財務会計:伸び悩みの人・中位成績者向け勉強法

こんにちは、ハカセです。

財務会計、悩ましいですよね。アックルが言うように、財務会計は通過科目ではありません。一次試験を突破した際に「突破するべき目標」だった財務会計は、二次試験では一転して「基礎知識」として活用しなければいけません。理屈を理解しているのは当然。それに立脚してさらに難しい問題を解くことが求められる、というわけです。

よって、データ分析のところでも述べましたが、二次試験を視野に入れれば、財務会計をゼッタイに苦手科目としてはいけない。好きな科目・得意科目とは言わないまでも、怖くない科目にはしていなければいけません。

本日は、財務会計を得意科目にし切れていない「アナタ」に、同じような立場だった僕の勉強方法・コツをご紹介。

◇ 簿記3級のテキストをやる ◇

そもそも財務会計に自信のない方は、簿記知識が不十分な可能性があります。簿記知識が確立していないと、そこにどんな難しい情報を詰め込んでも、いわゆる「ヌカに釘」の状態です。

財務が苦手な方は、今からでも遅くないので、簿記3級をやることをお薦めします。なに、Book Offで100円のテキストを買ってきて読めばOK。一日で読めます。

◇ 理屈で覚える ◇

すでに何度もお伝えしています し、財務公式シリーズでもお伝えしたように、財務は暗記科目ではありません。確かに覚えたほうが手っ取り早い点もあります。でも、暗記に頼っていると、どれだけHD容量があっても足りなくなってしまいます。

では、「理屈で覚える」とはどういうことなのか。それは「なぜ?」を追求することにほかなりません。

  • その経営指標、なぜそういう公式になるのか。(why)
  • その公式でどういうことが分かるのか。(so what)
  • 原価計算はどうして直接費用と間接費用の按分方法が違うのか
  • どうしてそういう計算をしたら損益分岐点が出てくるのか (CVP)

「理解で解く」という点では、平成21年の第17問が良問でした。

第17問
リスク資産に加え、リスクフリーレートで自由に借り入れと貸し出しができる場合、投資機会集合の効率的フロンティアを表す曲線として最も適切なものを下記の解答群から選べ。
第17問の図
[解答群]
ア 曲線ABC  イ 曲線ABE  ウ 曲線DBC  エ 曲線DBE

「効率的フロンティア」の意味が理解できていれば、「秒殺」の問題です。A点とD点を比べてみる。D点はA点よりリスクが高いのにリターンが低い。こんな点は「効率的フロンティア」とは呼ばない。グラフの形で覚えるのではなく、あくまでも「内容で覚える」、「理屈で覚える」ことの重要性を示してくれた問題でした。

◇ イメージで覚える ◇

それでも「どうしても経営指標が覚えられない」という方のために、一つヒント。経営指標の分母分子には「ある傾向が」あります。それは、下記のようなものです。

つまり、P/L(具体的には「売上高」ですが)が最も「分子」に近く、「資産」「負債」と続き、「純資産」は通常「分母」で使うことになります。

それぞれの経営指標に当てはめてチェックしてみてください!

  • 「流動比率」。公式は「流動資産 ÷ 流動負債」ですよね。どうでしょう。図の中でイメージしてみてください。
  • 「負債比率」。間違えやすいですよね。一瞬、「負債÷総資本(=資産)」で計算してみたくなりますが、そうすると図のイメージと合致しなくなります。正確には「負債÷純資産」。どうでしょう。この考え方さえ把握していれば、スっと出てきますよね。
  • 「有形固定資産回転率」はどうでしょう。「売上高÷有形固定資産」。図のイメージと合致できますか?

もちろん例外もあります。インタレストカバレッジレシオ など、ちょいとひねった回転率系や、「回転期間」などはこの図のイメージでは説明できないかもしれません。

本当は「なんでそういう計算式になるの?」を考えてほしいのですが、 財務会計の60分は意外に短く、時間が足りない! 一瞬で判断がつくように自分なりの判断スタイル・パターンを確立しておくのも重要です!

