【未合格体験記】Pilotfishさんの逡巡 (2011年一次合格、二次不合格)

こんにちは。ハカセです。

道場の常連読者でもある Pilotfish さんから、貴重な「未合格」体験記を寄稿していただきました。

Pilotfish さんは、今年2011年の一次試験に無事合格も、二次試験では残念ながら涙を飲みました。

まずは、Pilotfish さんの「未合格」体験記、ご一読ください。

===== 寄稿ここから =====

■ 二次試験不合格になって思うこと ■

不合格評価はCBAA。どこで得点できたのか、失点したのかはわからない。その「わからない」のが今の実力。

二次試験受験以来、2カ月の間めくりもしなかったTAC模範解答を確認してみる。何年続けてもこの水準の解答は書けないとメゲる・・・。

■ きっかけは中国赴任 ■

そもそも中小企業診断士受験に至った動機が不純。3年前に大学院入学準備をしていた矢先、突然の中国赴任命令を受けた。

「代わりの何かを・・・」と思って中国語学を勉強するも全く楽しくない。つれづれなるままに診断士の勉強を始めた。

いわば暇つぶしの代替材。財務会計問題に手が出なくて、ムキになって勉強してしまった。

■ 中小企業診断士って・・・ ■

調べていくうちに、会社員が本業の「なんちゃって診断士」の比率が高いことがわかった。

『診断士協会側はそんな人たちを増やしたいのか。受験生のほとんどがプロ診断士にならないのであれば、協会側は合否判定に文句も受けないから楽だろう実態は「あっち側」に行けば分かるかな』。

こんなことを考えるほど、試験は他人事で、目的意識がなく、合格への思いは希薄なままだった。

勉強に熱中したせいか、不合格の時の身の振り方 や、撤退条件設定まで考えなかった。

ただ、一握りの現役(ストレート)合格者になればステータスになるかなと、邪な考えだけはもっていた。

■ 遠隔地での一次対策 ■

選択式で60%取れたら一次合格するシステムは奇異に映った。各々の選択肢の正否が40%弱でも科目合格できるなんて。

全く手が出ない問題があることとあわせると、協会側の「効率的な勉強をする人を求めているんだよ」とのメッセージと判断した。

一次用勉強は、(1)問題を解いて、(2)解説を読み、(3)テキストを調べ、(4)副読本としての関連本を読む、というパターンにした。科目の関連本をどんどん購入していくと、いつの間にか20冊以上になっていた。

その後、同友館の『Eラーニングこれ短2000』 に取り組んだ。これは非常に効率よかった

2011年1月に過去試験をガチンコで解いたら420点越えたので、合格圏に入ったと考えた。以降、「これ短」で、90%の正解率維持をベンチマークにした。

2011年5月頃には期待値440点強、標準偏差20点位程度の力にはなったと思う。

■ 並行して二次対策に着手 ■

「受験生の得点が正規分布すると仮定すれば、85%強の確率で一次試験が合格出来そうだ」と思えたので、二次試験の勉強を始めた。

二次試験過去問を実際に解いて、ショックを受けた

「解いた」と書いたけど、実際はその前段階、まず文章が書けない。問題を目の前にして固まった。

試験対策本には「一次試験後の二次対策開始でも大丈夫」ってあるけど嘘だと思った。確かに上位者の能力、基準であれば大丈夫なのかもしれないが、万人に正しいとは限らない

■ 一次試験は無事合格 ■

とにかく、私は現役(ストレート)合格するためには、このタイミング(5月)で二次に手をつけないと間に合わないと感じた

ただし、自分のその直感を機械的に実行できなかった。「ストレート合格率を上げなくちゃ」と思いつつも、「一次試験の合格確率85%も上げよう」としてしまい、結局中途半端になった

ただし、二年以内で合格することまでも考慮すると、良かったかもしれないけど。結果的に一次試験は438点という、予想範囲内での終了となった。

■ 二次試験対策に本腰も・・・ ■

二次はまず、「まったく書けない段階」から抜け出るために、写経をしてみた。(道場注:模範解答を写し書きすることと思われる)

