回のような回答となりました。

    私が「ボックス図」という言葉を安易に使ってしまい迷わせてしまったかもしれません。

    このようなご質問、大歓迎です。自分で理解して書いたつもりでも、無意識の言葉の使い方ではうまく伝わらないかもしれない、と気付きをいただきました。私たちにとっても修行です。

    大変お手数ですが、教えていただけるとピンポイントでの回答ができると思いますので、再度のコメント、よろしくお願いいたします。

  6. ばんちょう より:

    「決算整理事項」の①期中の仕入勘定を売上原価に修正する手続き、の覚え方ですが、T○Cでは「しーくりくりしー」と教わりましたが、こぐまさんお薦めのフレーズも耳に残りますね。

    ひとつリクエストですが、1次の勉強中に2次の事を考えてる場合じゃない!としかられそうですが、やはり2次の対策も気になります。と言う事で、この時期に財務・会計で「2次を見越した、1次の取り組み」のようなヒントがいただけると大変助かります。

    欲張りなお願いですが、何でも良いのでアドヴァイス宜しくお願いします!!!!

  7. リベンジ より:

    こぐま様
    はじめましてリベンジと申します。
    橋げた構築・会計編の「ボックス図」についてご質問なのですが、テキストや問題集の解説に、「売上債権」「仕入債権」「給料」「商品」「その他営業費」などのボックス図が書かれています。このボックス図の書き方がわからず悩んでおります。
    これは各々丸暗記しかないのでしょうか?
    それとも、資産、負債、費用項目で書き方の法則があるのでしょうか?
    ご教授のほどよろしくお願いいたします。

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