◇ 計算機を使う ◇

「え?」と思った方、はい、そのとおりです。1次試験では計算機は使用禁止です。よって、計算機に頼らずに計算問題が解けるように慣れておくことは確かに必要です。

でも! いくら計算機に頼らない計算に慣れても、解法そのものがあやふやだったら、折角の手計算も無駄になってしまいます。

CVP、原価計算、現在価値計算など、「解法の正確性」が求められる分野の完成度がいまひとつだと思っている人は、まずは計算機を使ってもいいから解法を確立しましょう。まだ5月。「慣れる」にはまだもう少し時間があります。今は「考え方」を確実に自分のものにしましょう。そして、模試以降は計算機ナシの対応に慣れていけばOKです。

ただし! どんなものでも使っていいわけじゃないですよ。「経営分析」、「簿記仕訳」、「CF計算書」などの問題は、計算機に頼らずにやりましょうね。

◇ 秒殺テクニックを作る ◇

先ほども言ったように、財務会計は「とにかく時間が足りない」のが悩みの種です。難易度が上昇する完成答練を受けると、直後に疲労困憊になるほど、60分間、頭がフルスピードで回転します。それでも、時間が足りないのですっ!

そこで、時間を有効に使う戦略が必要。それが「秒殺テクニック」です。それには二つあります。

1. 瞬時に答えを見つける

文字通り、「見ただけ」で、計算することなく解答してしまう問題があります。答練や試験では、何も考えずに計算に取り掛かってしまいそうになるけど、「よく考えるとこの選択肢しか正答はありえない」という問題が時々存在します。そういうのをしっかり見極められれば、時間が格段に有効活用出来るようになります!

平成21年もそういう問題がたくさんありました。例えば、第13問は秒殺です。

平成21年 第13問
A社の普通株式の次期の配当は、1株当たり50円と予想されている。配当の成長率が今後8%で永久に継続すると期待されている。A社の現在の株価が1,000円であるとき、A社の普通株式の資本コストとして、最も適切なものはどれか。

ア 5%  イ 5.4%  ウ 8%  エ 13%

V = D ÷ ( r – g ) の公式さえ出てくれば、g が 8% と言っているんだから、求める r は 8% より高くなければいけない。8% より高いのは エ だけです。これは秒殺です。

平成21年第18問もそうです。

TACの過去問の解説にもありますが、株式Gは市場よりも標準偏差が高いわけです。偏差が高いということは、散らばりが大きいということ。つまり、「株式Gは市場全体よりもリスクが高い」ということです。β値はリスクが高まると1を超えます。つまり「株式Gのβ値は1を必ず超える」、ということになります。1を超えている選択肢は一つしかない。よって、エ が正解になります。「偏差とは何か」、「β値とは何か」をちゃんと把握していれば、計算を始めるまでもない。本当に「秒殺」です。

ところで、過去問・答練を解くときは、「この問題をもっと難しくするとしたらどうなるかな」とか、「どうして出題者は選択肢の一つとして 0.15 を設定したんだろう、適当かなぁ?」、「もしも選択肢 オ として、2.0というのがあったらもっと悩むかな」、などと、考えていく必要があります。それが「鶏がら学習法」です。

2.解かない問題を瞬時に判断する

そして、時間を大事にする究極の方法は「解かない問題」を作ることです。特に計算問題に手間がかかって時間を要してしまいそうな問題には、「手をつける前に見切る」ことも大事です。

ボクは平成21年の第6問の原価計算の問題を一切解きませんでした。だって、1ページもあって長ったらしくて、解くのに時間がかかりそうだったんですもん。

難しい問題も4点、易しい問題も4点です。今回の場合、結果的に正答率は低くなかったようですが、ここで4点を失うより、この問題の手計算に時間を要してしまって他の問題に手をつけられなくなるのが怖かったのです。

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いかがだったでしょうか。とにかく、財務会計は「時間がない」。だから、各問に時間をかけずに済むように、「解き方」をしっかり身につけておく必要があります。それには、「理解で覚える」「フレームで知っておく」などの対策が有効。今回はそれらを紹介したつもりです。

ちなみに、ボクのお薦め図書はすでに こちら でご紹介しました。まぁ受かってから読んでください (^_^;)

では、引き続き頑張ってください!

by ハカセ

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財務会計:伸び悩みの人・中位成績者向け勉強法”へ7件のコメント

  1. take より:

    ①→②→③の攻略その通りですね。ためになります。
    私は今、全般的に2分~3分で解くように計算のトレーニングをしてます。
    ①が30秒というのは理解はできるんですが、すごいですね。知識問題といえども、知識が定着してないので結果2~3分かかっていそうです。
    でも、どうしても時間がかかる問題は時間がかかるので、秒殺問題を増やしていかないと駄目ですね。

    1. ハカセ より:

      takeさま。コメントありがとうございます。秒殺問題を増やすことは本質ではないですよ。理解が定着すれば、選択肢から逆算して解ける問題が増えます=秒殺問題が出てきます。秒殺することを前提に問題に入ると、「どれも解けない!」と、パニックになる可能性がありますからね、お気をつけください・・(^_^;)。

  2. スズメ より:

    目からウロコのスゴイ解答テクニックです!
    これからもよろしくお願いします!!

    1. ハカセ より:

      > takeさん。コメントありがとうございました! そう言って頂けると一生懸命書いた甲斐があります (^O^)/。「秒殺テクニック」なんてカッコよく呼んでますが、実は、横着してるだけなんですけどね (^_^;)。「手計算、面倒くさいなー。選択肢から逆算して答えが見つからないかなー」と眺めていると、理屈で見えてくるときがあります。とはいえ、あまりゆっくり見すぎてもいけないのですが。

      > wackyさん、コメントありがとうございました! 財務会計に簿記の基礎知識は必須ですよね。簿記が根底にあれば、多くのことがスッと腑に落ちる感じがします。また、独自の分類のご紹介、ありがとうございました! (^^♪ 今日JCが言っていたように、優先順位をつけることは大事ですよね。これまた、あまりゆっくり考えすぎてもいけないのですが。

      > スズメさん、コメントありがとうございました! 「目からウロコ」なんて、嬉しい言葉、ありがとうございます! 「横着は発明の母」かもしれません。なんとか手計算をせずに済む方法を常に考えていることが、本番でそういうのを見つけることにつながると思います! 今後も色々紹介しますね。(^O^)/

  3. wacky より:

    takeさんはじめまして。
    横から失礼します。

    私は財務の問題に取り掛かる際に、下記分類をして①→②→③の順に解くようにしています。
    ①知識だけが問われている問題→目標1マーク30秒。
    ②簡単な計算or得意な分野の問題→目標1マーク3分。深追い禁止。
    ③それ以外(残り時間を使ってじっくり)
    たとえばH21の過去問だとこうなります。
    ①第2問、第3問、第4問、第5問、第10問、第12問、第14問、第17問、第19問
    ②第6問、第7問、第8問、第9問、第13問、第20問
    ③第15問→第11問→第16問→第1問→第18問
    ハカセさんのおっしゃる「2.解かない問題を瞬時に判断する」はすぐにでもできる対応だと思います。時間をかけずに確実に得点できる問題から取り掛かるのが必要なんだと思います。
    あくまでも「私の場合」なので参考になるかわかりませんが、何かの足しになれば幸いです。

  4. wacky より:

    こんにちわ。
    今回の記事はとても深いなぁと思いながら読ませてもらいました。
    私は診断士の勉強を始めた時点(昨年の10月)では、会計は全くの初心者どころかB/SとかP/Lの意味も知りませんでした(汗
    TACのセミナーを受講したときに「財務・会計の学習がポイントになる」と言われたことと、会計の基礎くらいは身に付けておきたいと思い、診断士と同時に簿記の勉強を始めました。
    財務の基礎講義を受けている途中に簿記3級を取得(その後2月に簿記2級も取得)したのですが、おかげで財務・会計は得意科目になりました。
    会計はもちろん、ファイナンスも簿記の原理・原則を知っていると理解が深まると思います。
    財務・会計に関しては知識だけではなく、その知識を利用することが求められるので、「とにかく手を動かして体に覚えこませれば理屈はあとからついてくる」ということが大事なんだと思います。
    あとはタイムマネジメントですね。ハカセさんが全て語ってくれていますが、何よりも一番怖いのは緊張でしょうか。とにかく時計をみながら落ち着いて問題に取り組むことが必要ですね。今週末の完成答練でタイムマネジメントを試してきます。

  5. take より:

    非常にためになりました。

    現在、財務で時間が足らずにどうしたものかと困っています。秒殺テクニック、時間がかかる問題の見極め方など今後もテーマとして扱ってもらえるとうれしいです。

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