一見馬鹿らしく見えるけど、人の考え方をコピーするのは優れたやり方と思っていた。

若いころ将棋でも同じことをしていた。何も考えず流れを追うのは、ヨミの力はつかないが、センスはよくなる

素振りと同じで「正しいフォームを身につける手段」であろう。ヒットを打てる担保にはならないが、ヒットを打てそうなフォームは身につけられるとの確信があった。

繰り返した結果、何とか文章は書けるようになってきた。一次試験後すでに一か月が経過していた。

そして、写経と事例を解くことを繰り返した。80事例以上集めてとにかく何かを書きなぐった

■ 二次対策で足りない「何か」 ■

書けるようになる目標はクリアしたけど、内容が伴わなかった

漢字数が模範解答と比較して非常に少ないことに気付いた。

同じキイワードが繰り返されていた。少ない語彙を操る自分の英会話のようだった。中学生の幼稚な作文集が出来上がっていた。

そこでキイワードを模範解答から抽出し、単語帳にまとめ、隙間時間は単語帳を眺めた。無理にキイワードを使って慣れることにした

同僚から日本語が不自然になったと言われた。

事例回答は少しずつ体裁が整ってきたが、すでに受験直前になっていた。

■ そして二次試験当日 ■

受験当日がやってきた。「届いてないだろうなあ」と思った。

二次合格の能力がついたならば、いつも金太郎飴の同じ回答を作れるだろうし、その回答は容易に再現できるはずだ、という自分なりの合格ベンチマークに到達していなかったから。

事例4が極端に難化し、かつ大きく得点差をつけるしか勝てる手段は残ってなかった・・・(※道場注: しかし本試験はそういう問題ではなかった)。

■ 不合格になって思うこと ■

今改めて再現回答を確認してみると、ヨミのリーチが非常に短い

小手先表現を適当に組み合わせただけで、しかも冗長な印象を受ける。

第三者から客観的な指摘を受けて素直に聞き入れれば、改善できるかもしれない。いや全くできないかもしれないけれども・・・。

こんな解後感(※道場注:将棋の詰将棋を解き終えた後の感想)が悪い試験を再受験したくないのだけど、日本へ帰任が決まり、勢いで予備校講座を申し込んだ。

しかし、本来診断士になることを目標にしたわけでもない他にしたいこともある

とはいえ、不合格で落後者の烙印を押されてしまった気がするのは精神衛生に良くない。これまで費やした1000時間以上の学習を成果に変えたいし、診断士の世界も見てみたい

目的意識がなくズルズルと試験を受けることにして本当に続けてもいいのかなあ。まるで考えが整理できない事例ダメダメ社長のようだ。まだ逡巡の中にいる。

=====寄稿ここまで=====

Pilotfish さん、ありがとうございました。

貴重な「未合格」体験記なので、道場の複数の執筆陣から、コメントをさせて頂きます。

(ハカセより)

道場読者の皆さんの中には、「それ、オレだよ」と、複雑な気持ちで読まれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、Pilotfish さんの「未合格」体験談は、多くのサラリーマン受験生の「心の声」を代弁しているのではないでしょうか。

多くの受験生は、「診断士資格そのもの」に魅力を感じて学習を始めたのではなく、「自己啓発の格好の材料」というのが最初のきっかけだったと思います。

そのような受験生の中には、「累積学習時間(および予備校コスト)という埋没コスト」と、「他の国家資格と比べて超難関とは認識されていない試験に不合格となり、どういうわけか『落第』のレッテルを張られてしまったような、何とも不思議な不納得感」をどう処理すればいいか、困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

Pilotfish さんは、敢えて、そこにスポットライトを当ててくれたのではないかという気がしてならないのです。

この課題に「模範解答」は存在しません。それぞれが、それぞれの事情を鑑みて解決しなければいけないのだと思います。

「惰性」とか「不退転」以外の解決策を、Pilotfish さんを含め、すべての再挑戦検討者それぞれが、見出すことを、祈っております。

by ハカセ

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(ふうじんより)

pilotfish様、貴重な未合格体験記ご執筆ありがとうございます。
スコアCBAAは、事例Ⅰの失点を除き立派な合格実力の保有証明ですし、ご寄稿いただいた体験記を拝読するだけでも、

Pilotfish様が頭脳明晰であり、
将棋の「筋を読む」「先を読む」ことが資格試験学習に有利

であることが明確に伝わってきます。「不合格の烙印」というご指摘については、

1. 診断協会は、別に頭脳明晰な人から合格させたい訳ではない
2. 採点者の理解能力を上回る優れた解答は、低評価を受けやすい

という2つの材料を知れば、「特に気に病む必要ナシ」と合理的にご判断いただけると存じます。あと余計なお世話ですが、診断士上級講座および診断士2次合格者のレベル感は、pilotfish様の予想や期待よりかなり低い水準。それを承知の上での再挑戦であれば、今回の「未合格」は診断士合格が1年早いか遅いかの違いに過ぎません。

いずれにせよこの度は貴重な体験談を早々にご寄稿いただき、大変ありがとうございました。篤く御礼申し上げます。

by ふうじん

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(JCより)

Pilotfish様

こんにちは。逡巡の中、体験記をお送り頂き、本当にありがとうございました。

実は逡巡の中にいる方って、すごく多いように思うんです。深く落ち込んだり、自分を責めたりしている方がすんごく多い。だから、みんなの声を代弁してくれたみたいな感じがします。さすが大人!

でも、逆に合格した側の人間からすると、ボーダーライン上にものすごくたくさんの受験生が並んでいて、自分が合格したのは、ほんのちょっと運が良かったに過ぎないことが痛いくらいにわかっちゃってるんです。ほんとにちょっとの差しかないことなので、実はそんなに悩むべきことじゃないんですけど、ほんのちょっとの差であるかどうかが、この試験では見えにくいだけなんだろうと思います。

帰国されたら、一杯いきましょう!ご連絡をお待ちしています。

by JC

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(ねこおじさんより)

Pilotfish様

未合格体験記有難うございました。海外赴任でありながら、ここまでの成果を収められたのですから、大いに誇れる結果だと思います。ぜひ自信をお持ちになられてください。

未合格の結果を気にされる必要は全くありません。まず、この試験はかなりの勉強時間をとられます。準備万端には2000時間でも不足かもしれません。それに、リスク(期待値からのズレ)も大きな試験です。しかも、ふうじんの指摘にも関連しますが、あえて言えば、問題や解答基準もそれほど優れた質ではなさそうです。こんな内容のテストに対し、多くの準備時間が要求され、結果のリスクも大きいという、この試験制度自体が疑問です。

さて、そんな試験を受験するのかということですが、私の意見としては、今度の予備校での授業を受講して、続けてみようと思ったならぜひ続けてください。文章構成力や説明力など、多少は得るものがあると思います。それに、自分のキャリアへの結び付きが明確でなくても、その時の感覚や直感に従って選択すれば、後から統合されてくることもあるようです。「(過去の)経験はこのためにあったんだ・・」なんていう成功者の話も多いようです。スティーブ・ジョブズさんも、カリグラフィーを学んだことがアップルのフォントに活かされている、禅の修行をしたことがシンプルな機能デザインの思想に反映されてあのいる、なんて言われています。直感や感覚は、人類(動物?)が長い歴史で育んだ能力だし、人間が意識して明確に論理を言えること(形式知化できること)は意外に少なさそうなので。

かくいう私は、いつも自分自身のことが状況判断できず、結構苦労しています(笑)。大事な判断は、ほとんど直感頼りだったりして(笑)

・・・こんな感想ですみません。心の声に従って、ぜひ頑張ってください。

byねこおじさん

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【未合格体験記】Pilotfishさんの逡巡 (2011年一次合格、二次不合格)”へ2件のコメント

  1. ハカセ より:

    Pilotfishさま、ご本人によるコメントありがとうございました。帰国後進むべく道を定められたようで、本当に何よりです。是非、大学院と診断士対策の両立を果たされることをお祈りしております!

  2. pilotfish より:

    皆様、コメントありがとうございます。
    帰国して、大学院進学準備進めています。診断士試験は、ロジカルシンキングの訓練手段として続けていきます。
    惰性とーーー流石ハカセ思わず唸らせてしまう語彙を持って/来る。 猫おじさん こんな事書いてだいじょうぶ?言いたいこと言える自由闊達な雰囲気が診断士業界にあるってことですね。ふうじんさんのコメントは結構信じてました。2クラス上だから、とりいれても9割以上間違いないだろうと。JCさんは、同い年かな?今週いやがる息子たちに、サインはVの音楽きかせて、そのころの時代背景を聞かせてやりました。

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